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「──この方が、ドクターか?」
「はい、ですが今のドクターは状況が芳しくなくて。記憶喪失なんです」
戦闘中に駆けつけたドーベルマンへ、アーミヤが説得と説明をしているのを横目に、僕はなんとなくドクターの方を見た。
あの金属製のマスクを着けて、フードを被っている。着ているジャケットは、自分が着ていたものと同じだ。まあ、ロドスの制服のようなものだからかぶっていても違和感はないが……なんだかな。
とか眺めていたら、目が合ってしまった。気まずい空気が流れる。
「わかった……アーミヤ、お前を信じよう」
そのドーベルマンの言葉に現実に引き戻され、ドクターから目をそらす。
ドクターを無事にロドスへと送り届けるべく、緊急作戦が始まった。
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□□□□記録開始□□□□
─────ねえ、本当に……本当に、先生がいるの?
─────ああ。あの人が死ぬわけない。何があってもあの人は生きてた。
─────そうだよね。そうだよ、そのはずだよ!間違いない!先生もきっと僕達を探してるよね!
─────そうだ。センセの居るところにアタリをつけるのに時間はかかったし、過激けど……
─────うん、ここまで来たらあと少しだよね!
□□□□記録終了□□□□
◆◆◆
「くそっ……一体なんだこの状況はッ!」
地上は、阿鼻叫喚の様相だった。
レユニオン構成員が老若男女関係なく捕らえ殺し、ウルサス憲兵は市民を囮にしてレユニオンを殺していた。
「やめて!その人を放して!あなたたちはなぜこんな………」
おそらく家族なのだろう。捕えられた市民の男性を放せ、放せと市民の女性が叫んでいた。
「抵抗するつもりか?もう遅い!この、チェルノボーグ人がっ!」
ガスッ、と鈍い音がする。腹に蹴りを入れられた男性は、嘔吐しながらも女性……と、子供へ向けて叫んだ。
「お前は早く逃げろ!俺のことは構うな……子供たちを……」
「ママ……ママァ!」
母親に縋り付く子。それを囮と言わんばかりに、レユニオンへ攻撃を仕掛ける憲兵。だが、レユニオンの攻勢は止まずに憲兵の方が圧されている。
惨劇に、アーミヤは絶句していた。
「どういうことなんですか……?!どうして……どうしてレユニオンがこんなことを……」
『レユニオン・ムーブメント』は感染者たちの寄り合い所のような集団だった。しかし、近頃不穏な動きを見せていた。その事については、アーミヤも知っていたはずだ。
しかし、やはり「感染者たちがチェルノボーグの市民たちを襲っている」という状況が信じられないのだろう。
「でも、不穏な動きはアーミヤさんも知っていましたよね。多分……衝動的な暴動ではないと、僕は思いますよ」
「……そうだな。ドクターを救出した場所は、本来なら奴らが知るはずもない機密エリアだったはずだ。なのに、奴らの手が及んできたことを考えると……」
「間違いなく、チェルノボーグ全体に暴動が広がってるよ。
惨たらしい光景を見ているというのに、「生徒達が巻き込まれていなくてよかった」という考えをしている自分に嫌気がさす。
同時に、あの焼かれた村のことを思い出して、ウルサス帝国の兵である憲兵たちも、平和に暮らしていた人々を殺すレユニオンにも嫌悪感を持っていた。
「クソッ……なんてことだ……」
悔しがる前衛オペレーター。しかし、レユニオンに動きがあったようで、アーミヤが制する。
「しっ!黙って。彼らが……」
レユニオンは、いつの間にか逃げ出していた子供と女性を探している。
「クソっ、逃げ足の速いヤツめ。どこに隠れた?………いや、そこか!見つけたぞ!出てこい!」
しかし、瓦礫の影にいた女性と子供が見つかるまでに時間はかからなかった。
子供を抱えて遠くへ逃げるなど、困難だ。それがしかも、多くの敵がいる中でとなると尚更。
「ヒッ………アア……!」
子供を守るようにだき抱えながら、女性は引きずり出される。
「そんなところに隠れても無駄だ」
「お願いです、ど、どうか助けてください。私はともかくこの子だけでも……やめて、この子だけは……!」
母親から子供を引き剥がそうとする光景に、衝動的に
母子を見つけ出したレユニオンは、棒状の武器片手に冷たい目で母子を見ていた。
「………レユニオンと戦いましょう。今すぐにです。」
ふと、アーミヤが言った。
「……アーミヤ……それは……」
ドーベルマンが言わんとすることもよく分かる。ここで騒ぎを起こせば、起きたばかりの『ドクター』が危ない。
だが、アーミヤは感染者達の前に立って進む者だ。
「今ここで出たら危険なのは十分に分かっています。……ですが、このままここに潜んで彼らの行為を見過ごす間に、一体どれだけの命が失われると思いますか!」
感情的に、思いを吐露する。しかしすぐに、理性的な考えも明かす。
「しかも、この状況がいつまで続くか分かりません。何より私たちにもタイムリミットがあります。ならばここで彼らを止めるべきです。違いますか?」
そう言われてしまえば、ドーベルマンとて反論することは出来ない。ある種の正論だからだ。
「……仕方ない……わかった、お前の指示に従おう……」
「ロミオさんも、いいですよね?」
「僕には反対する理由が無いですよ」
ドーベルマンはため息をひとつ挟んでから、背後のオペレーター達へと支持を出す。
「各小隊、聞け!レユニオンはまだ我々の存在に勘づいていない。奇襲で一気に畳み掛ける。本作戦は速度が命だと思え!」
そして、ドーベルマンはドクターの方を向く。
「ドクター、部隊の指揮を委ねる。お前の力量を見せてもらおう。……言っておくが、こんな状況だ。手抜きなんざするなよ」
「そうだ。一応僕のことも指揮下に入れてもらって構わないよ。やれることは……さっき、知ったよね?」
するとドクターは、頷いた。鉄仮面の下で、自信げに笑ったような気がする。
「最初から自分に任せてくれればよかった。すぐに終わらせる」
その答えに、ふっと笑うのはドーベルマン。少なくとも、僕はなんとか笑みだけはつくれていたと思う。
「アーミヤ、任せたぞ。」
「わかりました。」
アーミヤは、息を吸い込んで立ち上がった。
──────『もし避けられる争いならば、沈黙を守り────それが必要な戦いならば、最後まで戦い抜く!』
「私たちロドスが往くべき道は、ただの一度たりとも変わりません!」