「グフッ……お前たちは……ウルサス……人じゃ………な……」
「……うん。敵意の気配は、これで全部だね」
「どうやら、仲間を呼ばれずに済んだな。悪くない戦果だ、ドクター。客観的に見ても、十分評価に値すると言えるだろう」
「評価は受け取ろう」
ドーベルマンはドクターのことを評価し、ドクターは照れ隠しかなんだか知らないが、そう言った。
「……あれ、アーミヤさんは……どこへ……?」
医療オペレーターがそう言ったのを聞いて、アーミヤが視界内にいないことに気がつく。
「あの……大丈夫ですか?」
心配そうに、アーミヤは声をかけた。
「えっ?あ、はい。ありがとうございま……す!?」
すると、母親はアーミヤの腕章を見て、ヒッと小さな悲鳴をあげた。
「……あ、あなたもまさか感染者なの?」
みるみる、母親の顔が青ざめていく。母親は子供を守るように抱きかかえ、必死に口にする。
「何するつもりよっ……!わ、私の子供は……この子はやめて……何もしないで……!」
「……どうか、安全な場所を見つけて……」
「アァァァ……どうかお見逃しください……どうか……」
錯乱しきってか、話が通じない様子だ。アーミヤの表情が曇る。
……見ていられないな、流石に。
「アーミヤさん、すこし、僕に任せてください」
「?」
この母子は、
優しく、柔らかな
「こんにちは。言葉……伝わっていますか?」
「……え、は、はい……」
できるかぎり優しく微笑みながら、ゆっくりと言葉を伝える。
「大丈夫。僕たちは、あなたも、御子さんも傷つけません。……それに、そのままでは、御子さんの命が危ない。どうか、少しの間だけ僕たちを利用してくれませんか?」
ね?と言えば、おそらく勢いに呑まれたのか、それとも
「アーミヤさん、僕、先にこの御家族を避難させてきます!」
「え……?は、はい!よろしくお願いします、ロミオさん!」
よし、許可が来た。言い出した以上、きちんと遂げなければ。
「お母さん、しっかりと御子さんを抱いていてくださいね」
「は、はい」
よっこいせ、と子供ごとお姫様抱っこをする。えっ、力ないんじゃなかったのって?
……一応、放浪とロドスでの生活の中である程度パワーはつきましたよ、ええ。腕相撲はロスモンティスにも負けるけど……。
「後程追います。道筋は分かっているのでご心配なく。それでは!」
ビルとビルの間の道へと入り込む。
ところで、行く間際。アーミヤが呟いたことを、僕は聞いていなかった。
「……ロミオさん、チェルノボーグは来たことないと言っていたのに何故分かるのでしょうか……?」