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「すまない……しくじった」
ファウストは、ボウガンを片手にメフィストの元へと戻って来ていた。その表情は、あまりいい戦果をあげられなかったことがよく分かる。
「いや、謝らなくていい。これは、僕のミスだから。少し興奮しすぎちゃったみたいだ。……先生なら、激情しかけて固まるなんてことは無かったはずだから」
メフィストは、自分たちの恩師であり、親であり、誰よりも大好きな兄のような存在である『先生』のことを思い浮かべた。
「センセ、か……そうだ、センセのことだ!」
「どうしたの?あの部隊の中には、面白そうな鉄仮面がいたくらいだけど……もしかして、先生が居たの?!」
ファウストは肯定も否定もできないような返事を返す。
「居た、と言うよりも……一瞬だけ、見えた。ロドスが来る前に、俺は高台に潜んでただろ?」
「そうだね」
「その時に、ロドスが居る場所とは全く違う方向に、人を抱えて走るエーギルがいた。だけど、俺がセンセを見間違えるわけが無い」
そもそも、エーギル自体がチェルノボーグには珍しい種族だ。極東ならまだしも、だが。
「それって……」
と、メフィストが言おうとした時だった。おずおずとレユニオンの諜報員がやってきた。
「お、お取り込みのところ申し訳ありません、メフィスト様、ファウスト様……スカルシュレッダー様の部隊から、情報共有です……」
「スカルシュレッダーのところから?いいよ、聞かせてごらん」
「は、はい……」
諜報員が言うことを要約すると、「妙なアーツを使うエーギルが居た。銃のような武器を持ち、一定範囲以上近寄った構成員が全員失神した。せいぜい気をつけろ」というような事だった。
そのことに、2人は確信した。互いに顔を見合わせて、頷き合う。
「……ありがとう。戻ってていいよ」
その言葉に、諜報員はそそくさとその場をあとにした。
それから、2人は顔を見合わせ、笑った。
「先生だ……!絶対、先生だ!」
「ああ。あんな特殊な『アーツ』を使えるエーギルなんて、センセ以外にいるわけが無い」
「やっぱり、やっぱりここに居たんだね!」
心底嬉しそうに、探していたものの手がかりを手に入れただけなのに、本当に心の底からの笑顔を2人ともしていた。それは、年相応の表情だった。
「そうとなると……早く、先生を
「ああ。そうだな。あの
よし、と決意に満ちた表情でまた頷く。
「そうとなれば、『ファウスト』、ロドスの追跡を任せてもいいかな?僕は、タルラに報告を入れてくる。……そろそろ、中枢司令塔を制圧した頃だろうからね」
「わかった。『メフィスト』も気をつけて行ってくれ」
「……ああ。僕の任務も終わったことだしね」
それぞれ反対の方向を向き、すれ違う。だが、気持ちは同じ。
「────まずは、先生を助けて、僕たちの仲間に迎えよう」
「────それから、この世界を変えよう」
「────そうだね。それじゃ、同胞たちよ、行こうか……
……僕たちの時代を迎えに!」