平衡より来たれり   作:月侍

23 / 30
幕開け

■■■

 

「すまない……しくじった」

 

 ファウストは、ボウガンを片手にメフィストの元へと戻って来ていた。その表情は、あまりいい戦果をあげられなかったことがよく分かる。

 

「いや、謝らなくていい。これは、僕のミスだから。少し興奮しすぎちゃったみたいだ。……先生なら、激情しかけて固まるなんてことは無かったはずだから」

 

 メフィストは、自分たちの恩師であり、親であり、誰よりも大好きな兄のような存在である『先生』のことを思い浮かべた。

 

「センセ、か……そうだ、センセのことだ!」

 

「どうしたの?あの部隊の中には、面白そうな鉄仮面がいたくらいだけど……もしかして、先生が居たの?!」

 

 ファウストは肯定も否定もできないような返事を返す。

 

「居た、と言うよりも……一瞬だけ、見えた。ロドスが来る前に、俺は高台に潜んでただろ?」

 

「そうだね」

 

「その時に、ロドスが居る場所とは全く違う方向に、人を抱えて走るエーギルがいた。だけど、俺がセンセを見間違えるわけが無い」

 

 そもそも、エーギル自体がチェルノボーグには珍しい種族だ。極東ならまだしも、だが。

 

「それって……」

 

 と、メフィストが言おうとした時だった。おずおずとレユニオンの諜報員がやってきた。

 

 

「お、お取り込みのところ申し訳ありません、メフィスト様、ファウスト様……スカルシュレッダー様の部隊から、情報共有です……」

 

「スカルシュレッダーのところから?いいよ、聞かせてごらん」

 

「は、はい……」

 

 諜報員が言うことを要約すると、「妙なアーツを使うエーギルが居た。銃のような武器を持ち、一定範囲以上近寄った構成員が全員失神した。せいぜい気をつけろ」というような事だった。

 

 そのことに、2人は確信した。互いに顔を見合わせて、頷き合う。

 

「……ありがとう。戻ってていいよ」

 

 その言葉に、諜報員はそそくさとその場をあとにした。

 

 

 それから、2人は顔を見合わせ、笑った。

 

 

「先生だ……!絶対、先生だ!」

 

「ああ。あんな特殊な『アーツ』を使えるエーギルなんて、センセ以外にいるわけが無い」

 

「やっぱり、やっぱりここに居たんだね!」

 

 心底嬉しそうに、探していたものの手がかりを手に入れただけなのに、本当に心の底からの笑顔を2人ともしていた。それは、年相応の表情だった。

 

 

「そうとなると……早く、先生を()()()()()ならないね、サーシャ」

 

「ああ。そうだな。あの()()()()()()()()の手から、センセを俺たちが助け出すんだ、イーノ」

 

 よし、と決意に満ちた表情でまた頷く。

 

「そうとなれば、『ファウスト』、ロドスの追跡を任せてもいいかな?僕は、タルラに報告を入れてくる。……そろそろ、中枢司令塔を制圧した頃だろうからね」

 

「わかった。『メフィスト』も気をつけて行ってくれ」

 

「……ああ。僕の任務も終わったことだしね」

 

 それぞれ反対の方向を向き、すれ違う。だが、気持ちは同じ。

 

 

「────まずは、先生を助けて、僕たちの仲間に迎えよう」

 

「────それから、この世界を変えよう」

 

 

「────そうだね。それじゃ、同胞たちよ、行こうか……

 

 

 

 

 

     ……僕たちの時代を迎えに!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。