平衡より来たれり   作:月侍

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そろそろ感想を返したい季節です。いつもありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。めちゃくちゃ助かってます……


融解

 周囲が灼ける。建物も、物資も全てが黒焦げになっている。それでも尚僕たちが立っているのは、彼女が……タルラが、手加減していたからにすぎない。

 

 タルラのアーツから皆を守るべく受け止めたニアールは、酷い火傷を負っていた。纏う鎧も、所々破損……というか、融解している。

 

「チェルノボーグは解放された。既に我々の問題は達成された……が、お前たちにも少し興味が湧いた。だが、それだけだ」

 

 お前たちは過ちを犯した。タルラは続ける。

 

「ロドス、お前たちは真に感染者の側に立つべきだった」

 

 一歩、また一歩とゆっくり前に歩み出てくる。それは、マグマが迫るような、焔の塊が迫るような、そんな威圧感と熱気だった。

 

 

 ……さて、これはマズイ。そう思ったのは、僕だけではない。

 

「誰かが、奴を止めなければ……アーミヤとドクターを、逃がさなければ……!」

 

「ニアール!いいから退れ!」

 

「大、丈夫だ……少し火傷を、しただけだ……!!」

 

「全身ズタボロで何が大丈夫だ!」

 

 ボロボロになって尚、ニアールは盾になろうとする。だがしかし、タルラがそれを待つような訳が無い。

 

 

「───滅せよ」

 

 空間が歪んで見えるほどの熱量。どこぞの有名RPGの炎魔法というよりかは、閃熱魔法に近いようにも見える。

 いや、そんなことは関係ない。今一番の問題は!

 

「間に合わない……『アーツ』も効いてない……!」

 

「私が止めるッ!!」

 

 ニアールが前に出て止めようとするが、到底無理だろう。

 

 

 衝撃が、閃熱が迸る─────そう、思っていた。

 

 

皆さんを傷つけさせはしません!

 

 

 ……衝撃は、来なかった。

 

「そんなこと……私が許しません!」

 

 アーミヤが1人で、タルラのアーツを受け止めていた。

 

「───ほう?」

 

「ぐっ……私が……皆さんを……!」

 

 アーミヤの黒い障壁が、タルラのアーツを広場に押しとどめていた。

 しかし、いくらアーミヤだとしても、長くは保たないのは明白だ。

 

 

「私が……みんなを……守らなきゃ!」

 

 

 小さな体で、強大な力を受け止める姿に、何かが痛んだ。

 

 ……実を言えば、今この瞬間までなんとなく、なんとなくここは現実では無いのではないか?と思っている部分があった。

 勿論、ここが今の現実であることは十も百も承知だ。でも、どうしても、『青年』の持つ「アークナイツ」の知識と記憶に合致する出来事が多かったあまりに、また、僕の『アーツ』は大概の相手をどうにか出来るから、頭の片隅でそう思っていた。

 

 だが、いや、でも……ああ、どうして!どうして僕のアーツでは、守れないんだ?物理的な干渉が少しでも出来れば、今この状況でアーミヤの助けになれるのに!

 

 

 ああクソ、思考がしっかりと纏まらない。見て、守られるしか出来ない。……そうだね、元いたところでも、僕は村の人々やイーノやサーシャに守られてたな。

 

 

「私はもう……大切な人を目の前で……!」

 

 タルラの様子を見ていることも出来ない。苦しむアーミヤに、なにか出来ないか?

 

 

あああああ!!

 

 障壁に、ピシ、とヒビが入る。アーミヤの限界も、間近まで迫っていた。

 

 

「─────大丈夫だ、アーミヤ。お前はもう、十分頑張った」

 

 Aceは前に出ながら、アーミヤへと優しく語りかけた。

 

「お前の苦しみを、俺たちにも分けてくれ」

 

 ……そうだ、これは、そうだ、思い出した。

 そうだった。ここでAceさんたちは─────

 

「ドーベルマン!皆を連れて先に行け、何安心しろ、すぐに追いつくさ。……ニアール!ここは私に任せてもらおう」

 

「Ace……」

 

「Aceさん……イヤっ!……Aceさん……!」

 

 その言葉に、アーミヤは意識を手放しながらも、手を伸ばしていた。

 

 Aceさんは撤退するドーベルマンやニアールたちに背を向け、タルラらレユニオンの方を向く。

 

 

 

「……すまないな、ドクター。俺のことは覚えていないだろうが………」

 

「……遺言を遺すには、まだ早いよ」

 

 そんなAceに、()()声をかけた。Aceは目を見開いて、そのサングラス越しにも分かるほどに驚いていた。

 

「ロミオ、何を……いや、お前もすぐに行」

 

「アーミヤさんが言っていたでしょう?誰ひとりとして死なせないって。……だから、いい加減僕も覚悟を決めなきゃって思ったんですよ」

 

 ジャケットに着いたフードを被り、レユニオンを見据える。

 

「Aceさん、四肢がもげようが、何があろうが……生きて、ロドスに帰りますよ?ああ、Aceさんの部下さん達も、勿論のことです」

 

 

────絶対に、結末を変えてやる。




展開が無理矢理なのは無理矢理だからです
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