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かつてないほど、気分が高揚しているのがよく分かる。
楽しい……そう、楽しい。とてつもなく、楽しい!
「燃えやすいものがあるところで火を使っちゃいけない。火気厳禁、きちんと覚えておいてね」
自分が何を言っているかは、あまり認識できていない。それでも、関係ない。楽しいのだから。
「貴ッ様─────!」
タルラが何かしようとした瞬間に、
「さっきから言ってるよね、火気厳禁だって。それとも、火を使っちゃダメって、分からないのかな?」
集中力を無理やり削いで、アーツを霧散させる。
背後からなにやら声が聞こえる気がするが……なんなんだろう?
と、正面から、なにやら近付いてくる気配がふたつ。
どうも見るに、
まあいいや。邪魔をするなら─────
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「先生!」
『メフィスト』────イーノは、我慢できずに、『先生』のもとへと飛び出した。それを追うように、少し遅れて『ファウスト』────サーシャも『先生』へと駆け寄る。
その様子を、Aceは首を傾げながらもよく観察していた。
『先生』といえば、子供たちがロミオのことを呼ぶ時に使う呼称だ。
そう言えばロミオは、ロドスに来る前に共に行動していたという2人の『生徒』を探していたはずだ。ふわふわとしたような白い少年と、鱗のある黒い少年。
駆け寄るレユニオンの幹部であろう2人の少年は、ふわふわしているかどうかというところを除けば、特徴に近い。
どういう事だ、と、Aceは考えるものの、異様な様子の同僚に、何か頭の奥で警鐘が鳴っていることにも疑問を持っていた。
「先生、僕だよ!ねえ、先生、よかった、会えた!」
「ああ。センセ、俺たちはセンセを探して色々頑張ったんだ」
2人は、またいつものように褒めてもらおうと、『先生』へと笑顔を向ける。
『先生』は笑顔で、2人に応え……なかった。
「……『メフィスト』と『ファウスト』が、何を行ってるのかな?キミたちは僕の生徒ではないだろう?」
狂気を孕んだ笑顔を向け、ロミオは言い放った。その眼は、理性が消えたように昏かった。
「え……?」
「センセ……?」
2人は───イーノとサーシャは、硬直した。そんな、拒絶のような否定のような回答が、『先生』から出てくると思っていなかったからだ。
「どこで知ったかは知らないけど、僕の生徒たちを騙ろうっていうなら……容赦はできないなあ!」
ロミオが腕を振り上げると、不可視の蔦が持ち上がる。
それを認識しているか、していないか……分からない。ただ、それより早く、Aceが動いた。
そこには、笑うロミオと困惑する少年達の背後で、今にも火球を放たんとしているタルラの姿があった。