平衡より来たれり   作:月侍

7 / 30
製薬会社ロドス

 

「……ロドスで、ですか」

 

「はい。働いてもらう代わりに、衣食住の提供はします。勿論、報酬もありますし、休暇もあります」

 

 そう言われて、考え込む。出来るなら、今すぐにでも2人を探しに行きたい。

 しかし、ひとつ変な可能性を思い浮かべてしまって、それが離れなくて困っているのだ。

 

 「異世界転移」……異世界、というのは少々変な話だが、そんな辺りなのでは無いのだろうか?と。

 

 理由としては、2つ。まず、僕は天災によって降ってきた塊に潰されたはずだと言うこと。幾らロドスと言えども、潰された人を例え救うことが出来ても、五体満足で居させるのは至難の業だだろう。それに、僕は生徒2人と共に都市の外にいたのだから、都市の中で発見されたというのもおかしな話だ。

 

 次に、アーミヤやケルシーの反応。自分はこれでも一応「ドクター」なのだ。あのマスクをしておらず素顔を出した状態なのだから、少なくとも、この2人は分かるはずだ。

 あの石棺から失踪した「ドクター」が目の前にいる。だと言うのに、2人は初対面の人との対面のような反応だ。

 ……いや、ケルシーは何かを怪しんでいるような反応だけどさ。

 

 

 バカバカしいと一蹴したいのは山々なのだけど、そもそも自分は『青年』の記憶を持っている、つまり異世界転生に近い状態なのだ。一蹴してしまうのは、自分の顔面に全力でラグナロクするようなものだ。

 

「それに、きちんと働いてくださるなら、サーシャさんとイーノさんを探すお手伝いをすることも出来ます」

 

 最後のひと押しは、アーミヤのその言葉だった。

 

「……わかりました。よろしくお願いします」

 

◇◇◇

 

「……という訳で。今からテストを行います」

 

 契約書に色々書いた後に、オペレーターのひとりに連れられて、また違う部屋に連れてこられた。

 なんというか、近いものの表現が上手く見つからないけど……透明な壁で仕切られた部屋があって、そのうちシュミレーションルームのような方にいる。

 

 そして何故か、壁の向こう側の部屋にケルシーがいる。とてもこちらを観察するように見ている。なんで?

 

「テストと言っても、能力測定ですから緊張しないでいいですよ」

 

 ではまずは、と言われてテストが始まった。

 

 

 物理強度や戦場機動、立案、生理耐性等々。とりあえず戦場機動が比較的悲しいことになってることは、言わずともわかってくれると思いたい。

 

 ちょっと自分でも意外だと思ったのは、物理と生理の強度はどちらもかなり高かったということだ。

 生理耐性はまあ分かっていたけど、物理耐性もそこそこあったんだ……と、謎の関心をしてしまった。

 

 

 問題は、アーツ適正の測定で起きた。

 

 

「アーツ……使えるには使えますが……」

 

「では、アーツユニットを────」

 

 そう言われるのを聞き終わる前に、僕は「アーツ」を使った。

 

 目を瞑り、自身を中心として周囲に根を張るようなイメージで、その上にある全てを吸い上げるような、そんなふうに。

 

 そして、アーツを測定するためにいた少しのオペレーターの気配を察知すれば────あとは、そこに()()()()()だけ。

 

 

 そうしていたら、耳をつんざくような警報音が鳴った。

 その音に驚き、アーツの行使を中断した。開いた目に飛び込んだのは、焦った様子でオペレーターに駆け寄る医療班だった。

 

 最初からなにやら書き留めていたオペレーターが駆け寄ってきた。

 

「な、何をやったんですか?!」

 

「えっと、だから、アーツを使っただけですが……」

 

「ただのアーツでああなる訳が無いですよ!!」

 

 指さされた方を見れば、()()()()()オペレーターが自傷行為をしようとしている。

 

「間違えた……」

 

 与える()を間違えてしまったようだ。いやまあ、ここしばらくアーツなんざ使ってなかったし……基本的に野党は来る前にサーシャが撃っちゃうから……。

 

 いや、言い訳してるバヤイではない。改めて「アーツ」を使って、ただしい()を与える。

 すると、オペレーター達は正気に戻ったのか自傷行為をやめた。

 

「……と、とりあえず測定終了です。お疲れ様でした」

 

 半ば無理矢理、部屋から押し出されて宛てがわれた部屋へと放り込まれた。

 

 

 その部屋の中に、一緒に見つかったものだとしてあの鞄が置いてあった。

 中身のチェックはされてるだろうけど、少しだけ安心した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。