魔法科高校の劣等生〜我が世界に来たれ魔術士〜   作:ラナ・テスタメント

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はい、一週間ぶりです。テスタメントです。
ようやく第十二話、話も大分前に進んでおります。
今回オリ要素入りまくりですが、一応原作沿いの筈。筈だよね?(笑)
では第十二話(前編)どうぞー。


入学編第十二話「ブランシュの影」(前編)

 

 深夜においても、この街は明るい。東京は、良くも悪くも光で溢れてる。

 それはまるで、夜を怖がるように、闇を拒むように星になって灯る。しかし、そんな東京の一角にも闇はある。……いや、光が濃ければ濃いほど小さな闇は深くなる。その闇に、ソレは居た。一見するとソレは人に見えた――形だけは。だがそれは、全てが銀色の紐で形成されている物体を人と呼べたらの話しだった。しかし、それは確かに人だった。元、では無い、人のままだ。

 巨人化(ヴァンパイアライズ)。人間種族、いや”巨人種族”が本来の能力として無限に進化成長し続ける特性を発揮した姿がソレだった。シマス・ヴァンパイアが完全物質に至り、完全不可能性の塊にして世界中心核、そしてこの世界そのものになったおかげで、もはや巨人化は無制限力では無くなり、この世界では自然発生もしなくなった。

 だが、それは完全にいなくなった事を意味しない。干渉次第では、巨人化が起こる可能性は常に在るのだ。そして、この東京の一角でソレは起こったと言うだけの事。

 巨人がその形を崩し、紐を伸ばす。紐は東京中に伸び、人をあらかた食い尽くすのは目に見えていた。そう、”彼等がいなければ”。

 伸びた紐の周囲に、魔法式が展開。七草の十八番、魔弾の射手だ。しかし、そこから放たれるのはドライアイスの弾では無かった。

 火線。灼熱の業火が、魔弾の射手より放たれ、紐の尽くを燃やし尽くす。しかし、紐は即座に再生を開始する。巨人化した人間には、この程度の攻撃は、ただの足止めにしかならない。

 

「相変わらずタフだな」

 

 そうぼやくのは七草弘一、七草家当主である。そして天世界の門においてはマンイーターのコードネームを持つ非公式構成員。彼は魔法式を次々展開し、魔弾の射手を連続で放ち続ける。巨人は彼に気付いたか、燃やされたままで紐を彼に伸ばす。しかし、弘一は紐が自身に届く前に全てを終えていた。

 魔弾の射手変成、神代古式魔法式追加、「黒竜人の鎧」、情報演算補助モード。

 魔弾の射手が巨人の周囲に五つ配置され、その全てに古式魔法式が魔術文字の補正を持って強制追加された。五行をなぞらえ、魔弾の射手を火車に見立てる。その全てから火線が伸び、中央の巨人に炸裂し――まだ終わりでは無い。

 火線は複雑な文字を描き、銃座を巡る。それは巨大な魔法陣、ひいては魔法式となった。

 

「西遊記の紅孩児、彼はこの真なる火を用いて、孫悟空一行を幾度も退けたと言う。……存分に味わっていけ」

 

 直後、物理法則上有り得ぬ現象が、魔法陣の中で引き起きた。数億、数兆度と言う火が現れたのだ。その温度は、それこそ核融合を超える。

 神代古式魔法、三味真火(さんまいしんか)。”火の概念、直接召喚”は、この世の物質全てを焼却する。一瞬のみの顕現で真火は消え、確実に巨人を燃やし尽くした――筈だった。

 だが、真火が消えた後に蠢くものがあった。巨人だ。真火の火力ですら、燃え尽き無かったのか、急速に再生していく。それを見ながら、弘一は眼鏡を指で押して整える。

 

「流石だ。全ては予測の範囲内か。クプファニッケル」

「……問う意味も、答える意味も、お前は持たない。ああ、四肢をもがれた哀れな獣、許しは得られず、諦めを得よ、臓腑をも貪る我らが貪欲に!」

 

 終わりとばかりに。そして見上げる上空ではクプファニッケル、オーフェンがまるで四肢を拘束する翼の如き構成を展開していた。一貫して妥協も許容も許さぬ意味が全く分からない記述の構成――偽典構成だ。

 「黒竜皇の鎧」、情報演算処理最大モードにて制御補助。介入最大。

 「鎧」の補助を受け、オーフェンは消去の魔王術の構成を更に絞り、限界まで窮める。それは魔法で世界を完全に作り直すも同然の作業だった。そして、突き出した手から捩れるように魔王術が解き放たれる。真上から放たれた魔王術を、焼かれ、急速再生中の巨人は躱す事も出来ず直撃した。一気に存在が縮小する。

 いや、違う。正確には二つに分かたれ、片方のみが縮小していく。やがて縮小した片方は、片足の竜の紋章となって地面に落ちる。もう片方は……人間に戻って倒れていた。

 それを確認し、ほっと胸を撫で下ろしながらオーフェンは降下すると、竜の紋章を拾い上げた。それは「牙の塔」の紋章と全く同一の形、しかしそれは巨人の特性のみを封印したものだった。

 巨人化の解消。外の世界では、完全に消去するしか無かったものだが、巨人化、魔王術双方が無制限力では無くなった事により、可能となったのが今の封印だった。紋章自体に巨人の名前が彫られている。これを破壊しない限りは巨人の力は解き放たれないが、紋章自体が巨人の力そのものである為、ほぼ破壊不可能と来ている。

 オーフェンは嘆息しながら、紋章を封印用の小さいケースに収めた。そして視線を弘一に移す。

 

「そいつの容態は?」

「気を失っているだけだ、案じる必要は無い。すぐ名倉に運ばせよう……しかし、相変わらず見事なものだな」

 

 弘一は全裸で倒れた男の脈を確認し、言ってくる。それにオーフェンは肩を竦めて苦笑した。

 

「半ば鎧のおかげだよ。より制御が出来るようになったからな。それに、娘が前に一度成功している構成だ」

「それを実用化レベルに持っていける君に感嘆しているんだが……」

「それも含めて、大した事はじゃないと言ってるんだよ俺は。俺の立場になれば、誰だって出来るようになる」

「クプファニッケル――いやオーフェン。私は君より年下だが、これは切なる忠告だ。謙遜も過ぎると厭味になって、ぶっちゃけムカつくから、やめてくれると嬉しい」

「……そこまで言うか」

「そこまで言うとも」

 

 苦笑交じりとは言え、弘一の目は真剣だった。なのでオーフェンも頷く事にする。そしてケースに収められた竜の紋章と、巨人となっていた人物を見る。

 この紋章が破られぬ限り、彼は二度と巨人化する事は無い。だが同時に彼が元の生活に戻れるかと言うと、それも無かった。巨人化の反動からか大抵は精神にも重篤な障害を被るので、そのリハビリが必要だからだ。そして巨人化を引き起こしている者についても聞かなければならない。

 どうもここ半年ばかり、週一の頻度で巨人化による事件が発生している。確実に裏で手を引いているのはスウェーデンボリーに違い無い――巨人化を引き起こせそうなのはアレしかいない――のだが、同時に彼に協力している存在が日本に居ると見るべきだった。あるいは、第一高校を襲撃した者とも関連があると見るべきか。ともあれ考えても仕方ないとオーフェンは思考を打ち切り、弘一を伴って撤収する事にした。「鎧」を解除し、あらかじめ用意していた車に乗り込む。運転席に居るのは、案の定キースだった。

 

「お疲れでございます。主、黒魔術士殿」

「……何でか、お前が運転する車に乗るとひたすら不安になるんだが……」

「はっはっは、これは異な事を。これでもかつて『夜風の銀狐』と呼ばれた事もあります。我が腕前、存分にお見せしましょうとも」

「「見せんでいい見せんでいい」」

「おいしいのに」

「何故に味」

「……君達のやり取りはたまに色々なものを超越するな。見てる分には楽しいが」

 

 うるさいよと弘一に目で答えながら、オーフェンは後部席に身を任せる。カモフラージュの意味合いも兼ねて、車は普通のファミリーカーだが、内装はそこそこ凝っているらしい。無駄に柔らかい席に苦笑し、先のやり取りが嘘のようにスムーズにキースが発車させるのを待ってから、声を掛ける。

 

「お前が来たって事は、何か掴んだって事か」

「はい……と言っても動くに足る情報はありませんでしたが」

「構わねぇよ。ちょうどコウイチも居るしな。聞かせろよ」

「では。第一高校より僅か数Km離れた所で、妙な人の流れを掴みました」

「……随分近いな」

「ええ。ある特定の者達が集会を開いているようで。その内、何名か行方不明になっております」

「ほう。特定の人物か……大体察しはつくな」

「今ので察しはつくって事は、その集会に見当はついてるって事だぜ、コウイチ。お前、調べてやがったろ?」

「否定はしないさ。何せ、娘が通ってる学校の周辺だからな。念入りに調査くらいはする」

「……これは経験論だが、あまりやり過ぎると娘からウザがられるぞ」

「実感がこもってるな。気をつけよう」

 

 あまり本気ではない口調で答え、笑う。それにオーフェンはため息を吐きつつも視線で先を促した。弘一は頷き、答えを告げる。

 

「反魔法主義者。そうだろう?」

「正解です」

「反魔法主義者、ねぇ」

 

 答えを聞き、キースは肯定をし、オーフェンは面倒臭そうな表情となった。

 反魔法主義者、もしくは反魔法勢力とも呼ばれる、魔法能力による社会差別を根絶する事を目的としている者達である。外世界で散々にそういった奴らと対決して来た経験からすると、オーフェンは彼らの言い分は真っ当であり、また真っ当ではないと言う考え方になってしまう。

 魔法を使えない者はどうやっても魔法師の心境も苦悩も理解出来ないし、魔法を使えるものは彼らを見下し嫉妬を蔑む。これは人間が人間である以上どうしようも無いものだ。それをどうにかしようとするなら、どちらかを滅ぼすしか無い。

 オーフェンの脳裏に受かんだのは、魔術学校時代のある記憶。食堂の塩の瓶が減った事で、食堂のテーブルが塩瓶があるないの島が出来、魔術士とそうでない学生で分けられてしまい、回り回って魔術士撲滅のビラまで配られる事になった一件だった。ちなみに食堂業者の人間を問い詰めた所、出た理由は「だって塩瓶は使ったら洗って日干ししなきゃならないんです」、オーフェンは笑った。笑うしかなく、その業者をクビにした。

 

「国内だけでいくつあるか知らんけど、テロ紛いの事も最近のはするのか」

「まぁ、公安に目をつけられてる組織だけでも、そこそこにはあると答えておこうか。……君達の世界でも、あったのだろう?」

「まぁな」

 

 まさかそれで世界破滅の危機やらが起こりかけてたとは言えず、肩を竦める。たまに弘一はこうして外の事を聞きたがる事があった。詳しい事を教える訳にもいかないので、大概はぐらかしてはいるのだが。それに弘一はふむとだけ頷いて、脱線した話しを戻す意味合いも兼ねて視線を前に戻した。

 

「第一高校の数Km圏内にあって、そこそこの規模の反魔法勢力と言うと、一つしかないな?」

「はい。目と鼻の先にあるが故に狙われたのでしょうな。都合が良かっただけかもしれませんが」

「で、そいつらの名前は?」

 

 オーフェンの問いに、キースは相変わらずの無表情で頷き、そして答えを告げる。

 

「反魔法国際政治団体、ブランシュ。その日本支部となりますな」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 まさかここで、とはな――そう内心呟きながら、達也は若干の居心地の悪さを覚える。それは対面の二年女子先輩にではなく、隣に座るオーフェンに対してのものだった。

 放課後に妹の深雪とさぁ帰ろうかと言うタイミングで、ある二年女子に声を掛けられ、お礼と話しをしたいからとカフェで待ち合わせをしていたのだが……そこに居たのは、その二年女子、壬生紗耶香とオーフェン・フィンランディだったのである。

 紗耶香はともかくとして、今あらゆる意味で警戒せねばならない相手と同席せねばならないと言うのは、色んな感情を無くした自分にすらストレスを覚える。だが、隣のオーフェンはと言うと素知らぬ顔でメロンソーダ(アイス入り)を呑気に飲んでいた。

 

「ゴメンね、司波くん。フィンランディ先生も、わざわざお越し頂いてありがとうございます」

 

 各自、飲み物を一口飲んで場が落ち着いたと見てか、紗耶香が謝る。それに達也は頷き、オーフェンは気にすんなと手をヒラヒラと振る。

 

「壬生先輩。なぜ、オーフェン先生が?」

「……相談したい事があったの。あ、司波くんにはお礼を、なんだけど。フィンランディ先生が、相談にも貴方を噛ませろって」

「……オーフェン先生?」

「まずは彼女の話しからだろ。サヤカ?」

「あ、はい。えっと、気を取り直して、っと。司波くん、改めてこの間はありがとうございました。貴方のおかげで大事に至らずに済みました」

 

 居住まいを正して一礼する紗耶香に、達也も頷き、当たり障りの無い返答をする――しながら、意識の大部分をオーフェンへと集中し、考えを纏めていた。何故、彼がここに居るのかと。しかし、それは結局分からないまま紗耶香のお礼と入院した時のあれこれ等の世間話しで場は進んだ。

 達也にしては珍しく焦れた辺りで、唐突にオーフェンの目がこちらを向き微苦笑して来る。

 

「タツヤ、お前サヤカが必死に話してるのに、こっちばっかり気にするなよ。気まずい顔してるだろうが」

「あ……、すみませんでした、壬生先輩」

「ううん、いいよ。ゴメンね、私の話しつまらなくて」

「いえ……」

「それよりだ。そろそろ本題に入ろうぜ、サヤカ。相談があるんだろ?」

 

 しまったと思う間も無く、オーフェンはさっさと話しを進める。しかし確かに世間話しを長々とするつもりは達也にも無い。また紗耶香も、いつ相談とやらを切り出すか迷っていたのだろう。頷き、真剣な顔となった。

 

「実は……剣道部と剣術部の事なの」

「剣道部と剣術部、ですか?」

「うん。先週の一件で皆入院しちゃったんだけど、私が退院したように皆も退院出来て。その……桐原くんも謝ってくれてね」

「はぁ」

 

 顔を少し赤く染めた紗耶香に、達也は生返事をする。まさか惚気られるとは思わなかったが。オーフェンも苦笑している。二人の反応に我に帰ったか、コホンと小さく咳ばらいをして、気を取り直すと話しを続けた。

 

「で、学校に来て、双方謝って部活を再開しようとしたんだけど……少ないの」

「少ない? それは、部員がですか?」

「うん。剣道部、剣術部ともに。もう退院してる筈なのに、学校にも来てなくて……」

「それはただの偶然では」

「偶然で、二つの部から半分も?」

 

 まさか半分もの部員がとは思っていなかったので、達也は小さく驚く。ちらりとオーフェンを見ると、彼はじっと紗耶香を見ていた。先を促すようにだ。だから、彼女も小さく頷いて続ける。

 

「でね。連絡も取れないから心配になって、家まで行ってみたの。でも、皆会いたくないって断られて。そしたら司主将が――あ、剣道部(ウチ)の主将ね。司甲(つかさきのえ)主将。彼が心配無いって言って」

「……続きを」

「うん。でも、どうしても心配だったから、私夜にもう一回、仲がいい剣道部の娘の家に行ってみたの。そしたら、司主将が居て、彼女を連れ出してて……」

「後を尾けた訳ですか」

「……うん」

 

 見失っちゃったんだけどね、と締める紗耶香に、成る程と達也は内心で頷いた。壬生紗耶香。思った以上に正義感が強いらしい。あるいは無鉄砲なだけか……ともあれ状況は分かった。その司主将とやらが、この一件に関わっているらしい。問題は、何故オーフェンがこれを自分に相談させたのかだが。

 

「サヤカ、それはここから見て、あっちの方面じゃなかったか?」

「え? は、はい。そうです。よく分かりましたね?」

「こっちでも先週の件でいろいろ調べててな。成る程、人の流れね……」

 

 学外の方向を指差し、頷いた紗耶香にオーフェンも頷き返す。やはり、先週の件で動き回っていたらしい。それを確認した達也に、オーフェンの目が移る。

 

「タツヤ。お前にこの件を聞いて貰いたかった理由だが、まずブランシュって知ってるか?」

「……反魔法国際政治団体ですね」

「その支部が、どうもあそこにあるらしいんだよ」

 

 これには、流石に達也も目を丸くする。紗耶香に至っては固まっていた。

 ブランシュは、知名度こそ高いものの、一般にはテロ紛いの組織扱いされている団体だ。それも反魔法を掲げる、である。そんな組織の支部が、こんな近辺にあろうとは。

 

「司についちゃあ、こっちでも調べはするが、場合によっては、お前の力を借りる事になりそうだと思ってな」

「俺を? 何故ですか?」

「言っていいんなら言うぞ」

 

 つまり、自分の「目」を使う可能性を考えていると言う事か。来る前に深雪に言われた事を思い出しつつ嘆息する。厄介な事になったと。だが。

 

「……今はまだ情報収集している段階ですか」

「ああ。だが、ある程度目星はついた。サヤカに感謝だな」

「い、いえ……! 私は、ただ相談をしただけですし」

「謙遜すんなって」

「もし――もし、俺が協力を拒めば、どうしますか?」

 

 二人のやり取りを聞きながら、達也はぽつりと告げる。もし、強制的に従わせるつもりなら敵対する事もある、と暗に秘めた問いであった。しかし、オーフェンはあっさりと軽く手を振って答える。

 

「そん時はそん時だよ。どうにかするさ。手間は掛かるが、アテもある」

「そうですか……分かりました」

「協力する気になったか?」

「いえ、全く。俺は俺で動きたいと思います……貴方とは、別に」

 

 まるで挑戦するような口ぶりだな、と己の台詞を鑑みて達也は苦笑をなんとか無表情に押し込める。

 火の粉が深雪や自分に降り懸かる可能性がある以上、今回の件を放置するつもりは無い。だが、彼に使われるつもりもまた無かった……いや、出来得るなら出し抜きたい。自分らしからぬ感情の発露に戸惑いながらも、達也は続ける。

 

「今回の件、貴方は幾つも隠し事を持って動いている。信用出来ません。貴方の関係者もです」

「つまりマユミ達もか」

「ええ、俺は独自に動きます」

 

 きっぱりと告げて席を立つと状況についていけずにキョトンとした紗耶香に一礼し、オーフェンへと再び視線を移す。彼は不敵な笑みを浮かべて見上げていた――やってみろと言わんばかりに。それには気付かないフリを通し、彼にも頭を下げて足早にカフェから出ていく。

 情報は二つ。今回の件に、司甲が絡んでいる事。また、ブランシュの支部がこの近辺にある事だ。より確度の高い情報を得るには、彼に協力を仰がねばなるまい。そろそろ頼んでいた件についても分かる頃合いだ。今日辺りにでも行くかと思案し、深雪と合流すべく待ち合わせ場所に向かっていく。

 そんな達也の背中を見送りつつ、オーフェンは苦笑してメロンソーダの残りを啜った。

 

「あの、あれで良かったんですか?」

「ん? タツヤの事か? ああ。あれで十分だ。あれで、あいつはこの件で本格的に動きを見せる」

「はぁ」

「何だ、不満そうだな」

「だってフィンランディ先生、わざと彼を煽ってませんでした?」

「まぁな」

 

 達也も気付いてはいただろう。かなりわざとらしかったと言う自覚はある。達也の「目」を使いたいのは確かだが、賢者会議とブランシュが接触した確たる証拠が無い限り天世界の門は動けないのだ。そして彼の「目」が証拠になるかと言うと、全くならない。あれについては自分達も検証の段階でしか無く、調べるには更なる手間と時間を必要とする。流石にそんなものはどこにも無かった。

 

「味方より敵にしといた方が、動かしやすい時もある。今回はそうだったって事さ」

「……フィンランディ先生って、よく悪人とか言われません?」

「散々言われたよ。それ以上にもな。さてサヤカ、もう一個の相談なんだが――流石に、助っ人呼んでいいか? 桐原にどう接したらいいかの相談なんざ正直分からんし」

「きゃ――! 先生、声! 声!」

「……お前の方がでけぇよ声」

 

 紗耶香の声でウンザリとしつつカフェ奢りくらいで大丈夫かなと、早速オーフェンは携帯端末で助っ人(生徒会女子)を呼び出す事にしたのだった。

 

 

(第十二話後編に続く)

 




はい、第十二話(前編)でした。弘一さん、はっちゃけ過ぎです。絶対人生楽しんでるよこの人(笑)
大人組の話しで半分使うわ、紗耶香の話しは改変されまくりだわでどこが原作沿いじゃと言われそうですが、きっと原作沿いな筈(笑)
神代古式魔法、略して神式魔法は原作にないテスタメントが勝手に作った魔法ですんで、深くツッコミは無しで(笑)
無しでよろしくお願いします(笑)
いや、よく考えたら原作最新刊まだ買ってなかったけど(汗)
魔王術による封印については、無制限力では無くなった為、より制御可能になったとお思い頂ければ。ここらは神人の現出に似てるかも。全能より一つ劣り、零知より一つ優ったと。
これは巨人化もまた該当します。
ではでは、後編もお楽しみにです。

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