魔法科高校の劣等生〜我が世界に来たれ魔術士〜   作:ラナ・テスタメント

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はい、テスタメントです。よし、なんとか日曜日に間に合った(笑)
第十二話(後編)です。
原作沿いです。ええ、しつこいようですが原作沿いですとも!(笑)
今回もバトルがねぇ(涙)
おおぅ、どうしたテスタメント……でも良く考えなくても入学編って全然バトル無かったよそういや(笑)
オーフェンがかなり悪どい後編。お楽しみにです。ではどうぞー。


入学編第十二話「ブランシュの影」(後編)

 

 紗耶香とオーフェン、二人と会話した日の夜、達也は深雪を伴って、買ったばかりの電動二輪を走らせていた。

 行き先はある寺。達也の体術の師でもある九重八雲の寺である。今回、彼の元に赴くのは修練の為――では無い。前回行った際に依頼していた件と、新たに欲しい情報を得る為だった。

 やがて、十分程の道程を経て到着する。門を潜ると大抵、門人による熱い歓迎(襲撃)があるのだが、今回はそれは無い。先に述べた通り、今回の訪問は修練では無く、またアポイントも取ってある。その為、さっさと二人は境内を抜けて庫裏へ向かった。

 八雲の庫裏には電気の明かりが全く無い。まさかこの時間から寝入っていると言う事もあるまいし、そもそも前述の通り約束は取り付けてある。なので、これは八雲の趣味なのだろう。達也は苦笑し、不安そうな表情となっていた深雪に袖を掴ませて安堵させながら、玄関に着く。このご時世にテレビホンどころか呼び鈴すらない庫裏の引き戸を開けようとした所で、声が唐突に掛けられた。

 

「達也くん、こっちだよ」

 

 気配が全く無かった縁側から。達也は慣れもあり平然としていたが、深雪が思わずびくっとしたのを掴まれた袖から感じる。

 わざわざ気配を消してまで人を化かそうとするなど、いかにも大人げないが、その辺りも含めて八雲の性格が伺えた。本音はさっさと回れ右したい気持ちを抑え、達也は深雪と共に縁側へと回っる。

 そこには月見と洒落込む坊主頭の僧侶がいた。見た目三十代。しかし実年齢は五十を超えている筈の痩躯の僧侶にして、本人曰く忍(忍者とは呼ばれたくないらしい)。そして達也の師、それが彼、九重八雲その人だった。

 

「今晩は、師匠。お月見ですか?」

「ああ。今日は月が綺麗だからね。君達を待っている間、少し昔を思い出しながら、のんびりとしていたのさ」

「昔……?」

「苦い思い出だよ」

 

 そう言って見上げる月に何を思うのか。それは達也にも分からない。そもそも忍びを自称する彼が、何故僧侶をやっているのか。過去に何があったのかを知らないのだ。また知る必要も無いと思っている。深雪も挨拶し、それに嬉しそうに頷いて自分達を眺めて来た。

 

「それにしても、月明かりに良く映えるね。君達の霊気は」

「霊気、ですか」

「ああ。君達には霊子放射光と言った方がいいか。全く対極なのに、それがより鮮明に映しだしている。その繋がりも――」

「師匠」

 

 そこから先は言わせない、とばかりに達也が遮る。それに八雲はああと頷き、済まなそうに苦笑した。

 

「済まない。禁句だったね」

「いえ。こちらこそ、師匠に対し失礼を」

「いやいや構わないさ。……さて、今日の用件は先日の依頼かな?」

「それもありますが、もう一つ追加でお願いしたい事がありまして」

「おや? 君にしては珍しいね。そこまで僕の力に頼るとは」

 

 意地の悪い顔をする八雲に、達也も申し訳なさそうな顔となる。本来、彼に頼み事をするのは筋違いなのだ。達也の”所属”を頼るのが正しいのだが、それは身内の問題で難しい。故に、達也がより確度の高い情報を得ようとするならば、彼しかいなかった。

 その辺は察してくれているのか、無言で先を八雲は促し、達也は司甲とブランシュの事をかい摘まんで説明した。

 

「今回の一件、間違いなく彼とブランシュは繋がっています。それについて調べて欲しいんです」

「ブランシュねぇ。確かに日本支部の拠点が近くにはあったけど、まさかそこまできな臭くなってるとはね。……これはひょっとして、ひょっとするかな?」

「……?」

「ああ、済まない。今のはただの独り言。さて、彼についてなら、実はもう調べてある、と言ったらどうする?」

「……驚きはしませんが、師匠? プライベートと言う言葉を一度辞書で引いてみては」

「なに、よほどの事が無い限り僕の心中に閉まっておくから大丈夫さ。で、前回の件と、彼の件、どちらから話そうか?」

「では、司甲とブランシュから先に」

 

 もう一つの依頼については話しが長くなる。そんな予感を覚え、まずはこちらから聞く事にした。八雲は頷き、そらんじるように話し始める。

 

「司甲。旧姓、鴨野甲。賀茂氏の傍系を遠い祖先に持つ普通の家庭出身だ。しかし、特殊な『目』を持っている」

「それは――」

「ああ、心配しなくていい。君の『目』には程遠いよ。クラスメイトの柴田さんと言ったかな? 彼女にすら劣るだろうね」

 

 ……どうも美月の事も調べ上げていたらしい。この分だと、第一高校に所属する全員の情報は既に掴んであると見るべきか。無表情を通そうとする達也に笑いかけ、八雲は続ける。

 

「話しを戻そう。司甲の母君は数年前に再婚してる。その連れ子、つまり義理のお兄さんがブランシュ日本支部のリーダーだ。名は司一(はじめ)。表、裏含めて仕切っているリーダーだよ」

「司一が、司甲を使って事件を起こさせたと?」

「その可能性は十分だね。だが、一つ気掛かりがある。剣道部と剣術部の部員を、司甲が連れ出している件だ。しかし、行方不明と言う訳でも無い。彼等は家に戻されている」

「……洗脳によるトロイの木馬ですか」

「だろうね」

 

 察しが良すぎる達也の台詞に、八雲が苦笑する。彼等は揃って精神支配を受けた人物達だ。退院したとは言え、精神の防壁は万全とは言い難い。なら洗脳は容易く、また学校に復帰させれば中から魔法で暴れさせられる。それは相応の混乱を生むだろう。その間に、本命を突っ込ませて来る――ありがちな作戦ではあった。

 

「本来は、もっと手間を掛けた別の作戦だったんだろうけど、何か別の要素があったんだろうね。……それこそ強攻策に出れるような、介入が」

「それは、他国からの介入でしょうか?」

「それならまだいいけどね。それ以外だった時が怖い」

「それ以外?」

「ああ。ま、それは考えても仕方ない。では次に行こう。先日頼まれた件、オーフェン・フィンランディとスクルド・フィンランディについてだ」

 

 司甲とブランシュについついての話しを終わらせ、もう一つの依頼――オーフェン達についての話しを八雲はしようとする。しかし、達也は首を傾げた。依頼はあと一人あった筈なのだが。

 

「……執事、キース・ロイヤルについては?」

「済まないが、あれは管轄外だ。調べれば調べるほど、自分が正気か分からなくなってね。いやー、SAN値がヤバいというか」

「分かります……! 師匠」

「あの、お兄様、先生? キースさんは、それ程悪い人ではありませんよ? たまにメールしていますが、よく相談に乗って頂いてます」

「……ちなみにどんな相談だ?」

「お兄様の部屋の鍵を開けるにはどうしたらよろしいでしょうか? などですが――」

「よし深雪。後で携帯端末を貸してくれ。あの執事の情報消した上で拒否登録しておくから」

「お兄様!?」

 

 いやそんな驚愕されても。どうりでセキュリティがかなり高めな自分の部屋に侵入された訳である。とりあえず、鍵は付け替えようと決心し、また深雪とキースは何が何でも引き離そうと心に決めた。

 

「脱線してしまったね。続けても?」

「はい」

「では、まずはオーフェン・フィンランディからと行こう。七草家のボディーガードに二年前に就任。妹のスクルド・フィンランディと共に、そのまま七草邸に住み込みをしている。それ以前の経歴は一切不明だ」

「……一切不明、ですか?」

「そう、白紙なんだ。もちろん表向き用の経歴はあるが、隠すつもりも無く偽造だねこれは。欧州出身の宮廷魔術士希望だったが落ちぶれてモグリの金貸しやってる最中に日本に来たとか、人を舐めてるのかと思ったくらいさ」

「はぁ」

 

 だが何故だろう、達也はそのへん半ば真相が混じってるような気がしなくも無かった。深雪も「そう言えば元借金取りとか言ってたような……?」とか呟いている。まぁ、それはどうでもいいとして。

 

「師匠、他には?」

「これ以上は、まだだね。なんせ、七草のガードが固すぎる」

「七草が情報隠蔽しているんですか? ただのボディーガードに?」

「”ただのでは無い”からだろうね。これはスクルド・フィンランディにも言えるが、一種異常な程、七草は二人の情報を徹底的に隠している。彼等が七草邸に帰った後、その足取りが全く掴めなくなる程に――ね。ただ、彼等では無く、七草にはある噂がある」

「噂?」

「天世界の門(オーロラ・サークル)。彼等と関わっている、と」

 

 すっ――と、達也が目を細める。深雪も目を丸くしたのが、後ろでも分かった。

 天世界の門。最近、近辺を騒がせている連中だ。ここ一年で、かなりの頻度で突如として現れ、周辺地域に甚大な破壊を齎した後、これまたいきなり消える。そんな連中である。目的は不明。また何故なのかの理由も、何と敵対しているのかも不明。一説には人外の者達と人知れず戦っているのだとかの噂もあるが、定かでは無い。ともあれ七草が天世界の門と関わりがあるのならば、オーフェンとスクルドとも関わりが無い筈が無い。

 

「……オーフェン先生とスクルドが、天世界の門と?」

「もし七草が本当に関わりがあるとすればね。中心人物なのは間違いない。おっと、スクルド・フィンランディについては、オーフェン・フィンランディとさほど変わりは無い情報だった。けど、天世界の門の代表は『女神』と言うらしいよ」

「『女神』……北欧神話の運命を司る女神の一人で、未来が確か」

「スクルド、だね。これはちょっと面白い符丁だと思わないかい?」

 

 ふむ、と達也は考える。これは、ひょっとするとひょっとするかも知れないと思いながら。スクルドがBS魔法師であり、入学式の騒動で砂の手を出した事は深雪から聞いていた。小キースの集団を纏めて塵にした、と。オーフェンだけでなく、彼女も天世界の門だとするならば。

 

「……師匠。師匠の事ですから、七草と天世界の門についてもある程度調べてあるのでは?」

「否定はしないよ。七草は確かに妙な動きをしている。これは十師族から離れた動きだと、僕は思うね。これが事実なら、七草は十師族を抜ける気かもしれない」

「七草が? そんな事をして、何になると」

「さて、そればっかりは分からない。七草は四葉と並ぶ十師族最有力の家だ。そこから抜けるとなったら――日本で覇権を狙うとか、かな」

 

 まさか本気では無いのだろう。八雲の口調も冗談混じりだ。しかし有り得なくも無い話しではあるのだ。魔法師は、人間兵器として力を求められている。社会進出がかなり進んでいるとは言え、一般的にはそちらが普通だ。それをどうにかしようとするならば、社会にそれこそ日常として魔法を浸透させるか――魔法の力でもって、全てを支配するしか無い。そしてリスクを考え無いのであれば、支配の方が手早く済んでしまうのである。その代償は凄まじいものとなるであろうが。

 

「ブランシュに天世界の門、十師族。いやぁ日本も大分キナ臭くなってきたものだね。これは、いよいよ本格的にマズイかもしれないよ、達也君」

「……どう言う事ですか?」

「天世界の門で、たった一つだけ分かった事がある。彼等が襲撃している相手だがね……これが相当にヤバい相手なんだ。かなりの厄ネタだよ」

「師匠がそこまで言いますか……その相手とは、一体?」

「賢者会議(ワイズメン・グループ)」

 

 ぴたり、空気が凍ったと達也は感じた。深雪も身じろぎ一つせず固まってしまう。それはそうだろう、賢者会議なぞと言う名を聞かされれば。伝説とすら言われる、その存在の名を聞けば。そして”四葉にあって禁忌”と言われた名が出たならば。

 

「気をつける事だ。達也君、深雪君。君達ですら、彼等には及ばないかもしれない」

「何故、そうだと?」

「僕は一度彼等と会った事がある……苦い記憶さ」

 

 達也達から視線を月に移す。思い出すのは、数十年前。まだ自分が現役だった頃。九重が、未だ諜報としてあり、家族や仲間、部下と共に賢者会議の情報を得ようと動いた、月夜の晩。

 音一つ無く自分達の背後に現れ、緑の視線で居竦められた、あの瞬間。そして家族が、仲間が、部下が消滅させられた一瞬だった。八雲が生き延びたのはただの偶然だった。そして帰れたのは奇跡だった。二度と彼等の前には立つまい――そう決めるには十分過ぎる苦い記憶。

 もし、オーフェンが八雲の話しを聞いたならば、その正体を断言した事だろう。

 六種ある獣王が一つ、静寂の獣、ディープ・ドラゴン=フェンリルだと。

 

「心する事だ、達也君。君は、生まれて初めて、真なる意味で君を凌駕する者と戦うかもしれない」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 次の日の朝は、普通の朝だった。日が昇る頃合いに七草の双子に稽古をつけてやり、スクルドと朝飯を取り合い、真由美と合流してキースを置いてきぼりにしつつ、学校に向かう。そんないつもの時間。

 だがオーフェンは、真由美とスクルドとキャビネットに乗り込み、開口一番で二人に告げた。

 

「恐らく、今日あたり襲撃がある」

「「は……?」」

 

 唐突過ぎるオーフェンの台詞に、二人揃って唖然とする。だが彼は構う事無く、淡々と続ける。

 

「ブランシュの件についちゃあ昨日話したな? あいつらが今日攻めて来るだろうって話しだよ」

「いや、そうじゃなくて何を根拠に!?」

「……オーフェン、前々から思ってたんだけど、色々唐突だよねー。ちゃんと分かるように説明してよ」

「前にネットワークでタツヤと同調術使った時に、”紐”つけといたんだよ。あいつの『目』を誤魔化すのに大概苦労したがな。んで、昨日ようやくあいつを動かす事が出来て、情報を出歯亀した」

「「…………」」

 

 二人はオーフェンの説明に心底嫌そうな顔をする。まぁ無理もない。真由美もスクルドも、天世界の門関連で、オーフェンとネットワークで通話したのは一度や二度では無いのだから。もしや自分達にも――と怪しむ二人に、オーフェンは半眼で告げてやる。

 

「……言っとくが、ネットワークもそれ程使える訳じゃねぇんだ。小娘を盗聴するのに使う程の余裕はどこにもねぇよ」

「むかっ……それはそれで」

「うん、なんか……ムカつくよねー」

「どないせーちゅーんじゃ」

 

 いきなりぶーたれる二人に呆れ果て、オーフェンは無視する事にした。いちいち構っていては日が暮れる。なのでとっとと続ける。

 

「タツヤ経由で得た情報では、司甲はやっぱ黒。アニキがブランシュ日本支部のリーダーなんだと。んで推測だと、剣道部と剣術部の登校拒否してる生徒を洗脳して、学校に来させて暴れさせる算段らしい。後はブランシュ本隊を学校に突っ込ませて本懐を遂げるって所か」

「本懐って?」

「そいつは知らね。締め上げて聞くしかねぇな」

「……で、何で今日なのー?」

 

 スクルドが不思議そうな顔で聞く。今の話しが本当だとして、いつ攻めて来るか分からなそうなのだが……オーフェンはふっと笑うと人差し指を立て、自慢気に言ってみせた。

 

「証拠をテーブルに並べて、知性を呼び起こし、洞察すれば自ずと――」

「「……で?」」

 

 そんなオーフェンに白けたきった白い目で真由美とスクルドは見る。オーフェンは固まり、しばらくしてから言い直した。

 

「……登校拒否生徒の自宅に電話したら、全員登校したと答えがあった」

「最初からそう言えばいいのに」

「オーフェンって、たまに見栄張りたがるよねー。おっさんみたい」

「だー、うっせうっせ! ともかく全員一斉にって所がみそだな。今日中に、やらかすつもりだろ」

 

 誤魔化しつつオーフェンは纏める。真由美とスクルドはそれ以上は何も言わずに、思考を巡らせはじめた。

 まさか今日に攻め込んで来ようとは。確かに前回の襲撃から、また第一高校を狙って来るとは思っていたのだが――こちらは全く準備が整っていない。天世界の門としてでなく、第一高校生徒会としてだ。

 出来れば風紀委員、部活連と情報を共有し、事にあたりたい。また生徒をどうするかと言う問題もある。まさか今からテロがあるからなんて言って、学校を休校させられる訳も無い。後一日あれば何とか出来たが、時間はどこまでも無かった。

 

「オーフェン、せめて昨日の内に話してくれたらよかったのに……」

「無茶言うな。こっちはタツヤから得た情報の確認を朝までやってたんだ。キースにネットワーク使わせてな。流石に不確定の情報伝えられるか」

「あ、それで若干不機嫌そうなんだ? 目の下に隈あるしー」

「……寝たかったが、寝ると遅刻確定しそうだったからな」

 

 寝不足故の機嫌の悪さを隠そうともせずに、オーフェンは嘆息する。まぁ自分の寝不足はこの際どうでもいい。問題は襲撃をどう凌ぐかだ。このままでは確実に生徒に被害が出る。

 

「せめて一箇所に生徒集められたらいいんだがなぁ」

「うーん、そんな方法あるのー?」

「あるわよ」

 

 へ? と、これはフィンランディ兄妹ともに真由美をぽかんと見つめる。それに、彼女はふふっとコケティッシュな笑いを浮かべ、ウインクしてみせた。

 

「全校集会を開くの。緊急のね」

「おい、全校集会って、お前」

「ええ。全校集会は生徒会選挙のみが基本よ。でもね、何事も例外はあるの。今回はそうだって話しよ」

「とは言ってもだな。理由はいるだろ?」

「それは簡単よ。オーフェンが言った通り」

「……おい」

 

 真由美のその一言で、彼女が何をしようとしているのかを察する。しかし、彼女は悪びれるつもりも無く続けた。

 

「前回の体育館での事件。あれの説明と、ブランシュが攻め込もうとしてると言うのをそのまま使うのよ」

「情報の出所についちゃどうする?」

「七草(ウチ)からって事にしましょう。これなら、学校も黙らせられるわ」

「マユミが、家の力使おうとするのって珍しいねー……」

「あら? すーちゃん、私は使えるものは使うわよ? ただ必要でない時に使いたくないだけ」

 

 あっさりと答えるが、それは真由美自身、家の名を出す必要に迫られていると言う事を意味する。使わなければ、最悪生徒から死人が出ると。オーフェンはそれを理解した上で、真由美に頷いた。

 

「……頼む」

「うん。で、トロイの木馬ならぬトロイの生徒はこっちに任せて。オーフェンは――」

「ああ。攻めて来るブランシュ共を叩き潰す。……多分、『変化』させられてるだろうしな」

「それは、巨人?」

「正確にはクリーチャーだろ。ここ最近出た奴は実験だったと考えるならな」

 

 ここ半年で出現した巨人達。これはブランシュの仕業だと、半ばオーフェンは確信していた。よく考えればスウェーデンボリーの関与を最低限にして、巨人を生み出す方法はあったのだ。ブランシュがバルトアンデルスの剣を手に入れたのならば、『変化』で事は済んでしまう。キースのネットワークもこれを認めていた。

 

「『変化』された奴らが出たら、ブランシュが賢者会議と関与した証拠になる。一気にブランシュの日本支部まで叩けるってもんだ」

「一石二鳥って訳ね。……うん、この作戦で行きましょう。詳しい話しは、摩利やみんなと合流してからだけど――スーちゃん」

「うん」

 

 真由美に促され、スクルドがすっと立ち上がる。そしてゆっくりと手を伸ばして、戦いの女神の如く睥睨した。告げる――。

 

「天世界の門、代表スクルドの名に於いて命じます。賢者会議の介入に対し、全力で対処します。我々の機能を果たしなさい! 賢者会議に対し、私達がなにをするのか。ただ一つ、”容赦なし”よ!」

 

 ――宣戦を。

 これより天世界の門は第一高校生徒会、風紀委員としてブランシュの襲撃に対し、迎撃を開始する。

 

 

(第十三話に続く)

 




はい、第十二話(後編)です。オーフェン、達也を盗聴するの巻。犯罪や(笑)
しかしよく考えなくても、あの兄妹のダダ甘な生活を聞いてた訳で――よく大丈夫だったなオーフェンと(笑)
普通なら砂糖吐いて死んでますええ(笑)
八雲師匠については、サブエピソード扱いでディープ・ドラゴンの始祖魔法士、レンハスニーヌに追っかけ回された過去があったり(笑)
仲間や家族が視線一発で消し飛ばされる中、なんとか逃げ出すて言う凄まじい状況でした。うん、そりゃ隠居するよと(笑)
また四葉もアンタッチャブル編で大漢の絶望になった通り、賢者会議に一度接触してます。まぁ、その結果はあれの名を出すなってくらいなのでお察しですが(笑)

さて、次回の題名は決まっております。入学編第十三話「魔法科高校の攻防」。ここからノンストップのバトル連続となりますので、こうお楽しみに。ではではー。

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