魔法科高校の劣等生〜我が世界に来たれ魔術士〜   作:ラナ・テスタメント

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はい、どうもテスタメントです。どうした俺……と言わんばかりに更新です(笑)
今回、ようやくブランシュ襲撃。オーフェンも本領発揮です。ようやくバトル書けるぞー!(笑)
では、どぞー。


入学編第十三話「魔法科高校の攻防」(前編)

 

「――以上が、今回のあらましとなります」

 

 第一高校生徒会室下にある風紀委員室で、市原鈴音が纏めるように言う。それを聞いて、部屋にいる者達、生徒会、風紀委員、並びに部活連からは会頭が顔をしかめるのを、オーフェンは見る。キャビネットのやり取りからすぐに彼等に集合をかけ、今回の事態とそれに対する作戦を鈴音から説明して貰ったのである。

 彼等の反応は一部を除いて同じだ。苦虫を噛み潰したような表情をしている。まさか、この第一高校に堂々とテロを行おうとするものがいるとは。

 同時に、また納得もしていた。例の体育館の一件が誰の仕業かようやく分かったのである。今回の件を凌げば、ブランシュの日本での活動は潰せる筈だ。と、そこで手が上がる。部活連会頭の十文字克人だ。

 

「質問がある。いいだろうか?」

「どうぞ、十文字君」

「この情報の出所は、どこからだろうか? 俺も調査はしていたのだが」

「それについては、私から。七草(ウチ)からの情報となります。お父様が前回の事件から独自に調べ、得た情報です」

 

 鈴音に代わり、真由美が答える。しかし克人の視線は彼女を向いていなかった。明らかにオーフェンへと視線は固定されている。それには苦笑してやりながら、オーフェンは克人の内心を図る。

 おそらく、してやられたと考えているだろう。今回、克人は十文字家として動いていた。天世界の門を介入させない為にだ。しかし事ここに至って、ブランシュの襲撃があると言う。これで賢者会議と接触したと言う証拠が出るのはまず確定だ。そうなれば天世界の門は容赦なく介入する。克人は結局、自分達を出し抜け無かったと言う事だ……ただ。

 

(……何考えてやがる? タツヤ)

 

 司波達也。昨晩、オーフェンに情報を奪われた筈の彼は、いつものような無表情のままだった。目には驚愕も怒りも、何も感じられ無い。元々確かに感情は薄かったが、これは異常だった。まるで、ここまでの流れが読めていたようにも見える。

 まさかなと思い、視線を戻すと克人が着席している所だった。そして幾人かの挙手と質問が上がる。「具体的な襲撃の時間は?」「位置取りは?」「取り押さえるべき生徒は?」等だ。

 それに逐次答えていくと、勢いよく上げられる手があった。一年A組、森崎駿である。彼もまたギロっとこちらを睨んで立ち上がる。

 

 

「今回の襲撃で、本隊を迎撃するのは、そこのフィンランディ講師だけと聞きましたが」

「特別講師な。俺はモグリだぞ」

「そんな事はどうでもいいんです! 何故、一人で迎撃させるんですか!? それも二科の講師なんかに――」

「答えは簡単だよ、シュン。そっちのが手っ取り早いからさ。お前らはむしろ邪魔だ」

「邪魔、って……!」

「一人の方が気兼ねなく火力を出せる。それにこう言っちゃなんだが、お前らは本来”守られる側”の生徒なんだ。教師が対応するのが、当たり前なんだよ」

 

 今回の襲撃で他の教師達は事務室と実験棟、図書館のガードに集中して貰っている。これは事務室には数多くの貴重品がある事、実験棟と図書館には重要な魔法装置、試料、文献がある為だ。まぁ巨人となって襲い来るであろうブランシュの連中と戦わせたく無いのが本音なのだが。

 ともあれ理由付けとしてはかなり無理があるのは分かっているものの、それが可能な実力があるのは散々に見せて来た。だからこそ誰も何も言わないのだが、そこは一年生である森崎に分かる訳も無い。悔しそうに歯噛みする森崎に笑ってやりながら手を振る。

 

「心配してくれるのはありがたいが、ただのチンピラ崩れにやられる程間抜けでもねぇさ。お前達は洗脳されてる奴らに専念しろ。いいな?」

「……分かりました」

 

 いかにも不承不承と言ったていで着席する森崎に、若いなと苦笑しながらオーフェンは視線を移す。挙手している者は他にいないかと。それはすぐに見つかった。森崎の隣に、妹と共に座っていた達也だ。彼は一度だけこちらを見ると、鈴音に促され立ち上がる。

 

「質問では無く、提案を一つ行いたいのですが……よろしいでしょうか」

「構いません。どうぞ」

「では。我々風紀委員だけで無く、一部の信頼がおける生徒にもCADの所持を許可出来ないでしょうか」

「それは――この場にいる者だけでは、心許ないと?」

「いえ。洗脳されているとおぼしき剣道、剣術部員は精々二十人程度。問題は無いと俺も思います……が」

「それは不測の事態が起きなければ、と?」

「そう言う事です」

 

 鈴音がちらりとこちらを見たのを確認し、ふむと考える。正直、ブランシュに事前に悟られたくないので一般の生徒にCADを持ち込ませたくは無い。が、確かに不測の事態が起きないとは限らないのだ。もしこちら側で何かあった場合、生徒達に犠牲が出る。それは最悪だった。なら達也が言う通りに風紀委員から推薦と言う形でCADを持たせ、援護を頼むのは悪く無い。オーフェンはそう結論し、鈴音や真由美、摩利に頷いて見せる。それを見て三人もまた頷き合い、達也に向き直った。

 

「いいでしょう。CAD持ち込みの許可はこちらで取ります。各風紀委員は、それぞれ二、三人見繕っておくように、お願いします。司波君、これでよろしいですか」

「はい。ありがとうございます」

 

 達也もまた一礼し、着席する。オーフェンはその姿になんとなしに嫌な予感を覚えつつも、まさか聞ける筈も無い。そしてブリーフィングは終了となる。

 全校集会の予定は、ブランシュに時間を与えない意味も込めて、始業からすぐ。緊急の案件で行う事となった。

 ブリーフィング終了と同時に解散し、それぞれ持ち場へと散る。その中で達也は立ち上がると、深雪を伴ってオーフェン達に気取られぬように、ごく自然に歩をある人物へと向けた。彼が風紀委員室から出た所で捕まえる。

 

「十文字会頭。少しよろしいですか?」

「……司波兄妹か。構わない。どうした?」

 

 克人を振り向かせ、達也はちらりともう一度風紀委員室を「観る」。オーフェンや真由美、摩利達は打ち合わせをやっているようだった。今しか無い、”紐はもう切ってある”。

 

(後は彼を説得出来るかだな)

「十文字会頭。オーフェン先生――いや、天世界の門を出し抜きたくはありませんか?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 一時限目のチャイムが鳴る。それは各教室で授業が開始される音だが、今回はそれを意味しない。

 一時限目より全校集会。それも内容は、前回の体育館襲撃についてのものだった。内容と、犯人が特定出来たと。司甲がブランシュと連絡を取り合っているとするなら、一網打尽に出来るチャンスを向こうも使おうとする筈。こう読んだオーフェンだが、その読みが見事的中した証拠が迫り来るのを見ていた。

 偽装しているつもりか配達用のトラックが三台、猛スピードで校門を突っ切り、こちらへと来ている。本来なら警備部が出入りのチェックをするのだが、今回に限り彼等には外れて貰っていた。なので、容赦無く三台のトラックは突っ込んで来る。

 

「俺を轢き殺して、そのまま事務室、実験棟、図書館に突入するつもりか。まぁ何と言うか……」

 

 苦笑し、片手を上げる。突っ込んで来る三台のトラックを纏めて停止させる為に、最大規模の光熱波でもぶち込んでやろうかとした所で、唐突に横に気配を感じた。すると何故かそこには、スプーンのような三又に分かれた穂先の槍を構えるキースが居た。

 

「おい」

「やや、これは黒魔術士殿……どうかなされましたかな?」

「今まさに俺に向かって槍を投げようとしてる癖に、いい度胸してやがるとは思わんでも無いぞ。で? 何を食らいたい? 物質崩壊か、意味消失か、はたまた使う機会がまるで無い波動停滞を使ってもいいぞ」

「おや、そのような危険な魔術を使わずとも、あれらを消し飛ばすなぞ余裕でございましょう?」

「お前にブチかますつもりなんだが……」

「そんな黒魔術士殿。照れずともようございますよ?」

「いつ照れたいつ!?」

「まぁ、それは置いておきましょう。しかし黒魔術士殿。いきなり魔術を使ってトラック消し飛ばそうとするなぞ、良くありません。まずは説得をするべきかと」

 

 いけしゃあしゃあと話題を変え、”中庭”に到達したトラックを見ながらキースは告げる。それにうんざりとしながら、オーフェンは答えた。

 

「そりゃ話し合いで済むならそれに越した事はないがな。無理だろ、あれ」

「そのように諦めて暴力に訴えるからいけないのです黒魔術士殿! 時代は平和主義! 平和的に解決するのが世界的流行なのです! そのような事だから日夜チンピラだのヤクザだの人生裏街道まっしぐらだの言われるのです!」

「……お前を今から消し去る方が、俺にとって何より平和な気はずっとしてるぞ。二十年以上前から」

「ともあれ、暴力はいけません黒魔術士殿」

「否定しないんかい」

 

 中庭を抜ければ、もうトラックは目前だった。スピードを落とす気配は全く無い。そんなトラックを前に、キースはうんうんと頷き――。

 

「暴力はいけません暴力は……それ以外でいきましょう」

 

 ――次の瞬間、トラックが真下から爆発し、盛大に宙を舞った。面白いくらいにくるくる回り、中庭に落下する。それを最後まで見届けて、オーフェンはやけに爽やかな顔のキースにツッコミを入れた。

 

「地雷はいーのか地雷は」

「正確には超爆裂最終トラップ地雷ですな。いや、前回タツヤ殿達に使わず置いておいた甲斐があったと言うものです」

 

 ちなみにキースが言う前回とは、中庭で起きた騒動、モブ崎誕生の時の話しである。まさかまさかでそんなトラップが役立つ事があろうとは、とオーフェンは頭を抱えそうになるのを何とか堪える。どうせ、あの地雷では誰も死んではいないのだろうし、早急に迎撃が必要だった。案の定、トラックから異形が這い出て来ている。

 

「敵の勢いが削げた事は確かか。それについちゃあ感謝してやる」

「お礼は来月の黒魔術士殿の給料で――」

 

 そこまで聞いて、側頭部に拳を叩き込んではっ倒す。そして改めて異形、ブランシュが作り出した巨人達に向き直ると片手を突き出した。

 編み上げる構成は、最も使い慣れた単純なもの、しかし最も強大なもの、言葉より速やかに滑り出て来るもの、則ち。

 

「我は放つ光の白刃!」

 

 直後、光熱の刃が文字通り巨人達を撫で切るように打ち倒す。そして戦いは始まった。

 

 

 

 

「我は放つ、光の白刃!」

 

 駆けながら、二発目の光熱波を叩き込む。現れた巨人は、相変わらず均一性が無い。巨人は元々予測不可能な現象なので、これには驚かない。むしろそこそこまともだなと思ったくらいである。光熱波は、半人半蛇のような巨人を打ち倒す。だが大したダメージも無いのか、倒れたままうねる。ちょっとトラウマになりそうなグロさだが、オーフェンは構わない。両脇から爪を伸ばして来た巨人と、角を放つ巨人を躱し、倒れた半人半蛇に肉薄。顔を蹴り飛ばし、仰向けに転がして鳩尾に靴底を叩き込む。そして開いた口に指先を向けた。

 

「我導くは死呼ぶ椋鳥」

 

 ぶぁっと指先から破壊振動波が放たれ、開いた口から直撃を受けた半人半蛇がびくっと体を震わせてぐったりとなった。脳震盪だ――殺そうと思えば出来るが、あいにく精神支配の被害者である可能性がある以上、簡単には殺せない。これは他の巨人も同様だった。一体目を無力化しながらオーフェンは止まらない。次の構成を解き放つ。

 

「我掲げるは降魔の剣――」

 

 呟く言葉は呪文となり、右手に不可視の剣が握られた感覚が来る。超磁場で形成された刃を作る構成だ。オーフェンはそれを形成するなり、振り向き様に後方へと振り下ろす。そこには先程の爪と角の巨人が自らの獲物を放って来る所だった。だが不可視の刃が、それを撫で斬りにする。死角からの攻撃に対応された上に、それぞれの武器を失って狼狽する。その隙を逃さずにオーフェンは肉薄すると、まず爪の巨人のくるぶしを鉄骨入りブーツで叩き折る。悲鳴を上げて倒れるそれは置いておいて、今度は殴り掛かって来る角の巨人に向き直り、カウンターで拳を放つ。もちろん巨人化した人間にはこんなものは効かない。だが、機を逸らす事は出来た。驚き、角の巨人が後ろに下がる――のを見計らって次の構成を放つ。

 

(魔術士相手に下がってどうする)

「我は呼ぶ破裂の姉妹!」

 

 衝撃波が叫ぶオーフェンを中心に撒き散らされる。それは後ろに下がった角の巨人と倒れてもがく爪の巨人へと、したたかに打ちつけた。これで三体無力化――だが、オーフェンは止まる事無くすぐに構成を編み上げる。

 空間に差し延べられた彼の感覚は、真後ろから飛び掛かる数体の巨人を認識していた。刹那にも満たない時間で編まれた構成は、意識せず、しかしどこまでも意識して制御されていた。

 

「我は踊る天の楼閣」

 

 ふっ――と、オーフェンは架空の光速に飛び込み、即座に現実に復帰する。擬似空間転移した先は、真後ろに2メートル程。そこに五体だったか、巨人が互いに衝突し合い混乱しているのが見えた。余裕すら見せながら構成は編まれ、放たれる。

 

「我は見る混沌の姫!」

 

 五体の巨人を重力の渦が、それこそ姫の腕に抱かれるように包み込む。本来ならこれで叩き潰す所だが、あえて加減をしてある。その代わり構成を絞り、変化させてあった。オーフェンが手を右に移動させると、同期するように重力渦も移動する。座標変更の制御を構成の中に先んじて仕組んであったのだ。まるでハンマーのようにオーフェンは振り回し、別のトラックから飛んで(比喩では無い)来た巨人二体を巻き込む。さらに倒れていた半人半蛇と、爪、角の巨人を拾い、倒した巨人を纏めて小山のようにすると、重力渦を解除し、即座に構成を展開する。それは、封印用の構成だった。

 

「我誘うは、贖罪の眠り!」

 

 空間に皹が入ったような音と共に、纏められた巨人が凍りつく。封印用のこの構成ならば、一部例外を除けば(誰とは言うまい)、長時間停止させられる筈であった。

 襲撃開始から僅か数秒足らず、それだけでオーフェンは十体もの巨人の拘束に成功していた。他のトラックから出た巨人――こちらに来た奴らに任せて、別の場所を襲おうとしたのだろう――も、固まったようにこちらを見ていた。まさか、この短時間にこれだけやられるとは思っていなかったに違いない……だが。

 

(一つのトラックに十五って所か。思ったより多いな……いつも見込みが甘いんだ、俺は)

「先に言っておく。お前らが他に行こうとしたなら、俺は軽々と背後を取れるぞ」

 

 巨人達は、もはや全員が足を止めている。中にはこちらの世界の銃火器やCADを装備しているものまでいた。先の十体を倒したのは奇襲込み。ここからが本番だなと、オーフェンは覚悟を決める。

 

「来いよ、巨人。相手になってやる――」

 

 直後、弾かれたように巨人達が殺到する。機関銃や、サイオンの光もここから見えた。それら全てに対し、オーフェンは迎え撃つ為の構成を解き放った。

 魔法科第一高校にて、ブランシュとの抗争開始。オーフェンは巨人との戦いに飛び込む。だが、彼もまた知らなかった。全校集会をやっている講堂で何が起きているのかを。そして、達也と克人が自分を今まさに出し抜く算段をつけていた事など、まだ知らなかったのだった。

 

 

(第十三話中編に続く)

 




オーフェン無双(笑)
いやもう前編はこれしか言えませぬ(笑)
まぁ外世界の巨人に比べると制御されてる分、こちらの巨人の方が強度は下ですので、火器やら魔法使われない限り、オーフェンが負ける筈もありません。
あ、あとキースがやらかしました(笑)
超爆裂最終トラップ地雷を覚えてる方は何人いたことでしょう……(笑)
さて、次回はさすおにの時間帯、全校集会中の講堂の話しとなります。
お楽しみに。ではではー。

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