魔法科高校の劣等生〜我が世界に来たれ魔術士〜   作:ラナ・テスタメント

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はい、どもーテスタメントです。半年待たせたのに感想ありがとうございます……!
まだちょっと返信できてませんが、次書く前には必ず(汗)
では、オリエンテーション編④。お楽しみ下さい。
ではどぞー。


オリエンテーション編「そんなに地獄を見せたいんだな……!?(By司波達也)」④

 

『――と、深雪さんから要求がありました。よろしいでしょうか、オーフェン師』

 

 そう来たか……市原鈴音からネットワークで知らされた内容にオーフェンは苦笑する。それはつい先程、第一チェックポイントに到着した司波深雪から、ある事をしたいとお願いがあったと言うものだ。深雪から、との事だが十中八九、達也の考えだろう。こう、重箱の隅をつつくようないやらしい策略である。無論、オーフェンもそれを考えていなかった訳では無いが。

 

(考えついても実行に移すかね、普通)

『オーフェン師?』

『ああ、すまん。認めると伝えてくれ。ただし、条件付きでな』

 

 苦笑しながら条件を言い、鈴音の『承知しました』の返答を聞いて、オーフェンはネットワークを切る。そして肩を竦めた。

 

「リンちゃんから?」

「ああ。ミユキからある要求があったんだと」

 

 第3チェックポイントで隣に座る――先程、一緒に転移して来た――真由美に頷く。ついさっきまでぎゃあぎゃあやり合ってはいたが、流石に疲れたらしい。真由美は息を長く吐いて落ち着きを取り戻していた。そんな彼女に苦笑しながらオーフェンはまだ誰も来ていないチェックポイントの名簿部分に追記を入れる。それを身体をくっつけるようにして覗いた真由美が目を丸くした。

 

「……これ、本当に深雪さんから?」

「と、本人は言ってるがな」

 

 言外に答えた内容に、あ、やっぱり? と彼女は小首を傾げる。こう言う仕種を思春期の異性が見ると、ついときめきそうだが、もはや娘を三人持つ五十路前(外見二十代)のオーフェンは全く動じない。暑苦しそうにしっしっと追い払う彼に、ちょっと不満そうにしながらも、真由美は離れた。

 

「……なんて言うか、リアクション薄いわよね、オーフェンって」

「娘より年下にくっつかれてもな。例えば、小学生の男にくっつかれて、お前ドキっとするか?」

「……しないけど」

「それと同じだ同じ。俺からすれば子供にくっつかれてるのと変わらんよ」

 

 子供扱いされてむくれる真由美にオーフェンはそれ以上構わず名簿に目を落とす――フリをしながら、ちょっとだけ頭を悩ませた。真由美も流石に年頃だ。なのにこう言った挑発がいかに男にとって理性的な意味でダメージを与えるか分かっていない。相手が自分だから如何様にもいなせるが、これが他の奴となるとエライ事になるのは必死であった。ラッツベイン、エッジ、ラチェットの娘達のそう言った部分の教育は妻に丸投げだったので、いざ真由美にそれを伝えようにもどうしたものか分からない。

 

(いっそ挑発に乗ったフリをして怖がらせるかね――いや、やめとこう)

 

 ちょっと想像して絶対ロクな事にならないと確信し、オーフェンは首を振る。もしそんな事をしたら即座に弘一が現れて既成事実を押し付けられ、さらにスクルドにロリコン扱いされるのが目に見えていた。無論、次の日にはキースが学校どころか魔法協会にまで号外を配っているところまで明確にイメージ出来る。

 

「ままならんもんだなぁ」

「……何の事?」

「いや妻の力は偉大だとな」

 

 帰ったら何かプレゼントしよう。そう決め、とりあえず化粧水の瓶に水入れて贈るのは今度で最後にしようと頷くオーフェンに、真由美は不思議そうな顔となるのであった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 司波深雪の微笑みに見とれながら、森崎駿は思う。ああ、いつ見ても司波さんは見目麗しいと。

 彼女は全てが完璧な少女だった。学業、運動能力、魔法力、そして容姿、性格。ありとあらゆる全てが最高の存在、第一高校において、一科の象徴とも言える。そんな少女に憧れと共に淡い恋心を抱く事を誰が止められようか。

 ああ、いつか彼女と恋仲になりたい。この完璧な少女とお付き合いしたい――と。無論、それが叶う可能性は無量大数分の一とか何億乗分の一の確率とか、まぁぶっちゃけ現実見ろよ? と言われるものではあったが、想いを抱くのは勝手だ。

 そして、そんな彼女の微笑に言われるまま従い、機材に手を置く。これは基礎単一系魔法の魔法式を、どれだけ速くコンパイルして発動するか、と言う課題だ。深雪と並んでそれを行える事に感激しつつ、発動する。ぴっ――と、速度が表示された。

 

 森崎駿:350ms。

 司波深雪:210ms。

 

 負けた――それも圧倒的に。だが、それは仕方ないと森崎は頷く。何せ、彼女は完璧だからだ。司波深雪に負けるのは恥でも何でも無い。至極当然の事。そう、自分を納得させ――。

 

「て、待てぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――!?」

 

 ようやく、森崎はツッコミを入れた。その先には達也が居る。彼は戻って来た妹の髪を撫で、褒めちぎっている所だった。

 

「よく頑張ったね、深雪。流石だ」

「そんなお兄様……! 深雪は、お兄様の考え通りに動いただけです。むしろ、お兄様の方こそ――」

「待て待て待て待て! 司波、お前……!」

「はい? 何でしょう、森崎君」

「いや、あの司波さんじゃなくてですね。司波に言いたい事が」

「私も司波ですよ?」

「いや、あの……なら深雪さ」

 

 次の瞬間、深雪から絶対零度の視線が森崎に突き刺さる。その目は明確にこう伝えていた――「馴れ馴れしく名前で呼ばないで頂けますか?」と。

 固まってしまった森崎から視線を外し、達也は深雪の戦利品を受け取った。

 水、2リットルのペットボトル×18本である。”三班分”のこれは流石に重量がある為、自分、レオ、幹比古でそれぞれ分け、ザックに積み込んだ。

 

「いやぁ、流石ね深雪。私達の分もありがと」

「ううん、次の課題は貴女に頼む事になるかもしれないから。おあいこよ、エリカ」

 

 にっこり笑う千葉エリカに、微笑んで頷く深雪。そして周りに集まる柴田美月、光井ほのか、北山雫、スクルド・フィンランディに、達也は苦笑する。

 ともあれ、これでチェックポイントはオッケーだ。戦利品も手に入れた事だし、執事が来ない内にさっさと行かんとした所で、森崎が復活した。

 

「いや、ちょっと待て司――ええと」

「すまないな、妹が。で、何だ森崎」

 

 同情めいた思いで達也が苦笑しながら答える。それにやっと調子を取り戻したか、森崎が睨んで来た。

 

「何だじゃないだろ! お前が何で戦利品得てるんだよ! それにお前達も!」

「お前お前って女の子に言う? アンタデリカシー無いって言われるでしょ?」

「う、うるさいな! それよりどうして――」

「彼女達の班とは協力体制を結んだんだよ」

「――は?」

 

 言葉の途中であっさり回答を言われ、間が抜けた顔となる森崎。無理も無いなと苦笑して達也は繰り返した。

 

「深雪達の班とエリカ達の班、そして俺達で所謂同盟を結んだ。で、今回だと深雪に課題をやって貰って三班分得たと言う訳だ」

「だって、お前、そんなの――」

「許可は得たさ」

 

 呆然とした森崎――今気付いたが、彼と同じ班の男子二人も――チェックポイントに座る鈴音に目を向ける。彼女は相変わらずの無表情で頷いた。

 

「問題ありません。オーフェン師が条件付きの許可を出しましたので」

「条件って……?」

「三班で協力するなら課題は三班分行う事。また全ての課題を終わるまで三班全員はチェックポイント通過は認めません」

 

 つまり、達也たちは協力体制である限りチェックポイントで三倍の時間を取られる事となる。だが、協力するメリットは計りしれない。つまり、各自が苦手とする分野ではそれぞれにお任せする事が出来るのだ。唖然とする森崎に達也は言ってやる。

 

「オーフェン先生は確かに三人で一班を作れ、とは言ったが、班同士で協力してはならないとは言っていなかったからな」

 

 確かに、オーフェンの言いようでは班同士の競い合いを助長する話し方だった。課題の報酬であるキャンプ用品が半分ずつしか用意されておらず、早い者勝ちとまで言っている。だが、逆を言えばそれまでしか言っていないのだ。

 今回のルールの正解は、一科、二科、クラスの枠に囚われず各得意な分野の班員を集める事である。

 そしてもう一つの正解がこれであった。もちろん考えつく人間は相当捻くれた人間であろうが。

 

(オーフェン先生がこれを考えつかなかった訳がない。わざとだろうな)

 

 やはり彼も相当屈折した変人と言う事だ。達也は苦笑していると、それを嘲りと受け取ったか、森崎はぎりっと歯軋りをしてこちらを睨み付けた。もちろん、彼の班員二人もだ。くそっと舌打ちすると、森崎は指を突き付けながら吠える。

 

「卑怯な手を使いやがって……!」

「魔法師にとってそれは褒め言葉だぞ、森崎」

「うるさい! 次だ、次は必ずお前が出ろ! 叩きのめしてやる……!」

 

 そう吠えると踵を返して走り出した。自分と勝負するつもりなら、どっちにしろ次のチェックポイントで待たなければならないのだが。

 

「負け犬の遠吠えね」

「いやー、でもこれはモブ崎の気持ちも分かるよー、こんなの考えつくのタツヤだけだって」

「さらりとモブ崎って呼んだなスクルド」

「えっ、モブ崎じゃないの?」

「……森崎な、森崎。泣くからちゃんと覚えるように」

 

 自分もちょっと間違いそうになるのを棚に上げて達也は言う。そしてスクルドがうむむと首を傾げたのを尻目に皆を見渡し、頷いた。

 

「次でモブ崎も待ってるらしいし、あの執事がいつ来るかも分からないしな。そろそろ行こうか」

「達也、モブ崎言ってる言ってる」

「おっと」

 

 いかん、これ語呂が良すぎるなと再び苦笑し、ようやく出発する。ちょっと時間を食った為、現在順位は中の中といった所か。これからは森も険しくなるだろうし、訳の分からん場所もある。何より、次のチェックポイントで森崎に負ける訳にはいかない。そう気を引き締め、達也たちは進む足を速めたのだった。

 

 ――なお、次のチェックポイントの課題は。

 

「は、はい。司波くん、魔法工学、魔法理論の小論文三班分、合格です。その、森崎くんは……」

「ぐ、ぐぬぬ!」

 

 達也の得意分野だった模様であったとさ。

 

 

(オリエンテーション編⑤に続く)

 




はい、達也卑怯だ……!
卑怯だが、くそぅな回(笑)
目立たず、しかししっかり戦利品は全部頂く気満々です。ああ、そういやモブ崎の班は水と次のキャンプ用品も得られない訳ですが……彼等の明日はどっちだ。もかもか室か(笑)
ではオリエンテーション編⑤をお楽しみにです。次で、ようやくオリエンテーションまで終わってキャンプ行けるかな?
ではではー。

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