「っ…千冬、ここだとちょっとやめて欲しいな…寒いしさ…」
禁煙してた人に良く有るのが…一度吸うと吸ってた頃の感覚にあっと言う間に戻る、と言う事で有る…おまけに戻った直後、無性に吸いたくなると言う…
つまりやめた期間、と言うより…吸えなかった期間としての認識になってしまうと言う…この違いは本当に大きい…
自分の意識ではやめていた筈なのに、肉体は吸っていなかっただけ…しかも期間が空いたからとにかく吸いたい、となるとか…もちろんこれは依存する程吸ってからやめた人の例…嗜み程度で吸ってた人は問題無いとか…そもそも、期間が空くと吸えなくなってるパターンも有るしね…誰しも咳き込みながら吸い続けたいとは中々思わない訳だし…
…で、前置きが長くなったけど千冬の話…
千冬の場合は、学生時代普通にヘビースモーカー気味だった…それで、今回吸った結果…完全に当時の状態に戻ってしまった様で…今回私が持って来たタバコ…残ってた分を何と全部吸われてしまった…さすがに注意したけど、はぐらかすだけで全然聞いてくれないし…ちなみに、今吸ってるのが最後の一本…
とは言え、吸うだけならシチュエーションやタイミングさえ間違えなければ問題は無い。今は私も喫煙者だし、この場合どうなろうと千冬の自己責任と言える…最も千冬の場合はなぁ…タバコを吸っていると目眩を起こしたり頭痛になったり、更には吐き気がしたりなどの俗に言うヤニクラと言う症状が有る…言ってしまうと、タバコは気持ち悪くなる事は有っても基本的にアルコールの様な快楽を伴うタイプの酩酊状態を起こす事は先ず無い…
その筈なんだけど…私の知る限りタバコ吸ってた頃の千冬って妙に普段の硬さが抜けると言うか、少なくとも執拗に私には絡んで来てたんだよね…散々注意してる私をまるで挑発するみたいにね…
そして今…あの頃の状況が再現されてる…当時は単にじゃれて来るだけだし(いや、私はドキドキしてたけどさ…)問題は無かったんだけど…今は普通にセクハラされてる状況な訳で…
「いや、だから!ここだと見られるかも知れないでしょ!?」
「良いじゃないか、見せ付けてやろう。」
だから、何でタバコ吸うとこう悪ノリするかな!?正直学生時代、千冬がお酒飲んで酔っ払った時より酷いんだけど!?
「!…コラ!シャツのボタンを外そうとするな!てか、そもそも脱がそうとするな!!」
これなら寧ろ中に戻るべきだろうと思う…が、千冬の吸ってる最後の一本が中々吸い終わらない…どうも吸い方も思い出したらしい…その癖、渡した携帯灰皿を全然使おうとしないから灰落とすんじゃないかとヒヤヒヤしてる…
「騒ぐと余計に注目されるぞ?」
「誰のせいだと…!」
これでもだいぶ声のボリュームは抑えてる…でも、そろそろ私の我慢が限界…
「ふぅ…取り敢えず吸うなら早く吸っちゃって…で、中に戻ろう?ちょっと冷えて来たしさ…」
「お前は昔から体温が低めだからな…」
「まぁね…」
実際そうなんだけど、別に私寒がりって訳でも無いんだよね…冬場だって、寒い寒い言いつつもそんなに厚着しない。どちらかと言えば私は暑がり…下手に日焼けしちゃうと面倒だから、夏場でも良く長袖着るけどさ…
「私が暖めてやろうか?」
「暖めるって…外だし、二人ともこの格好だからあんま変わんなくない?中入った方が早いよ。」
と言うかそもそも、ワイシャツ一枚で外に居るのが問題なんだろうけどね…
「ふぅ…結局、こう言う空気が私たちにはお似合いなんだろうな。」
気が付けば漂う微妙な雰囲気…ま、私たちもう学生じゃないしね…と言うか、ロマンチックな気分になりようが無いと思う…だって…
「それで、そろそろ離れて欲しいんだけど?」
千冬が今も後ろから抱き着いて、私の身体をまさぐってるからね…
「何だ、嫌なのか?」
「そうじゃなくてさ、そろそろ私に灰が落ちてきそうだから。」
千冬は火の着いたタバコ咥えたまま私に抱き着いてるからね…
「ふむ、なら消すか「いや、吸うなら最後まで吸ってね?勿体無いし」何だ、ケチだな。」
「いや、タバコ代って馬鹿にならないから。」
さすがに生活圧迫する程吸ってないけどさ…やっぱり勿体無いとは感じるよね…
「ま、そうだな。」
千冬が離れて行く…後ろを向けば、千冬が携帯灰皿に灰を落としてる所だった。
「灰、落としてないよね?」
「大丈夫だろう……少しぐらい零してても。」
「小声で言っても聞こえるよ?」
「良いだろ、少しくらいなら。」
普通に良くないと思うなぁ…
「…で、もう良いかな?駄目って言われてももうタバコ無いんだけどさ。」
「ああ…悪かったな、結局ほとんど一人で吸ってしまった…」
「あー…気にしないで……それよりその、禁煙出来そう…?」
「……無理だな。」
ま、だろうね…そうなると思ってたよ。
「今は私も吸ってるし、もう止めようとは思わないよ。」
「それは残念だな…」
「え?」
「実は当時、お前に注意されたくて必要以上に吸ってたんだ…」
それ、今言う…?と言うか、あの頃こっちは割と真面目に注意してたんだけど…
「いや、さっきこそつい…色々言ったけどさ、悪いけどもう注意しないよ…?お互い、今は大人なんだし…」
「そうか、そうだな…」
何でそんなに残念そうなの…?
「大体、今は私も吸ってるんだから…本当は注意なんて出来無いでしょ?」
「ああ…」
……そんなにテンション下がる…?何か、千冬の事が分からなくなって来たかも…そう言えば、結局いつ私を好きになったのかもハッキリ聞いてなかった様な…学生時代には そうだったのは確かみたいだけど(この場合の学生時代って多分、中高時代の事だと思ってる…まさか千冬も小学校時代に私を好きになったって事は無いでしょ、さすがに…)
「なぁ?」
「え…!」
千冬に声を掛けられて我に返った時…目の前に千冬の顔が有った…そのまま近付いて来て、キスされた。
……不意打ちはやめて欲しい、長い割に舌入れて来ないから逆に意識しちゃうし…
「何、急に?」
「いや、したくなったんだ……駄目だったか?」
「ふぅ…駄目な訳無いじゃない。」
私は本当に貴女が好きなんだから…
「それで、もう吸い終わった?」
「ああ。」
「なら、部屋に戻らない?」
「そうだな…」
千冬と部屋に戻る時、ふと思った。
……さすがに、もう襲われないよね…?眠れはしないだろうけど横にはなりたい…ちょっと本当に疲れた…まだ身体も痛いし…ハァ…とにかく、早く休みたい…