"確認したんだけど、実は国によって放送タイミングズレてるみたいなんだよねぇ…ちなみに、今ちょうど放送してる国も有るよ"
……まぁ、言われてみれば良く有る話かな…大会当日までに放送出来てれば良いんだし…
"そっか、わざわざありがとね"
"良いよ良いよ…ところで媚薬、今じゃなくて良いの?"
……今送って来られたら、とても試合なんて出来無くなるよ…
"大会終わってからでお願い"
"りょうか~い…後何か有る?"
その時ふと、思い出す…
"例の亡国機業だっけ?その後動き有った?"
眉唾物の話…そう思ってたのに、何故か気になった…
"ううん、調べてたけどあれから何の情報も上がらないね…束さんでも本拠地が何処なのかも分からないよ~"
まぁ、そもそも本当に有るのかも分からないし…っ
「えと…何、千冬?」
いつの間にか同じベンチの隣りに座っていた筈の千冬が後ろに立っていて、私の首に腕を回して来ていた…
「何、じゃない…少しはこっちにも集中しろ。」
要は構えって事?……あの千冬がこんなに可愛い反応してくれるなんて…
「ちょっと待って、もう終わるからさ。」
"そっか、分かった…ありがとね"
"気にしないで~。ちーちゃんとの試合、頑張ってね?"
千冬と戦う前に負ける可能性も有るけどね…取り敢えず追加で返信しようかと思ったけど、首に回された腕が震えているのが分かったのでやめた。携帯を閉じる…
「ほら、終わったよ?」
「ああ…」
「……そんなに、私が信用出来無いかな?」
「お前個人の事は信用も、信頼もしてるさ。ただ…」
「ただ?」
「……お前の場合、どうにも目を離すと私の前から突然居なくなりそうな気がしてならない…今までは気にしない様にしてたが、こうしてお前を手に入れたらな…どうしても、不安が拭えなくなった…」
「私が…自分の意思で千冬の前から居なくなる事は無いよ…それこそ、千冬が望むか…あるいは、本当にどうしようも無い時以外はね…」
「……そこは嘘でも絶対に居なくならないと、言ってはくれないのか?」
「ふぅ…無理だよ、この世に絶対は無いから。それにさ「人間、いつかは死ぬ…か?」そう、人は死を避けられないんだから…永遠に二人一緒には居られない。」
「お前は現実的過ぎる…」
「夢を見るのは悪い事だとは思わないよ、私は…普段は私だって夢想家で、理想家だもの。」
ただ、どれだけ夢を見ようとも死だけは誰にも平等…そこに希望は入り込めない…運良く最初は一命を取り留めても、いつか死ぬのは変わらない…だったら、私は向き合っていたい。目を逸らしたくない……明日死ぬかも知れないなら、少しでも満足出来る今日を生きていたい。
「千冬にもそうして欲しいとは思わないの、私が…見据えていたいだけだから。」
「お前は昔からずっと、死に目を向けていたな…」
「魅入られてるってやつかもね…ま、だからって受け入れてる訳でも無いんだけど。」
虐めに遭っていたあの頃、私は何度と無く死ぬ事は考えた…そのせいか、今でも死に対しての感覚がズレてるのは分かる…
「千冬が居なかったら、多分私は今ここには居ない…当時、私は死ぬ事も視野に入れてたからさ…」
「そこを引き戻したのが私か。」
「うん、でも…死に対しての憧れみたいのが、今でも無くならないみたいでさ…」
「それをまともに見るのをやめられないのか?」
「死は結果だよ?目を逸らしてる方が、その時が来た時…後悔する事になるから…」
「私はお前を失いたくない…」
「そう深刻にならないで。別に私は今すぐ死ぬ気は無いしさ……そうだね、こうしようか?」
「何だ…?」
「私の心と身体だけじゃなくて、命も千冬にあげる…もしもの時は千冬の手で殺して欲しいな。」
「……分かった、なら私の命も「ダーメ。私が貰うのは千冬の心と身体だけ…命は受け取らないからね?」……何故だ?」
「だって千冬なら…私が死んだ後、他にもっと良い出会いが有るかも知れないし…それに、一夏君を残して逝く気なの?」
「お前は酷い奴だ…」
「私は自分が善人だなんて一言も言ってないけどね……嫌いになった?」
「いや、いい加減お前の性質は良く分かっている…今更嫌いになどなるか。受け入れられないなら、初めから友人として付き合う事も無かったさ。」
ハッキリ言ってくれる千冬が好きなんだよね、私は…私には出来無いしさ…ま、私が言えなくても千冬の場合…何となく察してもくれるしね…
「千冬?」
「何だ?」
「大好き。」
「ああ、私もお前が大好きだ。」
「何か照れるね…こう言うの。」
「いや、遅くないか?」
「本心を包み隠さず言うのって、普通は恥ずかしい物なの…」
あれから数十分程…冷静になったら急に恥ずかしさが込み上げて来た…
「私は今更お前に対して偽る事も、答えられない事も無いがな。」
「スリーサイズは?」
「上から「いや、ストップ…冗談だってば」何だ…そうか。」
千冬が本当に言いそうになったので慌てて止める…いや、誰かに聞かれるかも知れないのに何で言うかな…しかも何か残念そう…聞いて欲しかったの?
「聞いて欲しいなら…今度二人っ切りの時にでもゆっくり聞くから「なら、その時はお前が測ってくれるか?」まぁ、良いけど…」
今まで手を伸ばしても決して手に入らないと思ってたのに、いざ手元に置かれて、好きにして良いって言われると…何かこう、微妙な気分になるのは何でなのか…
「ちなみに、私もお前のサイズを知りたい所だがな…」
「ここ外だしさ、この場では言える訳ない以前に…私、一々自分のサイズ覚えてないんだよね…」
いや、まぁ…千冬もそんな感じだろうと思ったし、もちろんさっきも言った通り…冗談のつもりで聞いたんだけどね…
取り敢えず私は手に持っていた瓶の中身を飲む…ちなみに、今私が飲んでいたのは日本では健康飲料として有名なマテ茶の主成分マテを使用したClub Mateと言う炭酸飲料との事…正直、良く分からないと言えば良く分からない飲み物…砂糖が入ってる様で苦味はあまり無い。ただ、マテの癖が強いからコーラみたいな物を想像すると微妙かも知れない…
まぁ、不味くは無いし…後、カフェインが結構含まれてるとかで…先程から時折眠気に襲われている今の私には重宝する飲み物(ドイツブランドのコーラはコカ・コーラやペプシコーラよりカフェイン含有量が多いそうなので、そっちにすべきだったかと実はちょっと反省してたり…)
「ふぅ…そろそろ行く?」
「そうだな。」
千冬が私の首から腕を解いた所でベンチから立ち上がる。さて、と…何処に行こうかな。