織斑十秋…千冬の妹で、一夏君の姉ね…性別は違うし、見た目は私の知る彼より成長してるけど一夏君が女装してると言われても腑に落ちて来るくらいに瓜二つの彼女の顔から考えればその立ち位置は非常にしっくり来る……最も、それはあくまで彼女の見た目だけで判断するならの話。
彼女の発してる雰囲気や、喋り方などのいくつかの要素…それが私に、彼女があくまで私自身で有ると教えてくれている…
もちろん、普通に考えたらそんな事は有り得ない…と言うか、私は別に千冬の妹になりたい願望は無い…それとも、彼女はそうだったのだろうか…だから、肉体を作り替えた…?
とは言え、当然ただ顔を変えた所でその立場は手に入らない…と言うか、そう言う事に詳しい訳じゃないから何とも言えないけど…仮に整形した所で、ここまで一夏君と見間違えるくらいにそっくりになるものだろうか…?
実際、彼女の顔は性別によるものなのか微妙な違いは有れど…見れば見る程一夏君そのもの…整形したと言うより、この世に生を受けた時からこの顔だったと言われた方が納得出来る…
「……あんまり人の顔をジロジロ見ないで欲しいんだけど…何か言いたい事が有るならハッキリ言ったら?」
『ん?あ、ごめん…その…一つ聞きたいんだけど…』
「何?」
『……その、貴女は最初からその顔なの?』
「何それ?別に私、顔は弄ってないよ。と言うか今は化粧もしてないよ…これが私の素顔なんだけど?」
……多分嘘は言ってない…でも、どうしてもこの子は私だとしか思えない…そんな事有り得ない筈なのに…てかそもそも…顔も私と全然違うのに、どうして私は最初からその判断が出来たのか…
実際…こうして彼女と話せば話す程、彼女は私だと言う確信が強くなっている…でも、私はそもそも一目見た瞬間から彼女は"私"なんだと感じてた…冷静に考えたら本当に可笑しな話なんだけど。
……んー…違うか、完全に彼女の見た目に惑わされてるね…先ずは私の勘を信じるとして、何故彼女が今の立ち位置に居るのか考える方が簡単かな。
『ん~と…もしかして貴女、前世の記憶とか有る?』
……今ビクッとした…ひょっとして合ってる?
「どう言う意味?」
『そのままの意味だけど?貴女はこの世界に産まれる前に…全く別の人生を過ごした記憶とか、有ったりしない…?』
輪廻転生…日本の仏教から来てるこの考えは…要は人が死んだ後、再びこの世に別人として生を受ける…それを繰り返すと言う考えだ…彼女はきっと"私"として一度生を受けた後、亡くなってからこの世界に改めて今の立場に生まれて来たんじゃないだろうか…
「……」
…って、何か黙り込んじゃったね…別にこの子を追い詰めるつもりは無かったんだけどなぁ…
『えっと…ごめんね、答えたくないなら良いんだけ「有るよ」ど…ん?』
「確かに私には、今とは違う別の人生を生きた記憶が有る……これで満足?」
……正解だったか。にしてもここから話を広げられないかなって思ったんだけど、どうも逆鱗に触れた様…彼女からハッキリ拒絶の意思が伝わって来た…彼女にとっては軽い気持ちで触れられたい事じゃなかったみたい…
『ごめん「何で謝るの?」それは…』
言葉が続かない…と言うか、何で私もこんなに必死になってるのか…確かに放っておけないとは感じたんだけどさ…
「それ以上用が無いならもう出てって欲しいな…私、今誰とも話したくないんだ…」
『……それは無理かな。』
「何で?」
不思議とすぐに否定の言葉が出て来た。何で、か…それは…
『帰り方が分からないから…と言うのは冗談で…』
……まぁ、あながち冗談でも無いけどね…仮にこれが本当に私の夢だったにしても、今の所目が覚める様子が全く無いしさ…
『多分、このまま貴女を放置して帰ったら私は…とてつもなく後悔すると思うから。』
あくまで私は夢と言う形でここに居るだけなんだろうと思う…それでもここに来たのは、きっと何か意味が有る…
「何それ?意味が分からないよ…どうして私を放置したら貴女が後悔するの?」
『貴女は今、凄く悩んでる…そして、その悩みは簡単に答えが出せるものじゃない…違う?』
「……仮にそうだったとして、それが貴女に何の関係が有るの?放っておいてよ、他人にどうこう言って欲しい事じゃないから。」
他人、ね…
『……違うよ。』
「?…違うって何が?」
『私と貴女は、他人じゃない。』
「他人じゃないって…貴女は一体誰なの?私、貴女の名前なんて聞いた事も無いんだけど…」
『……本当に分からない?』
「だから…分からないよ!貴女は誰なの!?」
『私は多分、貴女自身…』
「は?」
『私はきっと…今こうしてここに居る貴女とは違う人生を送って来た貴女……話してよ、この出会いは多分…何か意味が有るんだと思うからさ…』
運命なんて私は信じていなかった…でも、今回は信じてみたかった…私はきっと何か、彼女の助けになる為にこの世界に来たんだとそう信じたかった…