「ほら、座れ。」
「うん。」
私はベッドの上に座る…
「別に、放っておいても乾くんだけど…」
まぁ、こうしてやって貰って言うのもなんだけど…
「水分だけタオルに吸い取らせてもパサパサになる…今日はさすがにそのまま外には出せんからな。」
「ま、そうだけどさ…」
かと言って、この歳になって人に髪を乾かして貰うと言うのは…私も思う所が無い訳じゃないんだよね…
「…今、お前が何考えてるか何となく分かるぞ。」
「え?」
「確かに人にやって貰ってるのは歳だけ考えれば問題かもな…ただ、やってる私がどう思ってるかまでは分からないだろう?」
「…じゃあ、千冬的にはどうなの?」
「そうだな…寧ろ、ずっとやってやりたいとすら思う。」
「……」
千冬の場合、何だかんだ家事以外の事は粗方出来るんだよね…何で家事に関してはああも不器用なんだか不思議でならない。それはそうと…
「ずっとって…それじゃあ私何も出来無くなっちゃうよ…」
「それは無い。」
「なん「私は家事が壊滅的だからな」あー…」
まぁ、結局そこに行き着くよねぇ…
「確か…家庭に入るとか言ってたけど…家事出来無いなら無理じゃない?」
「大丈夫だろ。」
「何で?」
「確かにお前は家事こそ出来るが、それ以外は割とポンコツだろう?」
「……」
んー…改めて考えたら反論出来る要素は無いかも…
「特にお前は自分自身の事には無頓智だからな、世話する人間は必要だろう?」
……そう言えばこの会話って、一緒に住む事を前提にした内容だよねぇ…これから先の事を考えると不安にはなるけど、何れはそうなったらなぁって…思わなくも無い。最も、いくらしっかりはしていても一夏君にはまだまだ千冬が必要だから…当分は実現しないだろうけど。それ以前に思う事も有る…
「いや、四六時中一緒に居たら千冬はずっと私にセクハラしてたり「するだろうな」…そこは否定してよ。」
私って、かなりスケベなんだろうなとか思ってたんだけど…この三日間で良く分かった…実際は千冬の方が遥かに欲望に忠実だよね…
「何だ、嫌なのか?」
「……嫌ではないから困ってるんだけど。」
結局、私も断り切れないんだよね…正直、一緒に住んでたら間違っても家に仕事持ち込めないよ。確実にさせて貰えないだろうし…
「なら良いじゃないか。」
「いや、ずっとそれだけしてる訳にいかないでしょ?」
労働しないとお金は入って来ないからねぇ…
「私は今の肩書きさえ降ろせればいくらでも時間は出来るからな…普通にお前を養えるくらい稼ぐ自信も有るが?」
「……本当に出来そうだね。」
まぁ、千冬は肉体スペックも並じゃないから…その気になれば稼ぐ手段はいくらでも有るだろう…
「でも、それは私が嫌かなぁ…」
「何故だ?」
「いや、何故って…今まで私、自分の食い扶持はちゃんと稼いで来たんだよ?いきなり何もしなくて良いなんて言われても無理だよ…それに、今してる仕事別に嫌いじゃないから。」
実際残業が何日も続く事は有る…でも、嫌いじゃないからそこまで辛くは無い。
「別に天職だと思った事は無いけど、それでも割と気に入ってるの…だから辞めろって言われても無理。」
「……ま、そう言うだろうとも思っていたがな。」
「試したの?」
「一応、お前が仕事辞める気有るなら本気で養う気は有ったぞ?」
「……そこは社会人の私じゃなくて、一夏君の方気にしないと。」
「私がお前と一夏…二人纏めて面倒見れないとでも?」
「……普通にどうにか出来そうだね。」
何だかんだ普通に私の食費も一夏君の学費も稼いだ上で…ちゃんと家族との時間も取れそうなのがねぇ…てか、半分冗談のつもりで喋ってたのに何か途中から本気の雰囲気に…いや、千冬は初めから本気だった…?
「いや、さっきから一緒に住むような話してたけど…本気なの?」
「最初から本気だが?」
「……さすがにちょっと待って…」
いくら何でも急ぎ過ぎだって…
「一緒に住むのは私も嫌って訳じゃないよ?だけど、少し時間が欲しいなあって…」
「もちろん今決めなくても良い…と言うか、一夏も一緒に来る事になってしまうからな。」
「それは別に良いけど…」
別にそこには特に問題は無い…まぁ、そろそろ私の方が気を使わないといけない年頃だけどね…
「ま、とにかく考えておいてくれ。」
「うん…」
これからの事でも不安なのになぁ…一緒に住む事を考えろって言われても…ハァ…何にしても、先ずは大会終わってからだね…