さすがに今日は買いに行って、とかやってるとギリギリになりそうだから普通にルームサービスで朝食を済ませる事に…
「朝から良くそんなに食えるな…」
「えっと…今日は私試合無いし、それに…これでも一応抑え目なんだけど…」
「確かに普段より少ないが…それでも知らない奴が見たら、普通に夕飯かと勘違いするレベルの量なんだがな…」
「寧ろ千冬はそれで大丈夫?トーストとサラダにコーヒーだけって…」
「あまり大量に食うと動けなくなるからな…これぐらいで良い。」
私の場合は寧ろ食べないと力が出ないタイプだから、そこら辺は千冬と意見の分かれる所…ま、確かに私は普段でも食べ過ぎだと思うけどね…ん……あ。
「そう言えば、話は変わるんだけど…」
「何だ?」
「ほら、例のあの子の話…」
「……何か他に気になる事でも有ったか?」
「いや、千冬の推測だと彼女はフランス生まれのフランス育ちで…カトリックの教えに影響を受けてるから、だから千冬に告白出来無かったって話だったじゃない?」
「そうだな。」
「…だったら、彼女と千冬との間にほぼ接点無いんじゃない?多分、フランスから日本に来る事ってほとんど無いだろうし…」
日本には母さんの実家が有る…ただ、そう頻繁には行かないよね…
「確かにな…ま、偶然の出会いだった…と言う可能性は無くは無いが、それなら恋愛感情持つ程付き合いは長くはならんだろうな…」
「……」
いや、あの子が私だったなら…会えた時点で千冬を好きになるかも…私だってほとんど一目惚れみたいな物だったし…
「……お前、自分を基準に考えてないか?」
「何で分かったの…?」
「何となくだな…それでだ、仮に完全に偶然の出会いだったなら…恐らく私の方がお前を意識しない。つまり、はなから脈が無いからな…諦め切れるかは別にして、お前の方も告白がどうのと悩む事も無いだろう?」
「あー…そうかも。」
確かに最初から可能性が無かったら逆に悩まないかも…
「それに、仮に私とお前の出会いが平凡だったら…お前の方も恋愛感情抱かないんじゃないか?」
「……」
反論しようとしたけど出来無かった…確かにあんな出会い方じゃなかったら、私の方も普通に友人で終わってたかも…
「お前は私との出会いを相当美化している様だが、死にたいと思う程に追い詰められていた所を助けられた…その前提が無ければ、私を好きにはならなかったんじゃないか?」
「……そんな事無い、とは…確かに言い切れないかもね。」
やっぱり否定出来無かった…確かに出会い方が違ったなら、こんな関係は望まなかったかも…でも…
「それでも…私のこの気持ちは本物だよ。」
「ああ、そこは疑って無い…ま、話は戻るがな…要は向こうの私たちもそれだけ劇的な出会いをしたんじゃないかと私は言いたい訳だ…」
「住んでる国も違うのにそう言う関係になりたい程に執着するって、本当に衝撃的な出会いだったんだろうね…」
きっと…私たち以上に凄い出会い方だったんじゃないかな…
「んー…じゃあどんな出会い方だったと思う?」
「いや、少しはお前も考えろよ…一応自分の話だろ?」
「いやぁ…どうにもそう言うの苦手だし…」
大体自分って言われても、生い立ちから違うってなると…もうほとんど似てるだけの別人だろうし…
「ハァ…そうだな、私が考えるに…出会いは恐らくモンド・グロッソの会場だ。」
「私が観客の一人として来てたとか?それでそんなに仲良くな「いや、多分違う」え?」
「向こうのお前は多分、選手として出場したんだ…そして私と戦っているんだよ……決勝でな。」
完全に予想の斜め上だった…まさかあの子、自分から出場したの…?
「えっと…根拠は?」
「無い。ただ…そのレベルの出会いなら、確実にお互いを意識する様になると思わないか?」
「そりゃなるね…」
決勝に行けたなら、彼女は相当の腕の持ち主。 当然自分の実力を疑ってはいなかっただろうし…でも、例えそれでも千冬には勝てないだろう…それなら間違い無く彼女は千冬を意識するし、千冬の方も自分に食らいついて来た彼女に興味を持つ筈……まぁ、彼女が瞬殺されてなければの話にはなるけど。
「…って、もしかしてあの子…私より強い…?」
「そもそもどうやって勝ち進んで来たのかも分からんがな…その可能性は有るだろうさ。」
「……」
それは素直に羨ましい…だって、私は全くの初見で千冬とまともに打ち合える自信無いし…
「下手に銃器を使うと千冬には多分勝てない…そうなると、剣士かな?」
「フランス生まれならそうだな…フェンシングの素養が有ったのかもな…」
「……」
何かちょっと戦ってみたくなったかも…
「フッ…」
「?…何?」
「いや、中々良い顔をするなと思ってな…そいつと戦ってみたくなったか?」
「……千冬的にはどう?」
「そうだな、私もそいつがどれ程の実力なのか気になって来た……大会が終わったら束に話をするとしよう。」
……何かもう、私より千冬の方が彼女に会いたがってるよね…
「でも、あんまり会って欲しくないなぁ…」
「ん?何故だ?」
「だって…あの子が好きなのも千冬なんだよ?」
「取り合いにはならんだろう?」
「何で?」
「向こうにも私が居る筈だからな。」
「……でも、あの子にとって向こうに居る千冬は姉だよ?」
「昨夜も言ったが、選ぶのは向こうの私だ。それに…」
「っ…」
千冬の唇と私の唇が重なる…いや、だからテーブル…何で障害物スルーして距離詰めれるの…?毎回物理法則無視して来るよね…おまけに戻るのも一瞬だし…
「私はお前一筋だからな。」
「……私、間違っても浮気なんて出来無いね…」
「ほう…する気か?」
「怖いって…しないよ。」
笑顔なのに圧が凄い…
「全く、あまり私を挑発するな…抑えられなくなる…」
「逆に聞きたいんだけど…結局、私の何がそんなに良かったの…?」
「言っても良いが、時間が無いな…」
「いや、そんなに…?」
「数日掛かってもお前の良さは語り切れんからな…」
「……」
本来はドン引きする所なんだろうけど、何も言えなかった…何かもう嬉しいやら恥ずかしいやら…それに、私も千冬の事について語ったらそれなりに長くなるし…
「私、千冬程綺麗じゃない…」
「お前見て不細工だと言う奴は美的感覚が狂ってるな。」
「その…スタイルだって別に良くない。」
「私は手に収まる大きさのお前の胸が気に入ってるんだがな。」
「ほら、性格だってこう…」
「そう言う繊細さがお前の一番の魅力だ。何より、手に入ったと思ったらそうやって突き放そうとして来るのは…私にとって追い掛け甲斐が有る…これから先も退屈せずに済みそうだな。」
「……」
「まだまだお前の良さについて語れるが、どうだ?」
「……もう勘弁して。」
恥ずかし過ぎる…
「二人切りとは言え、良くそんなセリフ臆面も無く言えるよね…」
「ん?学生時代お前がやってた事だぞ?それも人前で。」
「それは…だって…」
あの頃は自分の容姿褒められると変なスイッチ入ってたから…
「ま、お前はそのままで居てくれ……お前の魅力は、私だけが知ってれば良い。」
……学生時代、私が千冬に思ってたことだね…まぁ、割と今もそう思ってるけど。一般的には千冬のこの感情は重いんだろうけど、私も千冬に対してそれなりに重たい物抱えてるから…バランスは取れてるんだろうけどさ…
「さて、取り敢えず食い終わったか?」
「うん…」
相変わらず会話しながらでも普通に食事は出来る私…と言うか、体調崩してる時でさえご飯は食べるタイプだから当然と言えば当然だったり…
「開会式まで時間有るね…何時までに会場着いてれば良いんだっけ?」
「ま、八時半までに着いてれば良いだろ。」
何気に一時間近く余裕が有る…さて、どうしようかな…っ…
「えっと…千冬?」
「何だ?」
「……何で私の隣に移動して来たのかな?」
「シても良いか?」
「……時間無いから駄目。」
「少しだけ…駄目か?」
「いや、せっかくシャワー浴びたのに意味が…!ん…!」
千冬の唇が私のそれに押し付けられる…さっきの様に合わせるだけのキスじゃない…無理矢理私の口開けて舌が入って来る……散々口の中を舐め回された後、千冬が離れた。
「ハァ…本当にする気…?」
「すぐ終わるさ。」
……私と千冬のパワーバランスが逆転する事は…きっとこれから先もずっと無いんだろうなと思う…でも何も考えず、こうやって流されてるだけでいられるのは…ある意味幸せな事なのかもね…