「あ、■ちゃん…ちょっと待って。」
「ん?何?」
「束さんの為に買い物行ってくれるんでしょ?私、お金出すよ…」
束がそう言ってくれたけど…私は一言、切り返した。
「……どうやって?」
「え?」
「先ず…束、貴女現金持ってる?」
「……あ。」
束がキョトンとした顔を浮かべる…やっぱり、そんな事だろうと思ったよ…そもそも、普通に働いてる訳じゃない束が現金を持ってる訳が無い…と言うか、銀行も下手に利用出来無いだろうし…
「っ…じゃ、じゃあコレ…カード有るから…」
……カードね…この場合のカードって言うのは普通クレジットカードと相場が決まってる(と言うか、他は考え…あ、プリペイドカードの可能性も有るのか…)そして、束が出して来たのは…
「…束、悪いんだけどコレは持って行けないよ…」
「え?何で?」
束が出して来た"ソレ"…私もさすがに実物を見るのは初めてだけど…一応知識として、頭には入ってる…
「何でって、コレはブラックカード…クレジットカードの中でも最上級のヤツじゃん…こんなの、普通のスーパーのレジで何てとても出せないって…」
正直、普通に買い物行くだけで変な注目浴びるのは御免被りたい…と言うかねぇ…
「そもそもクレジットカードは普通印字された名義人本人か、名義人の家族しか使えないの…私じゃ無理だって…」
カードの表面にはしっかりと束の名前が書かれてる…と言うか、束の名前はハッキリ言って非常に珍しい…先ず間違い無く同姓同名は存在しないだろうし、こんなの出したら、確実に私はただ…注目を浴びるだけじゃ済まない。
「大丈夫!私にとって■ちゃんは家族だから!」
「……」
まぁ、そう言ってくれるのは私としても素直に嬉しい…何より、あの"篠ノ之束"からハッキリそう言われたと言う事実に…私自身、少し優越感を感じなくも無い(誰にも自慢出来無いけどね…それに、正直子供の頃から知ってる束をあんまりそう言う"目"で見たくないとも思う…)まぁ、それはそれとしてだ…
「うん、この場合の家族って言うのはあくまで血の繋がりとかが有るかどうかって意味だから…今の所、貴女と私は完全に赤の他人だよ?」
「え!?」
そんな驚く様な事?…なんだろうね、束にとっては…まぁ、"今の所"なんて言い方をした理由は一つ…束が何れ、私の兄さんと正式に籍を入れたりとかすれば私と束は一応お互い身内扱いにはなる…とは言え、夫の妹ってどうなんだろう?クレジットカードの名義人の家族って言っても書類上はやっぱり遠い扱いになるのかも…結局は使えないかもね…
ま、どっちにしても借りる気は更々無いんだけど…だって結局使えるかどうかは別にしても、実際にお店で出してしまえば変な注目を浴びる事実は変わらないんだし…束の事を嫌いなつもりは全く無いけど、それでも篠ノ之束の身内って知られたら…一体私はどんな扱いを受けるやら…束は抜けてる所が有るし、あちこちで親友だとバラされてるんだろうけどそれでも何だかんだ開き直ってる千冬と違って、あくまで私の精神はしがない一市民でしか無い…世間から要らない注目なんて浴びたくはないものだ…
ん…いや、まさか私の事までどっかで喋って無いよね…?…正直束の事だから、何かやってそうでは有る…ま、とは言え…今の所私の身辺に特に変化は無いから…束は今の所誰にも私の事を何も言ってないか、名前は色々な人に知られちゃってても顔は現状知られて無いかのどっちかでは有るのだろう…(束の性格的に、顔写真見せながら言いそうだからさすがに前者だとは思う…)
「ま、とにかく…そのカードは私は使えないから…大丈夫、お金は十分に有るから普通に私が払うよ。」
何だかんだ、私はお金には特に困ってない…まぁ、昔から自分の物は本当に必要な物しか買わないしね…お給料も大体七、八割型貯金してるから最早持て余してるレベルだし…(千冬にあげるって言っても、やっぱり現金だと絶対受け取ってくれないんだろうなぁ…ま、その分今まで通り物で渡すから拒否は絶対させないけどね)
「え~…でも「どうしてもって言うなら次からはプリペイドカードの方を用意して…それなら私も使えるだろうし」……何それ?」
束がまたキョトンとした顔を見せる…ハァ…どうして、この親友はこうも世間の常識に疎いのか…(もう一人の親友は逆に、妙に裏技に詳しい…まぁ、私の目の前に居る彼女のせいで普通の生活が出来無くなってるから…最早そこは必然とも言えるんだろうけどね…)さて…
「クレジットカードは契約出来たのに、そこら辺何も聞いてないの?」
「さぁ?束さんはカードの契約のハガキが借りてるマンションの部屋に来てたから契約しただけだし…」
……私、束と結構長い付き合いの筈なんだけど…明らかに、今初めて聞く話が出て来た…ま、良く考えたら普通に住所不定の筈の束がクレジットカードなんて契約出来た時点で当たり前の事では有るんだけど……あれ?でもそれって…
「束…ひょっとして、食べ物とか…生活して行くのに必要な物って全部その部屋に定期的に届く様になってるとか?」
「うん、そうだよ。」
「……次に届くのは?」
「う~ん…良く分かんない…」
……何か…物凄く、嫌な予感が…
「束…例えば食べ物に関しては回収行ったら既に期限切れてたとか、最早完全に腐ってたとか…今まで無かった?」
「ん…そう言えば、何度か有ったかも…」
「……」
多分、それはそもそも荷物の回収に行くのが遅いんじゃないだろうか?いつ届くのかとか、向こうにちゃんと連絡して聞くとか…普通するものだと思うけど…(そう言う事が今まで有ったって言うなら尚更…)
「…取り敢えずクロエを待たせてるし、もう私行くから…」
……私は考えるのをやめた…正直、私もさすがにそこまで面倒見切れな…う~ん…そう言う訳にも行かないのか…束のやらかしに毎回クロエまで巻き込まれるのは正直可哀想過ぎるし…
「…えっと…何か、ごめんね?…行ってらっしゃい。」
「うん…」
……後でその部屋に確認に行った方が良いかもね…うう…何か要らない仕事がどんどん増えて行くよ…ま、それでも…こうしてあからさまに迷惑を掛けられても束を嫌いにはなれない辺り…私も色々駄目なんだろうなぁ…ま、今回は結局私が単に自ら苦労を背負い込んでるだけな気もするけどね…