親友の妹に転生しました   作:三和

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「■■様、ここは…?」

 

「ん?スーパーだよ…ああ、って言っても…貴女は見えないんだよね…」

 

「はい…」

 

クロエに街中で自分のIS…黒鍵を使わせるのは不味い、そう思ってたけど…良く考えたらさすがに視覚情報すら一切与えないのは、最早連れて来た意味が無いよねぇ…う~ん……あ。

 

「クロエ、貴女は黒鍵の部分展開は出来るんだっけ?」  

 

確か…ISには腕や足の部分など、必要な時に必要な箇所だけを展開させる機能が有ったと思う…ま、私も今は知識として知ってる程度にはなるけど…何せ、現状の私はISを展開した事こそ有れど…今の所は展開しないか、フル展開か…要はゼロか百かの二択のみだからねぇ…多分出来ると思うけど、実際にやった事は無い。

 

「…出来ます…と言うか、そもそも…」

 

あ、今はクロエと話の途中だった…ホント、思考がすぐに明後日の方向に飛ぶのが私の悪癖の一つなんだろうね…さて…

 

「?…そもそも?」

 

「私の機体は俗に言う電脳戦特化でして…その、武装とかも現状一切無く…仮に完全に展開しても、一般人にはほぼ分からないと思うのですが…」

 

と言うか、現在ISは一部の選ばれた者だけが持てるみたいな扱いで…まぁ、実際に所持出来るのはモンド・グロッソに出場する選手くらいだね…尤も選手だって、あくまで練習の時と大会当日以外触れるのは許されないだろう…下手したら練習の時すら駄目かも知れない…まぁ、今の所普段持ちしてるのなんて多分千冬とここに居るクロエ、それから束くらいだろうねぇ…何れこの中に、私も加わってしまうのだろう……それはそうと…う~ん…ま、これは私が過敏過ぎたって事かな…

 

「そう言う事で有れば…でも、本当に大丈夫?」

 

「気になるなら、部分展開のみにしますが…」

 

日本人は鈍い様で、案外鋭い人が多い印象…(寧ろ、失礼を承知で言うなら海外の人の方が実はその辺は怪しいかも…)

 

「そうだね…悪いけど、一応そうしてくれる?」

 

「はい…では…!」

 

一瞬クロエの身体が光ったと思ったけど本当に一瞬の話、この分なら…周囲の人も気の所為だと思ってくれるかも(と言うか、初めから人の居ない所で展開させれば良かった……ハァ…ま、良いか)

 

「どうかな、クロエ…?」

 

「っ…見え、ます…街を歩く人々の姿が…!」

 

表情は何とか取り繕おうとしたのか無表情だけど…それでも、彼女の声は明らかに弾んでいた…心無い誰かのせいで誕生し、失敗作扱いされて捨てられるなんて体験をしたらしいクロエ…それでも、表情こそ変わらないけど街を行く人々を見て彼女の発した声に負の感情は乗っておらず、それどころか、その声はとても明るく、優しい……案外普段から束に言って、たまに彼女を連れ出した方が良いのかも知れない…千冬にも手伝って貰おうかな…まぁ、何だかんだ言っても千冬は面倒見が良くてお人好し…特に、一夏君より少し歳上程度のクロエの世話を嫌がるとは絶対に思えない(現状クロエとまともに関わり有るのは、私と一夏君だけにはなっちゃってるけどね…千冬は千冬で私より色々忙しいし、仕方無いと言えば仕方無い。)

 

「フフッ…じゃ、行こっか?」

 

「はい…!」

 

私はクロエの手を引いた(今でこそ普通に私を受け入れてくれているのが分かるけど…クロエの場合、割と自分を捨ててると言うか…初対面の時に私がその手に触れてもビクッとはしても、特に抵抗はしなかった事が今でも気に掛かってはいる…)

 

そしてクロエに改めて思いを馳せる…普段は何も見えないクロエ…とは言え、どうやら本当に全く何も見えないとかでは無く…多分、極端に見えにくい弱視か…見え過ぎる、の…どちらかだと私は思っている…どちらにしても普段はピッタリと瞼を閉じて、完全な盲目として通すのが楽なのは確かだろう…

 

もちろん、それ自体が悪いとは私は決して思わない。何せ、全く見えない訳じゃないからって…弱視の人に無理矢理健常者と同じ生活させるとかえって悪化させたり、日常生活を送るだけで多大なストレスを与えると言う話も実際に有るしね…ちなみにクロエの眼は割と私のお気に入り…一回見た事有るけど、あの時は黒色の眼球と金色の瞳と言うその眼を見て、素直に「可愛い…」と思わず呟いてしまった…

 

本人は私が居たのに気付いていなかったらしく、私のその感想を聞いて何か焦ってたのを見て…余計に私から可愛い以外の言葉が出なくなったからね…いや、本当にクロエ可愛かった…ちなみに母親の束も当然と言うか、同意見の様で二人で語り出すとそれなりに長くなる(冷静に考えると、大してクロエと付き合いの長くない私が束と語れるのだいぶ可笑しいとは思うけど)

 

とは言え、あまりやらない…以前やったら、恥ずかしがったクロエがしばらく口を利いてくれなくなって束と二人で頭抱える羽目になったからね…ちなみにその辺を千冬に愚痴りに言ったら千冬からは肩にポン、と手を置かれた…千冬は基本、普通に言葉を交わせる友人とか知り合い少ないからアレだけど…正直、普段一夏君の良さを語りたくて仕方無いのだとか(本人を一度褒めちぎったら、口を利かないとかは幸い無かったけど…食事のおかずが三日間出来合いの惣菜とかになった事が有るからもう本人に言ったり、本人の前で話すとかはしない様にしてるとか)

 

もちろん、その時は一夏君居なかったしちゃんと話は聞いてあげた(向こうは休みだからって朝からお邪魔して話聞いてたら一夏君の帰って来る夕方までほとんどノンストップで語るのは私も予想外だったけど…ま、私も一夏君の事は素直に好きだから…特別苦痛な時間では無かったけど)

 

「…■■様?」

 

「!…ごめんクロエ、何か用だった?」

 

「いえ、心ここに在らずと言う感じでしたので…」

 

クロエの感性は合理的で雑な面の強い、母親の束と違って結構豊かだと感じる…特にこう言う、言葉を使った表現力なんかね…もちろん、何も難しい言葉を使える事が正しいと言う訳じゃない…ただ、それでも束の場合、あまりに色々感覚的過ぎて…正直日常的な会話ですら、束の場合主語が抜けてる上…擬音だけ多用させるなんて事も多いせいで翻訳機が必要だと感じてしまう事が結構有る(理論的で異常に細かい言い方する事も有るけど…その時は専門用語とか大量に並べるから別の意味で分からない、と言う場合も束には有る……ま、どっちにしても理解出来無い事には変わり無い…)

 

…ま、長い付き合いだし…私も全く分からないと言う訳じゃないけど…そもそも、束の言語の翻訳ってなると…必然的にそんな物、束しか当然作れないんだから…仮に実際に作って貰ってもそっちも多分…同じ様な感じになるんだろうな…と、いけないいけない…また思考が関係無い方向に…

 

「取り敢えず、今回必要な物はメモしてくれたんだっけ?」

 

「はい…えっと、こんな感じなのですが…」

 

一応、クロエはまだ…料理を苦手としている事も有り、どの料理に何が必要かなど基本的な知識が欠けている為に、例えばどの種類の食材をどれくらい買えば良いのかというのも当然分からないのでその辺は私に一任されている(と言うか、届くらしいから本来買う必要が有るのかは微妙では有るけど…まぁ、食材は最低限の量だけ買えば良いか…洗剤はそもそも腐らないし、余程で無ければ大量に有って困る訳も無し)

 

つまり、今回は切れている洗剤などの食べ物以外の消耗品について書いて貰ってる訳なんだけど…

 

「……こんなに、足りないの?」

 

「はい…」

 

「えっと…束からは普段届く、とか言われたんだけど…」

 

「基本的には食材が主で、洗剤は微々たる物でして…本来だったらまるで足りないです…そもそも、束様が掃除をろくにさせてくれないせいで逆に何とかなってる所も有りますが…」

 

あのニンジン型ロケットの中、結構広いし…その辺は正しくさもありなんって感じ…実際腑に落ちる面は確かに有るんだよね…束のだらしなさ、雑さのお陰で普段どうにかなってるのか…ま、それはそうと…

 

「クロエ、ごめん…一回スーパー出るよ。」

 

「え?」

 

「いや、これだけ必要なら今持ってるお金じゃ足りないから銀行…それに、行くお店もスーパーだけだとちょっと厳しいかも…」

 

つらつらとやるべき事を頭の中に並べて行く…この分だと、今日は買い物と掃除だけで終わるかな…

 

「取り敢えず銀行行くから……あー…いや、時間掛かりそうだし束に送って貰おうか…」

 

こうなれば、束にも徹底的に協力して貰わないとならない…ま、ありがた迷惑と思われそうだけど…束一人の居住スペースって訳じゃないし、クロエも巻き込まれてる事考えると放ってもおけない…

 

「もしもし…束?…うん…いや、実は銀行行って貰いたくて…うん…お店もスーパーだけだと…そうだね、ショッピングモールのレゾナンスまで送ってよ……ハァ…文句言わない、さっさと転送して?」

 

スーパーを出て、人気の無い路地までクロエの手を引き束に電話…渋っていた束に言葉を捲し立て、急かす…全く、誰の為にやってると思ってるのか…まぁ、実際束からしたらかえって迷惑に思うのは分からなく無いけど…

 

「……」

 

不安そうに私の顔を見上げるクロエの頭を撫でる…大丈夫、貴女は何も気にしなくて良いの。

 

「……あんな状態の部屋だと、貴女は大丈夫でも…クロエの健康状態には確実に影響が有るって言っても納得出来無い?…宜しい、早くして?」

 

さすがに娘の体調不良の原因になると言われれば、束も重い腰を上げる模様…と言うか、そこら辺ハッキリ言われないと分からないのは母親として色々不味いからさすがにどうにかすべきだと思う……まぁ、束だと普通の整理整頓すら難しいと思うけど…クロエは、教えれば何とか出来そうだし…せめてそれなら、娘にもう少し母親として協力して欲しいもの……あ。

 

「あ、先に貴女が借りてる部屋に転送して?荷物の確認するから…いや、貴女はこの程度の予定変更と追加注文程度でパンクする様な頭してないでしょ?良いから早く行動…と、やっと始まった…本当に色々時間掛かりそう…」

 

「■■様、大丈夫でしょうか…」

 

「娘の幸せ願えない様じゃ、母親失格だし…ま、大丈夫だよ。」

 

束はアレで、母親としての自覚はちゃんと有るみたいだし…

 

「■ちゃん。」

 

「じゃ、束…今日は取り敢えず貴女はタクシーの運転手って事で……何なら、運賃はちゃんと払うよ?」

 

「…いや、要らないけど…何で■ちゃんそんなにやる気なの?」

 

「…クロエの為って思えば、納得出来無い?」

 

「!…そうだね、クーちゃんの為だもんね!」

 

ま、実際私は暇なのが耐えられないと言うのがメインだけど…仮に後でぶっ倒れるとしてもこの考えかたは変わらないと思う…てか、あ。

 

「…束、例の部屋行くのにどれくらい掛かる?」

 

「普通にもう着くけど?」

 

「完全に忘れてたよ…シャワー浴びて着替えるから十分…いや、五分だけそのまま待ってて。」

 

結局私、まだ浴びてすらいなかった…

 

「…そんなに急がなくても大丈夫だよ?」

 

「貴女が良くても時間が勿体無いから……んー…クロエ、貴女も来る?」

 

「え!?」

 

普通にさっきの延長線上みたいな感じで誘った私も悪いけど、そんなに驚く?

 

「え!?クーちゃんと入るの!?なら、束さんも「束はちゃんと操縦に集中してて」っ…大丈夫!オートパイロット機能有るから!」

 

「……」

 

三人なら、もういっそお風呂にしてしまった方が良さそう…と言うか、気付いたのは今の上…ここ最近忙しかった私も、恐らく人の事は言えないと思うけど…何となく、クロエと束から独特の匂いが…多分、クロエはそもそも束と一緒に入るのが習慣化してて…束が入らないとクロエも基本、入らないんじゃないかな…コレは、駄目だ…どっちみち、入らないと…

 

「じゃ、入ろうか…三人だしお風呂にするとして…三十分くら……いや、待った…クロエ、お風呂掃除って普段してる?」

 

「一応洗剤は有りますが…束様の方針であまり…」

 

「えぇ!?掃除なんてしなくても入れるじゃん…」

 

「……」

 

シャワーなら以前も利用してたけど、あの時は疲れてたからあんまり周りの壁とか見て無かった…何となく今回は駄目な気がする…ま、一応見てから決めようかな…ハァ…休みだった筈なんだけど、もう今更かな…と言うか、コレホント駄目だ…取り敢えず、娘のクロエには束の方針に従うだけじゃなくて…掃除だけは例え強行してでもやる必要が有る事を何とか教えないと…う~ん…案外今回の休みの内一週間は一連の流れだけで潰れるかも…ま、変に遊びに行ったりとかするより…私は、結局こっちの方が良いのかもね…

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