「……」
床をデッキブラシで擦る…今の所洗剤は使ってない。水垢は時間が経つとこびり付くのは良く有るパターンだけど…全く落ちない訳じゃないし(と言うか、下手に洗剤使うと匂いとか色々…クロエに確認させて何だけど、この後すぐ入る事考えたらねぇ…)
「っ…コレ水垢じゃないね、カビだ…」
一応洗剤の有無を調べたのはこの為…さすがにカビに関しては洗剤使わないとそもそもどうしようも無く…そして、カビに関しては健康被害有るんだよね…さっさと落としたい所だけど…
「水分は拭き取るとして…まぁ、これに関しては洗剤付けて少し置いておくしかないね…」
ま、幸いそこまで規模も大きくない…何だかんだ、クロエは自分の意思でちゃんと掃除をしてたと言う証拠だね…実際見た感じ汚れの大半が水垢で、カビは少ない様に見える…それでも、三週間も使わず掃除もせずで放っておいたなら…そりゃこうもなるだろうけどね…とは言え、実際はパッと見で見えてた感じよりもっと酷いだろうと思ってたから…存外、拍子抜け。ま、楽で良いけどね…暇より良いと言っても、私も掃除がそんなに好きと言う訳でも無いし。
……そもそも自分の家でも無…やめよう、ここは親友が娘と住んでる拠点…まぁ、部外者の私が異様に広いお風呂場の掃除を…しかも一人でやる羽目になってる事実については…もう、仕方無いとしか言えない(母親の方は家事全般駄目で、娘はまだまだ子供…必然、他の…それも大人の誰かがやるしか無い…)
「ふぅ…付けて、置いとくなら…まぁ、トイレだったら素直に敷いたトイレットペーパーの上から掛ける一択なんだけど…ここ、ラップとか有るかなぁ…」
一応私も…毎日掃除出来てる訳でも無いから、カビの対処は時折する羽目になってるし…知識は有る…こう言う場合に必要なのはパック…つまり、今回だとカビてる部分の水分を除去してその上に直接洗剤を掛け(ま、噴射の方が正しいけど)そこにラップ等を掛けてしばらく置いておく…その後は水で流せばカビは落ちる…ただ…
「多分無いと思うけど…一応聞こうかな…」
問題はラップや、キッチンペーパーの類は確実にここには無いだろうって事…ハァ…ま、聞くだけ聞いてみようか。
「…で、有った?」
「すみません…」
「いや、良いの。多分そうじゃないかと思ってたし……クシュン!」
さすがに全裸でお風呂掃除は身体が冷えたらしい(ま、多少なりとも汗は掻いてるし)
「■ちゃん、大丈夫?」
「うん…大丈夫…」
「…例の水垢は大体落としたし、髪の毛も一通り回収したんでしょ?もう一回お風呂入っちゃわない?」
「……」
ガッツリカビだらけとかならまだしも、クロエが頑張って定期的にやってたらしく…本当にチラホラ有る程度だったり…ま、このまま入っても大丈夫だとは思う。
「…そうだね、これ以上待たせるのもなんだしね…じゃ、入ろうか。」
尤も、そう言った所でお湯が湯船に溜まらなければお風呂には入れない。取り敢えず待つ間に自分の身体を渡されたバスタオルで一通り拭き取って、身体に巻く…その後束に耳打ち…
『束…』
『ん?何?』
『クロエの事、褒めてあげて…彼女が普段から頑張って掃除してたお陰でカビは少なかったの…』
『えっと…どうやって褒めたら良いのかな…?』
「……」
それはさすがに普段やってるでしょうに…実際見た事有るし、束のキャラ的に二人きりだったらやらないとかは無いだろうと思う…そもそも来客来てる時じゃないとまともに対応しないとかなら、クロエもあそこまで束に懐かないだろうし…それはそうと、束は掃除の必要性なんて分からないからそう言う反応になるのは仕方無いか…ま、とは言え…
『いつも通りで良いよ。ただ束は…いつもの様に凄いって言って目一杯クロエを褒めてあげれば良いの。』
『……それで良いの?』
『束は確かにクロエの母親として必要な事は出来て無い…でも、私の見た感じ…最低限彼女を甘やかす事は出来てる。だから、いつも通りで良いの…』
とは言え、今回は褒めるべき事だから良いけど…時に叱る事も必要になるだろう…尤も、その辺については私も束も難しい…ある意味、すぐに暴力に訴えてしまう千冬の方がまだそこは出来ていると言える程にだ…一応殴った後…アレでちゃんと怒った理由なども説明するからね千冬は…実際、ちゃんと伝わってたから今の一夏君が在るとも言える…尤も、千冬の教育には穴が有るのは確か…だから、彼自身の努力も確かに有るだろう…ま、あっという間に私なんて超えて行くだろうね……つい、つらつらと考えてしまったけど…結局、今はどうでも良い話だ…
「ま、そう言う事なら……クーちゃん!」
束がクロエを呼び、色々捲し立てた後…彼女を抱き締め、撫で回す……多分クロエに意図が伝わってないけど、元々科学信奉者なのに日常では合理的な論理より…先ずは感覚が優先の束の行動に、一々理由や意味を求める事自体が…正直既に無意味だとも思うし、取り敢えずクロエは嫌がるどころか喜んでるから良いのだろう……まぁ、クロエの方は…実際喜びより、明らかに困惑の方が勝ってるのは分かるけど…ま、そう言う存在が母親なんだから仕方無いと思って貰うしか(科学者なのに普段の言動、行動の多くが非合理の塊で…他人にはかなり冷酷だけど、身内は基本…全肯定する)
……まぁ、私としては仮に束が自分の母親だったらと考えるだけでね…もう、正直色々キツそうだし(いやまぁ…私の実の母も割とアレなんだけど)御免被るとしか言えないんだけどね…それでも結局の所、クロエがやっぱり束が母親なのは嫌だと言う事であれば離れるのに手くらいは貸すつもり…
ま、実際クロエが疑問を持つ様に仕向けたのは私だからねぇ…あの様子を見るに今の所は心配無さそうだけど…最悪は、私がクロエを引き取るしか無いかな……千冬にも、自分にもしもの事が有った時は一夏の事を頼むとは言われてるけど…まぁ、さすがに束程では無いけど現状お金は有るし…引き取るのが二人になっても多分、二人が成人するまでは面倒見れる筈…その後は正直、私も積極的に手を出すつもりは無いけど…と言うか、確実に成人前でもう…あの二人は私の事なんて必要無くなるだろうしね…そもそも、あの二人育てるのに金銭面以外での苦労…多分ほとんどしないだろうし。
ま、あくまでもしもの話だし…今考えても仕方無いけど…
「ふわぁ……あー…」
気を抜いたら欠伸が出た……いやまぁ、真面目にずっと忙しかったし…そこからずっとこうして動いてるから眠くなっても仕方無い、というもの…
「■ちゃん!」
「束……もう良いの?」
「うん!…後、もうお湯溜まったから…」
「そう…じゃ、行こっか…」
ちなみに肝心の湯船の方は…時間も無いし、三人で入る事も考慮して…いくつか有る中でも一番大きい湯船を軽く掃除しただけだったりする……まぁ、幸いカビはほとんど無かったからねぇ……っ…正直気張って無いと、もしかしたら向こうで寝てしまうかも…今までも何度か、お風呂で寝落ちした事有るけど…アレ後で酷い頭痛起こしたりするからなぁ……あ。
「一応最低限掃除したけど…完璧に水垢落とせたって訳じゃないし…二人共念の為、足元には注意して?」
「りょうか~い!」
「はい。」
母親の返事の方が不安…クロエなら、転けそうになっても多分ギリギリ受け止められるけど…正直、束は無理だなぁ…風呂場で転けるって実は結構危ないんだよね…何せ、裸だから……まぁ、結局束を信じるしかないんだけど…っ…眠い…と言うか、人の事気にしてる場合じゃないね…今の状態だと、下手したら私が何かやっちゃいそうだし…ま、とにかく…身体洗って、湯船適当に浸かってさっさと出よう…