親友の妹に転生しました   作:三和

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クロエと束謹製のニンジン型ロケットに戻り…結構量が多くて、二人で苦労して運び込んだダンボール箱を開けて行く(クロエはIS起動して貰えば生身の私より力有るから)……いや、涙目でこっちに視線送って来られてもねぇ…悪いけど、今は対応出来無いよ束…大体、現在進行形で母さんに抱き着かれてるのも…時折頭撫でられるのも嫌じゃないんでしょうに…何せ、撫でる時邪魔にならない様に…いつものウサ耳型デバイス外してるくらいなんだから…

 

ま、とにかく…顔を真っ赤にして、何かプルプル小刻みに震えてる親友の事は今は見なかった事にする。……で…

 

「何かもう、見事に食べ物ばかりだね……それも、ニンジンばっかり…」

 

開ける箱開ける箱…とにかく蓋開ける度、目に飛び込んで来る…オレンジ色のソレ(たまに赤いの有るけど)…箱に貼られてる伝票確認したら、一見同じ様に見えても品種はそれぞれ違うみたい(何かほぼ、見た目は唐辛子にしか見えないのも有ったね…)……あ、これは洗剤か。

 

いやもう…ちゃんと他の食材や洗剤などの消耗品入ってる箱も有るには有るんだけど…大半はニンジンニンジンニンジン…束って、そんなにニンジン好きだっけ?そもそも…束は料理全く出来無いし、娘のクロエだって今の所そう出来る訳じゃない…まぁ、下手に冷凍食品とか頼むよりは長持ちしそうだから…チョイスとしては決して間違ってはいないんだけど…それにしたって何でこんなにニンジンばかり…?

 

「……えっと、クロエ?」

 

「…束様が…『束さんはウサギさんだからね!やっぱり食べるならニンジンでしょ!』…と、仰りまして…」

 

地味に頑張って、束の真似をするクロエが可愛過ぎて抱き締めそうになったのを必死で堪えたのは余談(そう言えば怒りもそうだけど、これも多分…"感情"だよね…今日初めて実感したけど…私、本当に全く無い訳じゃないんだね…まぁ、これが"愛情"なのかと言われたら…私としては多分違うとしか言えないんだけど…)

 

「…って言っても、これは調理しないとどうにも「束様は時折、生で齧ってまして…」……」

 

クロエはまだ、まともに作れる料理ってそう無い筈…と思って言った言葉は思わぬ内容に遮られた…いやまぁ、束ならそうだよねぇ…と言う、納得もしてるんだけど…あー…コレ、やっぱり私だけじゃ色々無理かも…本当に母さん呼んで良かった。

 

「束ちゃん…今日はウサ耳着けてないのね?」

 

「っ!…それ、は…」

 

「…着けて欲しいな?お母さん、束ちゃんの可愛い姿が見たいな?」

 

「うう…」

 

……さすがにそろそろ止めた方が良さそう…と言うか、母さん無自覚にやってるけどそれもう母娘とか、そう言う感じじゃなくなって来てる…ちなみにああやって母さんが抱き締めるのは(基本、私たちの中では兄さんだけが避けるのに成功してる…まぁ、絵面的に相当不味いから…そうしてくれた方が良いのは確か)母さん曰く、愛情表現でも有るけど…何かこう、元気が貰えるとか何とか…まぁ、本人に聞いてはいても…私にも意味が分からないので具体的に説明しろって言われても困るんだけど…ハァ…それはそうと、束がもう限界だね…それに、いい加減母さんにも自分の勤めを果たして欲しい所だし…

 

「母さん…いつまでも束で遊んでないで、ちょっとこっち来てくれる?」

 

「あら、呼ばれちゃったわ…じゃ、束ちゃん?また後でね?」

 

「……」

 

……変に嫌がると泣かれて、収集着かないから仕方無い面は有る…基本、あの人はいつも相手のギリギリのラインを見極めた上で攻めて来るから本当に質が悪い…何せ、大体"アレ"やられた人は皆堕ちるからね…ちなみに、母さんと昔から付き合いの有る同性の友人は皆母さんの"アレ"を嬉々として受け入れてる人たち…あくまで"友人の一線"は超えてないとの事だけど…それにしたって、既婚者の人が旦那さん連れてウチに来てもやってたから…結構な割合で旦那さんの嫉妬を煽ってるのが私でも見てて良く分かる…とは言え、母さん博愛主義みたいだから実際は旦那さんの方にもやるし…結局怒るに怒れなくなるみたいなんだけどね…あれだけ愛情表現大胆なのに純日本人だって言うんだから、娘の私からしたら本当に訳が分からない人…

 

「どうしたの、■■ちゃん?」

 

「……」

 

私、もう大人なんだからちゃん付けやめて?とか言ってもまた泣かれるのが目に見えてる…スルーしか無いね…

 

「コレ、束が定期的に注文してる食材とからしいんだけど…」

 

「あらあら…ニンジンばかりねぇ…」

 

「束、コレ時々生で齧ってるんだって…」

 

「あらぁ…」

 

……基本、緩くて優しい以外の印象を抱かれない私の母親…でも、今回は明らかに怒ってるのが私でも分かる…

 

「クロエの事も有るし、これはちょっと…」

 

「そうねぇ…ま、とにかく…先ずは、コレをどう処理するか考えましょうか…」

 

普段は面倒臭いとしか思わないパターンがほとんどだけど…この人は、こう言う時は本当に頼りになる…

 

「私もあまり、ニンジンだけのレシピは知識が無くて…」

 

「ま、そもそも私も教えてないしねぇ…でもまぁ、インターネット使ったら結構出て来るわよ?」

 

まぁ、有るだろうなと思う…さて。

 

「…それで悪いんだけど、この後のご飯とか…色々任せても良い?私、これから洗剤とか買いに行ってここ…掃除しちゃわないと…」

 

うっかり寝過ごしてしまったけど…まだ作業は全然終わってないのだ…

 

「そうねぇ…分かったわ、私もその為にここに来たし。」

 

「じゃ、お願い……クロエ、行こっか?」

 

「はい。」

 

頭の中で色々纏めているのか、その場でしゃがみ…動かなくなった母さんを置いて転移装置の有る部屋に向かう…前に…

 

『束?解放された気になってる所悪いけど、まだ終わってないよ?この後も母さんの相手、お願いね?』

 

『ええ!?』

 

小声なのに叫ぶとか、器用だなぁ…(まぁ…表現として、正しくは無いのは分かるけどね…)

 

『じゃ、宜しく。』

 

ほぼ悲鳴だけど、半分喜んでる様にも聞こえる束の声を無視してクロエの手を引く…

 

「宜しいのでしょうか…束様は…」

 

「ん?ああ、大丈夫大丈夫。アレで束、全然嫌がってないから。」

 

「…そうなのですか?」

 

「クロエと同じ…まだ戸惑ってるだけだよ。束もあんまり、親から愛を注いで貰ってないだけだから…」

 

まぁ、アレは仕方無いとも思う…他の人と我が子がズレている事は中々認めたくないのも分かるからねぇ…かと言って、非が無いとは言えないけど…尤も、しっかり話し合いをしようとせず…結局両親を完全に拒絶した束も良くないと言えば良くない…そう言えば妹の箒に関しては、見かねて私の方で色々したけど…今はどうなってる事やら…束の場合、一度身内判定してしまうと仮に悪意を向けられていても中々理解出来無いだろうし…その癖、束本人は堂々と愛してる!と言うんだろうからなぁ…ハァ…

 

「ま、母さんは基本…"諦めない人"だからねぇ…大丈夫でしょ…束は、これから大変だろうけど…」

 

母さんは言ってしまえば、元々完全な凡人…その代わり、あの人は絶対折れない。例え、完全ゼロからのスタートだとしても…一度始めた事は、何が有ろうと絶対に…投げ出さない。あの人は…嘗て尋常では無い努力で、兄さんの上位互換とも言える父さんに釣り合う為…食らいつき、しがみついた人だからね…(実は父さんも色々…かなり凄いんだよね…普段は全くそんな感じ無いけど……ちなみに、父さんの方が初めから母さんにベタ惚れだったから…そもそも無理に追い付かなくても元々捨てられる心配は無かったり…)

 

ま、私だったら確実に…途中で諦めてるね…(だから、私も未だに千冬に何も言えないんだし…)

 

「ま、クロエの事も含めて…あの人は、絶対悪い様にはしないよ…私も、協力するし。」

 

……あの人が本気になったら、私の出る幕なんてほとんど無くなりそうな気はする…それでも、この二人の指導するってなったら細かい雑用などはとても手が回らないだろうし…かなり言い方は悪いけど、二人はほぼ"要介護"ってレベルだしね…そこら辺は、私がやる事になるかなぁ…(ちなみに、千冬に関しては"打つ手無し"…私の知る限り…母さんが、今まで唯一手を引かざるを得なかった案件だったり…)

 

「その、宜しくお願いします…」

 

「それは私より母さんに言おうね?後はほとんどあの人に丸投げするしか無くなるだろうし…」

 

私は良くそう言われるけど(あんまり認めたくないけど…)甘んじてその評価を受け入れた上で言えるのは…あの人は私以上の"お人好し"…と言うより、最早それが半ばライフワークみたいになってる人なんだよね(もちろん、さすがに誰彼構わず助ける訳では無いけど)そして、あの人に妥協は無い。

 

「アレで結構あの人厳しいから、覚悟した方が良いよ?」

 

割と私以外に、母さんの友人の中にも弟子だと名乗る人が居る…そして、教えを受けている最中…あの人から受けた印象…それが、私と弟子の人たちでほぼ一致していた…

 

「先生役やってる時は、笑顔で結構キツイ事言える人でも有るから…」

 

"笑顔の鬼"…それがあの人に対する、私と弟子の人たちの共通認識…そして、反論するとあの人が号泣するのも同じだったり…ペースが乱されて、その内…逆らえなくなるんだよね…それでいて、本人は計算してやってる訳じゃないみたいだからホントとんでもない…

 

「……」

 

「怖くは無い、とだけは言うね?それでもこっちの今出来るギリギリを見抜いて攻めて来る人だから…でも、"お母さん"の為だと思ったら頑張れたりしない?」

 

「!…はい、私は…束様の為なら…!」

 

「うん、決意は良いけど…そう気負わなくて良いよ…束だって頑張ってくれるから…」

 

と言うか、仮にも"母親"を名乗る以上…あの人は今回、束には温情を掛けないだろう…寧ろ、クロエには逃げて良いと言う筈だ…そもそも、まだまだ子供のクロエに負担ばかり掛けてる時点で…あの人からしたらもう言語道断だろうし。

 

「それでも私は…!」

 

「クロエのそれを否定してる訳じゃないよ?…ま、その辺の諸々は全部…あの人と束に言うと良いよ。二人とも、全部受け入れてくれるだろうし…」

 

とか話してる内に転移装置の方に着いた……さて。

 

「ま、とにかく先ず買い物だね…じゃ、行こっかクロエ?」

 

「はい。」

 

……銀行は、まだギリギリ開いてる…先寄らないと…ハァ…結局、私は休めそうにないね…ま、実際…私はその方が気は楽なんだけど。

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