取り敢えずクロエの操作でレゾナンス近くの路地の辺りに……誰にも見られてないね…クロエは使い慣れてるだろうし、タイミングをミスるとは考えにくいけど万が一は有るからね…さてと。
「念の為聞くけど…クロエは銀行に行った事は有る?」
「…いえ、無いです…」
ま、そもそも外出自体…そんなに無いんだろうなと思う…全く、束は本当に…せめて何処かに遊びに連れて行くとか、有るでしょうに……ハァ…ま、今は良いや…
「…ISを展開していれば目は見えるだろうけど、一応私から離れないでね?」
クロエに向かって右手を差し出す…
「?…何でしょう?」
首を傾げられた…うん、可愛いなぁ……いや、そうじゃなくて…
「えっと…まさか、束と手を繋いだ事も無いとか?」
「!…いえ…それは有りますが…」
……あ、これは私が悪いのか…とは言え、基本私の方からそうする事が多いとは言え…まさか、直接言わないと伝わらないとは思わなかったなぁ…
「ごめん…言わないと分からないよね…万が一の事が有るから手を繋ごうって事……ちなみに、私と手を繋ぐのは嫌だったりする…?」
実際、こうしてクロエにその辺直接聞くのは初めて…嫌なら仕方無いけど…それでもハッキリそう言われたら、私でもさすがに少し、ショックを受けるかも…(今までのはクロエに気を使わせてた事にもなるからね…)
「っ…いえ、そんな事は…ですが、結局■■様は宜しいのですか…?」
「ん?何が?」
「その、私と…手を繋ぐのは…」
「?…逆に、何で私が嫌だと思ったのかな?」
と言うか、私からこうしてるんだからそんな訳無いでしょうに…てか何なら、そもそも今回が初めてって訳でもないのに…
「…■■様は以前、私の眼を見て…可愛いと…そう、仰ってくれました…」
「うん、言ったね…ちなみに、凄く綺麗だとも思ってるよ?」
通常では有り得ない程の濃い黒の眼球に金色の瞳…幻想的で、とても美しい…私は感情が欠けてる以上、実際にそう思ってると自信持って言える訳では無いけど…それでも、あの時は不思議と…そんな感想が出て来た。何より、それが"クロエの眼"だと考えたらそれに輪を掛けて可愛いと…確かに、そう思った。
「嘗て私は…普通の人と違うこの目のせいでその…バケモノと言われて「誰にかな?」…え?」
私が今現在感じてるコレが何か…今は、ハッキリと分かる…ああ…私、今…凄く怒ってる…
「ねぇ?教えてクロエ?それは、誰…?」
「!…っ…嫌、です…言いたく、有りません…」
……怯えるクロエの声を聞きながら少し、我に返る…いやいや…クロエを怖がらせてどうするの、私…
「ごめん…私、クロエにそんな顔させたい訳じゃなかったの…ただ、教えて欲しいの…ねぇ?誰がそんな事言ったのかな?私に教えて?」
「…嫌です。」
「何で「もし言ったら…どうするつもりなんですか?」束に頼んで、その人…もしかして複数なのかな?その人たちの所に行くよ。」
「…行って、どうするんですか「クロエは気にしなくて良いよ…で、教えてくれる?」…嫌です…絶対に…」
「どうして?…ねぇ、どうして?…何でその人たちを…貴女が庇うの?」
っ…今かなり低い声が出てた…抑え、ないと…私は、クロエに当たりたい訳じゃない…
「違います…そうじゃ、ないんです…教えたら貴女は…彼らを殺すつもりなのでしょう?」
「…ふぅ…そうだねぇ…確かに、私はそうするのかも知れない…でも、別にそれで良くない?」
結局は私も束と同じ…いや、束以上にかも…"身内"以外は元々どうでも良くて…加えてその、束の言う"有象無象"にクロエがそんな事言われたって言うなら…"それら"が生きていないといけない理由が…私は全く、分からない。
「っ!…嫌です…!何が有っても言いません…!」
「だから…何で?」
「私が…貴女にそんな事をして欲しく無いからです…貴女が、人殺しになるのが嫌なんです…」
「私はクロエの為なら出来るよ?」
千冬と同じくらいとは言えない…でも、私は貴女の事も十分に大事…っ…私の頭の中に居る冷静な自分が、それでも人殺しは良くないとずっと言ってる…っ…うるさいなぁ…クロエの為なら良いでしょ別に…
「…でも、私は嫌です「それはもう分かったから…理由を教えて?」…それは、私にもまだ良く…それにどちらにしても…もう、無理です…」
「?…無理?」
「私にそう言った研究所の方たちは…既に束様が研究所と共に、この世から跡形も無く消していますから…」
そう言われた瞬間、私の頭が急激に冷えて行くのが分かった…
「もう殺してるの?束が?」
「ええ。」
「…そう…なら、私の出る幕は無いね…」
落ち着くと同時に、クロエへの申し訳無さが湧き出て来る…
「…ごめん…怖がらせちゃったみたいだね…」
何とか笑顔を作る…出来てるかなぁ…いつも、私どうやって笑ってたっけ…
「いえ…貴女が元に戻って良かったです…」
「そんなに私、普段と違ってた…?」
こうして落ち着いてしまうとさっきまで感じていた目の前が赤く染まりそうな…"衝動"って、言えば良いのかな…それがどう言うモノだったのか、自分でも良く分からない…アレは、本当に"感情"だったのだろうか……まぁ、良いか…分からない事をいつまでも考えてても仕方無い。取り敢えず、今思ってる事をクロエに伝えないとね…
「…一つ、クロエに教えておくね?貴女はバケモノなんかじゃない…私の事を考えて、怖がりつつもこうして止めてくれた優しい貴女が…そんなモノの訳が無いの…もし、バケモノが本当に居るとしたら…それは、私みたいな存在を言うんだよ?」
「え…」
「例え、見た目がどれだけ他の人と違っても…自分以外の誰かの事を考えて、助けようとする貴女は間違い無く人間だよ。さっきもチラっと言ったけど、バケモノは…他人に一切の興味を持たず、躊躇も無く…簡単に殺そうと考えられる私みたいな人でなしの事を言うの…束でさえ、きっとここまで酷くない…彼女なら、どれだけろくでもない奴を前にしても…それ以外のやり方も考えられる筈だからさ……分かった、クロエ?」
「…分かりません。私から見た貴女は…とても優しい人です…」
「…そっか。クロエにはそう見えるんだね…でも違う。ま、その内分かるよ…」
きっと…嫌でも、ね…
「……」
「暗い話しちゃったね…早く銀行行こうか。」
「はい…■■様?」
「何?」
「…私は、絶対認めませんから…貴女はバケモノでは無く…人間です。」
「そう……ありがとう、クロエ。」
ま、そう言ってくれるのは私も嬉しいとは思う…でも、結局違うものは違うんだよね…ま、これ以上言っても今はまだ…クロエは分かってくれないだろうからやめるけどさ…