銀行のATMに続く列に並ぶ……クロエは若干緊張気味なのか、繋がれた私の手に少し力は入っていたけど特別問題は無く、とても大人し……いや、問題はゼロじゃないけどね…
「……」
「クロエ?…大丈夫?」
「はい…」
彼女の身体が小刻みに震えている…まぁ、気持ちは分からなくも無い…私たちに何度か視線が向けられてるからね…
「…大丈夫だよ、この人たちは…」
「そうなのでしょうか…」
「うん…ま、もう少しで終わるからさ…」
好奇の視線では有るけれど…幸い、悪意は感じない。本当にクロエの事が物珍しくて見てるのだろう…尤も、クロエもそうだけど…彼女を連れている私も含め、二人とも日本人には見えないのも原因だろうかと思う…後、髪色が全然違う事も有って私たちが一体どう言う関係か、色々想像してるのかも知れない…ふぅ…さて。
『この人たちはね、皆…貴女が可愛いから見てるの。』
「っ!」
彼女の耳元で囁く…ま、正直…強ち間違いでも無いんじゃないかと思う。
『…今、凄く可愛いよ…クロエ。』
「~~~~!…や、やめてください…!恥ずかしいです…」
今、クロエは顔を通り越してもう耳まで赤い……うん、空気が変わった…やり口はほとんどクズのそれだと思うけど、私じゃ…こんなやり方しか思い浮かばない…ごめんね、クロエ…ま、露骨に排他的に扱われるよりは…この方が、クロエも気持ちはまだマシだと思う…
ちなみに、邪な視線を向けて来てる人は私もさすがに分かるので…しっかり睨みを利かせておく…仕向けたのは私だけど、それでも…そう言う目で、彼女を見ないで欲しい…と言うか、向こうはどう見ても女性なんだよね…多様性の時代を迎えてるとは思うし、そもそも私は人の事を言えないけど…そうは言っても、性別関係無くそんな欲望に満ちた視線は…まだ子供の上、今時の子供に比べて…かなり純粋な彼女にはさすがに向けないで欲しいもの…ま、この際仕方無いともちょっと思うけどさ…本当に今のクロエ、凄く可愛いから…
取り敢えず、私たちが銀行を出る直前まで…向けられる視線は無くならなかった…
「酷いです…」
「ごめん…」
出て少し通りを歩いて辺りで、冷静になったクロエが私の意図に気付いたのだろう…こうして少し、詰られてたり…
「レゾナンスには日本人以外も結構居る筈だから…さっきみたいな事にはならないと思うよ?」
「……」
黙りか…とは言え、クロエの怒る顔は正直怖いと言うより…やっぱり可愛い、と言う感想しか出ない本当に微笑ましいもの…ま、それはそうと…早く行きたい所(通りに突っ立ってると邪魔になるし…)それでも、今の彼女をこのままにして行くには…私的にも色々アレな感じでは有る(クロエの精神衛生上も良くないし…)
「んー…どうしたら機嫌直してくれる…?」
「…それなら、一つお願いが…」
「何かな?多分、余程の事以外…大抵の希望は叶えてあげられるよ?」
「……いです…」
「?…ごめん、良く聞こえなかった…もう一度言ってくれる…?」
もちろん意地悪とかじゃなく、今のは…声が小さ過ぎて本当に最初の方が聞こえなかった…
「その…頭を撫でて欲しいんで「……」あ…」
今度は聞こえた。取り敢えず空いている左手で頭を撫でる……サラサラだ…さっきまでは結構ごわついてたけど、お風呂で結構念入りに洗ったからね…指の通りがとにかく良い…
「そんな事で良いなら私もお安い御用だけど…本当にそれだけで良いの?」
「はい…貴女に、撫でて欲しいんです…」
……私、結局何でこんなにクロエに懐かれてるんだろう?正直、母親の束より慕われてる気がして来る…まぁ、悪い気はしないし…たったこれだけの事でこんなに嬉しそうな顔見せられたら…私ですら、もう役得って感じがして来る…ま、これなら腕が動かなくなるまで撫でたって良い……んー…正直、これだけだと治まりつかないかも…千冬と同じく、彼女の笑顔にももっと代価を払いたいと思えて来る…
「取り敢えず…そろそろ良いかな?」
「はい…ありがとうございます…」
手を退けると、分かりやすくクロエの顔が曇る…従ってくれるのはありがたいけど、正直彼女は聞き分けが良過ぎると思う…別にもう少しワガママ言ってくれて良いんだけどなぁ…実際、束のソレに比べたら…ね。
「クロエ?」
「はい、何でしょう?」
「…いや、やっぱり良いや…」
「?…はぁ、分かりました…」
取り敢えず向こうに着いたら…先ずはクロエに何か買ってあげようと決める…ま、本人にはまだ言わなくて良いだろう…う…これじゃあ、一夏君に何でもかんでも買ってあげてる兄さんの事言えないなぁ(大体、私だって本当は一夏君にもっと色々買ってあげたいんだけどね…)とは言え、結局クロエが可愛過ぎるからいけない…ま、こんな可愛いくて良い子なら色々してあげたくもなるよねぇ…