ブティックで若干のハプニングは有ったもの…取り敢えず、服の購入も無事に済み…私たちは店を後にする…いやぁ…にしてもまさか、選んだ服全て抜群に似合うとは…私のチョイスも良いんだろうけど、それ以上にクロエがとにかく素材としてあまりにも優秀過ぎる…思わず今日だけで、クロエの画像フォルダ作れる程には携帯で何枚も写真撮っちゃったよ…ふぅ…母さんと束、それから千冬と一夏君…皆にもちゃんと送らないとね…んー…兄さんは別に良いか…どうせ、母さんか束辺りが何処かのタイミングで見せるでしょ……さてと。
「…クロエ、疲れてない?」
「……いえ、大丈夫です…」
…それは大丈夫な返事じゃないね…
「ごめん…つい夢中になっちゃって…後は通常の買い物だけだからもう少し我慢してくれる…?」
「はい……ところで…」
「ん?何?」
「…重くないんですか?」
「ああ、コレ…?全然問題無しだね。」
右手はクロエと繋ぎ、私の左手には先程買った服が入った紙袋が五袋ほど有ったり……多くの女性は一度は経験有るかと思うけど、服って一着一着はそうでも無いんだけど…たくさん有ると結構手にずしりと来るんだよね…何より、服って言うのは単純に"大きい"…大抵は紙袋に入れて貰うしか無い上、一つの紙袋にそう多くの衣服は入らないので…特に大人用の服を何着も買ってると自然とこうして大量の袋が手元に来る事になる…
「…私、持ち「大丈夫大丈夫…気にしないで」…ですが…」
いや、ISの補助有りきだとしても…さすがにこれはクロエに持たせたくない。何せ、結構腕や肩に反動来てるから…(絵面も何となく悪いし…)
「大丈夫な様には見えな「少なくとも、クロエが思ってるよりは大丈夫だから…」……」
まぁ、そう見えないのは分かる…と言うか、重さ以上に…正直、単純にこの量はかさばって邪魔とはさすがに私も思う(クロエの服は元より、束…それから千冬の服まで買ってたら自然とこんな感じに…)…ふぅ…とは言え、ここで無理に押し切るのはなぁ…クロエにずっと不満そうな顔をさせるのは私も嫌だし……あ、そうだ…
「クロエ、千冬の身体能力が常人のソレを超えているのは知ってる?」
「はい…それなら以前、束様から…」
「…じゃあコレは聞いた事有るかな?その千冬と互角の試合が出来るのが私…要するに、私は千冬の異常な腕力から繰り出される剣撃を受け止められるだけの筋力は有るって事……理解出来た?つまりこの程度じゃ、私にとっては本当に何の問題も無いって事だよ。」
「…そう言う事で有れば…」
微妙に納得してない感じ…いや、さすが…貴女はやっぱり鋭いね…結論から言えば、実は今のは半分嘘。確かに、私は一時で有れば千冬の一撃を受け止める事は出来る…とは言え、そう何度も真っ向から受けられる程じゃない…実際やったら、私の腕が良くて数日は使い物にならなくなるだろうね…(と言うか、腕は元より…確実に竹刀や木刀が折れてとても試合にならない)
なので、私は基本は千冬の一撃を流す様にしてたり…いやぁ…普段から千冬と戦ってたら、そりゃ筋力も確かに上がるだろうけど…どちらかと言うと技術の方ばかり伸びて行くんだよね…当然その辺に居る学生に負ける訳無いから、あの頃の剣道の大会では千冬を除いて負け無しだったなぁ…と言うか、毎回大会の最初か最後に味方陣営なのに二人で戦わされてた私たちの扱いって…そもそも私が千冬に勝てるわけないし、結構苦い思い出だったり……また脱線したけど、早い話…結局普段の私はほぼ一般人と同程度か、あるいは精々少し上程度の身体能力しか無いって事…いやまぁ…社会人になってからは運動もサボり気味だったしね…最近になって、束のラボにお邪魔させて貰って色々やってるけど…やっぱりブランクは大きいだろうしね…
…ま、なので今現在…左腕が文字通り悲鳴をあげてたり……と言うか、今単純に腕が痛い…うー…これからする買い物終わるまでは我慢しないと…こりゃ、明日は筋肉痛でヤバいかなぁ…と言うか、買ったのが千冬と束の服だけだったら普通に耐えられただろうけど(それぞれ五着程度)…この場合…つい、大量に買ってしまったクロエの服が余計なんだろうね…あー…もう少し考えるんだったなぁ…
「…心なしか、顔色が悪い様に思うのですが…本当に大丈夫ですか…?」
「大丈夫…」
声に張りがない…っ…これはバレて……いやまぁ…そもそも、初めから薄々気付かれてはいるんだろうけどね…っ…それでも、ここはやっぱり大人として…!
「…■■様。一つ、提案が有るのですが…」
「ぜぇ…ふぅ…何…?」
少し深めに呼吸して、何とか体力の消耗を気付かれない…様に……っ…キツイ…!コレは正直本当にキツイ…!さすがに気の所為だと思うけど…何か、時間と共に負担もどんどん大きくなって行ってる気が……!
「…この後も色々買う事になりますし…先に、今持ってる荷物を置きに一度戻りませんか…?その、邪魔になりますし…」
「……あ。」
クロエに言われて漸く思い出す…そっか、すぐ向こうに戻れるんだったね…完全に忘れてたよ…
「…ふぅ…ふぅ……そうだね、さすがに一度戻ろうか…」
正直、悩んだフリとかも今はもう無理…いざ戻れるとなったら、とにかくさっさとコレ置きに行きたいしか考えられなくなった…ふぅ…やれやれ…
「……大丈夫ですか?」
「大丈…ふぅ……やっぱり分かっちゃう?」
「…と言うか、寧ろ最初から気付いていたのですが…ちなみに、先程の話が全て嘘では無いのも分かります…」
一部盛ってる事に気付かれてる…ホント、凄いねクロエ…案外突き詰めて行ったら最終的に色々な意味で束を超えて行くかもね…何せ、束の人として一番の弱点は他人の気持ちに寄り添えない事だからね…下手したら普通に上位互換…
「ハァ…何か、ごめんね…?」
「…いえ、寧ろ…少し安心しました…」
「?…安心…?」
何で…?何処にクロエが安心する要素が有ったの…?
「貴女の感情が全く無いわけじゃない事が分かりましたから…」
「そう……」
確かに…普段ろくに意識した事が無かったけど、私も一応有るには有るんだね…感情が。
「実を言うと、少し不安だったのです…貴女の感情の大部分は怒りで占められているのでは無いかと…」
「そう…私の事、怖かった…?」
「先程は少し…でも、今は怖くありません。」
「どうして?自分の事なのに…私自身、制御も出来て無いんだよ?」
「貴女は…やっぱり優しい人だからです…」
「…一体、一連の流れの何処からそう思ったのかな…」
「私にその紙袋を持たせてくれないのは…私に、負担を掛けさせない為なのでしょう?」
「……」
ホント凄いよ、貴女は…でもね…
「…先に謝っておくね?ごめん…残念だけど、それは私の優しさじゃなくて…結局、それが大人として当たり前の事だからだよ…大人はね、子供に必要以上の苦労をさせちゃいけないんだよ…」
「その当たり前を自然に出来る貴女は…絶対、優しい人です…私が、保証します…」
クロエ…貴女はやっぱり純粋過ぎるよ…悲しい事だけど、この世界は優しさよりも、ドス黒い悪意に満ちている…私は貴女に傷付いて欲しくないから…少しは、疑う事も覚えて欲しいな…
「そう……ま、クロエがどうしてもそう思いたいなら…今はそれでも良いと思うよ。」
尤も、ずっと辛い境遇に置かれていたクロエには…もうしばらくはただ綺麗なモノだけを見て欲しい…そこを教えるのは…決して、今じゃなくても良い筈だから…
「私は、貴女を信じます…きっと、それが本来の貴女なんだと…そう、信じてますから…」
それは間違い無く無いけどね……ホント、よりによって…こんな私の事なんて無邪気に信じちゃって…私自身でさえ、いつまで今の姿を演じてられるか分からないのに…ま、だけどさ…
「ふぅ…じゃ、一旦帰ろうか?」
「はい!」
未来がどうなるかなんて分からない…それでも、この笑顔を見ていたら…もうちょっとだけ頑張ってみようか…不思議とそんな風に思えても来るのだ…例えどれだけの無理を重ねる事になっても、本当にギリギリのその瞬間まで…私は、"人間"でいようってね…ふぅ…全く、今日だけで貴女の優先順位が千冬と同じくらいにまで一気に跳ね上がっちゃったよ…クロエ。
もし、貴女の母親が束じゃなかったら…きっと無理矢理にでも貴女を引き取って私が育てようとしてるだろうなって…そう、確信出来ちゃうくらいにはさ……ふぅ…貴女の母親が束で良かったよ…彼女なら、何だかんだ貴女を不幸になんか…絶対しないだろうからね…少なくとも、もう今の時点で…私なんかに引き取られるよりは遥かに幸せだろうしね…
「…■■様?」
「…ん?何?」
「何か有ったのですか?」
「え?」
いや、この短時間で別に何か起きるとか無いでしょ…
「えっと…何が?」
「その…さっきまで何処か、悲しそうな顔をしていたので…」
……私が?
「う~ん…それはさすがにそれはクロエの勘違いじゃないかな…」
寧ろ…今私は、貴女と言う存在に出会えて良かったって本気で感謝してる程だし…悲しいなんて有るわけ無い。と言うか、そもそも私にそんな感情は無いんじゃないかぁ…今回感じられた怒りなんてのは本当に特殊な例だろうしね…実際今まで本気で怒った経験なんて、全く無いぐらいだし……うん、やっぱり有り得ないね。
「そうなのでしょうか…」
「うん、無い無い……ふわぁ…」
あー…何かまた眠気が…
「…眠いのですか?」
「んー…実はまだ少しね…ま、大丈夫だよ。」
眠かろうが…先に買い物は絶対終わらせないと駄目だからね…ふぅ…とにかく、さっさと戻りますかね。