「ん~…♪」
「…ハァ…母さん、そろそろ離して?私、買い物に行かないと…」
「ん~…もうちょっとだけ…♪」
「ハァ…」
現在、三人の様子を見に行った私は…こうして逃げる間も無く母さんに捕まってたり……ちなみに、そこであからさまにホッとしてる二人に関して思う所は無い…実際、母さんしつこいし…私も毎回、母さんと合う度にこんな感じだし…気持ちは分からないでも無い…兄さんは逃げちゃうだろうし、父さんは昔の事は又聞きだから何とも言えないけど…私の知る限り、今の父さんは何をされても基本…多くの場合はただニコニコ笑ってるだけの人だから、反応が薄く感じてつまらないんだろうと思う(今でも相思相愛なのは確かだろうけど)
どちらかと言えば、底無しに優しい代わりに…本人はかなりの寂しがり屋…総合的に言えば、昔からそんな感じなのが私の母親だから…親しい人には、それが目上の人とか…ビジネスライクな付き合いをしてる人でも無い限り…プライベートで出会う度に先ずは抱き着く、と言うか…こんな感じでほとんどしがみついて頬擦りしたり、相手の匂いを嗅いでみたり…あちこち撫で回してるのが定番では有る…それでも、性的なものは全く感じられないし…ほとんど人懐っこい犬みたいな人……いやまぁ、そもそも…仮に、実の娘の私にこうしてるのが"そう言う事"だったら…私もちょっと困るけどね…まぁ、さすがに…無いとは思いたい…と言うか、親愛表現のスキンシップでこれなら…結局、父さんと二人きりで…"そう言う気分"の時とか一体どんな感じなのかって…う~ん…ちょっと、考えたくないなぁ……まぁ、その辺は今は置いといてだ…
「……いや、ちょっとっていつ?もう外、暗いんだよ?」
私が居眠りしたせいも有るとは思うけど…と言うか、電話して出なかったのを確認してすぐ…クロエを寄越してくれたんだろうけど…母さんに抱き着かれた状態でそれが出来たと言うなら、 もう少し早く迎えを出して欲しかった…は、さすがにワガママか…何せ、その後は私からの電話も出られなかった程だしね…
「ん~……そうねぇ、じゃ…買い物は私が行くわ。」
「…母さんが?…いや、それくらい私が行くよ?」
「だ~め♪…だって■■ちゃん、最近あまり寝られてないんでしょ?」
さすがにビクッと身体が硬直した…いや、最近全然会えてなかったのに…何で分かるの…?取り敢えず、最近の私の状況を知っていて…さっきまで母さんと一緒に居た人の方に顔を向ける…
「!?…~~~~~!」
私が睨んでる様にでも見えたのか(別にそんなつもりは無かったんだけど…)青い顔をした束がブンブンと風切り音が聞こえて来そうな程(もちろん、さすがに実際聞こえる訳じゃないけど…)物凄い勢いで首を横に振っている…
「束ちゃんをそんな目で見ないの。束ちゃんは状況を知ってるのね?別に私は、束ちゃんから聞いた訳じゃないわ。」
「…じゃ、何で分かるの?」
「例えちょっとした事だとしても…子供の変化くらいは見分けられないと、母親はやっていられないわ。」
まぁ、確かに…説得力は有るけど…
「…あまり納得出来無いかしら?具体的な根拠、聞きたい…?」
「そうだね、一応…聞いても良い?」
「先ず、私が来る前…お風呂に入った?」
「…そうだね、確かに…入ったよ。」
「束ちゃんとクロエちゃんも一緒ね…同じ匂いがするし……ご飯食べた後は、私とも一緒に入りましょうね?」
「…うん。」
どちらかと言えば、私は決して…素直な方では無いなと考えてる…それでも、昔からこの人に言う事にノーとは言い難い…不思議と、ハッキリ嫌だと言えない事は多いんだよね(とは言え、元々私が本気で嫌がりそうな提案はあまりして来ないけど)
「話を戻すけど…お風呂に入ってそんなに経ってないから体臭は結構消えてる…それでも、■■ちゃんからはまだ濃い匂いがするわ…しばらく、シャワーばかりだったのね…」
またビクッとする…尤も、私は向こうの血が入ってるし…見た目的にもそっちの血が当然濃いだろうし、必然…体臭も強い方だとは思うから…コレに関しては、そんなに驚く事じゃない…
「…加えて、そうなると確実に洗ってる筈なのに…髪にツヤが無くて、実際傷み気味…」
「!…それは、さすがに無理が無い…?」
そう言うのって、ちょっと見ただけでそんなにハッキリ分かるもの…?てか、本当にしばらく会えてなかったのに…
「貴女が思ってる以上に全然違うわよ?…自分では分からないかも知れないけどね…」
……まぁ…どうせ、鏡をいくら見た所で私は分からないだろうから…今は良い。
「次…肌が荒れてるし、こちらもツヤが無くて…ハリも無い。」
そう言われて、思わず自分の頬に触れる……う~ん…?
「全然分からない…」
「ま、それは仕方無いわね…私も、貴女の事だから分かるって感じだし……あ、束ちゃん?「ふえ?何?」…束ちゃんもしばらく徹夜生活が続いてるわね?後でお説教ね♪」
「え~…!?」
自分には関係無いと思って静観していた束…急に話を振られ、しかも怒られる事まで勝手に決まってさすがに悲鳴をあげた…まぁ、自業自得と思って諦めて…としか、私にも思えない…と言うか、私と違って…束は自分の研究に夢中になり過ぎてその生活なんだから、結局自分で調整出来るでしょ…怒られても仕方無いだろうね…
「束ちゃんが駄目で、貴女だけ許すって事は無いわよ?」
遂に心まで読まれた…ホント、この人には敵わないなぁ…ちなみに、千冬にもたまに似た様な事やられるけどね…私が単に分かりやすいだけとは、さすがに思いたくない…
「クロエちゃんの事を想うんだったら…先ず、身近な存在である貴女たちが変わらないと駄目…後でもっと色々言うけど、取り敢えずこれだけ先に言っておくわ……分かった?」
「うん…」
「は~い…」
ハァ…ホント、今になってもこの人には勝てる気がしない…まぁ、実の親とも分かり合えず…大人に対して、底無しの不信感しか無かったあの頃の束に…それこそ、血の繋がった母娘にしか見えないレベルで懐かれた人だしね…まぁ、当時同じく…不信感まで行かないけど…それでも、大人に対してある程度警戒して…線引きもしていた千冬に…私から話を聞いて様子を見に行った初日に家に泊まる事を許されて、同じ部屋どころか…そのまま同じ布団で寝る事まで許可された人でも有るから…ま、あくまで隣で寝る事は許しただけで…その後、半ば強引に自分の布団に入って来たと…後でそう、千冬からも聞いたけど…正直、話してる千冬自身は何だかんだ…それ程嫌そうには見えなかったからね(ちなみに、今でも一人で織斑家を訪れては未だにやるとか何とか…)ま、とにかく…私たちじゃ、結局何年経とうが…色んな意味で、到底勝つことは出来無い相手なんだろうね…
「…ふぅ……で?それは分かったけど、結局いつ…私の事は解放してくれるのかな?」
「う~ん……もうちょっと♪」
だから、いつなのそれは…っ…もう…
「あんまり頭撫でないで…また眠くなっちゃうから…」
ホント、撫でるの昔から上手いんだよこの人…何だかんだ、千冬も束も子供の頃…コレで堕ちたみたいだし…
「良いわ、寝ちゃいなさい…疲れてるんでしょう?」
「っ…嫌、だ…!私…まだ、起きてないと…!」
「意地張らなくて良いの…ご飯出来たら起こすから…今は、寝てしまいなさい…」
っ…撫でながら…もう片方の手で優しく瞼降ろしに来るの反、則…っ…まだ、駄目…これだけは、何とか…
「母さん…」
「なあに?」
「クロエ…彼女を連れて、買い物に行って欲しいの…彼女を…外に「分かってるわ…だから、何も気にせず…貴女は眠って良いのよ」っ…」
結局、母さんに任せれば全部…安、心…そう思った瞬間、私の意識はどんどん落ちて行く…もう…そんなつもりで、貴女を呼んだんじゃないのに…ハァ…
『おやすみなさい…』
「っ!…う…」
耳元で聞こえた、その優しい声の威力は凄まじい…結局私は抗えず、自分の意識を完全に手放した…