「作者自身も覚えてないって…まぁ、今回も一話のみだから大目に見て欲しいって…」
「…前回のアレは…一話にまとめようとしたせいでそれなりに長くなってたよな…?しかも、アレでもカットした方なんだろう?」
「…ついでに言うと、明らかにカットしすぎたせいでややこしくなってる箇所とかは有ったね…そもそも…"私が"あの場所に拘る理由も書いてなかったし…」
「…ハァ…ま、そっちは良い…で、今回はどんな話だ…?」
「私が好きになったのが千冬じゃなくて…束だったらって話だってさ…」
「……」
「気に入らない?」
「…いや、改めて考えると…それはそれで、しっくり来る様な気がして来た…そもそも、お前はある意味…あいつとの方が付き合い長いだろ?」
「まぁ、ね…一時期は普通に一緒に生活してたからね…私自身、そうなる可能性は有ると思う…」
「…ま、私にはお前が居るしな…正直に言えば、どう言う展開になるか…気になると言えば気になる…」
「…じゃ、始めて良い?」
「今日はやけに急かすな…何か有るのか?」
「…いや、毎回本編外のここで色々話を出し過ぎだからって…だから今回はこっちの私たちの会話も最小限で行く気なんだってさ…もう良いかな?始めるよ…」
彼女との出会い自体は本当に有り触れたもの…とは言え、あの日出会えたのは完全に偶然に寄る所が大きく…何より、こうまで仲良くなれるなんて…あの日の時点では想像もしてなかった…
「…あの、ありがとう…」
「別にお前を助けた訳じゃない…あいつらが何となく気に入らなかっただけ。」
彼女はいじめられていた私を助けてくれた…と言っても、今なら分かるけど…あの時の彼女のアレは俗に言うツンデレとかじゃなく…明らかに、私に何の興味も持ってなかった…
「…てか、何その髪…染めてるの?」
…特別怒ったって訳じゃない…それでも、琴線に触れるものが有ったのは確か。
「何、急に…貴女だってその髪、染めてるんじゃないの?」
まぁ顔はほぼ、純日本人だけど…それでも、日本人で地毛がピンク色はあんまり見ない例だと思う…ちなみに、後に会えた妹の箒は髪色は黒…そして、彼女の両親二人も普通に黒髪……ま、実際…だから染めてるとは限らないんだけどさ。
「…もしかして、ケンカ売ってるのかな?…てか、私の質問に答えてないんだけど?」
…正直、この時束の機嫌が悪くなった理由は今も良く分からない…本人に確認はしてないしね…まぁ、それは良いとしてだ…当時私も、他人と無闇矢鱈と争いたい訳じゃないかった…だから、普段周りから危害を加えられても黙ってたんだし…私は喉まで出掛かった溜め息を何とか殺しつつ答えた…
「私のこれは地毛…私、ハーフなの。」
ま、私の場合…厳密にはまた違うんだけどね…
「…ハーフって何?半分って意味だよね?」
……うん、当時の彼女は今と違って…普通に子供らしい部分が有ったんだよね…ちなみにあの時の私は…今まで仏頂面だった彼女の顔が、いきなりキョトンした表情に変わったからちょっと驚いてたり…
「要するに…私は半分、日本人じゃないの…外国の血が混じってる…そのせいで、こんな見た目なの。」
正直当時の私にとって、家族の誰とも似ておらず…挙句に同性から攻撃される理由にもなってる自分の容姿はコンプレックスでしか無く…こうして、説明するのも億劫だったり…
「…ねぇ?」
「…何?」
「…何で、そんなに悲しそうな顔してるの?」
「……してないよ。それは貴女の見間違「してるよ。私、そんな事で嘘吐かないもん」……」
ハッキリ言い切られて、私もすぐに反論出来無かった…尤も当時…私的には、特に凹んだりとかはしてないつもりだったんだけどね…
「そう、なら多分…気の所為だよ「何で嘘吐くのかな?」嘘って…」
「…おま…ハァ…取り敢えず、名前聞いて良い?」
「…こう言う時って、先ず貴女から名乗るものじゃないの?」
面倒臭かったのも有ると思う…途中から、私の対応は恩人に対するソレじゃなくなってた。
「私は篠ノ之束…これで良い?早くそっちの名前教えてよ。」
「…ふぅ…私の名前は…」
どちらかと言えば、少し険悪な感じから始まった…一言で言えばそれが、私と束の出会い…
「■ちゃんさぁ…何でいつもあいつらに言い返さないの?別に出来無いって訳じゃないんでしょ?」
「…まぁ、ね…」
斜に構えてる…それが当時の私のスタンス…って言えば、聞こえは悪いけどまだマシ…実際は、もっと酷い理由だったり…
「…ハァ…言ってやろうか?要するに、面倒なんだろ?」
あの日から何度か束と出会う事が多くなり、大して会話をしたとかは無いんだけど…いつの間にか、当時周りを警戒し…威嚇しまくってた束は、途中から妙に馴れ馴れしい感じに…ふぅ…ま、嫌って訳でも無いんだけど…敵の方が明らかに多い"あの場所"で、一応数少ない味方だったからね…
…で、ある時親友だと言って(束に親友!?とかなってたのは余談)紹介されたのが織斑千冬…あの頃の私は、初対面の相手だと少し事務的に対応する事が多かったんだけど…何故か、そんな私に彼女は普通に接してくれてたり…ちなみに後で聞いたら…
『当時束から…私以外に友人が出来たから紹介したいと言われた時はさすがに身構えたがな…話してみれば別に悪い奴って感じはしなかったし、コミュニケーションに難が有る奴なら束で慣れていたしな。何より…何となく、当時のお前は放っておけなくてな…』
…実際当時の私がどう見えたのかは、私も詳しく聞いてない。どうしても聞く勇気が持てなかった……話が逸れた。
「…ふぅ…そうだよ…でも、面倒に決まってるでしょ…どうせあっちは私とまともに会話する気なんてないんだからさ…ま、だから…どうせ何言っても無駄。」
「…言いたい事は分からんでもないが、ずっと黙ってたって…状況は変わらんだろう?」
「ん?…いやいや、ちゃんと変化は有るでしょ?」
「何、何か変わったの?」
「こんな話を…笑ったりせず静かに聞いて…こうして、助言までしてくれる…そんな友人が、私にも出来た…だから、このままでも良いの…だって私は十分、救われてるから。」
もう私は二人に色々貰ってる…だから、このままでも良い…ま、そんな私の想いは二人に否定されちゃったんだけどさ…
「…束。」
「何…ちーちゃん…?」
「…お前も怒ってるって事で、合ってるか?」
「…大正解。こんなの、そのままにしておく訳に行かないでしょ。」
「じゃ、行くか?」
「うん、行こっか。」
……明らかに何かやらかす気の二人を、あの時必死に止めた私の行動は…今でも英断だったと思ってる…ま、それでも結局二人は私のクラスの担任(私は二人と違うクラス)に私がいじめられている事を伝え…先生の反応が芳しくないと判断すると…次の日、束の父親で有る柳韻さんが二人と一緒に私の居る教室に入って来て…その場で私をいじめてた人たちを糾弾…柳韻さん、怒ると本当に怖いんだよねぇ…そりゃもう皆、ビビりまくってた。
…その後の結果を言うなら…教師の方もそれなりの対応を取る以外無くなってしまった様で…連中が皆引っ越して、学校から居なくなる展開は私もさすがに予想外だったけど…もちろん、せっかく黙ってたのに私の家族まで連絡が行ってしまった事も込みでだ…お陰で、わざわざ休みを取った母さんがしばらく私にベッタリになってしまった…まぁ、感謝こそすれ…柳韻さんは元より、束や千冬…三人を責める気は全く無いんだけどさ…
加えて、もう一つ…
「…そう身構えなくても良い、先ずは話を聞きたいだけだからね…」
「…はぁ、分かりました。」
柳韻さんが私を呼んでるとの事で、その日…私は束に連れられ篠ノ之家へ…まぁ、当時から既に仲が悪かったらしく…束は私を置いて何処かに出掛けてしまってたり…勝手だなぁとも思いつつ…一度、お礼を言いたいなとは思ってたから会うチャンスを作ってくれた事自体は感謝してるけど…
「えっと…先ずは、私から話しても良いでしょうか…?」
「構わない…何かね?」
「…ありがとうごさいました…貴方のお陰で、私は今…平穏に生活出来てます…一度、こちらから正式に挨拶に行くつもりだったのですが…遅くなって、申し訳有りません。」
母さんから、礼儀作法については既にある程度なら叩き込まれていた私…正座も、別に苦じゃない…そのまま頭を下げる……これくらいかな、私は頭を上げた。
「?…あの、どうかしましたか…?」
あの時の柳韻さん、ほぼ初対面に近い私にも分かるくらい…動揺してたんだよね…
「…いや、すまない…正座も元より、礼も…とても綺麗だったのでね…」
「…まぁ、私の見た目だと驚きますよね…」
ま、どう見ても私は…普通に外国人だからね…
「…君はハーフだったね、あの子から聞いているよ…母親が日本人だったかな?」
「はい、そうです…」
「…確か、父親がフランスの方だとか…?」
「はい…父もいずれ、こちらに伺いたいと言ってました…今は仕事が忙しくて中々時間が取れない様ですが、その時が来たら…お会いして頂けると幸いです…」
…まぁ、当時私はまだ小学生…言葉遣いに関してはあまり自信は無かった…見た目はともかく、決して怖い人じゃないのは分かっていたけど…さすがに緊張だってしてたし、やらかしてる可能性は有った…要するに、この時の事は結構曖昧な部分が有ったり…
「その件は分かった…こちらでも何とか時間を作ろう…では、本題に入ろう…実は、今回私が君の為に動いたのは…あの子から頼まれたからだ…」
「束から、ですか…?」
…今思えば聞き返すまでも無く、それ以外無かったんだけどね…
「『■ちゃんを助けて!』…そう言って、千冬君と共に…あの子は私に頭を下げた…友だちが悲しんでる顔を…もう、見たくないとも言ってな…」
「そう、ですか…」
「…まぁ、話を聞く限り…君に落ち度はほぼ無い様だったし、何より…あの子は私の娘だ…加えて、最近はずっと…私の事を避けている…そんなあの子が、千冬君以外に友人が出来…その子はいじめられていて、自分たちでは助けられない…その癖、彼女はこれからも我慢しつづける気でいる…それが気に入らない…だが、自分たちではどうしても助けられない…だから、力を貸して欲しいと…私に頼んで来た…」
「……」
「千冬君にも話を聞いた…聞けば聞く程、君が悪い子では無いと分かった…加えて、私を毛嫌いしていた束が…頭を下げてまで、助けたいと言って来た相手…人柄はもうある程度把握出来たが、それでも…どうしても直接、会ってみたくなった…それが今日、君をここに呼んだ理由だ…」
…ちなみにこの時の私は、あまり柳韻さんの言葉を深く考える余裕は無かったり…だってまさか、束が…そこまで私の事を想っていてくれた…その事実が、ちょっと衝撃的過ぎて…だから私は…
「…こうして私に会えて、どう思いましたか?」
…絞り出せたのがその言葉だけだったのは今でも後悔してる…いやまぁ、目上の人にする言い方じゃ…絶対無いよねぇ…
「…君は素晴らしい子だ…実は千冬君にも既に言っているが、出来れば君にもお願いしたい…あの子の事を、これからも宜しく頼む。」
そう言って、柳韻さんは私に頭を下げた…いやぁ、さすがに…あの時は慌てたねぇ…
「ちょっ、ちょっと…!頭を上げてください…!こんな小娘にそこまでする必要は…!…ハァ…分かりました、嫌われない限りは…私も出来るだけ、彼女と一緒に居る様にしますから。」
ま、当時単純に…束が好きか嫌いかと聞かれれば…好きって程ではないけど、嫌いでもなかった…少なくとも、一緒に居る事はそこまで苦じゃない…いやまぁ、結構振り回して来る相手でも有るからね…そりゃ、偏った感想にもなるよ…
「…ありがとう…ところで、提案なんだが…」
「?…何でしょう?」
「…今日、夕飯をウチで食べて行く気は無いかな…?」
私、そこまでの存在じゃないと思うんだけどね…あの日から今に至るまで…柳韻さんが一人になってしまってからも、篠ノ之家で食事を摂る機会は結構有ったり…ま、当時はともかく…今の私にとっては、柳韻さんは剣の師であり…最早、もう一人の父親とも言える存在…一人になったからって、あからさまに寂しがったりとかはしない人だけど…放ってなんておけない…ま、それはあくまで後になってからの私の話…この時は…
「えっと…光栄なお誘いですけど、先ずは…母に確認を取らないと…」
この後家に連絡したら、母さんが篠ノ之家に押し掛けて来たのは余談…ま、とにかく…束個人だけじゃなくて…正式に篠ノ之家とも繋がりが出来たのはこの日から…ま、あくまで破天荒な友人の家ってだけで…私の友人である娘の方は寄り付かないのに、赤の他人である私が…この家に通う切っ掛けになる出来事も、実はこの日にもう…起きていたり…
「ふぅ…まさか、こんな事になるなんて…」
嫌って訳じゃない…嫌では無いんだけど…この家の娘で有る束が不在なのに…どうして、単なる友人でしかない私がこの家に泊まる羽目になってるんだろうと…そう、思わざるを得なかった…
「っ…」
私にとって、心が痛むと言うのは良く分からない…でも、物理的な痛みだけはどうしようも無い…ま、よっぽどじゃない限り…耐える事は出来るんだけどさ…
「…こんな時間にどうかしたのかな?」
身体がビクッと硬直する…声で誰かは分かっていたけど、それでも恐る恐る…私は振り向いた…
「…柳韻さん…」
「…すまない、驚かせてしまった様だね…」
いやまぁ、その通り…声掛けられるまで、後ろに居たの分からなかったし…暗闇が怖いって訳じゃなかったけど…それでも、こんな状況でいきなり声掛けられたらビックリするよ…ま、それをそのまま言う訳には行かないんだけどさ…
「…いえ、大丈夫です「そうかね?私には、そうは見えなかったんだが?」…どう言う意味でしょうか?」
「…その腕、見せて貰っても構わないかな?」
「っ!」
ちなみにここは廊下…暗いし、見えないと思ってたんだけど…
「…いや、すまない…責めるつもりは無かったんだ…嫌なら構わない。」
正直、この人は不器用だし…笑うのは苦手な方だと思う…それでも、空っぽのままでも作り笑い出来る私と違って…ちゃんと出すべき時に感情を表に出せる人…そして、赤の他人である私の為に本気で怒ってくれた人…そんなこの人に、隠し事は出来無かった…
「…見て楽しいものじゃありません…でも、柳韻さんが見たいなら良いです…ただ…一つだけ、お願いが有ります…」
「何かな?」
「今、この場で見たものを…束と千冬…二人には、言わないで欲しいんです…それを約束してくれるなら…」
「…分かった、約束しよう…」
私はさっき戻した服の袖を再び捲り上げた…
「!…これは…!」
「…束と千冬、二人はクラスが違うお陰で…"コレ"に関しては知りません…お願いです、二人には言わないでください…これ以上、心配掛けたくないんです…」
自分でも目を背けたくなるソレ…私の腕はアザは元より、他にもキズが有ったりする…
「…その、ひょっとして…腕以外もかな?」
「見たいなら見せますけど…」
「…いや、良い…女の子が無闇に異性に肌を見せるものじゃない……すまなかった…」
「?…何で謝るんですか?」
「その…君を、もっと早く救えていれば…」
「…良いんです…今は、救われてますから…」
連中が転校する数日前…私は連中に呼び出されて…まぁ、言ってしまえばリンチされた…今思えば、小学生の時で良かったと思う…多分、中学や高校だったら…殴られたり、切り付けられる位じゃ済まなかっただろうから…ま、幸い…アザもキズもだんだん治って行ってるみたいだし、この時の私はこのまま放っておくつもりだった……今ではもちろん、当時の痕跡は何も残ってない…影響が有るとしたら…せいぜい、当時の事をたまに夢に見るくらい…物理的被害は無いから問題無い。
「忘れてましたけど…母さんにも黙っててください。」
「!…言ってないのかね?」
「…見せてませんし、何も言ってません…このまま、墓場まで持って行こうと思ってます…」
キズはいずれ消えるんだから、これ以上あの人にまで心配を掛ける必要は無い…ん…また眠くなって来たかな…
「…ふぅ…そろそろ寝ます、おやすみなさい。」
「!…ああ、おやすみ。」
別に不幸アピールとか、悲劇のヒロイン気取ったつもりも無いんだけどね…少し余計な事を言い過ぎたと思わないでも無いけど、結局は…聞かれた事に答えただけだし。
ただ、その日以来…明らかに、束の両親から気に掛けられる事は多くなった(まぁ、確かに奥さんにも言わないで欲しいとは言ってないけどさ…)
加えて何故か、その日辺りからだんだん…ツンデレ気質の束からツンの成分が抜けて行き…そして…
「いや、あのね束…?私、今日はこれから仕事だから…相手出来無いんだけど…」
「やだ!束さんはもうちょっと一緒に居たいの!」
「…ハァ…」
最終的に、事有る毎に束が私にくっ付いて来る様に…いやホント、私…ここまで懐かれるほど、何かしたっけ…?
『…要するに、また束の事か?』
「…あ!…ごめんね…?」
今の今まで千冬と電話で会話していた事を思い出し、私は慌てて返事をする…ハァ…正直、束をどうにか出来るのは彼女しか居ないから…
『…前にも言ったが、そんなに困ってるならちゃんと拒絶しろ。お前が甘いせいで、そいつが付け上がるんだ…』
「…分かってるんだけどね…」
嫌な時は嫌と、ハッキリ言う千冬と違って…何だかんだ私が嫌がらないから、束が私から離れない…うん、分かってるんだけどさ…
『ハァ…色々言ってるが、お前は結局…今の状況を喜んでいるんだ…違うか?』
「…そこは、私にも良く分からないかな「ちょっと!束さんの事、もっと構ってよ!」ごめんって…いや、じゃなくて!私、本当に仕事なんだってば…休みの日なら相手するからさ。」
『…ハァ…悪いが、今日は私も仕事だ…切るぞ?』
「ちょ…!…待って『じゃあな』あ…切られた…」
元はどれだけ邪険にされても千冬にベッタリだった束…現在は、完全に私がそうなってたり…ホント、どうしたものかな…
「お願い束…働かないと、私は生活出来無いの…分かってくれないかな…?」
「むぅ…じゃあさ、仕事辞めちゃいなよ…束さんが養ってあげるからさ…」
簡単に言ってくれる…ただ、束なら確かに割と食べる方の私を養えるだろうと思う…彼女の娘で有るクロエの事だって、私は嫌いじゃない…それはそれで、本当に楽しいんだろうと思う…でもね…
「私は、お金が要るから「理由は分かってるよ…ちーちゃんといっくんの為でしょ?」…まぁ、ね…」
柳韻さんもそうだけど、あの二人…どうしても放っておけないんだよね…金銭的問題なら、私が働けば済むって…そんな風には、やっぱり思っちゃうもの…千冬には恩が有るし、何より…彼女は親友で、そして一夏くんだって親友の弟…二人を助けない理由は私には無い。どれだけ無茶をしたって、助けたいと…そう思う…
「んー…あのさ、それって■ちゃん一人で頑張らないといけない事?」
「っ…それ、は…」
「私がお金を用意して、ついついやり過ぎちゃう私の代わりに■ちゃんがお金の使い道を決めて…ちーちゃんといっくんを助ける…それじゃダメ?」
…正直、揺れている…そもそも、生きていれば金なんていくらでも掛かる…何より私自身…千冬から、無茶をするなと止められている…いや、だって…千冬は、一夏君と普通に暮らしていけるくらいには稼いでいる…極端な話私や、私の家族からの援助なんてほぼ要らないレベル…二人は贅沢はしないしね…と言うかまぁ、変に踏み込み過ぎてるんだと何となく分かってはいるのだ…高校生の頃なんて、普通に登校前に織斑家に通って食事の用意とかしてたし…
「…ハァ…分かった、考えとく…それで、今日はそろそろ行って良いかな?幸い、今日は定時で上がれそうだし…早めに帰れると思うから家で待ってると良いよ…と言うか、束はもう母親でしょ?娘に寂しい思いさせちゃ駄目だって…」
「…クーちゃん連れて来て良いの?」
「もちろん…まぁ、遊び道具とかは無いけどね…そこら辺は束の好きにしたら良いよ…あ、でも条件…部屋の物を勝手に改造したり、壊したりしない事…さすがにワザとやるとは思ってないけど、扱いには気を付けてね?」
「うん、分かった!」
「…じゃあ最後にもう一つ「まだ有るの?」…ここは割と壁薄いから、あまり騒ぐと隣から苦情来ちゃうの…だから、出来るだけで良いから大きな声や音は出さない様にして…出来そう?」
「…分かった、気を付けるよ。」
「良し…じゃあ私は行くから、良い子で待ってて。」
…高校に入った頃から、こうして束の頭を撫でる事が増えてる…私も、どうしてそうしようと思ったのか…切っ掛けについてはハッキリ覚えてない。それでも、束は嫌がらないし…もっとやって欲しいって言う要望まで貰ってるから基本、会う度に撫でる機会は多い…てか、実は私自身もハマってるんだよね…特に抵抗せず受け入れて…目を閉じ、気持ち良さそうな顔をする束…まぁ、そんな姿が可愛いものだからつい、ね…
「…ねぇ?■ちゃん…」
「ん?何?」
「…早めに帰って来てね?大事な話が有るから…」
「…分かった…出来るだけ早く帰るね…?じゃあ、行って来ます。」
「行ってらっしゃい!■ちゃん!」
…ちなみに束の話の内容は、私が恋愛的意味で好きだと言う内容…少し戸惑ったけど、改めて自分の気持ちを確認したら…その、私も…束が嫌いじゃなかったんだよね…
相手が同性だろうと、私の家族が何も言わないのは予想通り…でも、千冬や一夏君を初めとして…柳韻さんなど…ほとんどの人は束の気持ちに気付いていて、そして…実は私も束が好きだと言う事にまで気付かれていたのは余談…そんなに分かりやすいかな、私…てか、私自身も気付いてなかったんだけどね…まぁ、その後は…束が女性にしか扱えないパワードスーツ…インフィニット・ストラトス…通称ISを作り、試作品を私と千冬二人で纏って…その…何故か、ぶっつけで戦闘機と戦う羽目になったり…てか、そうなる直前の時点でも、世界中の首都にミサイルが向かってたりとかホント、どんな状況なんだか…もし仮に千冬が居なくて、私だけが状況の対処に当たっていたら…正直、あそこまで被害を抑えられた気はしない…本当に大惨事になっていたと思う…
…で、束が作ったISの核となるコア(間違い無く重要なパーツなんだけど、現状束以外作れない)を世界中に提供した事で…ISを使ったスポーツ大会が行われる様になり、千冬と二人で出場してみたり…ま、そんな感じで実績を残した為か…今度は装者を養成する為の学校が作られて、私と千冬が教師としてスカウトされたり(私も千冬も、教員免許すら持ってなかったんだけど)そこに束が押し掛けて来て自分も教師になったりとか…とは言え、束は他人に興味無いし…向いてないと思ってたんだけど…実際は口調こそぶっきらぼうだけど、ちゃんと生徒一人一人の事を記憶してて…的確にアドバイスしてたり(何気にあだ名呼びとは言え、ちゃんと名前も記憶してたんだよね)
ま、ある意味で…私や千冬より立派に教師出来てたんだよね……ホント、何か複雑…ま、束は間違い無く天才で…真面目にやれば、大抵の事は何だって出来るタイプなのは昔から何となく分かってたし…今更、嫉妬したり羨んだりしてもしょうがないんだけどさ…と言うか…
「……」
「っ…夢中になってるね…そんなに私の胸、好き…?」
「ちゅぱ…エヘヘ…束さんは、■ちゃんの事も…■ちゃんのおっぱいも大好きだよ。」
最近は生徒に対する口調も柔らかくなって来て、普段は遠くに居る様にも感じる束…でも、夜はただ…恋人で有る私にひたすら甘えて来る…
「…ん…ふぅ…ホント、飽きないね…こんなに小さい胸がそんなに良いの…?」
「もっちろん!誰にも渡したくないもんね!」
…ま、以前までは戸惑ってたけど…今は、その言葉が素直に嬉しかったり…
「…ところで■ちゃん?」
「ん?何?」
「…キズ、消えて良かったね?」
「……知ってたの?」
政府の方に散々脅しを掛けたらしく、今では家族で暮らす事も出来る束…実際、箒も帰れる様になったしね…でも、今でも束は篠ノ之家には帰らない(夏休みとか、正月なんかは専ら…フランスに有る私の両親が住む家に行ってる…)一応柳韻さんとは事務的な会話で有れば電話で話すんだけど…ま、要は柳韻さんから聞いた筈は無いって事。
「…ちなみに、ちーちゃんも知ってたよ。」
「あー…やっぱり?」
そりゃ束が知ってて、千冬が知らない訳無いよね…
「聞こうと思ってたの…どうして言わなかったの?」
「…ふぅ…言えないよ、助けてくれただけで十分なんだから。」
「…むぅ…あの頃の私でも、何ならちーちゃんだって…ちゃんと聞いてくれたのに…」
「気にしないで…束の言う通り、もう消えたんだから。」
「…今でも時々、夜中にうなされてるよね?」
「…何の事かな。」
正直、当時はそれ程気にならなかったのに…夢で見るとキツイのは確か…でも、今更そんな事で相談しようなんて思わなかった。
「…ハァ…何度か起きてるの、知ってるよ。■ちゃんだって、自分で気付いてるでしょ?」
「…ふぅ…もちろん分かってるよ…でもまぁ、言っても困らせるだけだからね…」
「…そんな事言わないで相談してよ…何なら、ちーちゃんでも良いんだよ?ちーちゃんの事だって、親友だと思ってるんでしょ?」
…まぁ、今の私は…相談しても意味が無いとか、そんな風に言うつもりは無い…と言うかね…
「…ふぅ…ねぇ、束?」
「何?…!…どうしたの?」
力を入れ過ぎない様に、束を優しく抱き締める…そう、私にとって…
「こうして、貴女や千冬が一緒に居てくれるから…私は、いつも元気でいられるの。だから…本当に私は救われてるの…それだけは、分かって欲しいな?」
「…ハァ…いつも誤魔化すんだから「誤魔化してないよ…本心」…分かったよ、そう言う事にしとく。」
…バレてるなぁ…確かに、私は人と比べて色々特殊なタイプだと思う…そして、近い性質の束にバレるのは当然だとも思う…でも、こうして一緒に居てくれるだけで…色々落ち着くのも確か…だから、丸っきり…嘘でも無い。
「とにかく私は…ただ、一緒に居てくれるだけで良いの。」
「…束さんは離れないから、安心して良いよ…もちろん、ちーちゃんも…クーちゃんだってそう…■ちゃんの周りに居る人は、■ちゃんから絶対…離れたりなんてしないからさ。」
「うん…」
これから先…ずっと、こんな生活が続くのも悪くないかなぁって…私はそう、思うかなぁ…
「…今回の裏のテーマ、言ってみて良いか?」
「うん、言ってみて?」
「…"依存"だろ?」
「…正解。元々、私は人からもたらされたものを良くも悪くも受け入れちゃう性質だからね…それでも、その上で千冬相手の場合は…くっ付くまでは離れて生活してたから…私は最低限、希薄では有ってもそれなりに…自己を確立出来た…だから、いざと言う時は離れるって選択肢を選べる。」
「要するに、束に関しては一緒に居る時間が長かったせいか…」
「束が養うって言葉を…他の私だったら、千冬を選んだかは別にしても…必ず、突っぱねる筈だからね…揺れたのはまだしも、最終的に束に依存されて…私も離れたくないって言ってる時点で…既に他の私には無い変化が現れてるの…」
「…ハァ…それでも、私の時よりマシな様に見えるのは気の所為か?」
「…どういう道を選ぶかは私の自由…その上で言うけど…束に依存されて、自分も束や他の人に依存する…傍から見たら、狂ってる様にも見えて来るかもね…でもそれって、私たちの関係性もヤバいって事を考慮した上で…もう一度、口にする事は出来る?」
「…ああ、そうか…私たちの方も、確かに問題か…」
「私がまともじゃないんだから、私を選んだ時点で…同性だとか、そんなの関係無く…普通の恋愛なんて、そもそも出来る訳無いでしょ。」
「…私の知るお前は、痛みも含めて…全て受け入れてしまうものな…だが、間違い無く自立心は有るから返ってタチが悪い。」
「…ドロッドロの甘さと、血が滲む程の強い痛み…傍から見たら…どっちもヤバさは変わらないよ…結局、そう言う話…違いが有るとしたら、千冬と付き合ってる私は基本…もしもの時は離れて一人になる事も出来るって事…考え様によっては、束を選んだ私の方が酷いと思うよ?」
「…依存…一人だと何も出来なくなる…そしてお前には元々、今の人格に寿命が有る……まさか、そう言う事か?」
「束を選んだ私は、自分一人で死ぬのは無理…100%束にやらせるか、束の見ている前で死ぬって事…何だかんだ、頼る事が習慣になってるのも有るけど…それ以上に、記憶に強烈な印象として…束の中に刻みつけたいから…そうすれば、ずっと…束の思い出の中で生きていられる…さながら、呪いの様に…死ぬまでずっと、頭の片隅にこびり付く。」
「成程…確かに、まだ私相手の方がマシか…そこをどうにかするのが、私の役目と言う事か?」
「うん、でも…今回は無理かなぁ…」
「?…何故だ?」
「気付かなかった?三人でIS学園に行ったのに、その時点で千冬が全然出て来なかったでしょ?その癖、私たち二人は明らかに一緒に生活してたよね?」
「…成程…先ずは私が原作通り寮監になった…で、恐らくお前らは何処かで同棲中…教師の仕事だけでも大変なのに、一応寮監である私は基本…長期間学園を離れられない…事が起きた時に、傍に居られない訳か。」
「そう、つまり…あっちの千冬には、壊れて行く私と束をどうやっても救えないって事…ま、最終的に破綻するって意味では私たちも同じなんだけどさ…それでも、千冬ならひっくり返せる可能性ゼロじゃないし。」
「結果、お前が選んだのが私で…束は片想いのままと言う状況の方が…まだ幸せ、と言う事か…」
「…ま、仮に同じく束を選んだ世界で…あっちよりマシな展開になったとしても、結局何処までカバー出来るかって事…少なくとも、マシにはなってもハッピーエンドは絶対無い。」
「…同じ相手を選んだ奴で、私にとっては何だかんだあいつは親友だ…どうにかしてやりたいがな…」
「別々に生活してる時点で、結局あっちの千冬には救えないよ。ただそれだけ…」
「…ハァ…話してても気が滅入るだけだな…もう締めるか。」
「…じゃあ行くよ、今回も読んで頂きありがとうごさいました…もしかしたら、今年最後の投稿かも知れません…そうなった時は、また来年からも宜しくお願いします。」
「…言い切らないのか?」
「作者の場合、いつも突然浮かぶから…今回も、急遽浮かんだから書いてるしね…」
「…ま、仕方無いか。」
「そう言う事…では皆さん、失礼します。」