「ッ…眠い…」
お風呂の方と違い、特別広くは無い脱衣所…その癖、壁に掛かっている時計の音と束の浴びているシャワーの音だけが聞こえると言う環境は…私的に割とリラックスしやすく正直、かなり眠気を誘、う……
「!…ハァ…取り敢えず、座るのはやめようか。」
椅子から立ち上がり、壁に背を預ける……とは言え、この状態でも寝てしまいそう…んー…あ、そうだ。
「ちょっとくらい、良いよね…」
タバコとライター、携帯灰皿をポケットから取り出す……ここならさすがに警報鳴らない筈…
「……」
箱から一本取り出して口に咥え、火を点け……あ。
「ハァ…」
違和感を感じ、上を向いた際に目に入った物は…多分火災報知器…種類は何とも言えないけど、煙には恐らく反応する筈……仕方無い、か。私はライターの火を消し、タバコと灰皿と一緒にポケットに戻す…
「……」
吸おうと思ったのに吸えなくなると、何となくイライラして来る……ふぅ…ま、仕方無いんだけどね…
「大人しく待ってようか…」
「■ちゃん!お待たせ!」
出てくるなり、両手広げてこちらに突進して来る束を避け…勢い余って壁に激突しそうになる束の背後から腰に両手を回して…結果、避けた意味が無くなる…
「ハァ…何がしたいの?危ないでしょ。」
「む…■ちゃんが受け止めてくれれば良かっただけじゃん!」
「…いや、身体濡れてるんだから普通避けるでしょ…」
まぁ、結果こうなってるんだから今更では有るけど…取り敢えず束から離れる…
「私は外で待ってるから、早く身体拭いて着替えて「え~…居てくれたって良いじゃん!」……」
まぁ、普通に同性だし…何より、付き合いの長い束の裸は千冬の以上に見慣れてるし今更…ただ、私と同じかそれ以上に不摂生な生活続けてる割には抜群のプロポーションを誇る束の生まれたままの姿は…何とも目のやりどころに困るのは確か(鼻血が出ないように…堪えないといけない千冬の裸よりはまだマシだけど)
「ハイハイ…ここで待ってるから早くしてね…」
「それでねそれでね!」
「……」
シャワーを浴びた事で完全に目が覚めたらしく、テンションの高い束の話を多少聞き流しつつ…束の髪に脱衣所内に有ったクシを通しながらドライヤーを当てて行く…
「もう!ちゃんと聞いてるの!?」
「…ハァ…聞いてるってば…と言うか、やりにくいからあんまり動かないで…」
正直、目は覚めてても朝からこのテンションは少々面倒臭くも有る…ま、こう言う何処と無く歳不相応で子供っぽい束の事は昔から嫌いではないんだけどね…
「だって~!」
「早くしないと母さんからの小言が長くなるよ?」
「う…分かった…」
「大人しくしててね…」
時間は掛かるけど…乾かさなきゃ乾かさないで余計に怒られる…まぁ、本来は束が自分でやらないと駄目なんだろうけど…基本、昔から束は不器用だから……ま、自分の髪ならここまで気使わないけどね…やっぱり面倒だし。
「…ハイ、おしまい…着替えちゃって。」
「は~い!」
ちっちゃい子みたいに片手を上げて元気良く返事する成人女性…普通なら痛々しくも見える光景だけど、やってるのが束だと不思議とほっこりして来る…長い付き合いのせいか、変なフィルター通して見てる気がしないでも無い…とは言え、待ってるだけの筈が…ろくに身体拭かずに束が服を着ようとするから…その段階から既に手を出してる事を考えると、本当に大きな子供を相手にしてるのと変わらないと言えばそれまでだけど(昔と全然変わってない…)ま、束の場合…何かワザとやってそうな節は有るけどね…私としては世話を焼くのは嫌では無いから、それはそれで上手く成り立ってるのかもしれない。
「ハァ…」
壁の時計に目をやる…束を起こしに行ってから何だかんだもう、一時間以上経ってる…時間掛かるとは予想してたけど…ま、束の場合…変に急かすと焦ってやらかすのが目に見えてるから今は何も言わない……う…やっぱり眠くなる…
「…■ちゃん?」
「ッ!…何?」
「…何、じゃなくて…もう着替え終わったよ?」
「あ、終わったんだ…」
いつの間にかウトウトしていたらしく、束に声を掛けられて目を覚ます…
「…大丈夫?」
「んー…少し眠いだけだから、気にしないで。」
ま、何せ今は早く戻るのが先決だからね…