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負けた…公式の試合で負けたのなんて初めてだ…でも、不思議と暗い感情は湧いてこない。全力を出し切ったからかな…
「…大丈夫か?」
膝を着いたまま立ち上がろうとしない私に何か勘違いしたのかそう言って私に手を差し伸べる…がすぐにバツが悪そうにして顔を逸らした。どうか…あー…成程…
「…日本語なら分かるよ。」
「!…そうなのか?」
私は伸ばされたままの彼女の手を掴み、彼女に引っ張られつつ立ち上がる…
「私、ハーフだから…母が日本人なの。」
それが彼女、織斑千冬との出会いだった…
インフィニット・ストラトス…通称IS。この女性のみ扱えるパワードスーツが世に現れて世界の全てが変わった。
世界各国の軍は銃などの既存兵器からISを使うようになりISを使ったスポーツも行われるようになった。今は戦闘形式の試合のみだけど、何れ…他のスポーツも行われるかもしれない…尤も、一番の違いは女尊男卑になった事だろうか?
私としては男を虐げる女も、虐げられて甘んじている男も…ハッキリ言って、見てて良い気はしない。
……私の主観は置いといて、今は彼女の事だ…
モンド・グロッソ…ISを使った試合形式の大会だ…私は、その第一回に出場していた。
私としては詳しいことは分からないが、親類にツテがあったらしく…知らないうちにエントリーされていたというのが正直な心境…
…今からは考えられないが、当時は最初ということもあって実力如何に関わらずねじ込みやすかったのかもしれない…
当時私の武装は刺突剣のみ。射撃の素養はどう考えても無かったから、実際に扱ったことのある物の方がむだ扱いやすかったのだ…
教養の一つとして、親から言われて習っていたけど…私自身は楽しんでやっていた。でもそれは当初だけ…何の気なしに始めたそれは、素養があったどころか私にも思わぬ結果を産んだ…
私はメキメキと頭角を現し気がついたら私と戦える人はいなくなっていた(辞めた理由は、それだけじゃないけど)
何にしても、退屈していたのは確かだったから…勝手に出場が決まっていたとは言え、少しは期待していた…でも、すぐに失望した…この大会でも、結局私をやり込める様な人は現れなかった…結果、順調に決勝まで到達。
刺突剣以外の相手と戦えたのは悪くなかったけれど…ハッキリ言って歯応えが無さすぎた…なので、当然決勝の相手にも差して興味は持てなかった…今目の前にいる彼女…織斑千冬にも当然、全く期待してなかった…が、すぐに私のその評価は覆る事になる…
彼女は強かった…今まで彼女程の相手には会ったことが無かった…
彼女の持つ武器…刀と私の使う刺突剣の相性があまり良くなかった事も苦戦の要因になるかもしれないが、それを抜きにしても彼女の実力は頭一つ抜けていた…何より、彼女の剣は美しかった
時間一杯まで戦って、最後に立っていたのは彼女だった…それ以来、私には親友が出来た。大会終了後も、彼女との付き合いは終わらなかったのだ…
彼女とは家族ぐるみで付き合うようになった。尤も、彼女の経済状況の都合上…会いに来ていたのは、専らこちらの方からだった。
彼女とは色々な話をし、生身の模擬戦をしたりもした。…でも、結局一度も勝てなかった…そんな彼女に私は…気付けば、友愛とライバル心以外の気持ちが芽生えていた。
……そして、運命の日はやってきた。
第二回モンド・グロッソの数日前
「…ごめん。まさかこんなことになるなんて…」
「気にするな。身内に不幸があったんだろう?なら、仕方無い。」
この日…私は千冬の家にお邪魔していた。二人で大会に出るはずだったのに…
「…行って来い。こちらの事は気にするな、落ち着いたらこっちから会いに行くさ。」
「うん。…ねえ、千冬…?」
「どうした?そろそろ行かないと飛行機が出るぞ?」
「…私、私ね…」
そこから、続かない…やっぱり、私には言えない。
「…何か大事な話か?…もう時間が無い…次会った時に聞かせてもらおう。」
「…うん、そうだね…分かった。またね、千冬。」
「ああ…またな。」
私は彼女に背を向け歩く。
…ハァ…また言えなかった。でも、こっちも結構アプローチかけてるつもりなんだけどなあ…
実際箒や束、まさかの一夏や柳韻さんにもバレてたから…こうなると、千冬が相当鈍いって事なのかな…
ま、良いや…次に会った時は絶対に伝えよう…
そう考えながら私は座席に座る…飛行機が離陸し、私は何となく…目を閉じた。
…実際この時伝えるべきだったのだろう…この所為で、私は一生…彼女に気持ちを伝えられなくなったのだから…
この後の事は、私も良く覚えていない…でも、言える事が有る…
私の乗った飛行機は多分…落ちた。きっと私は死んだのだろう…
そして、今の私は…
「…姉さん、早く起きて…一夏が作った朝食が冷めるから…」
「…それはいけないな、今起きる…」
私は親友の妹になっていた…