「いや、その…割とね、子供だと思って舐めてたと言いますか…」
翌日、学校に向かう一夏を見送った私は昨夜からそのままになっていた布団の上にうつ伏せでダウンする状態になり、急遽束に連絡していた…
「凄い余裕たっぷりに色々言ってたのにね~♪」
「…うん、反省してる…してるから、悪いんだけど…そこの救急箱から湿布出して腰に貼ってくれる…?本当に辛くて…その、何でもするから…」
「…何でも、か…■ちゃんさ…そうやって安請け合いするから、今回こう言う事になったんじゃないの?」
「…いや、ごめんて…でもさ、一夏の望みなんだから…やっぱり応えてあげたいじゃない…」
「あのさ…そもそも、振る気だったんじゃないの?」
「まぁ、そうなんだけど…と言うか、さっき事情説明求めて来たけどさ…どうせ、見てたんでしょ?」
「…間接的に知ってたとしても、普通は当事者からも事情聞くのは当たり前じゃん…」
いや、警察の尋問じゃないんだから…まぁ、一線越えた以上…私はもう犯罪者みたいなものだけど、少なくとも束に言われるのも複雑……ううっ…キツい
「…正直喋るのも、もう辛いんだけど…早く湿布貼ってよ…お願いします。」
「頼み方がなってないとか、そう言う事言ってる訳じゃないんだけど…帰ろっかな~…」
「勘弁してよ…じゃあ何しに来たの?情けない私を笑いにでも来たわけ?」
「ハァ…」
んー…何か今日の束は棘が有る気がする…私も精神的にピリピリしてる自覚は有るけど、私以上に束の機嫌が悪いのが伝わって来た…
「あの、束…何か怒ってる…?私、何かした…?」
「ふぅ…■ちゃんさ…先ず、何で先に私に連絡とかしてくれないのかな?」
「連絡って…だから、こうして手当てして貰おうと思って呼んだんじゃない…あの、本当に何を怒ってるの…?」
「ハァ…違うじゃん、そう言う事じゃないじゃん…普通…」
「だから、何の事…?」
「…じゃあ言うけど、先ず…私がいっくんを引き取るのは無理だから、そこら辺何も言って来ない事までは分かるよ?…ま、そもそも…実際私も名乗りを上げた訳でも無いけどさ。」
「……」
「でもさ…それでも、束さんに相談すべき事が一つ有ったでしょ?少なくとも昨夜の時点で。」
「…つまり束は、自分に一言の相談も無く…私が一夏の気持ちを受け入れた事に付いて怒ってるの?」
「ハァ…他に有る訳無いじゃん…あのさ、そんな大事な事…何で何も言わずに一人で決めちゃったのさ…」
「…いや、だって…あくまで告白されたのは、私だし…」
「いっくんの歳考えてよ…そんな簡単に受け入れて良い話じゃないじゃん…まぁ、百歩譲って受け入れた事自体はまだ良いとしても、初日でもうこう言う事になってるし…■ちゃんさ、いっくんに他に好きな人が出来たらとか言ってたけどさ…初日からいきなりこうなって…いっくんがそう簡単に■ちゃんの事を忘れられると思う?」
「……」
そう言われてもね…
「…良く分からない?じゃあ考えてみて。あくまで仮定の話…仮にもし、ちーちゃんが死ぬ前に■ちゃんと結ばれる事が出来て…加えて、今回のいっくんと■ちゃんみたいに身体の関係まで行った…そこから仮に、ちーちゃんが今みたいに亡くなった場合…どうなったと思う?」
「…それは…」
「■ちゃんさ、その場合ちーちゃんの事を忘れたり出来た…?あくまで仮の話とは言え、それでもいっくんの気持ちにある程度目を向ける余裕が出来たのは…それが無かったからじゃないの?」
深く考えるまでも無い…確かに、そう…もしそのパターンで千冬とこうして死に別れていたとしたら…私は、正直一夏の気持ちに付いて考えるどころか…そもそも家族になって一夏を支えようとかすら、思いもしなかったと思う…実際間違い無く、それどころじゃなかっただろうね…
「じゃあ分かるでしょ?あくまで仮契約みたいなものとは言え、■ちゃんが告白を受け入れた上…そこからあっさり身体の関係まで行った…何ならいっくんは元より、■ちゃんも初めてだった…そんな状態で、そう簡単にいっくんが■ちゃんの事を忘れられると思う?■ちゃんはいっくんの将来がどうのとか言ってたけどさ…その舌の根も乾かない内に、■ちゃんの方からエッチの誘いをしてるとか…絶対可笑しいでしょ。」
「あ…」
言われてみれば確かに、そう…少なくとも、彼の将来を本気で考えてるなら…そう簡単に許可を、それも私の方から出して良い話じゃなかった…何やってるんだろう、私…
「さっき■ちゃんが指摘した通り、昨夜の事は私全部見てたけどさ、ホントに驚いたよ…まぁ、さっきも言った通り…いっくんの気持ちを条件付きで受け入れた所まではまだ理解出来たけど…いっくんがその後暴走したとかじゃなくて、■ちゃんの方から誘うんだもん…何、あの時お酒でも飲んでたの?」
「…見てたなら分かるでしょ、飲んでるわけないじゃん…」
そもそもお風呂入ってそんなに時間経ってなかったし…下手に飲んだら酔いが強く回る可能性高いしね…いくら千冬が亡くなってから多少気が滅入ってたとは言っても、下手に飲んで酔っ払って…私以上に状態の良くない一夏に迷惑掛けるわけには行かないし…少なくとも、それくらいの理性は残ってた筈なのに…
「■ちゃんさ、実は自分の方もあんまり余裕が無いのはさすがに何となくでも分かってた筈だよね?何で、一言相談してくれなかったの?簡単に結論出して良い話じゃなかった筈だよね?…仮に私が信用出来無かったにしても、■くんに聞くとか…先に出来る事は有った筈だよね…?」
「ふぅ……それが全く思い浮かばないくらい、まともな状態じゃなかったんだろうね…」
結局、それが全て…今更後悔しても…もう、遅い。
「…で、どうするの?」
「ふぅ……ま、なる様にしかならないよ。」
最初に応えられないとは言ったけど、それでも向き合う気でいたのも確かだし。
「ハァ…投げやりになってるとかじゃないんだね?ちゃんと考える気でいるんだね?」
「…世間一般的に認められた事じゃなくても、こうなった以上一夏が諦め切れないんだったら…責任はちゃんと取るよ。」
「…と言うか、■ちゃんは本当に後悔とか無いの?」
「…ふぅ…そりゃ、一夏の人生に汚点を残したかもしれない事なら無くは無いけど…単に処女を捨てた事とかなら特に後悔は無いかなぁ…仮に、私が誘わなかったり…きっちり一夏を振ったにも関わらず、その後襲われたとかでもね…」
「…まぁ、いっくんに裸見られても気にしないとか■ちゃん言ってたしね…そりゃそうか。」
「うん、一夏に捧げる分には別に構わないかな…そもそも、これでも気持ちはある程度分かった上で…覚悟決めて…私は、一夏に一緒に暮らす?って…聞いたつもりだから。」
それが出来無いと思ったなら…最初から兄さんか、ウチの両親に任せてるからね…
「だから…仮にレイプされたとしても構わないって?」
「言い方。ま、仮にそうだとしても…世間的には、私が悪い事になるけどね…その時は、喜んで逮捕でもされるよ…何なら、実際には私から誘ったんだしね…」
「…ホント、私は■ちゃんの事が時々怖くなるよ…そうやって、いつか皆に何でも差し出しちゃうんじゃないかって…」
…はい?
「いや、私別にそんなに聖人じゃないよ?一夏だから、だよ?他の友人や赤の他人相手なら…私もここまでしないって。」
「…ハァ…少しはそう言う気持ち、私にも向けて欲しいなぁ…」
「ん?どう言う事?」
「分からない?…ハァ…私も、■ちゃんが好きだって言ってるの。」
「……そうなの?」
いや、それはさすがに気付いてなかった……え?ホントに?
「一応確認するけど…恋愛的に?」
「そうだよ。」
「…マジな話?」
「マジもマジ…大マジ。」
「からかってるとかじゃなくて?」
「違うよ…ハァ…ちーちゃんには悪いけど、亡くなった今ならとか思って…狙ってたのに、いっくんに先越されちゃったよ…」
「…んー…仮に先に告白されても、どっちみち私は応えられなかったと思うけどね…」
「でも、いっくんに言ってたみたいな条件を出してた可能性は有るんじゃない?」
「…んー…ま、それに近い物は確かに有ったかもね…」
一夏と違って、束は私と同い年…だから、普通に束も大人で…年齢的な話の方は気にする事じゃなかったとしても…束は束で、未来が有る…そこで私が足引っ張るわけには行かないって考えにはなるだろうから、似た様な事を言ってた可能性は有るかも…
「…ねぇ?今からでもどうかな?」
「?…どうって?」
「束さんに乗り換えるとか「それは無理。一夏に悪いからね」やっぱ駄目か…ハァ…いっくんに気使ってないで、さっさと言っておけば良かったよ…いっくんの性格的に、そしたら諦めてたんだろうし…」
まぁ、確かに一夏ならそうなってたかも…
「…ふぅ…ま、だから…束の気持ちは嬉しいけど…諦めて「それは無理」え~…二股はしたくないよ、私。」
「ま、■ちゃんがそんなに器用な事出来無いのも分かってるよ?でも…まだいっくんが諦めないって、決まったわけじゃないし。」
「まぁ、ね…」
それは本当に分からない…と言うか、そうして貰った方が私は嬉しいんだけど…ま、それでも私が束の気持ちを受け入れるかどうかはまた別の話なんだけどね…何なら一夏と違って、そこまで束に気使う理由も無いし。っ…
「うん…束の気持ちは分かったよ…で、今は本当に腰痛いから…早く湿布貼ってくれると助かるんだけど…」
昨夜は…結構無茶な体勢強いられたからね…いや、本当に…子供とは言え、一夏もやっぱり男なんだね…ホント、舐めてたなぁ…
「…あのさ、■ちゃん?」
「何?」
「…今、私から■ちゃんがどう見えてるか…分かる?」
「…どう言う事?」
「いや、■ちゃん今動けないじゃん?要するに…美味しそうって感じなんだけど…そんな状態の■ちゃんの身体に触れたら、その…」
「…ハァ…多少身体をまさぐるとかなら許すから早くして。」
「…良いの?二股は嫌だとか…」
「少なくとも今、私は動けないのは事実だし…抵抗出来無い以上、興奮した束から襲われても…もうそれは、一種の事故かなって。」
正直もう、そろそろ腰が痛過ぎて深く考えるのも面倒…
「…本当に良いの?」
「少なくとも束からそうされても、優しくしてくれるならレイプされたとか言うつもりも私は無いから…っ…もう好きにしてくれて良いから早くして。」
大体…"親友"の"篠ノ之束"から"性的意味"で襲われました、なんて話…一体誰に、あるいは何処に相談すれば良いと言うのか…まぁ、仮に本当に襲われたとしても…私が彼女を本気で嫌う事自体、絶対に無いって言えるけどね…
…と言うか、何なら襲われたところでどうでも良い…とにかく今は早く湿布貼りをお願いしたい…もう、ホントに限界だから…
「あの…私だって忘れられなく「しつこい。じゃあこれからは一夏が居ない時だったらこっちも出来るだけ付き合ってあげるから…それなら、良いでしょ?今は本当に…!いい加減…!キツいから…!もうとっととやって…!」…はい。」
半ば逆ギレみたいなものかも知れないけど、それでもいい加減イラついて来た…もう今は何も考えたくない…と言うか、少し考えたら分かるでしょうに…私が今更、貴女の事をそんな事くらいで嫌がったりするわけないって…全く、一体いつからの付き合いだと思ってるんだか…てか、何なら普段みたいに予期してないタイミングで現れて色々と振り回されるよりは、下心有りまくりの今の状態の束の方が私としては比べるまでもなく…まだ遥かに扱いは楽。
だって、私の身体に触れたいなら…それは当然、私の目の届く所まで来ないといけないって事なんだから。もう正直、アレな言い方にはなるけど…束が大人しくしてくれるなら…こんな身体で良ければ、最早いくらでも好きに扱って構わないとすら思う…これから先、私は一夏を守っていかないといけない以上…束の突発的な行動に振り回されるのは本当に困る…そう考えたらもう、その程度の事で束が満足してくれると言うなら…それは私にとってメリットでしかない……あっ…
「…どう?」
「…うん、良い感じ…まだちょっとだけど楽になったかも…ありがとう、束。」
貼られた湿布からじんわりと広がって来るものが有り、文字通り軋む様な痛みがマシになる…ハァ…やれやれ、仮にこれが毎晩とかだとちょっと身体もたないかもね…今日と明日はともかく、明後日からはいい加減会社行かないと行かないし…彼を養う為に、私は何が有ろうと仕事を休む訳には行かない…まだ子供の彼に"我慢しろ"って言うのは酷だとも分かってる…でも、それで身体壊したら元も子も無い…少なくとも金銭的には不自由はさせないって最初に約束したんだから…ふぅ…まぁ、その辺は彼とも相談するしかないかなぁ……分かってくれると良いけど…
「あの…■ちゃん…?」
「…ふぅ…何?」
「その、私「ふぅ…ご褒美が欲しいって話なら、私は動けないから…まぁ…束の好きにしてくれて良いよ…でも…優しくで、お願い」うん!」
…束が今までで一番喜んでる様に見える…全く、一夏も貴女も…まぁ、千冬もそうだったわけだけど…一体私なんかの何が良いんだか…こんな身体、触れたところで大して興奮もしないと思うんだけど。あ…
「束…悪いんだけど、その前に一つ良い?」
「っ…もう、何?」
束に仰向けの状態にされ、シャツを捲り上げられた所で問題に気付いた…
「その、私…昨夜の時点で疲れちゃってて…最後の記憶が確かなら、終わった後シャワーも浴びないでそのままだったと思うんだけど…」
「あー…まぁ、良いよ…」
「良いの?」
「どんな状態でも、■ちゃんに触れられるなら私は気にしないもん!」
「…別にそんな気合い入れる様な話じゃないでしょ。」
まぁ、束が良いなら良いけどね…あ、まだ問題有った…
「っ…ごめん…もう一つだけ良いかな」
昨夜の行為の後のままなので、一夏の唾液や汗などで凄い事になってそうな私の胸に触れるどころか、普通に舌を伸ばしていた束にさすがに軽く引きながら私はもう一度止める……いや、束は昨日のアレ見てた筈なんだけど…良くそのまま舐めようと思ったね…
「っ!もう!束さん本当に我慢の限界なんだけど!?今度は何!?」
いや、何もそんなに怒らなくても…まだ全然時間有るんだし…
「えっと…本当に一つだけだから…一夏がこっちに帰って来たらすぐに織斑家に行っちゃいたいから…当然だけど、時間制限が有るって話なんだけど…」
「…荷造り終わってるんだよね?」
「うん、後は一夏が帰って来たら…そのままここ出ちゃうつもりだよ。」
そう言えば、この布団はどうしようかな…一夏が昨日散々私を貪ったもんだから匂いとか色々ヤバそうだけど…まぁ、最悪処分で良いかな…
「うん、それについては分かったよ……ねぇ?束さんからも一つ良い?」
「何?」
「…本当に、これからもこう言う事に付き合ってくれるんだよね…?」
「…私の体力的問題とか色々有るし、出来るだけって条件は付くけど…それでも、一度良いって言った以上…基本、私は撤回しないよ。」
「…そうだよね、■ちゃん…そう言う時に嘘って吐かないもんね…」
「うん…長い付き合いなんだから、束も知ってるでしょ?」
「まぁね…あ、大事な事忘れてたよ。」
「大事な事?何?」
後何か有るかな…
「キス「はいはい」…っ…躊躇とかないんだね…」
「…いや、今更貴女相手に躊躇とかするわけないでしょ。」
実質、当時私の実家で束と一つ屋根の下で暮らしてた様なものだった学生時代…あの頃何度も私に要求して来たのは束でしょうに…してと言われたのは確かに久しぶりにはなるけど…今更忌避感とか、特別感みたいなもの…有るわけないじゃない…
「ん…取っとけば良か「当時してないで今日まで取っておけば良かったって話?それは束の勝手だけど…仮にその場合だとさ、普通に私のファーストキスの相手は束じゃなくなるんだけど…さすがに一夏と昨夜の時点でしてるし」…うん、やっぱりあの頃してて良かった。」
コロコロ変わるねぇ…ま、それ以前に…束のその感覚は理解は出来るけど…私からしたら、キスの一つや二つ…したからって別に減るもんじゃないみたいな認識だから共感は出来無いなぁ…何だったら…
「ま、身体の方の初めては一夏にあげちゃったけど。」
「っ…それに関してはあんまり言わないでよ…束さん、本当に悔しいんだから…」
「ま、仮に千冬が生きてたら、私自身…どっちの気持ちも絶対OKしてたとは思えないしね…まぁ、でも…千冬が死んで…そこから一ヶ月も猶予有って告白してないんだから、結局貴女がヘタレただけの話なんだけど。」
「う…何も言い返せない…」
いや、本当に悔しそうだね…仮にも子供の一夏に対して、明らかに嫉妬気味なのも大人気ないと思いつつ…てか、本当に…
「ハァ…ごめん、最後にもう一つだけ良い?」
「…一つだけだよ、何?」
「後で一夏にもちゃんと聞きたい所なんだけどさ…結局束は何でそんなに私が良いの?それこそ、千冬にはそんな感じなかったように思うんだけど…」
貴女たち二人は、最早誤差レベルかも知れないけど…一応、私より長い付き合いでしょうに…
「んー…■ちゃんもそう言ってたけど…私だって別に、特別同性が好きってわけじゃないし…と言うか、有象無象相手に異性同性問わず…そんな思い抱くわけないし…でもまぁ、敢えて言葉にするなら…」
「するなら?」
「■ちゃんだから、だよ…性別とか、そんなの関係無く…私は■ちゃんだから、そうなりたいって思ったんだよ。こんなのそれ以上言える事なんて、無い…結局理屈じゃないんだよ…そもそも■ちゃんだって…何でちーちゃんを好きになったのかとか、色々切っ掛けは有るかも知れないけど…総合すると同じなんじゃない?」
「……」
束のその言葉に何となく、私は口を閉ざす…まぁ、でも…結局、その通りなんだよね…今考えても完全な一目惚れで、切っ掛けとしては始まりはあの時の出来事では有るんだけど…彼女がこの世から消えてしまった今でも、諦めがつかない理由を説明する事は出来無い…何なら今でも、私は彼女を求めてる…出来るなら、取り戻したいと…そう、今も思ってる…そこに理屈なんて、何も無い。でも、それをそのまま認めるのもちょっと悔しい…
「ふぅ…束がどう私を口説いてくれるのか、期待してたのになぁ…」
「言葉にしたら陳腐になるって良く言うじゃん…それでも聞きたいなら言うけど…私は■ちゃんが欲しい…欲しくて欲しくて…堪らない。顔も身体も何もかも…全部好き…自分の物にしたい…誰にも、渡したくなんかない…」
「うわ…」
いや、さすがに私も今のは本気で引いた…言葉自体は有り触れてるけど、もう束の目付きがヤバ過ぎて…
「もうさぁ…今ならあの頃、■ちゃんを監禁したがってたあの有象無象の気持ちが分かっちゃうよね…と言うか、それだけ欲しいのもそうだけど…放っておいたら■ちゃんの場合…いつの間にか何処かに勝手に消えてしまいそうなんだもん…目の届く所に閉じ込めておきたいとは、やっぱり思っちゃうよ…そうじゃないと心配もして堪らなくなるし…」
いや…何それ…?
「ちょっと待って…それじゃあ何?私ってそこまで一人じゃ何も出来無い人だと思われてるの…?」
「ううん、違う…逆だよ逆。■ちゃんの場合…一人で色々出来過ぎるの…でも、無理をして自分を削って行くのが常だから…最後は、誰に見られず、知らせず…一人で勝手に消えて行っちゃうタイプなんだよ…こっちの気持ちなんて無視してさ…」
「…削るって…私、消しゴムか何かだと思われてるの…?」
いや、皆にとっての私って…最早ペット扱いですらなかった…?
「んー…確かにある意味では、そうかもね。」
「…勘弁してよ、物扱いされても良いから…せめて人間だとは思ってて欲しいよ…」
「ま、とにかく!私、諦めないからね…?」
「ハァ…はいはい…分かったよ…」
正直良く分からないし、今は考えるのも面倒臭い…
「と言うかさ…時間無駄になったんだけど?」
「あ、ごめん…もう良いよ。」
「後はもう何もないよね…もう、こっちはずっとお預け状態で苦しかったんだから…もう、早く■ちゃんを食べたくて食べたくて…」
「……」
文字通りの据え膳扱いか…まぁ、もう良いけどね…別に。
「ハァ…どうぞ、こんな身体で良ければ…好きにして。」
その後はもうとにかく、束に全身舐め回されて…散々吸い付かれた…束なりに気を使ってはくれたのか、幸い腰以外に痛い場所が増える事は無かったけど…結局私の身体を唾液だらけにした後、それを綺麗に拭き取ってから満足そうに束は帰って行った…
ハァ…にしても、どうせ映像残してるんだろうけど…アレはどうなんだろうね…どう考えても、需要のないモノじゃないかな…例えばアレをオカズに抜くとか、ハッキリ言って私でも無理かな…束の事を気持ち悪いとかは思わないけど…行為そのものは、普通にそのレベル…もしかして、これから先束がする時は毎回あんな感じになるの…?正直、あんまり想像したくない…まぁ、でも好きにして良いまで言ったしね…ハァ…ま、アレで良いならこれから先もどうにかなるかな…一夏とするよりは、遥かに楽なんだし。
「…って、感じの夢を「おい」何?」
「飯時にするな、そんな話…普通に食欲が無くなる…」
「…その割に、手は止まってないけどね…」
「当たり前だ、そんな事でせっかくお前の作ってくれた飯を残してたまるか。」
「いや、別に気持ち悪いなら無理しなくて良いよ?残したって、しばらくは冷蔵庫に入れとけばどうにかなるし……まぁ、結局このタイミングでこんな話した私が悪いんだけどさ…」
「ハァ…まぁ良い…気にするな、お前の分の皿が無いんだ…そっちは食欲も出ないレベルなんだろ?」
「まぁ、さすがにね…」
前回の時は、一夏君とした行為の内容に付いてすら夢の中には出て来なかったから大丈夫だったけど…今回は普通に前日の出来事として向こうの私の中にその記憶が有る状態からスタート。加えて、後処理すらしてない状態のその身体を満遍なく束に舐め尽くされるって感じの……うっ…
「…大丈夫か?」
「……ふぅ…大丈夫、一応ギリでは有るけど…吐くまでは行かないレベルだから。」
まぁ、でも…こっちの束に責任は無いって分かってても…今日だけは、顔を見たくないなとは…ちょっと思う…
「…ハァ…いや、にしても今回は凄いよ…何せ、生々しさの所為か…起きてからこれだけ時間経ってもまだある程度記憶に残ってるくらいだから…」
「…ふぅ…私に話して、少しは楽になったか?」
「…うん…ありがとう…言わないつもりだったけど、聞き出してくれて正直助かったよ…」
「…まぁ、前日酒飲んだ訳でもないのに…朝からアレだけ青い顔してればな…理由も聞くさ…と言うか、コレはどう考えても私以外には言えないものな…」
「まぁ、向こうでは千冬が居ないから、ね…もちろん、千冬相手でも多少抵抗は有ったんだけど…まだマシ、かな…正直に言えば、今は一夏君とすら…あまり顔合わせられそうに無いかな…何なら束は、もっと無理だし…」
いやまぁ、もちろんこんな事で二人を嫌いになるとかは絶対無いって言えるけど…今日は、ちょっと本当に勘弁して欲しい…と言うか、仮にこれが並行世界の話だって言うなら、結局私に見せてどうしたいんだろう…前回も感じた事だけど、今行けたとしても…もう手遅れの世界としか思えないんだけど…だって、多分これは…
「今なら何となく分かるんだけど…多分、アレは…前回の展開から考えても…もう過去の話なんだと思うんだよね…」
「だから、手遅れ…か。しかし…私が居ないだけで手遅れと言う事になるのか?」
「うん、多分…こっちと時間の流れが違うのかな…きっともう、あっちには私も居ないんだと思う…」
「…後追いでもしたのか?」
「それに関しては、何とも言えないかな…ただ、前回のあの満足感を得た向こうの私の感じから考えても…命を絶ってる可能性は高いと思う…」
前回の夢での最後は…どう言うわけか一夏君がIS学園に行っていて、自分を振って一夏君が箒と結ばれた辺りで途切れた…多分そのすぐ後か、あるいはもう少ししてから…
「向こうの私は…ずっと気に掛けてた一夏君が自分を捨てて幸せになってくれた…そこで役目を終えたと、そう判断したんだろうね…」
そこで何とか食べ終えた千冬が手を合わせてご馳走様でしたと言う…その後…
「…ハァ…仮にそうなんだとしたら、向こうのお前は普通にバカだし…何なら無責任だな。IS学園に何故一夏が行けてるのかは別にしてもだ…自分の事を諦めてくれて、篠ノ之と結ばれてそれで自分の役目は終わり…そんなふざけた話が有るか…仮にそのタイミングだったら、一夏はまだ高校生の筈だろう…まだ未成年のアイツを見捨てたに等しい…何なら、そのバカは篠ノ之の事も気に掛けてた節が有るんだろう?」
「…チラッと見えただけだけど、下手したら…だけじゃ、無さそうだけどね…と言うか、それこそ向こうでは最後は学園の教師だったんだし。」
「無事結ばれたと言っても少なくとも二人の事は、まだまだ見守る必要は有った筈だ…全く、何を考えてたのか…さっぱり分からん…」
「んー…ハッキリしないけど、単なる後追いじゃなく…向こうの私自身…保護者としての姿を保てない理由は何か有ったっぽいんだよね……理由は、分からないんだけど…」
その事について考えようとすると…何故か、私の思考は乱れる…それ以上頭を働かせる事が出来無くなるのだ…と言うか何か、私自身も…重要な事を忘れている様な…そんな、気が…
「…どうした?」
「!…ううん…何でも無い。」
答えの出ない問題に蓋をする…何の解決にもなってないのは分かるけど…まぁ、考えたって分からないんだからしょうがないよね…
「…ふぅ…ま、仮にそうだったとしても…私なら簡単に自殺はしないな…例え、どんな理由が有ろうともだ。」
「…やっぱり強いね、千冬。」
「…何言ってる?当たり前の事だろう?と言うか、逆に聞くが…今のお前だったらどうだ?仮に私が死んだとして…お前は一夏を放っておくのか?」
「まさか。有り得ないでしょ、そんなの…出来る出来無いの話じゃない…どんな手を使ったって私は彼を、一人のままにしておくとかしないよ。」
「だろう?つまりは、そう言う事だ……ただまぁ、向こうのお前も相当ダメージは深かったんだろうが…それでも、実際一夏を引き取るのを決めたわけだ…まぁ、その後の行動は余計だったのかも知れないがな…ま、前回も言った通り仕方無いとも言えなくはないが。」
「んー…それはまぁね…」
ただ、今回改めて考えて…出した結論は一つ。
「今の私だったら、仮にこれから先千冬が亡くなったとしても彼の気持ちはどうあっても受け入れられないだろうけどね…それは、千冬がもう居ないとか…そんなの関係無く、ね…」
「ほう。何故だ?」
もちろん…理由なんて、決まってる。
「そんなの、もう姉代わりでもなんでもないでしょ…と言うか、半端に受け入れるとか…彼に対しても失礼でしか無い。そりゃ、そう想ってくれる気持ちは嬉しいとは感じるだろうけど…だからって、それは違うでしょ。」
前回結論が出せてなかったけど、今なら…彼女の気持ちが分かる…
「彼女は結局、口で何と言おうとも千冬がもう居ないって現実が受け入れられてなかっただけ…だから、代用品としてまだ幼い一夏君と純粋に自分の事を好きでいてくれる束を選んだ…二人の気持ちを利用したんだよ…ハァ…ホント、最低だよ…」
一番私にとってショックなのは、向こうの私が一夏君とそう言う関係になった事でも…その上で平気で束とそう言う関係になった事でも…もちろん、多少引きはしたけど結局…あの時の束の行為そのものでも無い…千冬の事が好きだった…でも、その上でその事実を乗り越えられず…ただ二人を利用する事を選んでしまった向こうの私自身…
「もうねぇ…気持ち悪くて仕方無いんだよ、私も千冬が認めてくれてるとは言え…束と身体の関係が有る事考えたら人の事言えないし…流されるのは私の癖みたいなものだから、まだ仕方無いにしても…でも、二人を代用品として扱ってるって事…その事がとにかく、嫌でさ…」
「成程な…だが、それはそんなにいけない事か?」
「千冬は聞いてて、気持ち悪いって思わないの?」
「それはお前が潔癖過ぎるな…私だって、お前が亡くなった時…一夏や、束とそうならない保証は無い…だからと言って、利用しただけと考えるのは早計じゃないか?大体、今自分でも言っただろう…人の事は言えない、と…結局向こうのお前に落ち度が有るとすればただ一つ…全てを放棄してこの世から逃げ出した事だ…例え、心が壊れていたんだとしても…その身だけでもこの世に残す覚悟が向こうのお前にはなかった…ただ、それだけの話だ…バカでは有るがな、責められるばかりでも無いだろう…」
「バカとか、無責任とか言ったのに…千冬が彼女を庇うの?」
「だとしても、それもお前なんだからな…何だお前、私が…ただお前の綺麗な部分だけ見て、好きになったんだと思ったのか?…見くびるなよ?私は、全部引っ括めてお前が良いと思ったんだ。大体、お前はそうじゃないのか?」
「むっ…まぁ、確かにそうだけど…」
そりゃ、長い付き合いだからね…私だって、それなりに…千冬の色々な姿を見てる…始まりは一目惚れだとしても…その色々を見てからも私の気持ちは変わらなかった…恋の感情に酔い続けてるわけじゃない…それなら、もうとっくに…一度冷めてる…その上で、貴女はまた私を夢中にした…そこからは、今も酔いは冷めていない…冷める気配だって無い。これから先も始めて会った時の様なカッコイイ貴女も、可愛い貴女も…どうしようも無い程ポンコツな貴女の姿だって…全部、全部見ていたい…傍で見届けさせて欲しい…例え、いつまで…そう出来るか…分からないとしても…死がふたりを分かつその瞬間までずっと…
「…おい。」
「!…何?」
「あのなぁ…全部口に出てるんだよこのバカ。」
「え!?」
改めて千冬の顔を見る…うわ、真っ赤…と言うか、アレ口に出して言ってたの…うわぁ…私も、恥ずかしい…
「全く、来い!」
千冬に手首を掴まれた。
「痛っ…え?ちょ…急に何!?」
「何ってアレだろ、するんだよバカ「いや昨夜もしたでしょ!?今、朝だよ!?」何言ってる…あんなに情熱的に私を口説いた癖に…ちょうど良い。払拭出来て無いんだろ?上書きしてやる。」
「いや、待って…朝からは嫌だよ!?てか、まだ昨夜のアレのせいで身体限界なんだって!?」
そもそも気持ち悪いのは、多分その所為も有るんだけど!?
「チッ!…ふん…良いだろう、分かった…その代わり、今夜は寝られると思うなよ?そんな夢、私が見れなくしてやる…」
「いや殺す気!?」
休まなかったら多分私死ぬって!?
「何言ってる?仮に死んだら、私が何回でもお前をこの世に戻してやるさ…絶対、逃がさんぞ。」
「いや最初から私は逃げる気とか無いけど!?てか、その場合私を殺すのは千冬でしょ!?」
「生き返ればそんな事実、消えて無くなる…」
「無くならないよ!?私が覚えてるよ!?」
「うっさい!黙れ!」
「理不尽だよ!?本当に勘弁して!?」
…で、それから結局千冬を宥めるのに数時間…ホント、疲れた…ま、ここまで重ためな独占欲向けられても千冬を嫌いになれないんだから…もう本当にどうしようもないよね、私もさ…
「…で、突然何の為に私を呼んだのかと思えば…」
「いや、コレを着て欲しいなって…」
「ハァ…嫌に決まってるだろ…帰るぞ。」
「え?いやいや待ってよ、絶対似合うから…」
「そう言う問題じゃない…何処に需要が有るんだ、全く…」
「いや、私には需要しかないんだけど…もっと言えば、ここにいる全員そうだね…」
周りを見渡せば、母さんに束にクロエ…てか、店員さんどころか店長まで全員頷いてる…と言うか、気持ちは同じなら誰か千冬の説得…手伝って欲しいんだけどなぁ…いやまぁ、絶対着せるって豪語したのは私だけどさ…
「…じゃあ言い方を変える…私が、嫌だから、着ない…良し、帰るぞ。」
「え~!?ちょ、待って…本当に待って!?お願いマジでお願い…着て、いや着てくださいお願いします!」
取り付く島も無い…まさか、ここまで嫌がられるなんて…取り敢えず、私は切り札を切る…即ち、土下座だ…持っているゴスロリ服を貢ぎ物を差し出す様に掲げながら、とにかく床に頭を擦り付け…しまいにはゴンゴンと叩き付ける…
「お前なぁ…プライドは無いのか?と言うか、痛くないのか…?」
その言葉に対して、私は頭の上下運動を続けたまま答える…
「うっ…ぎっ…痛くないわけ…ぐっ…無いでしょ…でも、どうしても…うっ…着て、欲しいから…ぎっ…」
もう千冬に呆れられ様が、これから先の関係が変化しようが今はどうでも良い…だって、どうしても私は…コレを着た貴女の姿を見たいの……うっ…本当に痛い…
「お願い…着てくだ、さい…うっ…」
「ハァ…分かった、着てやるから…やめろ…全く…何でそこまでするんだかな…」
「ハァ…ハァ…うっ…だって、どうしても見たいんだもん…」
「…泣く程か…いや、痛くて泣いてるのかどっちだ…?」
「分かんないよ…とにかく、着てくれるって事で良いんだね…?」
「一回着るって言ったんだ…嘘は言わん…ハァ…本当にバカだな、お前は…見た感じ出血とかはないが腫れているな…取り敢えず冷やせ、落ち着いたら着てやる…」
「その間に、帰ったりしないよね…」
「しない。着ると言っただろう…良いから、早くデコを冷やせ。」
ふぅ…良かった…身体張った甲斐が有ったよ…あ。
「その…引いても仕方無いとは思うけど、私の事を「初めて会った頃なら十分に有り得るかも知れんが、今更お前の事を嫌いになどならん…バカだと思うのと、素直に心配になる程度だ」…心配、してくれるの?」
「ああ。お前の頭の具合をな…」
「…それは、どっちの意味?」
純粋に腫れたおでこの事?それとも、私がバカって意味?
「両方だ、このバカ…ハァ…全く…早く冷やして来い。」
「ほら、■ちゃんこっち…氷出してあげる…」
「うん、ありがとう…」
今、私は今までで一番束に感謝してると思う…うっ…いや、本当に痛い…ホント、良く出来たよね…もっかいやれって言われても、多分無理だよ…
「…いや、さすがに一着しか着な…分かった分かった…涙目で土下座の体勢を取ろうとするな…全く、今日だけだぞ?本当にお前は時々束以上に訳の分からん事をするな…」
結局十数着程着てもらい、写真を撮らせて貰った…いやぁ、本当に良かった…さて、と…
「じゃあ千冬、この服の内どれか買うから選「選ぶのは私のか?」もちろん。」
「…いや、要らんぞ?こんなの外で着れんし、渡してどう「……」…アホか、今度はやらせんぞ。」
土下座する為に床に座った瞬間、同じく座った千冬が私の両肩に手を置き、力を込める…う…頭を下ろせない…
「コレは、譲れない…お願いだから「だから、渡された人間が着ない服をプレゼントしてどうするんだこのバカ」…うう…」
くっ…千冬の力が強過ぎる…でも多分、私に怪我をさせない様に力を私が耐えられるギリギリに抑えてるのが分かる…この程度なら渾身の力を込めたら行けるかも知れないけど…今度は千冬の手が大変な事になりそう…
「う…お願い、せめて一着だけでも受け取ってよ…時間取らせたし、着たくない服を無理矢理着せたんだし…」
どうせ着ないのは分かってるけどそのくらいは…!
「本当にお前は私に貢ぐのが好きだな…ハァ…分かった、なら飯でも奢ってくれ…それで十分だ…何せ急いでお前の部屋に来て…そのままこの流れだからな、昼飯もまだなんだ…」
「!…あ、そうなの…?」
「ああ。」
「…分かった…ごめんね、もうここの服に付いては何も言わない…土下座もやめるから、手退けて…ご飯奢るから。」
「…本当だな?」
「うん、もうしない…」
凄い残念では有るけど、ね…千冬が手を退けてくれたので私は立ち上がった…あ。
「すみません…お騒がせしました…」
取り敢えず、私は店内に居る人たちを見渡して頭を下げる…まぁ、他にお客さんは居ないけどね…幸い、店員や店長は微笑ましい顔で顔を横に振った…ハァ…ま、迷惑では有ったと思うけどね…あ、まだ有った…
「…もし床に傷とか残ってたら後で言ってください…弁償しますので…」
パッと見大丈夫だとは思うけど…念の為、ね…
「では、失礼しました…ご迷惑をお掛けしました…」
「…と言うか、奢れと言ったのは私だが…先に病院行かなくて大丈夫か?」
「大丈夫、だとは思うけど…この後ちゃんと行くよ…」
まぁ、面倒だとも思うけどね…
「ホント、貴女は昔から突拍子も無い事ばかりするわね…」
「…はい、反省してます…」
呆れ声の母さんにそう返す…いつもなら反発もしそうだけど、今回は私も何も言えない…
「怖かったです…大丈夫ですか?」
「クロエ…ごめんね、大丈夫だよ。」
今更だけど、クロエの顔に涙の跡が…今回やった事に反省はしても、今更後悔は無いけど…さすがにクロエの顔見てたら罪悪感も湧いて来る…
「痣になってるよ?ホントに大丈夫?」
「…病院は行くけど、多分…色々な意味で大丈夫じゃないかな…」
時間と共に強くなる痛みを感じつつ、私は前言を撤回する…と言うか、向こうで理由説明するの…さすがに嫌だなぁ…何とか誤魔化そうかな…
「…どうせ理由を誤魔化そうとか考えてるだろ。」
「っ!」
身体がビクッと反応する…え…?何でバレたの…?
「何でバレたのかって顔だな…最早顔に書いて有るんだよ…仕方無い、飯食ったら私も付き添うぞ…今のお前は信用ならん。」
「え?良いよ良いよ大丈「良くない!全く、このバカが」…ごめんなさい…」
だって…どうしても着て欲しくて…ハァ…まぁ、私が悪いんだけどさ…でもその為に時間減らすのは…
「心配するな、残りのお前の休暇終わるまでまだ時間有るだろ?明日からは付き合ってやる…」
「!…本当?」
「ああ。」
「その…私、千冬に迷惑掛けたのに…」
「迷惑な、確かにその通りだが…今更だな…長い付き合いだ、お前に付き合って面倒事に巻き込まれたのなんて一度や二度じゃない…と言うか、それはお互い様だ…私だって、今までに色々やらかしてるしな…もっと言うなら、束の事を考えてみろ…お前なんて可愛いもんだ…回数は元より、規模も遥かに上だ…それも、下手したらお前に会う前からずっとコイツはこうなんだぞ…それに比べたら、お前のやらかしなんて誤差の内にも入らん…全く、何でこんな奴と今でも友人関係続けてるのか…私自身にももう分からん…」
「ちょ、ちょっと…何もそこで束さんの事言わなくても「バカか?事実だろ?」…でも、最近はそこまで色々やってな「それは私に対して、だろ?最近は私が忙しくて相手出来無いからって…それなりに色々コイツには迷惑掛けてるのはちゃんと聞いてるぞ…お前、何だかんだコイツに頭上がらんだろ?」うー…」
まぁ、それは確かにそう…助けられた事は多いけど…その分、とか言うには厳しいレベルで色々と、ね…確かに、束と比べたら私程度のやらかしなんて完全に消し飛ぶかも…ま、何なら私以上にここに居る母さんには束は頭上がらないだろうね…最早、第二の実家と言えるレベルで学生時代…束は私の家にずっと入り浸ってたんだし…まぁ、それに関して私自身は別に嫌だった訳でも無く…普通に、双子の姉妹みたいな感覚だったけどさ……ま、それでもハッキリどっちが姉で妹か…みたいのは無いけど。
「まぁまぁ…それなりに疲れはするけど、私も嫌だって程じゃないから…そんなに束を責めないでよ。」
「あのな…言わなきゃ、付け上がるぞ…コイツは。」
「大丈夫だって…最悪、束は母さん召喚したら大人しくなるから…それに、時々千冬が愚痴聞いてくれるからそれも助かってるし。」
「ま、そうよね…束ちゃんは、私の前では素直な良い子よ。ずっと、ね…」
母さんが凄い遠い目をしてる…当時束が何度もウチに押し掛けて来てもこの人は平気な顔はしてたけど…本当はあの頃、結構大変だったんだろうなぁ…それにしばらくは、また束の相手をするんだろうし…何なら、頑張り屋では有るけどまだまだこれからなクロエの事も考えないといけない…せめてこれからは、この人の事をもう少し気に掛けてあげようかな……ま、多少頭の片隅に置いておく程度にはね…
…ま、それはそうと…
「お腹減った…」
「お前な、この流れでそれを言うのか…」
「いや、だって…」
しょうがないじゃん…こんなのもう生理現象みたいなもんだし…ハァ…ま、とにかく…早く何処かお店入ろう…