「何?…したいって話なら遠慮は「いや、お前今日疲れてるだろ?」…まぁ、ね…」
まぁ、確かに…私は今日、それなりに消耗してる…いやまぁ、朝に一夏君が学校行ってから家事熟すのもそこそこに…いきなり千冬に押し倒されて…彼が帰って来る時間までずっと身体酷使されたから、さすがに辛い…と言うか、途中で防犯の為に携帯持たされてる一夏君から連絡されたのを良い事に…委員会で遅くなるとだけ言う彼に千冬がしつこく実際に帰れるだろう時間帯聞き出して…束にも連絡して、念の為彼の動向を見張らせつつ…だけでなく二人に連絡する間も含めてずっと私を攻め立てて…本当に彼が戻るほんの直前まで…その状態が続いて、そこから先の電話が有った為に色々察したのか気を使う彼の事を止めつつ…夕食の準備…そして、食べ終わってから朝出来なかった家事を纏めてやって…と言うのが今日さっきまでの流れだから…
そりゃさすがに、疲れてないかと言えば嘘になる……まぁ、かと言ってそれで疲れてるとか言ったらパートナー居ない人や…所謂レス状態の人には普通にブチ切れられるとは思うけど。
「…ふぅ…そりゃ、もちろん疲れてるけどさ…言ったでしょ?私が疲れてようが何だろうが…千冬がしたくなったならいつでも好きにして良いって。」
「…その、すまん…」
「謝罪も要らない…そうだね、私としては…千冬が笑顔見せてくれるのと、後は…感謝の気持ち言ってくれると嬉しいよ…?」
「…■■、いつもありがとう。」
あー…私の一番好きな千冬の表情だね…
「うん、受け取ったよ…で、結局したいって話じゃないの?一夏君もさすがにもう寝てるだろうし、何とか家事も片付いたし良いよ?」
「ああ…さすがに今日はやり過ぎたと反省していてな…取り敢えず…」
「へ?…わっ…」
そのまま隣に座っていた千冬にいきなり手を引かれて、千冬の膝に私が頭からダイブ…さすが。全く予期しないタイミングだったよ…と言うかこれ、膝枕…?
「っ…何、急に…?」
「いや、今日は本当に無理させたと反省していてな…」
「…だから気にしなくて良いって…私はさ、千冬に求められるのは本当に嬉しいんだよ?…まぁ強いて言うなら、さすがに家事終わらせてからにして欲しかったなとは思うけど。」
いや、取り敢えず洗濯機は回す前で良かったよ…乾燥機付いて無い洗濯機だから放置したらさすがに匂いがねぇ…後は、今日の夕飯は元々昨日仕込んだ物を出す予定で…買い物に行かなくても良いし、結果…一夏君をそれ程待たせずに済んだのも良かった…まぁ、千冬がそれをちゃんと分かった上で今日私に無茶を強いたんだとしたら…ちょっとタチは悪いかな、とは思うけど…
ま、でも…私は千冬の要求には基本的にノーとは言いたくないし…何なら、弟分で有る一夏君にも出来るだけ不自由はさせたくない…そもそも彼の大事な姉を私が奪った形になってるんだから、それは当然。
…だから、私が無理をするのは普通の話。
「それは悪かったな…しかし、一夏の手伝いを断ったのは何故なんだ?」
…いや、そうやって優しい手付きで撫でられると眠くなるんだけど…
「ん…そりゃそうでしょ…彼だって今日は委員会出て来たって言ってるし…疲れてるんだからさ「お前程ではないんじゃないか?」…そりゃ、そうかも知れないけど…でも、彼が疲れてるのは事実で…そこにどっちがどうとか無いし…何より、私が千冬の要求に応えた為に私が疲れてるとか…結局彼には関係の無い話だし…てか、大人のそう言う話でまだ子供の彼に気使わせるとか…良いわけないでしょ…千冬、貴女は一夏君の姉で…親代わりなわけでしょ…?なら、そう言うの…分かるはずだよね…?」
「っ…そう、だな…」
そこで私は頭の上に有った千冬の手を一旦退けて起き上がる…良い機会だし、ここはちゃんと話しておこう…
「千冬が求めてくれるのは嬉しいよ?でも千冬?最近…一夏君と話、してる…?」
「……」
そこで千冬が口を閉じた…都合の悪い時に黙るのは、実は貴女も同じだよね…
「貴女が私が好きでいてくれる事…それ自体は、本当に嬉しいよ?でも、それで弟の事を蔑ろにしてるのは違うよね?」
「っ…それは…」
「たまにはさ、ゆっくり話す時間とか…設けないと駄目じゃない?特にそろそろ、彼の将来的な話とか必要になる頃でしょ?彼がこれから先どうしたいとか、そう言う話…ほとんど出来て無いんじゃないの?」
「それは…そうなんだがな…」
ふぅ…コレはもしかして…千冬の方も今更どうしたら良いか分からないって感じかな…んー…じゃあ先ずは私から一石を投じるべきかな…ある意味こうなったのは、私の所為とも言えるわけだし。
「千冬、一夏君に休日に空いてる時間有るか聞いといて…それぐらいは出来るでしょ?」
「それはまぁ、出来ると思うが…どうするんだ?」
「どうせ千冬だけだともうそう言う話、しづらい状態に有るんでしょ?先ずは私から話を聞いてみようかなって…」
まぁ、アレで…私には彼は色々話してくれたりするんだよね…千冬は私と付き合う前の学生時代から既に大量にバイト入れてた為に…彼女が居ない間、私がまだ幼い彼の世話をしてたのが多いって言うのも有るとは思うけど。
「っ…しかしそれでは、お前の負担が更に「いや、それは無いでしょ…私、今無職で暇だし」…いや、だが…」
「強いて言うなら、その間私と千冬との時間が減るくらいだよ…我慢出来るよね?」
彼は私に気を許してくれている…それは事実だろう…表面上は姉を私に奪われる形になってる今でも、私に対して特に反発とかも無い…でも彼だって、所謂思春期ってやつだし…すぐには決定的な話はしてくれないかも知れない…何より、昔はしっかりしてる様には見えても何だかんだベッタリだった姉との交流の時間が、私の所為で大幅に減っている…そう言う不満だって全く無いって事は無い筈だ…それなりに、時間は掛かる筈…
「…お前今、全部自分の所為とか思ってないか?」
「っ…どうかな…でも、私が居る事で貴女と一夏君との時間が減ってるのも事実でしょう?」
「どちらかと言えばそれは、節度を持てない私の所為だと思うんだがな…」
「それはどうだろうね、結局千冬の要求を拒否しない私も問題なんだと思うし。」
「…お前の場合…"出来無い"んだろう…?」
「……」
口を閉じた…まぁ、それは確かにそう…千冬の要求を断るとか、先ず出来無い…関わってるのがあくまで私個人の事情で有れば…千冬にそんなの関係無いんだから、私が断るとか出来無いし…そもそも、したくない…ま、とは言え…
「でも一夏君の事はまた別…私は彼の事も素直に弟分として好きなんだから、彼をこのまま放置なんて出来無い…と言うか、千冬程じゃなくても結構長い付き合いだと思ってるしね…」
千冬が私と一緒に居られれば幸せだと言うなら…それは私も嬉しいし、良い事だとも思う…でも、それで弟の彼に我慢を強いるのは違うと思う。
「ま、だからね…姉を奪った責任は取るべきだとやっぱり私は思うんだよね…」
「…ふぅ…分かったよ、お前は昔から頑固だしな…一夏の事はお前に任せる…」
「任されたよ…でも、最終的には千冬も動いてよ?一夏君は、あくまで貴女の弟なんだからね?」
「ああ、分かっている…」
私が間に居る所為も有るけど…そもそも千冬も不器用では有るよね…ホント、とんでもない人を好きになっちゃったよ…ま、彼女を選んだこと自体を辛いとは思わないけど…あれ?
「そう言えばさっき、取り敢えずとか言ってたけど…他に何か用件有るんじゃないの?」
「…ん?…ああ、そう言えばそうだったな…そのな?以前、お前の祖父の話を改めて聞いただろう?」
「あ、うん…まさかと思うけど…やっぱり殺して良いかみたいな話じゃないよね…?」
「それは取り敢えず無い「取り敢えず…?」…ふぅ…それくらいは言わせろ…これでもはらわた煮えくり返りそうなのを堪えてるんだからな……言っておくが、仮にお前とこうならず友人関係のままだったとしても…恐らく私はそう言うだろうな…」
まぁ、後日…千冬がバイトしてる日に束からも鬼電されて改めて話聞かれたからね…宥めるのが大変だった…と言うかアレ…良く良く考えたら他の私の友人や、知り合いでも怒る内容なのか…次の展開が予想出来無いし、他には言わないでおこう…
「…ハァ…ま、取り敢えずその辺は置いておくとして「……」絶対訂正しないぞ?少なくとも他に無いならやらんってだけだ…それで納得しろ。でだ…あの時は怒りが先行してスルーしてしまったが、改めて考えたら一つ気になった点が有ってな…」
「他に何か問題有った?千冬に話した事で全部だと思うけど…」
一応言葉的には、私が物心付いてから始まった祖父の悪習では有るから…ある程度覚えてるし、他には…特に問題有ったりはしないと思う。
「お前あの時確か…父親と兄に話して私と束を止めようとしてたが…お前の兄は兄妹の範囲こそ逸脱しないが、割とお前の事を溺愛してた様に思うんだが…あの話知ってて、ずっと祖父を放置してたのがどうも納得行かなくてな…と言うか、お前の父親に付いては私も判断し切れない人だが…他にはお前の母親である■▲さん…あの人は愛する夫を優先して両親と絶縁を選べるくらいには優先順位ハッキリしてる人なんだよな?何より、私が昔初めてあの家に泊まりに行った時に…お前の事を覗いたお前の祖父をあの二人は元より、父親の方ですら注意してた記憶が確かに有る…それでもあの家に行く習慣が無くなってないのが不思議でな…祖父が孫娘の着替えや風呂を覗くってだけでも十分アウトなのに…ほぼ未遂とは言え、その祖父に性的に襲われかけてるんだぞ?それこそ、絶縁して然るべきじゃないのか?」
「!……うん、そうだね…」
そこで私は初めて当時の自分のやらかしを思い出す…まぁ、あの頃の私は自分の事だって本当にどうでも良かったし…そりゃそうなるよねぇ……まぁ、今もあの事に関してはどうでも良いか…面倒以外の気持ちは無いけども。
「何だ…その反応は?」
「え…いや、何でも無いよ?」
不味い…これを聞いた千冬と束、二人の行動がもう予想出来る…何か、何か誤魔化す方法は……うっ…何も思い浮かば無い…いや、でも本当に不味い…
「…もう一度聞くぞ?何故絶縁の話が出ていない?」
「……」
言え、ない…
「まさか、本当は最後までされたとかじゃないよな?」
「!…いや、それは本当に無い!無いから!…その、何なら確認する…?」
それは事実…その後は男性とそう言う事をしてないのは事実なので…ちゃんと膜が残ってる筈…まぁ、そもそも千冬は何度も見てる筈だから…今更なんだけど…
「…それは後で諸々のついでに確認するとして「一夏君もう寝てるし、別に今からでも良いんだよ!?」…誤魔化すな。してしまったら、私もさすがに忘れかねんからな…最後だ、正直に答えろ…何故、祖父との絶縁の話が出なかった?…言っておくが…恐らく、この会話を今この瞬間束の奴も聞いてる事を忘れるなよ?」
「……話したら、どうするの?」
「内容に寄る「じゃあ駄目。何もしないって約束出来無いなら、私は何も言わない」…そこまでして庇う価値の有る相手…ちょっと待て……フン、やっぱり聞いてたらしいな…束から電話だ…さすがにここまで来たら、あいつも黙っていられない様だぞ?」
「私に貸して…出るから「切るなよ?」…わかってるよ……もしもし?」
『■ちゃん…今回余計な前置きは無し…今そっち行くから。』
「いや、クロエは『大丈夫。以前■ちゃんが予想した通り、"お母さん"ここに居るから…前回は気を使って途中でカメラ切ってるし、お母さんは何も知らないけど…今回は…まぁ、ここまで言えば分かるよね?』…見てるの、全部?」
『うん…ま、束さんもちーちゃんに伝えないといけない事が出来たし…そっち行くから待ってて。』
「ちょ…束…切れた…」
「あいつは何て言ってた?」
「千冬に伝えたい事が出来たから来るって「もう来てるよ」……」
「来たか。」
「うん、こんばんは…ちーちゃん…ごめんね、二人の時間邪魔して…」
「お前からそんな言葉が聞けるとはな…」
「…いつもはその言葉に反応するけど、今回はやめとくよ…で、■ちゃん?正直に言ってくれる?何かちーちゃんに言われるまでは忘れてたっぽいけどさ…その様子ではもう問題には気付いてるよね?…それとも、束さんから言おうか?何で、当時■ちゃんのおじいちゃんとの絶縁話が出なかったのか…まぁ、覗きやめられないだけでも十分理由になるとは思うけど…性的に襲われかけたなんて、一発アウトだよね?じゃあ何でそうならなかったか…」
「……」
「…■ちゃん、お母さんも聞いてるよ?早く言った方が良いよ?」
「クロエは「一応、途中で咄嗟にお母さんがクーちゃんの耳塞いでたけど…うん、二人が聞いちゃったのは束さんらしく無いミスだね…でも、謝らないから」…うん、分かってる…結局私が悪いからね…」
「…で、お母さんからはもう聞いたけど…束さんの口から言おうか?お母さんは■ちゃんが自分で言ってくれるの待ってると思うけど?」
「…うん…私から言うよ…実は、家族皆に私が襲われかけたって事…言ってないんだよね…」
いや、ホント…嘘でも何でもなく…千冬に聞かれるまでその事、忘れてたんだよね…
「ほう…ではあの変態ジジイはそもそもその事に付いては…結局何の罰も受けず、野放しって事なのか?」
「束さん的には、覗きについても身内なのを良い事に…家族から注意されてるって程度なんだから、ほとんど罰は受けてないと思うけどね…」
まぁ、そうかもね…
「ところでさ…■ちゃん?」
「!…何?」
「…それで隠してる事は全部?」
「そうだけど「嘘だよね?」…どう言う事?」
「別にハッキリ客観的証拠が出せるわけじゃないけどさ…何か今の■ちゃん、まだ何か隠してる気するんだよね…私はそう簡単に誤魔化されないよ?愛情に関しては確かにちーちゃんに負けるかも知れない…でも、私はそれなりに■ちゃんと一緒にいた…学生時代は、それこそほぼ姉妹とも言えるレベルで仲が良かったって私は信じてる…だからだろうね、ちーちゃんには分からないかも知れないけど…私には分かるんだよね…■ちゃん、何か隠してるよね?」
「……」
ホント、この場に束が来るとか思ってなかった…油断したなぁ…
「…認めるのは癪だが、お前が言うなら確かだろうな…で、■■…何を隠してる?」
「…いや、本当に何も無いよ?束の勘違い「仮にそれならそれで束さんは謝るけども…嘘だよね?これ以上何を隠してるの?」……」
いや、この際墓場まで持って行かせてよ本当に…もう時効だろうしさ…
「この場で隠したいって言ったら多分一つ…結果として今処女なのは事実だろうけど、他にもそう言う経験有るって事じゃないの?」
「っ!」
本当に…この場に束が居なかったら…いや、私を心配してくれてるのは分かるんだけども…
「ほう…そうなのか?」
「…ふぅ…うん…実はそう…」
「相手はおじいちゃんだけ…?」
「うん…そうだね…」
私は本当に気にしてないのに…何でわざわざ言わないといけないのか…あーあ…もう…
「…最近も有るのか?」
「いや、それは本当に大丈夫「じゃあ結局いつまで続いてたの?」…一応学生時代まで。千冬や束が来ない日は、いつも…」
私自身、うっかり喋らない様に何も無かったって自分に暗示を掛ける様に強く思い込んでたレベルだったんだけどね…あの人がしてたのは覗きだけで何も無かったって…それが、前回千冬に聞かれてヒビが入り…一回はそう言う事が有ったって思い込もうとして…実際は、かなりの頻度でそうだったわけだけど。
「いや、でも…本当に身体触られるだけだったし…私自身気にならないから…良いかなって「「良いわけ無い!」」…あー…やっぱりそう?」
そんな怒られても…いや、本当に私…全然気にしてないんだけどな…
「先ず聞きたいんだがな…お前以前言ってた通り、本当に気にしてないのか?」
「うん、そうだね。」
「へぇ…でもさぁ、■ちゃん?」
「何?」
「こうしてボロが出たのは今回初めてだけど…それまでは話出ても、隠せてたよね?」
「そうだね。」
「?…いや、それは変じゃないか?」
「ちーちゃんもそう思うよね?」
「?…何が?」
「…お前の場合…そう言うのが理解出来てないのは私ももうある程度察してるがな…考えてみろ、仮に何も気にしてないなら…それこそ、聞かれたら普通に話すんじゃないか?」
「っ…え?」
「普通さ、自分が嫌な目に遭った場合ってその度合いにも寄るけど…寧ろ、一人で抱え込まずに誰かに愚痴りたくなるものって言うのは束さんにも分かるよ?」
「…で、お前の場合は…仮にお前にその気が無くても、割としつこいぐらい色々聞く私たちが昔から近くに居たわけだ…」
「少なくとも、当時のいじめについては時間こそ経ったけど…最終的には話してくれたよね?…それで、一つ聞きたいんだけど…■ちゃん、何で中学になってから話してくれたの?」
「……」
「それだけ私たちに気を許してくれたとかなら良いんだが…お前、そもそもどちらかと言えば…味方してくれる人間に気を使わせたくないと考えるタイプだよな?」
「……」
「その沈黙は肯定だよね?…まぁ、もう分かってるんだけどさ…結局中学になってから話してくれたのは、私たちをやっと信頼してくれたからじゃなくて…何も無くなって気が抜けたのと、もう終わってるから私たちに気を使わせずに済むからだったんじゃないの?」
「…少なくとも…信頼なら、もうしてたよ…小学生の時点で。」
してなかったわけ、ないでしょ…二人になら、あるいは裏切られたとしても…恨むのは二人を信じちゃった自分になるし、後悔もしないとまで思ってたよ…あの頃の時点で既に。だからこそ、自分がされていた事についてはあまり話せなかった…二人を信じてなかったんじゃない…それを私が話して、二人が私を庇ったら…二人にも被害が行く。そう考えたら、言えるわけなかった…
「それでも終わるまで言えなかったと…黙ってても理由はもう分かるぞ?お前は、本当にいつも他人優先だな。」
「それも有るけど…■ちゃんの場合、昔から自分に価値を感じてないよね…」
「これでもマシになったと思うんだけどなぁ…」
そして…それは本当に、二人のお陰…
「ありがとね…二人が居なかったら、私は変われなかった…それだけは確かだよ。」
「ああ。」
「うん!」
そうやって応じてくれるのも、もう嬉しい…
「さて、話は戻すが「え~…もう良いでしょ」あのな…またそうなる可能性有る上に…お前、本当に抵抗出来るのか?赤の他人ならまだしも…相手は"身内"だぞ?」
「いや、千冬も来てくれるわけだし「じゃなくて!いつもちーちゃん居るわけじゃないでしょ?■ちゃんとしてはどうなの?」……」
正直な話、分からない…あの人に関しては好きでも嫌いでも無い…それは本当。でも"身内"では有る…そして、あの人がそうしたがる理由も知っている…
「…ふぅ…何と言うか…可哀想な人なんだよ、あの人…千冬には悪いんだけど、最後まではさせないし…それで許して欲しいなって。」
「ふむ…良し!却下だ!」
「だよねぇ…ちーちゃんも許せるわけないよねぇ…」
「当たり前だ!恋人じゃなく、友人のままだったとしても無理だ!」
「あー…やっぱり?」
「…ふぅ…どっちにしても■ちゃん?もうこの問題に付いては、■ちゃんが何言ってもどうにかなる話じゃないし…何なら、もう私たちが手を下すまでも無いと思うよ?」
「え…?」
「忘れたのか?もうお前の母親が聞いてしまったんだぞ?」
「あの人すぐに動くだろ…んあ?…ちょうどお母さんから電話だよ……もしもし?うん…うん…はいはい……じゃ、そろそろ戻るよ…お母さんもう、ブチ切れモード入ってるから。」
「お前が戻らないとあの人何処にも行け「いや、もう転送装置の使い方覚えちゃってるし…お母さんに転送装置を遠隔操作出来る専用端末も渡して有るんだよね…何なら、自分でロケットの操縦ももう出来るしね…今回は私戻らないとクーちゃん一人になるから」…成程な。本当にもう、私たちが動く必要も無くなったわけだ。」
「……」
「■ちゃんが気にする事は何も無いよ?結局悪いのはおじいちゃんだし。」
「ま、そうだな…とは言え、私からお前に言いたい事は色々有るがな…」
「何ならいっくんこっちに転送する?多分、相当"煩く"なるよね?」
「そうだな、一夏には悪いが…頼んでも良いか?」
「そこは束さんにも気使って欲しいけどな~…ま、今は無理か…じゃ、部屋に行ってくるよ……まだ始めないでよ?」
「ああ。」
束が一夏の部屋に向かう為に、出て行く…
「…さっき、話し損ねた事だがな…」
「うん…」
「お前がそこまでして黙ってたのは…結局、思い出したくなかったって言うのも有るんじゃないか?」
「っ!」
それを言われて私の思考が止まる…思い出したくなかった…つまり私は、嫌だった…?
「…やはり、自分でも気付いて無かった様だな?」
「その、私は「……」あ…」
千冬に抱き締められる…私を苦しめない為か、普段よりも何処か遠慮がちで…手付きも優しい。
「どうとも思ってない…そもそも好きでも嫌いでも無い…それも今は確かなんだろう…だが、不快では有ったんじゃないか?」
「……」
私は…
「例え自分にいくら無頓着でもな…突然危害を加えられれば、普通嫌な気分にはなるもんなんだ。」
「うん…」
「ましてやそれが…信頼してる身内相手なら、余計にな…」
「そうだね…」
「最初は嫌いじゃなかったんだろう?」
「どうかな…」
祖母がどんな人だったかは知らない…そして、祖父の事も…ハッキリ記憶が始まったと言えるのは、あの日…身体をまさぐられて、アレを押し付けられた日から…そこまで嫌だって思ったつもりは無い筈だ…強いて言うなら、くすぐったいのと…子供が出来たらあの人が困るかなって…最初に思ったのはそれ…そして、せっかくお風呂入ったのにヌルっとした…硬い感触のそれを押し当てられて困ったなって…本当にそれだけの筈……それとも、実は私は嫌だとか…気持ち悪いって思ったんだろうか…?そう言えば、今考えれば…あの時実際どう思ったかは少し曖昧では有る…中学、高校の時代ならハッキリしてる…面倒臭い。ただ、それだけ…小学生の私はあの日…本当は一体何を思ったんだろう…
「当時どう思ったかは、私ももうハッキリとは分からないけど…こうして心配されるのは、悪い気はしないかな。」
「そうか。」
そう言って千冬が私の背中を優しく摩ってくれる…
「…決め付けるつもりは無いがな…実際に思い出せないんだから、忘れたくなる程嫌だったんじゃないか?」
「…どうだろうね…思い出せないかな、やっぱり…」
「本当に?」
「うん、本当に。」
「…二人ともお待たせ。取り敢えずこのままいっくん連れてくよ。」
束と目を擦りながらパジャマ姿の一夏君が部屋に入って来た…
「ごめんね、一夏君…急に起こしちゃって…私のワガママみたいなものだし、私を責めてくれても良いよ?」
「…ハァ…全部じゃないけど、束さんから聞いてるよ。嫌な目に遭ったのは、■■さんだろ?じゃあ■■さんは何も悪くないじゃないか。」
「…そうかもね…でも、それで君に迷惑掛かるのは違うと思うから…」
「毎回そんなに気使わなくて良いって…■■さんが結構俺の事で苦労してるのも分かってるし…大丈夫だよ、千冬姉が一緒に居れば元気になるんだろ?」
「っ…元気って?」
「…自分で気付いてないのか?■■さん、今結構顔色悪いぞ?」
そうだったんだ…
「俺も何かしてあげたいけど…」
「…うん、その気持ちだけで大丈夫。」
と言うか本音を言えば…この、今も私の中に有る複雑な感情に関しては…本当は私が自分で消化すべきもので…一夏君は元より、千冬にも束にも…もちろん母さんやクロエにだって…本当は気を使わせるべきでは無いとも思ってる…ま、そうは言っても…少なくとも千冬はそれを許してくれないのも分かってるんだけどさ…
「いっくんそろそろ…」
「うん、じゃあ…俺行くよ…明日になったら大丈夫だよな?」
「うん、ごめんね…本当に「ハァ…違うだろ?」…え?」
「■■さん、いつも自分で言ってるだろ?こう言う時、家族に言う事は?」
「…ありがとう、一夏君。」
「ああ…じゃ、明日な。」
「うん、明日ね…束、一夏君の事…頼むね?」
「もちろん!…まぁ、お母さん居るし…何ならいっくんは後は寝るだけだからね…朝学校に行く前には、こっちに帰すよ。」
「色々すまんな、束…」
「気にしないでよ…じゃ、明日ね♪」
束と一夏君の姿が消える…と、同時に…
「へ?…どうしたの急に?」
そこから千冬が私を所謂お姫様抱っこの形に…取り敢えず私は落ちないように千冬の首に腕を回す。
「いや、今夜は布団が良いなと思ってな…」
「…いつもタイミングも場所も、一々気にしてないじゃない…」
基本的に料理中とそもそも一夏君が居る時…後は外でない限りはお構い無しじゃん…今日みたいに本当に全く休み無くって言うのはさすがに少ないけど…割と二人切りだとほぼ一日中、千冬は私を離そうとしない事がほとんど。
「私が言う事じゃ無いが…日中の事も有るし、さっきの事も有る…これ以上お前に無理はさせたくない。」
「本当に今日の千冬が言える事じゃないし…と言うか、無理させたくないって割に、しないって言う選択肢は無いんだね…」
「…その、どうしても嫌なら「嫌じゃないよ」…正直に言って良いんだぞ?」
「私が嫌って言うわけ…うん、違うね…今は私もしたいからさ…と言うか、確認するんでしょ?ちゃんと私にまだ膜が有るかどうかさ…」
「なら良いがな…辛くなったら言えよ?」
「…途中でやめられるの?」
「あっ、当たり前「いや無理でしょ…流れ的にも、今の千冬的にも多分…始めちゃったら、もうやめられないと思うよ?」…かもな。 」
「ま、良いから…やりたいなら一思いにやっちゃってよ。」
「…そんな疲れた笑顔で物騒な事を言うな…言葉だけ聞いたら、殺してくれって言ってる様なものだぞ。」
「決めるのは千冬だからね「抵抗しろよ、そうなったら」嫌だよ、千冬の方で抑えてよ。」
仮に千冬に殺されそうになったからって、私が抵抗なんてする筈無いじゃない。
「…ハァ…その辺はもう、お前に何言っても無駄か…」
「うん、だからやり過ぎ無い様に千冬が頑張って。」
「……今更だが、このやり取りもお前の母親が聞いてるんじゃないか?」
「だとしても知らないよ。私は、一応もう大人なんだし…自分の身の振り方は自分で決めるから。」
「…私に決めさせる、の間違いだろ…」
「でも、結局それで良いって決めたのも私。これに関しては、ウチの家族の誰にも文句言わせるつもりないから。」
「ハァ…本当に私次第か…」
「そう言う事♪」
「…ま、私はまだまだ…お前が普通に気持ち良くて上げる、切なげで甘い声も、痛みに苦しんで…泣き叫ぶ声もずっと聞きたいからな…」
「毎回思うけど千冬って結構Sだよね…と言うか、普通に変態だよね…」
「フン…ある意味で、お前も人の事言えなくないか?」
「え?」
「…私のあられもない姿の写真や動画…どうせまだ消してないんだろ?」
「っ!なっ、何で…?」
「お前自分で思ってるより結構甘いんだよ…実はお前、私の他に一夏が居る時でもこっそりトイレとかでイヤホン付けて私の盗撮動画見てるだろ。」
「…ごめんなさい。」
「今更気にせん…どうせ私も持ってるしな「はい!?」…ウチは元より、お前の部屋にもカメラは有るんだぞ?束に頼めばすぐだろ。」
「……」
「ま、私は訴える気も無いが…その代わり、慰謝料の代わりに欲しい物は有るけどな。」
「…何が欲しいの?」
「お前をこれから先ずっと好きに出来る権利。」
「…それなら今まで通りじゃない。」
私は、もう千冬に全部あげたんだから。
「私は、もう千冬の物なんだからさ…」
「ハァ…ま、お前はそう言うだろうな。」
「…で、その…私の持ってる写真や動画は…」
「私が消せないんだから、お前に消せとは言えんだろう。」
「なら、良かった「ちなみに…その中に学生時代の私の物が結構有ったりするんじゃないか?」…そりゃ、実は有るけど…それが?」
そりゃまぁ…動画の方は束から最新の千冬の姿定期的に提供して貰ってるけど…普通に学生時代の千冬のその、そう言う写真ならこっそり自分で撮った物がそれなりに…
「……何となく、ムカつくな。」
「…はい?」
「今の私には興味が無いのか?」
「いや、もちろん好きだよ…もしかして、過去の自分に嫉妬してるの?」
「悪いか?」
「いや、うん…ごめん…」
そう言われても、私としては困っちゃうな…だって昔も今も…千冬の事は大好きってだけだから。
「ハァ…まぁ、良い…今の私が最優先ならそれで構わん。」
「もちろん、それはそう…と言うか、ずっと気になってた事が有るんだけど…」
「何だ?」
「千冬って、要は学生時代の時点で私に好意がある程度あって…その、私にそう言う悪戯とかしてたんだよね…?」
「…まぁ、な…」
「…じゃあさ…千冬は、学生時代の私のそう言う写真とか動画…持ってないわけ?…と言うか、本当に極最近の私のだって…実は今も消さずに持ってるんじゃないの?」
「…もちろん、どっちも有るぞ「人の事言えないじゃん!?」フン…何とでも言え。」
「えー…じゃあ私も慰謝料的な物、欲しいよ。」
「お前にしては珍しい要求だな…で、どうせ金じゃないんだろ?何が欲しい?」
「……」
勢いで言ったけど、いざ聞かれると何も浮かばない…だって、嘗て私の欲しかった物はもうここに有るから。
「…やっぱり良いや、要らない。」
「ん?要らないのか?」
「…だって、私の一番欲しかった物は千冬だから…もうこうしてここに有るのに、他に何を欲しがるの?」
「ふむ…例えば、お前は私を監禁したいとか無いのか?」
「それは無いね。」
「何でだ?」
「そこまで千冬の時間を奪って、行動も縛るとか…私は絶対したくない…何より、一夏君から家族を奪うわけには行かないからね。」
「お前は私にして良いとか言うのに、お前は私に要求しないんだな。」
「するわけないね。千冬を苦しめるのは嫌だからさ…」
「私がお前に言うのは良いと?」
「そうだね。」
「本当に自分の価値を認めないな、お前は…」
「私の中では正当な評価なんだけどな…」
「ま、その辺は時間を掛けて分からせるしかないないか…!……時間で思い出したが、すっかり話し込んでしまったな…これ以上無駄にしたくないし、さっさと布団に入るぞ。」
「うん…いや、本当にこのまま私を運ぶの?」
「ああ「別に歩けない程疲れてるわけじゃないんだから、そろそろ下ろしてよ」嫌だ。」
「何で?」
「何でってこの温もりを簡単に手放したくないからだが?」
「そう…じゃ、仕方無いか…」
「そう言う事だ。」
そうして部屋まで来て…優しく床に下ろされる…起き上がって布団を押し入れから出そうとしたら…そのまま寝てろと肩を押される…まぁ、良いけどね…どのくらいの時間されるのか分からないけど…ま、考えても仕方無いかな…
「…で、結局何を買うんだ?」
「んー…適当に見て行ってからでも良い?」
「?…決まってるわけじゃないのか?」
「うん…何かごめんね?」
「…ま、付き合うって言ったしな…お前の好きにしろ。」
「ありがとう…」
とは言ったものの…本当にどうしようか…私たちの場合、例えば服屋は論外と思った方が良いんだけど(どうせ揉めるからね…)さっき昼食食べたばかりだから、フードコート行くわけにも行かないし…いや、ホントにどうしよう…?まぁ、最悪は服屋も選択肢に入れるしか無いかな…
「…って言う感じになるんじゃないかな、あの二人…」
二人の様子を見ようと思えば色々方法は有るんだけど、今回は敢えてやめて…でも、お母さんと展開予想はしてたり。
「ふむふむ…じゃあ、その後は多分…本当に二人でただブラブラするだけになったけど、レゾナンス自体は割と何度か来ていて目新しさは無く…加えて、テーマパークとかじゃなくて…あくまでショッピングモールでしかないから…目的が無いと思いの外退屈な事に気付いて…次は…」
「う~ん…ゲームコーナーでも行く?」
「…私と一緒に居て、何故そのチョイスになるのが不思議では有るが…まぁ、たまには良いか。」
「…で、入り口付近でエアホッケーを発見…二人でやって、■■ちゃんも粘るけど…千冬ちゃんの勝利って所かしらね…」
「あー…普通に有りそう…と言うかちーちゃんの力でパック打ち出したら壊れるかも…」
「多分…ラストポイントを叩き込む時に千冬ちゃんが渾身の力でパックを押し込んで…実はヒビが入ってたけど、次の人がやるまで発覚せずじゃないかしら…」
普通に有り得そう…
「…じゃ、次は多分…レースゲームじゃないかな。ちーちゃんもやった事は有るし、粘るけど…多分、■ちゃんが勝つ。」
「ふぅ…ギリギリで勝てた…」
「お前、昔からホントこう言うのは強いな…」
「まぁ、私からしたら千冬が負けるのが不思議だけどね…」
「…私の場合…あまり本気でやると、機械が壊れるからな…」
「あー…確かに…何かごめん…」
「実車なら逆にある程度、ちーちゃんの力にも対応出来るだろうし…何なら公道でそこまでスピード出す必要も無いからアレだけど…さすがにレースの上、ゲーセンの筐体なんてちーちゃんにとっては玩具の延長程度の強度だろうし…本気は出せないかな…」
「有りそうねぇ…じゃあ、格ゲーをやろうかと思ったけど先の事も有るから■■ちゃんは敢えて何も言わずに…次はアレをやるんじゃないかしら?」
「そう言えば、撮った事は無かったか。」
「私の他の友人も興味無かったし、実は私も初めてなんだよね…」
…で、私たちは所謂プリクラを撮りに…ま、学生時代ならやらないけど…大人になったらその辺気取る気にもなれないしね…サクッと撮って出ようかな。
「若干操作に戸惑いつつも無事に撮影成功…でも、いざ出て来た物を見たら何か表情が…と思いつつ…コレも思い出と思って…多分、■■ちゃんがシールを回収するわね。」
「…で、多分そこからは…結局行く所浮かばなくて服屋行って…また軽く揉めつつ…やっぱり買うのをやめようってなって、そろそろ連絡して来る……あ、ほら。」
「普通に二時間くらいしか経ってないわねぇ…」
「ま、■ちゃんも頑張った方だと思うよ…じゃ、二人を戻すね…」
まぁ、■ちゃんには悪いけど…束さんとしては、帰って来るのが早い方がちょっと嬉しいのも確かなんだけどね…