「…いやぁ、さすがに彼にあそこまで情熱的に迫られたら…私も、知ったこっちゃ無いとかちょっと言えないからさぁ…」
「…冗談めかして言ってるが、内容と肝心の表情が合ってないな…安心しろ、元々私はお前は元より…一夏の事も責めるつもりは無い。」
「…ふぅ…あー…うん、やっぱり分かっちゃう?」
「…仮に緩く終わらせて欲しかったなら、もう少しヘラヘラするとか有るだろ?そしたら私も浮かれ過ぎだ、とか言ってお前の頭叩いて…お前は一体誰の物なんだとか言えるわけだ…ハァ…さすがにそんな苦しそうな顔されたらな、私もお前の望んだ流れには持っていけないな…」
「…今からでも表情作り直すから、それ採用してくれない?」
「完全に茶番にしかならんし、現実に起きてる事でテイク2やってどうするんだ?結局お前が余計にモヤモヤするだけだぞ?…何度も言うが、私は特に気にしていない。」
「千冬としては良いの…?その、弟の将来的に「そもそもの話、私の方からアイツを一度勧めてるんだぞ?普通に今更だな…と言うか、将来もクソも…避妊はさすがにしたんだろう?だったら外でヤってバレるとか無い限り気にする事は無いと私は思うがな…目に見える結果が出て無ければ、結局それは何も起きてないのと変わらん…後は、私と…今もこの部屋を監視してるんだろう束が人に言わなければそれで終わりだ…何の証拠も無い」…物は言い様だね…」
「ついでにもう一つ…私に悟られたくないなら、そこの山盛りになってる灰皿は処理しておくべきだったな…匂いは窓開ければ多少分かりにくくなるが…結局物証が有る以上、お前が悩んでたのは丸分かりだ…」
「あー…」
完全に忘れてたなぁ…彼の前では何とか、最後まで取り繕えたつもりだったんだけどね…さすがに、私も素のままではいられなかったんだよねぇ…
「ふぅ…で、どうだったんだ?」
「…んー…?何が?」
「何って初体験の感想だよ…お前、結局実際に男とヤるのは初めてだったんだろう?」
ハァ…あんまり語りたくないんだけどね…
「…ふぅ…少なくとも、千冬とヤるよりは痛くは無かったかな…って、私も言いたいところだけど…正直比べ様が無いかなぁ…断続的にそれなりに強い痛みを感じるのと、まぁまぁ長時間激痛が続くのってまた違うからね…」
もちろん、彼に気を使わせないように何とか耐えようとはしたけど…さすがにバレたのか、普通に彼の動きが止まったからね…彼の目はあの時ギラついてたのに、挿れた直後はいつもの優しい目付きになったし…
ま、だから後言えるのは…
「最終的に痛みそのものは多少薄れてくれたけど…それでも正直、快楽を感じてる余裕も無かったのが一番に思う事かなぁ…彼が満足してくれたのかも良く分からないし…」
「ほう…ちなみに、何回出された?」
「…いや、ゴム越しだし中には…って、こんな生々しい話…そんなに聞きたいの…?」
聞かれるのはさすがに分かってたとは言え、本当にあんまり話したくないんだけど…
「ああ、是非聞きたいな…」
「…もしかして、妬いてる…?」
さっき気にしてないとか言った癖に…
「フン…妬かないと思うか?お前と一夏がそうなっても構わんし、その事自体は気にしないとも確かに言ったが…それはあくまで、私がこの世から居なくなった時の話だぞ?」
ま、そりゃそうだよねぇ…
「大丈夫だよ。私にとって恋人は、これから先も貴女だけだから…」
「それは分かってる、だが…その事とコレは別だ…さっきも言った通り、私が許可した事だとしてもな。」
「いや、それはさすがに理不尽じゃない?」
「何とでも言え…自分の恋人が、それも…身内に抱かれて何も思わないと思うのか?」
いやまぁ…そりゃ確かに、普通の男女のカップルの間ですら特大の地雷だとは思うけどさ…
「…ふぅ…ホント、私としても割と色々予想外過ぎてね…と言うか、本当にあの夢の通りの事が起こるなんてね…」
実際、私の中であまりに衝撃的過ぎたのか…思い出したのは彼が落ち着いてからだけどね…
「…あー…例の並行世界のお前の話な…」
そう、千冬が居なくなった後の世界の話…それも、こうして千冬と結ばれなかった私の事…
「…ふぅ…あの時は向こうの自分を散々扱き下ろしたけど、実際同じ場面に直面してやっと分かったよ…束もそうだけど…私には、二人の想いを拒む事なんて…どう頑張っても無理だった…だって、二人を悲しませるのは嫌だから…」
「仮にお前が拒んでたとしても…あの二人は、そう簡単に諦めないと思うがな…」
「何で分かるの?」
「分かるさ…寄りにも寄って、同じ女を愛してしまった間柄だからな…本音はあまり認めたくはないがな…だが、あの二人を傷付けたくない…お前のそんな想いも理解はしたいと私も思ってはいる…」
「…あの二人の事を否定しないのは、私の為?」
「もちろん、私自身の為でも有る…」
「…どう言う事?」
「ふとした時に、あっさりと跡形も無く消えて行きそうなお前を繋ぎ止めるには…結局私一人では足りないと、そう感じてもいるからだ…」
「…私、今更そう簡単に居なくならないよ?」
「本音を言えば、今でも死に魅入られているお前を…もっとこっちに引き寄せたい…そう言う話だ。」
「…ふぅ…そうは言っても、それはただの結果でしか無いんだよ…?」
「だとしても、私は失いたくない…そんな私の気持ちをお前に否定する権利は無いだろう…」
「…ふぅ…そりゃ、そうなんだけどさ…」
んー…試しに聞いてみようかな…
「じゃあ、千冬は私と生きて行く先に何を見てるのかな?」
「…果てなど無い、出来る事なら永遠に…お前とこの世界で共に生きていたい…」
千冬の強い視線が真っ直ぐ私を射抜く…私は取り敢えず目を逸らした…
「…いや、それは無理でしょ…人は結局、永遠には生きられないんだからさ…」
「そうだとしても、最初から終わりを見据える必要が何処に有る?何故、諦める必要が有るんだ?」
「…ふぅ…私は、別に諦めてるわけじゃない…と言うか、初めからそこまでは言ってないでしょ…私は、現実的な視点で話をしているだけだよ。」
「それはいい加減分かっている…お前が、簡単にそれを変えられないのもな…ただ、それでも私は引き戻したい…ずっと傍に…その願いを、お前に否定する権利は無いだろ?」
「分かってる…私だって、そんなつもりは別に無いからさ…」
「難しく考える事は無い…これはな、要は一種のゲームだ。」
「…どう言う意味かな?」
「あくまでお前の主義が通るのか、それとも…私の願いこそ正しいのかだ…」
「…ふぅ…それは、どっちが正しいかとか無いとか思うけど…ま、でもそう言う事なら…これから先、私と千冬どちらかが先に死ねば…夢の無い、現実的な私の考えが正しくて…仮に私たちがほぼ同時に死ねれば、理想的である種の奇跡とも言える千冬の願いが正しい…そう言う賭けの話って事?」
「そう言う事だな。」
「…ふぅ…割と息の長い話になるんじゃない?それ…」
「そうかもな…だが、別に証明に何年掛かっても良いだろう?」
「…まぁ、ね…」
私自身、そう簡単に千冬と離れたくは無い…そう思ってるのも事実。
「ま、良いや…乗ったよ、その話…じゃ、勝者は何を得られるの?」
「無い。全ては、自分の思った事が正しかったと言う誇りが残るだけ…それでは不満か?」
「…ま、確かにね…私も、それは無いかな。」
確かに今更、私たちの間にそれ以上は要らない…
「…ふぅ…フフッ…お互い、本当に長い付き合いになるかもね?」
「フッ…お前は負けず嫌いだからな、焚き付ければ反応すると思っていたよ…ああ、もちろん私も…そう有りたいと思っているさ…」
最早同性で有るとか関係無く、こんな理由で繋がりが深まるカップルは先ず居ないだろう…でも、その歪さこそが何となく…私たちらしくて良いかも…
「…と言うか、いい加減ソレ吸うのやめろ…それで死んだら、さすがに勝ち逃げが過ぎるぞ?」
「…ふぅ…分かってるよ…でも久しぶりなんだから、もう少し私の好きにさせてよ…」
何だかんだ、千冬はまた禁煙に成功してるし…最近は中々吸う余裕なんて無かったんだからさ…
「…と言うか、何で千冬はドイツに居た頃散々吸ってたのに…こっちに帰って来てからはあっさりやめれたわけ?」
「決まっているだろう?結局、お前の胸を吸ってる方が落ち着くからだ。」
「…バカ。」
別に妊娠してるわけじゃないし…ろくに味もしないだろう私の胸吸って何で、そうなるのかな…
「後は、お前の血も悪くないな。」
「…ハァ…変態。」
「人の事言えるか?」
「いや、私は千冬の血は吸わないからね?」
吸血鬼や蚊じゃないんだから…
「お前の場合それは…単に私を傷付けたくないだけだろう?」
「それとは別でしょ、普通…」
と言うか、所謂キスマークだって私は付けたくないよ…せっかく、千冬の身体は綺麗なんだし…アレ、何で皆そんなにパートナーの身体に一々付けたがるかなぁ…どう見ても鬱血の跡だし、痛々しいとしか思わないんだけど…ま、千冬が私に付けたいって事に関しては結局好きにすれば良いとも思うけどさ…千冬のソレを、私は否定したくはないし…
「…と言うか、お前はどうなんだ?」
「んー…?何が?」
「私の胸を吸ったら、やめれるんじゃないか?…好きなんだろ?」
そう言って隣に座る千冬が身を乗り出して来る…うっ…
「…やめてよ。私、今触ったら多分離したくなくなるよ?」
「別に構わないが?」
「…やだよ。明日も千冬、バイト有るでしょ?今週は忙しいって言ってたじゃない…私は、千冬に負担掛けたくないから。」
「それくらいで私は疲れんさ…と言うか、私がお前に負担掛けるのは良いと?」
「…ふぅ…私も働いてた昔ならまだしも、今無職なんだから…それは問題無いでしょ。」
「…どうだかな、お前…仮に今も働いていたとしても、結局そう言うんじゃないか?」
「…ふぅ…」
ついつい視線を向けていた千冬の胸から目を逸らし、私は煙を吐く…まぁ、確かにそうだろうけど…この場でそれを言うつもりは無い…ま、どうせバレてるんだろうけど…わざわざ自分の口からそう言う気も私は無い。
「…と言うか、今夜は大人しいね…てっきり、いきなり手を出して来ると思ったけど?」
「…フッ…そのつもりだったがな…お前の顔見て考えを改めたんだ。」
「んー…?何で?」
「そんなに辛そうな顔してる相手に手を出す程、私も鬼じゃないと言ってるんだ。」
「…ふぅ…別に我慢しなくて良いんだよ?私の身体は、千冬の所有物なんだし…好きに扱って良いんだよ?別に私の事は気にしなくて良いからさ…」
「所有管理しているからこそ、毎回無理に扱って壊したくないって事さ…物を長く使える様に大事にするのも、持ち主の裁量だろ?」
「…ふぅ…千冬の場合、そうやって我慢されると後が怖いんだけど…」
「…まぁ、そのくらいは許せ…」
「…ふぅ…ま、良いけどさ…」
私は千冬の物なんだから、その扱い方に道具でしかない私が口出しする権利は無い…ま、それでも私にも最低限自我は有るから…どうしても無理な時は言うけどね…ま、仮にそのお願いを聞いてくれなかったとしても…そこに私が文句を付けれるわけも無い。と言っても、余程我慢が続いてるとか…ストレスが溜まりに溜まってるとかじゃない限り千冬も大抵聞いてはくれるけどさ…ふぅ…所詮物であると定義してる私には過ぎたる幸せって感じだよね、本当に…
「…おい、何本吸う気だ?」
「…コレ吸ったらもう片付けて寝るから、許してよ…」
「後一本だけだぞ。」
「分かってるよ…」
ハァ…ホント、幸せ者だよね…私。何か、いつ反動が来るかって怖くなるくらいにはさ…
「…■ちゃん、また吸ってるの?」
「…束?…ごめん、もしかして起こしちゃった…?」
深夜、私はまたあのボックス内でタバコを吸ってたり…
「…トイレに起きたら、■ちゃんが居なかったから探しに来ただけだよ。」
「…ふぅ…そう。」
まぁ、そう言う事ならこれ以上私が謝罪したりする必要は無いね…
「…と言うか、クーちゃんとお母さん…それに束さんがそれぞれ隣に居るのに、どうやってベッドから出たの?」
「…そもそも、毎回私にくっ付いて寝ないで欲しいんだけどな…」
「…嫌なの?」
…そんな顔しないでよ。
「…別に嫌って程じゃないけど…正直、今の季節だと暑いからもう少し考えて欲しいってだけだよ…と言うか、ホントに何で毎回私にくっ付いて寝るの?束だって暑いでしょ?」
「二人はどう思ってるか知らないけど…■ちゃんと一緒に居ると束さんは何か落ち着くんだもん…それに、ああやって捕まえてないと…突然■ちゃんが居なくなるんじゃないかって、不安で…」
「…ふぅ…空の上に有るロケットからどうやって逃げるの?仮に外に出れても私、地面に墜落して死ぬよ?」
「…今は地上に止まってるよ…と言うか、さすがに私も何が有るか分からないのにオートパイロット作動させたまま寝たりしないよ…それくらいは、分かってるでしょ?」
「…ふぅ…」
ま、それは確かにそうだし…実は気付いてもいた…
「…と言うか、束さんの質問に答えてないんだけど?」
「んー…?何だっけ?」
「だから…どうやって抜け出したのかって話。」
「…ああ、それね…」
それに関しては、別にそれほど難しい話じゃなかったりする…ま、と言っても…私も最初は気付かなかったんだけどね…
「私の寝るスペースは一応最低限確保されてるからね…逆に言ったら、その範囲内だと私は動けるでしょ?加えて、ベッド自体が大きくてかなりの幅が有るんだから私のスペースだけでも実はまぁまぁ広い…だから、私が三人の手を外してその場で立ち上がれば話は結局解決するんだよ。」
「…いや、それでも私たちが横塞いでる事実は変わらないでしょ?」
ふむ…まさか、ここまで言って束が気付かないとは…それとも、逆に盲点だったりするのかな?
「だからさっき言ったじゃん…ベッドの幅が広いって…正直今の人数でも多少詰めればもう一人はギリギリ寝れるかもってくらいスペース余るんだよ?その状況で、真ん中に向かって身体詰めて寝てるんだから隙間は当然出来る筈でしょ?だから、私は立つことさえ出来れば後は単に横で寝てる人間をただ歩いて跨ぐだけで良いわけ…仮に三人が太ってれば、どっち側を選んでも身体を踏まずに移動は難しいかも知れないけど…三人とも普通に痩せ方だしね…特に苦も無く、私はベッドから出られるんだよ。」
ちなみに、私は大体束の寝てる側から行ってベッドの上から降りている…さすがに母さんとクロエの二人が一緒に寝てる側だといくら二人が痩せてると言ってもちょっとスペースが心許無い…その点、一人で寝てる束の方からは楽に移動出来るからね…
「…ハァ…そう言う事か、気付かなかったよ…」
「…ふぅ…ま、そう言う事だから…」
「…■ちゃん、それ…もしかして四本目じゃないの?」
「っ!…いや、束の勘違い「その反応でそれは無理が有るでしょ…言っとくけど、仮に今持ってるそれが四本目なら間違い無く警報鳴るからね…束さんが見てなかったとか、関係無いよ?」……」
まぁ、そりゃそうか…仕方無い…
「…分かったよ、降参…もう吸わないからそんな顔しないで。」
「…じゃ、部屋に「戻るのは良いんだけど、ちょっと良いかな?」何?」
「いや、服が汗で凄い事になってるから軽くシャワー浴びてから寝ようかなって「私も汗掻いたから一緒に行っても良い?」…良いけど…私は着替え取りに部屋に戻るし、束の着替えは自分の部屋でしょ?行くのはお風呂場じゃなくて一人用のシャワー並んでる方だし、別に一緒に行く意味無いんじゃない?」
「…いや、お風呂の方でも良いでしょ?一緒に行こうよ。」
いや、わざわざそこまで行ってシャワー浴びるくらいならさ…
「…ふぅ…だったらもういっそ、お風呂入る?」
「…良いけど、お湯溜まるの時間掛かるよ?」
「束も目冴えて来てるみたいだし、ちょうど良いんじゃない?」
「…ま、束さんは良いよ。」
「…なら、一緒に行こっか。」
「うん。」
ふぅ…本音を言えば待つのは逆に面倒なんだけど…わざわざお風呂場の方まで行って、シャワーだけ浴びるのはそれはそれで何となく味気無い…ま、私も別にそれほど長居するつもりも無いしね…