親友の妹に転生しました   作:三和

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「ん…何、どうしたの?」

「…いや、こうしたくなったんだ…駄目か?」

「…駄目なわけないでしょ。これくらい、別にいつでも良いよ…と言うか、玄関で抱き合ってても仕方無いでしょ?取り敢えず、中入ってよ。」

ウチに来るなり抱き着いて来た千冬を宥めて、二人で部屋の中に入り、ソファに座る……ま、ソファに座ってるのは千冬だけで…私は彼女の膝の上で抱き枕状態なんだけど……千冬と正式に付き合って以来、千冬は単純に私を襲うだけでなく…こうして温もりだけを求めて来る時が時々有る…たまに身体が小刻みに震える辺り、千冬も多分…実は寂しくて、且つそこで求める相手が私で有る事自体に嬉しくは思うけど…こうしてると、ちょっと気になる事も有る…

「…ふぅ…にしてもさ、今更だけど…私が千冬の事を好きな以上に、千冬の方が実は私に執着してるよね…」

「…いけないか?」

「そうは言ってないよ。いや、逆に以前まで良く我慢出来てたなぁって「出来てたと思うか?」…まぁ、出来てたら寝ている私に毎回悪戯とかしてないか…「すまんな…」…それを嫌だとも、私は別に言ってないよ。ま、でも…当時はともかく、今は付き合ってるんだから…寝ている私相手じゃなくて、起きてる時にするか…じゃなかったら、いっそ起こして欲しいってだけだよ。」

千冬がこうして時々、ある意味異常なくらい甘えたになるのは…多分自分が子供の頃に普通に親に甘えるって事が出来無かったのと…普段から飢えてる自覚は有るのに、それを毎回性欲の方に置き換えてしまってるからそっちを満たす事が出来てないのともう一つ…自分は満たされてないのに、自分にとって守るべき存在で有る一夏に愛情を注ぐ事に全力を傾けているから…

自分にそれが足りてないのに、毎回人に与えてたらそりゃ余裕も無くなって来るよね……ま、実は他にも理由は有るんだけどさ…

「…ふぅ…ま、最近はこう言う時間も余り取れてなかったからね「お前が一夏ばかりに気を取られてるからな」…それは、まぁ…確かに有ったかも知れないけどね…」

それでも、彼の方でも気を使って彼が私との時間を持とうとするのは…あくまで平日は学校から帰って来てから千冬が帰って来るまでの間…尤も、それだって根が真面目な彼は学校の成績を下げない為にそう長時間そう言う時間は取らない…ま、千冬が遅い日は二回戦が有ったりはするけど…そして、休日に至っては…千冬がバイトで居ない日こそ、私を独占状態にしてたりはするけど…千冬が休みの日は、自分は夜まで帰って来ない…つまり、千冬が私と触れ合う時間は一夏が私に告白して来る前より確かに減ってこそいるけど…ちゃんと時間は有るのだ。

「…ハァ…でも結局それって、千冬が私との時間をヤる時間で終わらせる所為も有るでしょ?性欲と同時に"ソレ"を満たせない癖に、何でそうなるかな…」

「…お前の身体が魅力的なのが悪い。」

「痛っ……千冬、別に私は逃げないんだからもう少し力緩めて…」

ホント、千冬から執着されるのは確かに嬉しいんだけどさ…ただ抱き締めるだけで、時に本当に潰されそうなくらい力を入れてくるのは何なのかな…独占欲丸出しなのもそりゃ嬉しいけども…さすがに私の身が持たなくなる…

「…と言うか、そっちに話を持って行くのはやめろ…私が我慢出来無くなる…」

「…結局手を出して来るのはいつも千冬の方なんだから、私の所為にしないでよ…」

「…お前はしたくないのか?」

「そうは言ってない…」

ま、基本私は最中ですらあまり千冬には触れられてないんだけどね…そこは、数少ない私の不満の一つかな…

「…と言うか、今更なんだが…」

「何?」

「…こんな生活になって、お前の方は大丈夫なのか?」

「…ふぅ…」

自然と溜め息が零れる…そりゃ、キツイっちゃキツイ…元々私に執着している千冬は元より、そこに一夏…何なら二人に予定が有って居ない日は束がやって来て身体を貪って行くのだ…負担が無いとは、とても言えない…でも…

「…ま、確かに色々とキツイけどさ…でも、そう言うのは気にしなくて良いから…」

「しかし…」

「私が、良いって言ってるの…だから気にしないで。」

古典的な表現で言えば、一人になった時文字通りバタンキュー状態になる事は多々有る…でも、その辛さ以上に思う事は有る…

「私はさ、こうして信じて…大好きな三人に求められてるって事実だけで充実感は感じるし…何より、幸せなの…そりゃ、歪な関係性だとも思うけどさ…けど、少なくとも私は自分が不幸だなんて思ってない…それとも、千冬は…いや、私を独占出来無いんだから辛くは有るかな…」

「…まぁ、な…ただ、前にも言った通り…私一人でお前を繋ぎ止めておく事も出来無いんでな…そう言う意味では、今の状況は有りかとも思っている…」

「んー…千冬の言いたい事も今なら分かるけどさ…ま、それでもアレならさ…せめて束と兄さんの後押しをするとかどう?少なくとも一人減るんじゃない?」

「…確かに悪くない提案の様にも思えるがな…ただ、あの二人の後押しって逆にどうすれば良いんだ…?」

「…さぁ?」

正直、今改めて考えたらあの二人の恋愛模様って…もう単純にどっちかが奥手だから進行しないとか、そう言う話じゃない様な気もする…仮に成就したとしても、ちゃんと異性間での話なのに結局私と千冬以上に色々歪な関係になりそうでは有る…

「…と言うか、仮にあの二人が無事くっ付いたとしても…結局束はお前の所に来ている気がしてならないんだが…」

「…まぁ、その可能性は確かに有るかも…兄さん、そう言うの気にしなさそうだし…」

もちろん、異性同性問わず赤の他人相手の話であれば…あの人もさすがに一種のケジメとして束に色々言うだろうし、何なら離れる事も決めると思う…けど、相手が私で有ればあの人は気にしないだろうと思う…

「じゃあ一夏の方にする?彼を好きな女の子…結構一杯居ると思うよ?」

「……」

「…そこで悩むんだったら、結局ずっとこのままだと思うんだけど…」

まぁ、正直…千冬は割と一夏にも執着していると言うか、入れ込み過ぎてる様に思う……ま、私も人の事言えないのも事実なんだけど…ある意味、お金だけ渡しつつ…普段はちゃんと本人の選択を見守り、あくまで頼って来た時だけ面倒を見る…と言うスタンスを崩さない兄さんの方が、実はちゃんと血の繋がらない弟分への線引きが出来ているかも知れないとすら…今となっては思う…私の場合、結局そう言うの出来無いんだよね…お節介なのは分かってても毎回必要以上に干渉し過ぎてた様にも思うし…

でもまさか、煙たがられるどころか恋愛的に好きになられるのは私も予想外…いやホント、何でこうなったのか…

「…あいつの周りに居る女共はまだ一夏の本質をきちんと見極めた上で好きな様には思えんからな…」

「ま、それは確かに…」

ここで私も千冬の言葉に同意してしまうんだから、どうしようも無いんだよね…

「…でも箒は?あの子なら「お前のお陰で性格の矯正は成ったが…まだ早い」…まぁ、まだ二人とも中学生だしね…」

とは言え、そこはともかく…

「私のお陰、か…私そこまで色々したかな…」

「…ハァ…先生の娘とか関係無く、ぶん殴って終わらせようとした私を宥めて…ずっと面倒を見てたお前が何を言う…?」

「…ま、束が気にしてたし…ね…」

私自身…今でこそ彼女にそれなりに思い入れこそ有るけど…元々、私からすればあくまで私の剣の師である柳韻さんの娘で…同じく彼の娘で、私にとって親友でも有る束の妹…それ以上に特に思う所の無い相手だった…逆に言えば、それが無ければわざわざどうこうしようとも思わなかっただろう相手…

コミュニケーション下手どころか、その手段の一つが暴力になってる人間なんて…例え歳下の子供だとしても、積極的に関わろうとは思わない…ま、でも箒の場合は…

「…ハァ…最初は一夏にも暴力振るってたって言うし…正直、思う所は色々有ったけど…私が何かしようとは特に思ってなかったんだけどね…ただ、当時束がどうしてもって言うから一度話すだけ話してみようか、って…」

「…で、実際に会ったわけだ…それから?」

「…あー…そう言えば、千冬にもあの時の事…ちゃんと話した事無かったっけ…」

「…あくまで二人だけの秘密だと言うなら、無理には聞かないが…」

う~ん…別に彼女からそう言われてはいないし…もちろん、だからって積極的に知って欲しい事では無いとは思うけど……ま、もう時効かな…何なら千冬の場合誰かに言い触らしたり、本人に無理に確認するとかもしないだろうし。

「…多分、話しても大丈夫だと思うよ。ま、さすがに全部話したらそれなりに長くもなるし色々端折るけど…結論から言えば彼女の場合、千冬や束とはまた別のベクトルで不器用ってだけだったんだよね…」

「不器用?」

「子供特有の本当にちょっとした、本当にささやかな願い…でも、本人は不器用だから口には出せない…まぁ、アレは柳韻さんの接し方も悪かったんだとは思うけども…」

本当にあの人…人としてはともかく、子供の親としては何とも評価のしにくい人では有る…まぁ、娘が元々二人とも色々特殊なタイプだし…全く行動が間違いだったとも言い難いんだけども…とは言え、肝心な事は何も二人に口に出して言った形跡が感じられない辺り…あの人もホント色々不器用だよねぇ…

「不器用で自分が求めてる事を口に出せないけど、それを言わないから誰も理解してくれないし…当然彼女自身満たされない。それを我慢して自分でどうにか消化して行ける程、まだ大人ってわけでも無い。そして、それがあの暴力性に繋がる…私の経験上から言っても、間違い無く最悪のケースでは有ったんだけど…幸い、希望は有った…ま、それも無かったら私も見放すしか無かっただろうけどね…」

「お前が匙投げかねない程にか…」

「まぁ…当時、逆にアレでどうしてそのままにしておけるのかって…柳韻さんを責めようかとも思ったもの…ま、不器用なあの人にそれ言っても謝罪しか返って来ないのも分かり切ってたけど。」

「辛辣だな。」

「厳然たる事実だからね…もちろん、あそこまで彼女が歪んでたのは箒自身の性質も関係してるだろうから…結局あの人だけ責めても仕方無いんだけど。」

「…で、希望と言うのは?」

「…あの時は歳上で、当時まだほとんど交流の無かった私にすら自分のどうにもならない気持ちを"力"としてぶつけて来たけど…時折僅かに呟く言葉で分かったんだよね、彼女もこのままじゃいけない…変わりたいと思ってるんだって…何より、あんな自己矛盾起こして苦しんでる姿まで見せられたらさ…さすがに放ってもおけないから…」

「…だから、お前が全部受け止めたと?」

「あ、分かる?彼女の場合…自分の所為と分かっていてもどうにも出来無い不満とか溜まってるのは分かったからさ…なら、先ずは一回全部吐き出させた方が良いかなって…」

「…分かるも何も…もう虐められてもいない筈なのに、当時あれだけ手や腕に痣が出来てたの見ればな…敢えてあの頃は聞かなかったが、身体中実は痣だらけだったんだろう?」

「まぁ、ね…」

もちろん、何もそれだけが理由でも無い。当時彼女にどうしようも無く欠けていたものは、要は共感性。もちろん、それは普通の環境に居る極普通の子供だったら時間を掛けて…あるいは両親からも話を聞いたりして少しずつ、自分なりに周りと向き合って行く内に自然と学んで行けるもの…ただ、当時の彼女の場合は曲がりなりにも剣術を身に付けていた為に、とにかく急がないと周囲の被害が不味い方に拡大して行く一方だったのと…束との事が有った所為か、明らかに箒と深く関わるのを柳韻さんが避けている節が有ったので…箒がそれをちゃんと学ぶ可能性自体があのままだと無かった事…加えて、千冬の様にあの頃の彼女の暴力に対して暴力で返すやり方では…結局本人が何も分からないまま反発するだけで最終的な解決にならない事…何にしても、先ずは箒が自分で理解出来無ければ意味が無かった…

…だから、方法は一つしか無かった…

「たかが竹刀と言っても、防具無しで…ろくにガードもせず受け続けると言うのはまともな事じゃないぞ?」

「…ふぅ…何なら木刀が出て来た時も有ったよ?」

「良く生きてたな…」

「いやぁ…本当にね…」

あの頃、私本当にこのまま箒に殺されるかと…まぁ、正直自分で自分を殺したくなる様なあの頃に比べたら…そこまで辛いとも感じなかった。だって、あの頃と違ってちゃんと終わりも見えていたんだから…

「必要だったのは本当に単純。叩かれたら誰だって痛いし、何より理不尽に暴力を加えて来る相手を普通は本当の意味で好きになったり…愛したりなんて事は絶対無い事…そして、彼女が真に心から求めているのは…そもそもそう言うものじゃないって事…それらをちゃんと箒自身に理解させるって事。それも、彼女本人に物理的痛みを与える事無くね…」

「だから、無抵抗で奴の攻撃を受け続けたわけか…」

「…ホント、実は見てたのか聞きたくなるくらいだよ…」

「お前の性格上、普通に有り得る事だからな…」

「…ま、そんなに時間は掛からなかったよ…根は優しいからさ、箒は…」

「何をしても無抵抗な上に、こちらを慈しんで来る相手とか…子供なら寧ろ恐怖を覚えそうだけどな…」

「いやまぁ…確かにショック療法も良い所なんだけど…他に方法浮かばなかったしさ…それに、あの時は時間を掛けてる場合でも無かったから…箒が何も理解しないであのまま身体だけ成長を続けたらいつか、本当に取り返しの付かない事になるのは目に見えてたからさ…」

まぁ、最終的に箒は無闇に暴力を振るう事は無くなったって知ってからは本当にホッとした……一時期は何故か、箒が私にベッタリになって束が嫉妬したりとか…また色々別の問題が発生したりはしたけど。

「ちなみに、束の話では今ではお前に似たタイプになったとの事だが…」

「…何も私の真似をする必要は無かったと思うんだけどね…」

「まぁ、実際はお前よりは器用に立ち回ってる節があるらしいがな…」

「…ま、上手い事やってるんなら別に良いんだけどね…」

一応私の方も束からは、今の箒が色んな人から頼られる好人物になったと聞いてる…まぁ、私以上に断る時は断ると言う事もちゃんと出来てるらしいから…色々大変では有っても、そこまで苦労は感じて無さそうとの事。

「…しかし…弟子がちゃんと自分の意思で立ち回っている中、師であるお前は未だ優柔不断なわけだが…」

「優柔不断って…ちゃんと言ってるじゃん…あくまで私が"そう言う意味"で好きなのは千冬だけだって…」

まぁ、一応全員公認とは言え…三人もの間をウロウロしてるのはそう言われても仕方無いかも知れないけどさ…

「…そうだがな…」

「っ…私のお腹に有った筈の手が胸に来てるんだけど…何、したくなったの?」

「そうだな。」

「…ま、良いよ…脱ぐ?」

「いや、もう少しこのまま触っていたいな。」

「…良いけど…服、破かないでよ?」

「……ああ。」

「…凄い間が有ったんだけど…やっぱり脱いで良い?」

「そんなにしたいのか?」

「…じゃなくて、服破かれるより良いから…」

「……」

「そこでショック受けるの?割と毎回このやり取りしてるのに…」

「いや…そこまで私は信用が無いのかと「そう言うけど、実際何着か人の服駄目にしてるじゃん…確かに私の服の多くは安物では有るけど…タダってわけじゃないんだからね」…っ…そうだな、ならお前にお洒落くらいして貰おうとだな…」

「それは別にお洒落の話関係無いし、出先で私の外出用の服も一回破いた事…忘れてないからね?」

あの時はホント大変だったんだから…

「分かった…分かったよ…」

「…ふぅ…もう一回聞くよ?服、脱いだ方が良い…?」

「……ああ、そうしてくれるか…?」

その一言が出るまでに、毎回どれだけ時間掛けるのかな…この人は…そう言う所も、確かに可愛いとは思うけどさ…それで毎回服破られてたら困るよさすがに…


*158

「…じゃ、ありがとね…束。」

 

「…もうちょっとゆっくりしてったら良いのに…」

 

「さすがにそうも行かないよ。そろそろ仕事に戻らないとね…」

 

とは言え、何となく身体に疲れが残ってる気はするし…何気にここでの二週間はあっという間の様で、それなりに長かった様にも感じる…元々そこまで急ぎの案件は特に抱えてなかったし、今回急遽休みに入る前にやってた仕事も同僚の誰かが担当したんだろうからそこの心配は特にしてないけど…ちょっと休みボケはしばらく続きそうかな…

 

「…何と言うか、すまんな…」

 

「…どうして千冬が謝るの?」

 

「いや、結局私はまだ休みが続くんでな…何か申し訳無くてな…」

 

千冬の方は今日いざ職場に連絡してみたら、今までが働き過ぎだった為か…もう少し休む様に言われたとかで結果休暇続行。当然今日帰るのは私だけになる…

 

「気にしないでよ…寧ろ、千冬は今までが大変だったんだから少し羽根伸ばしたら良いじゃない…ここには母さんが居るし、一夏君もこっちに居るんだから何も心配は要らないでしょ?」

 

「そうなんだがな…」

 

「…ふぅ…そんなに気になるなら、次はもっと定期的に休み取る様にしてさ…私にもタイミング教えてよ。こっちも休み取る様にするし…」

 

実を言えば、私もあんまり人の事は言えず…結構有給が残ってたりする…ま、それでも千冬よりは休み取ってるつもりだけど。そもそもウチは土日休みもちゃんと有るしね……時々、結局休日出勤する羽目になってるのは普通に私が悪いんだけどさ…

 

「…ああ、分かった。」

 

「じゃ、またね千冬。」

 

「ああ、またな。」

 

 

 

 

 

「■ちゃんらしいと言うか、ほとんど名残惜しさとか見せずに行っちゃったね。」

 

「……」

 

「…不満?」

 

「その資格が無いのも分かっているんだがな…」

 

「ま、そもそもこの休暇の話…頼んで来たのはちーちゃんだったしね…」

 

そう、実は今回の件…企てたのは私だったりする…尤も、実際に動いたのは束だし…本来なら、私の方が一夏を連れてあいつの家に行くと言うだけの筈だった…まさか、土壇場で私の休みが消えて…結局あいつの休暇の間のほとんどの事をこいつに任せる羽目になるとはな…そして、今になって改めて私の方が消えた筈の二週間分の休みを取れてしまうとは…向こうはせめてもの詫びのつもりなんだろうが、正直今更意味が無いし…何なら嬉しくも無い。

 

「…とは言え、元々ちーちゃんの方から言う気は無いんでしょ?仮に二人で無事二週間分を過ごせてたとしても、結局無駄になったんじゃないかとも思うけど?」

 

「もう学生じゃないしな…さすがに大人になった今なら、二週間も顔合わせてれば向こうも我慢出来無いんじゃないかと思ってたんだ…」

 

「そこでやっぱり埒が明かないから、自分で言うって選択肢が無いのがちーちゃんらしいよね~…」

 

「…うるさい…」

 

学生時代はこの心の内のモヤモヤの正体もハッキリ答えが出せて無かったし…今となっては私も色々拗らせてる自覚は有るが、寧ろ…逆に何故気付かないのかとは言いたい…

 

「昨夜なんて、いっそ■■ちゃんが起きても構わないくらいの勢いで襲ってたのにねぇ…あの子、いつも肝心な時に限って気付かないものね…」

 

…そう言えば、この場にはあいつの母親も居たんだったな…

 

「その…申し訳有りません。」

 

「?…何の事かしら?」

 

「その…私は学生時代から彼女を「あの子は多分知っても怒らないし…そこに関して私から何か言うのも違うと思うのよね~…」しかし…」

 

「もちろん、あの子の母親としては色々と言いたい事も有るわよ?ただねぇ…千冬ちゃん、貴女相手だと…私もあんまりキツくは言えないのよねぇ…」

 

「…それは…何故ですか…?」

 

「私にとっては、結局貴女も娘の様なものだから…よ。」

 

「…それは、光栄では有りますが…」

 

「それに、さっきも言った通り…結局あの子は怒らないわ…もっと言えば、貴女に言いたい事は昨夜も言ってるから…今更これ以上私から言う事は無い…あ、二人の交際については私は初めから認めてるからそこは気にしなくて良いわよ♪」

 

「…良かったね、ちーちゃん♪」

 

「…ハァ…そもそも、昨夜のアレが全部筒抜けだったのは「私の所為って言うつもり?そもそも、ここが束さんのロケットだって言うのを忘れて■ちゃんに悪戯してたちーちゃんが悪いんじゃん…そもそも、異性同性の違い無く…何なら両想いとかも関係無く、同意無しでの性行為なら結局レイプみたいなもんだし…ちーちゃんがそこ色々言う権利無いと思うけど?」……」

 

「そうね…だから私も昨夜は貴女に色々と言ったわ…ま、そもそも…学生時代、貴女がウチに泊まりに来る度に寝ているあの子に対して"そう言う事"をしてたのは私も気付いてたから、本当は今更でも有るんだけど。」

 

「…その…分かってたなら寧ろ何故今になって…」

 

「それは、貴女が今は大人だからね…あの子がもし、それで貴女を嫌う事になって…だけならまだ良いけど…何ならあの子から貴女が訴えられるなんて可能性も十分に有るからって事を理解して貰いたかったからよ。」

 

「……」

 

「ま、■ちゃんがちーちゃんを嫌う可能性なんて実際ほとんど無いと思うし…何だったら、ちーちゃんの盗撮写真や映像持ってる■ちゃんが訴えたりとか出来無いとは思うけどね~…」

 

「……」

 

もちろん、私もその辺は色々持っているがな…と言うか、何なら学生時代から脱いだ下着を洗濯してやるフリしてこっそり何枚か持ち帰ったりとかも実はしてるんだが…本当に、逆に何であいつは気付かないんだろうな…

 

「そこら辺は、本当は貴女たち二人ともお説教の一つもしたいところだけど…ま、貴女たち二人は一応両想いだし…大人になった今、あまり色々言うのは無粋だと思うから本当にこれ以上言う気は無いけど……あ。束ちゃんはこの後お説教ね?」

 

「え?なん「だって、二人にその写真やら映像やら…提供してるのは束ちゃんでしょ?そこはさすがにそのままにしておかないわよ?」え~…!?」

 

…ここで私には持ってるそれを消せとか処分しろとか、言わないのがこの人の優しさなんだろうな…まぁ、そんな事言ったら…あいつもそうしないといけなくなるわけだが…

 

「皆さん、食事の用意が出来ましたよ。」

 

「あ、そう?ありがとうクロエちゃん…束ちゃん?話の続きは食事が終わってからね?」

 

「は~い…」

 

…にしても、ここまで素直な束の姿はもう見慣れてはいるがそれなりに不思議では有る…あいつとの関わりに関しては見て来たから、基本束の行動をほとんど全肯定状態のあいつにこいつが懐くのは確かに理解出来る…ただ、時々口うるさい時も有るあいつの母親にまでここまでこいつが懐いてるのは確かに見慣れてこそいるがやはり奇妙では有る…一体、こいつとあの人との間に何が有ったんだろうな…

 

「どうしたのちーちゃん?」

 

「…いや、何でも無い。」

 

気にはなるが、今更わざわざ聞くのもはばかれる…ま、いずれ何処かでチャンスは有るだろう…と言うか、こいつとそんな真面目な話が出来るタイミングは普段は無いからな……尤も実際聞けば、こいつは普通に答えそうな気もしてはいるがな…

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