「全く…むちゃくちゃだな…」
一夏の置いていった防具を鞄に詰める千冬がそう零す…
「いや、うん…だって試合じゃなかったから…」
私の方は箒の着けていた防具をしまっている。…そりゃ、改めて言われると、私もやり過ぎかなって思わなくも無いけど…
「そうじゃない。」
「え?」
「あの瞬間の一夏の動きの話だ…あれでは箒の方はほとんど何をされたかも分からんだろう…」
「う~ん…でも、一夏の本気が見たいって言ったのは箒だよ?それに…」
「ん?」
「…一夏、あれでもまだ六割くらいのスピードだよ?竹刀を叩きつけた時の威力もかなり絞ってると思う…」
「…お前もあのレベルなのか?」
「…いやいや…私はあんなに速く動けないよ?そりゃ、似た様な事は出来無くは無いけど…あの一瞬で防具の無い場所二箇所を狙ってクリーンヒットなんて出来無いって。」
正直千冬と同じく本格的に人間離れし始めた一夏と一緒にされたら困る…最も、何故か一夏は私も自分と同レベルだと思ってるみたいだけど…
「…お前、それでもだいぶとんでもない事を言ってる事に気付いているか…?」
「…まぁ…師匠が教えた歩法がほとんど身体に染み付いちゃってるからね、私たちは…でも、姉さんは正直もっと速いでしょ?」
「……やれと言われれば…アレより速く出来無くも無いが…私でもさすがに命中率は下がって来るぞ?」
「……それでも姉さんも大概だと思うよ。」
「それにしても…生身でアレだけのスピードで動ける割にISだと出来無いのは何故だ?」
私と千冬でそれぞれ一夏と千冬の鞄を持って医務室に向かう最中、千冬が今度はそんな事を口にし始めた…ハァ…いやいや…あのね…
「ISに基本装備でスラスター着いてるから普通はそっちを使うでしょ?姉さんみたいに自分の足の感覚で動くのはさすがに無理だよ…そもそも、生身よりそっちの方が速い筈なんだけど…」
「ん…?あのスピードなら普通生身の方が速くないか…?」
…?…あ…そっか…
「さっきもチラッと言ったけど…アレは元々特殊な歩法。一夏は自分の身体能力である程度ブーストしてるみたいだけど、基本的には目の錯覚が主なの。だからIS相手に生身でアレやったらすぐに見破られるよ。」
「アレが錯覚だと…?」
「一夏はブーストしてるからある程度センサーを騙せるかも知れないけど…少なくとも私じゃかなりのスローペースに見えるんじゃないかな…?」
「…何と言うか…とんでもない人に師事を受けたんだな、お前たちは…」
「……あの人、正直ISのセンサーから完全に消えそうだからね…」