「あら、おかえり。」
「…ただいまです。」
あの後少ししてから私は部屋に帰って来た。
「…一夏君、ウチにいた時より強くなってない?」
朝食を食べながらさっきの出来事を刀奈に話すとそんな言葉が返って来た。
「…強いって言うか、多分、"疾い"…ですね…」
刀奈は更識家での私たちの事を知っている…だから千冬より話はしやすいし、どころかこういう指摘が自然と飛んで来る……それはそうと、どうせなら普段からもっとそういう風に真面目にしてくれたらなぁ…
「…十秋ちゃんもそうだけど、ウチ出てから何かやった?」
……そう聞かれてもね…。
「…何もしてませんよ、私は結局篠ノ之流を修めてませんから道場には行きませんし、一夏も実質辞めてますし…」
「…ごめんね、何か…ウチに来たせいで。」
「…謝らないでください。そのお陰で少なくとも私は…自分の身だけなら守れるかもしれませんから……」
……正直今世の身体と前世のズレは今もある…だいぶ擦り合わせは出来て来た気もしないでもないけど、それでもやっぱりあの頃の身体と今の私…年齢的な身体の成熟度の面を除いても、明らかに私は身体能力が低い…
何度も…そんな事は無い…そう思おうとした…あの頃の私は単なる凡人で、天才と言える千冬と打ち合えたのも、私の努力が実を結んだ結果であったと…でも…
「…更識家に行かなかったら私はきっと罪悪感に押し潰されていました…一夏に全てを被せる事になって…誘拐されたのは私だったのに…!」
モヤモヤを晴らす為に…気晴らしの為に部屋を出た筈なのに…私は…余計に心が沈んでいた…
「せめて自分の身だけは守れる様にならないと、姉さんと一夏に申し訳がたたないんです…」
二人の戦いを見て気付いた…私はきっと二人に勝てない…今は多分、私でも箒に勝てるけど…何れ私は勝てなくなる…
「自分でも何しにここに来たのかなぁ、とは思うんですよね…だって…私は多分戦う事に向いてませんから。」
全盛期なら何の問題も無かっただろう、ここに来て発覚した私の欠点…それはスタミナが無いのに自分を酷使してしまう事…あの頃は出来た無茶に、今の私の身体は多分、これから先いくら虐め抜いたところでついてくる事は無い。
……何の事は無い、前世の私は…千冬程じゃなくても確かに武の才はあったのだ…
「…貴方と一夏君はウチを出てからほとんど何もやってないんでしょう?でもあの頃より能力が上がっているのなら…それは才能の筈よ?」
「……そうかもしれません…私のコレも才能なのかも…でも分かるんです…すぐに限界が来る事が…何となく分かっちゃうんですよ…」
「……諦めるの?」
「…出せる分は出し切ります。でもその後は…正直、私にも分からないです… 」