「…何を言うかと思えば…」
私の漏らした言葉に、黙り込み…何事か考えてる節が見えた刀奈はやがて口を開き、こう言った『…それを箒ちゃんに言ってみたら?私から言っても良いけど…多分彼女からの方が正確に伝わるからね』
……その言葉に何故か私は従い、こうして部屋に押し掛けてしまっている…一夏に私と刀奈の部屋に行ってもらい、二人きりになったところで必死な顔で全てを吐き出した私に箒が告げる…
「そもそも、何故お前の身をお前だけが案じてなければならないんだ?」
「…え?」
「ニュースで見た…一夏が誘拐されたと。…私はすぐに気付いたよ、あの一夏がそう簡単に誘拐などされる筈が無い。きっとお前を庇ったか、誰か別の思惑が働いているのだ、と。」
「……箒は分かってたの…?誘拐されたのが私だって…?」
「そう言っている。…ああ、何もお前が弱いからって訳じゃない。消去法だ、一夏はあの千冬さんの弟だ…女性である千冬さんがIS無しでもそれなりの強さなのは調べれば分かる事…そうでなくても一夏自身剣道での結果を出している…元々ISが無かったら女より男の方が強いのが普通だ、そうなれば千冬さん以上のポテンシャルを秘めているかも知れない一夏を狙うのは余りにもリスクが高いからな…」
「…だから…女である私が狙われるのが普通だって事?」
「…一夏を連れて来て、下手に抵抗されて殺してしまったら…人質の価値など一切無くなるからな…最も、利用は出来るだろうが。」
「…でも、やっぱりそれは私が弱いから「弱くて良いじゃないか」…え?」
「姉である千冬さんと…弟で、男である一夏がお前を守る…そこに何か問題があるのか?」
「だって…私は守られてるだけなんて嫌だから…」
「…なら答えは出てるじゃないか。」
「……どういう事?」
「強くなれば良い…ここでならそれが出来るんじゃないか?ここにはお前を鍛えてくれた家の関係者もいるんだろう?」
「…だから…もう私はこれ以上強くなんて「お前の底が知れたと誰が決めた?」……」
「それはお前が勝手に決めつけているだけだ…ここが自分の限界である、と。」
「箒に何が「分かる訳ないじゃないか、それは結局お前の問題だからな」……」
「寧ろだな、お前は私が自分より強くなると言ったが…今限界を感じているのは私の方だぞ?」
「そんな…そんな事…」
「あるな。このままでは私は…剣道としては元よりISでもお前たちに負けるな…全く、剣道の方に慣れていなければお前にコーチをお願いしたいくらいだよ…」
「は…?…え!?何で!?」
「もちろん例え話程度の話だがな…理由は簡単さ、剣道ではISと相性が悪いんだ…剣術で無いとな。」
「…なら、剣術を学べば「どうやって?」…え?」
「忘れたか?私は実家に帰れないんだぞ?」
「あ… 」
そうだった…箒は…でも!
「…で、でも…どうして私にコーチなんて…!」
「分からないか?剣道の試合は形式的なんだ…特定の部位に剣を叩き付ける事で勝敗が決まる…お前は西洋剣術を習ったんだろう?…そう言えば私の父にも日本剣術は向いて無いと言われてたな?」
「うん…確かにそう言われたけど…」
「西洋剣と日本刀…主な違いは何だと思う?」
「え…?何って…形とか?」
「そうだな、他に特徴は?」
「他にって…使い方はそもそも似てる様でちが…あ…」
「…気が付いたか?日本刀で言う剣術は相手の身体に当てて、引き斬る事が肝要なんだ…構造上もそうなっているな、斬れ味の良い剣なら素人でさえ、振り回して当てる事さえ出来れば斬る事自体は一応出来る…」
「…西洋剣の多くは叩き斬る事に適してる…特別、術理を学べてなくても力技で斬れる…そう言いたいの?」
「そうだ…ほら、力技で強引に剣を振るう私に向いているだろう?千冬さんや、一夏程じゃないが…力には自信が有るからな、私は…お前が習ったのは突きが主体のフェンシングに傾倒している様だが…実践的に習ったのならそう言う使い方も当然修得しているんだろう?」
「そりゃまあ…私は腕力があまり無いからやらなかったけど…出来無い訳じゃないかな…」
「ほら、お前は私の教師役にピッタリだ…ま、今から習うのはさすがに無理があるかもしれないが、使える物なら私は何でも使いたいと思う…私は…負けるのは余り好きじゃないんだ…」
「……」
「脱線したがな、何でも良いんだ…出来る事をやったら良い…そしてお前は得た力で、自分を助けてくれる二人を助けて行く…そう言う関係性で…良いんじゃないか?」
「…箒なら…それで良いと思うの…?」
束の話は箒にとって地雷だろう…そう思いつつも私はそう聞かずにいられなかった…でも…恐る恐る聞いた私に返って来たのは箒の朗らかな笑いだった…
「…ああ、成程…私か?アレで適当だからな私の姉は…私がどう思ってるか考えもしないで私に構って来る人だ…で?それがどうした?」
「え…?」
「私の助けになってくれると言うなら…私としては利用するだけの事さ、確かに迷惑をかけられたのは事実だしな…そして、あの人は私が心配する必要などそもそもない人だよ…実質自分で関係を切った癖に寂しがり屋で子供っぽい人ではあるが、本当に逞しいしな。」
「……本当にそれで良いの…?」
「私とあの人は何処までもそう言う関係性と言う事さ…もちろんお前が見習う必要は無いが。…それに、手が必要無いなら私は要らないとはっきり言う。…結局、半端なお節介程、この世で神経を逆撫でする物は無いからな…」
「…そっか。」