親友の妹に転生しました   作:三和

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「俺の口から言う事じゃないと思うけど…いや、一応言った方が良いかな…」

 

「え?何が?」

 

箒の話を聞いて何か思う所が有るのか一夏がブツブツ言う…私の知る限り昔から大人相手でも意見をはっきり口にする弟にしては珍しい姿に少し驚く…

 

「良く分からんが、気になる事が有るなら言ったらどうだ?お前らしくも無い。」

 

「ん…じゃあ言うけど…俺はさ、箒と束さんに対しての想いを一度柳韻さんから聞いた事が有るんだ…」

 

「え…一夏が?何で?」

 

「…俺と十秋姉に千冬姉…俺たちの置かれている環境が環境だけに、自然と家族ぐるみの付き合いになっただろ?その中で男が俺だけだったからだろうな…」

 

「あー…」

 

私の脳裏に前世での柳韻さんと今世で一時期顔を合わせていた柳韻さんの姿が浮かんで来る…言われてみれば確かに前世では私は大人だったから普通に接してくれたけど…今世では子供の私や箒、束との距離感に悩んでる節は有った気がする…

 

「『人生で初めて授かったのが娘…男子を切望こそしていたがもちろん嬉しくない筈が無かった…だが、やはり性別の壁は大きく…更に言えば歳不相応に聡明な娘と早い段階でまともな会話が出来無くなり、どう接すれば良いのか私には分からなかった…』」

 

一夏が語る柳韻さんの言葉は…不思議とまるで柳韻さんがこの場にいて、そう言ってるかの様に私には聞こえた…

 

「一夏、私についてはどうだ?」

 

「『二人目もまた娘…今更驚きは無いが、また束の様に拒絶されるんじゃないか…そう思っていた…が、箒は妻にも私にも良く懐いた…私たちには欠片の興味も示さない束も初めは箒を邪険に扱っていたが、やがて妹を私たち以上に溺愛する様になった…歪では有るが、漸く私たちは家族になれたんじゃないか…そう思っていた…』」

 

「『ある日から私が師範を務める道場に箒が出入りする様になった…危ないから出て行く様に言ったが、箒は聞き入れようとしない…聞き分けの良いあの子には珍しい姿だった…恐らく姉と離れなくなかったのだろうな、才能に満ち溢れた束はやがて剣から離れたが、あの頃は他にやりたい事も無かったのか道場には良く顔を出していた…』 」

 

「『どうしても自分も剣を教わりたい、そう言う箒に私は折れた…それが…間違いの元だった…』…まだ…聞きたいか?」

 

「ああ…私も何を言われるかは分かっている…だが、戒めとして聞いておきたい。」

 

「箒…」

 

今世になり、初めて対面した箒の姿を思い出す…前世では声を聞くだけで結局実際に顔を合わせる事は一度も無かったけど…間違い無く優しい女の子だった……そんなイメージがあの日、吹き飛んだ。

 

「『束程では無いが、才能の有った箒はメキメキと実力を着け…同年代には相手になる者が居なかった…それが…あの子を歪めてしまった…』」

 

 

 

小学校に入学した日、日本の学校に通うのは初めてだったけどさすがに小学生の勉強方面で困る事は無かった……寧ろ問題は別の所に有る…

 

「…ねぇ、何か用なのかな?」

 

「……別に。」

 

教室に入り、席に着くなり私を睨み付ける女の子…それがずっと会ってみたかった篠ノ之箒だと知った時…私は目眩がしそうになった…入学したその日から彼女は私の何が気に入らないのか私をあからさまに目の敵にしている…しかも席が隣だからほぼ逃げ場は無い。

 

「いや、ずっと私を見てるよね?」

 

「ふん…自意識過剰なんじゃないか?」

 

後に、篠ノ之家の道場に通っていた千冬の忘れ物を道場まで届けに来た一夏を見て箒が一目惚れしていた事…その時一緒にいた私に嫉妬していた事を箒から聞かされたけど…今世では私と一夏は姉弟として生まれていて一緒に暮らしている以上、行動を共にする事が多いのは当然の事でそれについて文句を言われても私にはどうする事も出来無い。

 

結局その後は…教室に竹刀を持ち込んだ箒が私に殴り掛かり、私を庇った一夏が軽傷では有るが怪我をさせられる事態にまで話は大きくなってしまう……今思えば、良くあの状況から和解してこうして親友になる所まで行ったよね…ちなみにあの時はさすがに私も怒って箒に反撃した…結果、まだ小学生と言う事も有って私も箒も大した処分は受けなかったけど。

 

……まぁ早い話があの頃の箒は乱暴者と言って差し支え無かったのだ。あの後も竹刀こそ出て来なかったけどしばらくは箒と何度か言い争いはして……いや、取っ組み合いになった事も有ったかな…良く大きな怪我をしなかったと今でも不思議に思う…あ。

 

「箒…私はもう気にしてないよ?」

 

「!…分かるのか?」

 

「今ちょうど私も思い出してたから。」

 

一夏の語る柳韻さんの言葉を聞いていた箒が暗い顔をしてるのに気付き、声を掛ける…自分でもお人好しだなぁとは思うけど…結局私は箒を嫌いになんてなれなかったんだよね…箒の気持ちが全く分からないって訳じゃなかったし…まぁ私の好きな人は今世では一つ屋根の下に居るんだから、触れる事もままならない箒よりはマシだったと…う~ん…毎日ベタベタされるのはそれはそれで辛いかな…千冬にはそんな気無かったんだろうし…

 

「『二人を疎ましく思った事など一度も無い…だが、学校でもケンカをして、暴力を学友たちに振るう箒と私たちとろくに口も聞こうとしない束…そんな娘たちとどう向き合えば良いのか悩む中、君たちが現れてくれた…君たちが…箒どころか束まで変えてくれたんだ…ありがとう、本当に感謝している…』ってな。」

 

柳韻さんの言葉を聞いて私は気付いた。

 

「思ったんだけど…君たちってもしかして私と一夏の事?姉さんは?」

 

「柳韻さんははっきりとは言わなかったけど、アレは明らかに俺と十秋姉に向けての言葉だったな…いや、千冬姉はほら…あんなだし…」

 

「「あー…」」

 

自然と箒と声がハモる…確かに千冬って性格こそ束と正反対だけど結局の所、一般人の範疇から外れるって言う意味では同類だからね…!

 

「っ…!何の真似ですか、織斑先生…」

 

気が付いたら千冬が一夏のすぐ横に立っていて出席簿を頭に振り下ろしていて、一夏が直前で受け止めると言う光景が眼前で展開されていた…気を抜いていたとは言え、いつから居たのか分からなかった……私の最愛の人がどんどん人の側から外れて行く…

 

「何の真似、じゃない…何を話していたのか知らんが時計くらい見ろ。」

 

「え?時計…え!?」

 

時計の針は思った以上に進んでおり、既に針は始業時間を指していた。

 

「今なら授業にはギリギリ間に合う、今日はコレで見逃してやるからさっさと行け。」

 

「ごめんなさい、姉…イタッ!?」

 

私の頭に容赦無く出席簿が振り下ろされた…

 

「織斑先生だ…まぁ良い…とにかく早く行け。」

 

廊下を走ればまた出席簿が頭の上に降って来るのはさすがに分かる…私は早歩きで教室に…?

 

「一夏と箒は?」

 

「もう向かった…早くしろ、間に合わなくなるぞ。」

 

「はい…」

 

待っててくれれば良いのに!…は八つ当たりかな、さすがに…

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