「……」
寝れ、ない…まさか寝る時も千冬が離してくれないなんて……いや、まぁ…そもそも布団が一組しか無い時点で予想も付く話だけど……それでもさぁ、ずっと私の身体に両手巻き付けたままとか…思わないじゃない?
『こっ、このまま寝るの…?』
『嫌か?』
『……だから、その聞き方はズルいって…』
……意地でも断るべきだったなと思う…と言うか、いくら同性でも高校生の妹がお風呂入ってる時にいきなり乱入して来るのなんて…もう家族のスキンシップの域、超えてる気もする…
『わ…ねっ、姉さん…?この広さに二人は…さすがに…』
『家の風呂と、そんなに変わらないだろ?』
確かに寮長室の風呂場の広さ自体は、織斑家の方と比べてもそう変わらないけど…でもさぁ…!
『いやここ、湯船はどう考えても一人用でしょ!?そもそも子供の頃と違って、あっちの湯船でも絶対狭いって!?』
『嫌なのか、十秋?』
『もう…』
「全く…上がった後は私に自分の服と下着を着させようとするし…先に部屋に戻って着替えを取りに行っておいて良かったよ…服はまだしも、下着はさすがに不味いでしょうが…」
でもここへ来て、千冬の距離感が可笑しくなってる理由も分からなくは無いんだよね…
私を助ける為に代表を降りて、その後すぐドイツに旅立って行った千冬……寂しかったのは分かる、何なら私だって千冬に会いたかった…
……でも、子供の頃に比べればさすがに減った千冬からの過剰なスキンシップが今復活すると私もさすがに困る訳で…だっ、だって!元々大きかった千冬のおっぱいが更に大きくなってるし…!千冬は向こうでは酔った時でさえここまで絡んで来なかったから、あの頃と見た目が同じになった今…こうやってくっ付かれると本当に我慢出来無くなるって!
「もう…私の気も知らないで…無防備に寝ちゃって…」
さっきと同じ……別に、振りほどこうと思えば振りほどける…千冬は私に気を使ってくれてるから…結局は、私がそれをしたくないだけなのも分かってる…
力の入ってない千冬の腕の中で動き、身体を千冬の方に向ける…
「せめて、顔を見ながらが良いな…」
後ろからくっついて来るのって、何処か男性的な一面の有る千冬らしいと言えばらしいよね…ま、私も女らしく無いって言われた事有るけどさ……う…何かドキドキして来た…ホント、何で同性の私から見てもこんなに綺麗なの?
「……そんなに無防備だと襲っちゃうよ?」
……やらないけど。少なくとも、今世の千冬は…私とそんな関係になるのは望んで無い筈だろうし。
「ハァ…ホント、面倒な人好きになっちゃったなぁ…」
前世の時から、千冬は人との距離感がバグってたのは一夏君への態度見るに間違い無い…ただ、少なくとも同性で親友だった私にはここまで距離を詰めて来た事は一度も無い。
「私、妹になりたいとは望んで無かったんだけど…」
神様を信じた事は無い…でも、本当に居るんだとしたら悪辣で残酷だ…
「同性を好きになるって、そんなにいけない事?」
私は…千冬に受け入れて貰えないならそれでも良かった……ただ、気持ちを知って貰いたかっただけ…こんなに、誰かを愛したのなんて初めてだったのに…
「妹じゃ、伝える事も出来無いじゃない…」
私は千冬の妹……同性ってだけでも問題なのに、好きなのは血の繋がった姉…言えない、もう千冬には…
「本当に、誰を恨んだら良いんだか…」
辛いけど…それでも同時に幸せとも思うべきなのかな?親友のままだったら…きっと千冬は、こんなに私に近付いてくれなかった…
「綺麗…」
好きと伝えた事は無いけど、私は何度も千冬の容姿を褒めた…でも、その度に否定するんだから…人に言うのは問題無いのに、自分が言われるのは嫌がってたもんね…
「本当は誰にも渡したくないけど…何れ、貴女は男性と付き合うのかな?それとも、私以外の同性と?」
男性なら仕方無い…でも、同性なら…渡したくないなぁ…
「ふぅ…唇は、残してあげるね?」
私は千冬の肩に手を置いて、少し身を乗り出す…背高いよね千冬…いや、私が前世の時より低くなったのか…あっちでは同じくらいの身長だったのにね…
「額は、無理かな…」
そこまで行くとなると、もう少し千冬の肩に力を掛けないとならないから…さすがに千冬が起きちゃうかも…
「じゃあ…こっち。」
私は千冬の頬に唇を着けた……う…顔が熱いよ。
「いや、私…こんなのも恥ずかしいの?」
我ながら初心にも程が有る…前世でもチャンスは有ったのに出来無かったのって、結局私がヘタレだから…?
「まぁ、良いか…今世では出来たんだし…」
どっちにしろ千冬が望んで無い以上、私が出来るのはここまで……うう…ますます寝れなくなっちゃったよ…もういっそ、早く朝になって欲しい…