親友の妹に転生しました   作:三和

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「十秋、ちょっと待て。」

 

「え?」

 

部屋の前に着いた所で、箒が声を掛けて来た。

 

「どうしたの?」

 

「……いや、ちょっと部屋に寄って行かないか?」

 

「え…う~ん…一夏にも迷惑掛けたし、お礼言いたいから別に良いけど…あ、そう言えば箒…ご飯は?」

 

「ん?…あー…そう言えば、真っ先にお前の所に向かったから食べてないな…」

 

「そっちの冷蔵庫にまだ何か残ってる?何か作るよ。」

 

私の方は元々私がここに来る前に刀奈さんが買い出しに出てたらしく、まだ食材は残ってる…と言うか、あまり使い道無いんだよね…ここ、一応食堂有るし……と言うか、ここに来てから結構怒涛のスケジュールだったせいか、この学園の雰囲気にも一気に慣れて来たから忘れがちだけど…私たち、入学してからまだそんなに日にち経って無いんだよねぇ…

 

「あの日お前が部屋に来た時も言ったが、千冬さんがな…部屋の冷蔵庫にぎゅうぎゅうになるくらい食材用意してたからな…」

 

「あー…そう言えばそうだっけ…」

 

そうそう、初日に部屋に行った時にそんな話してたっけ……あー…部屋に戻った時の事も思い出しちゃった…あれ以来刀奈も何も言って来ないから、すっかり無かった事にしてたよ…

 

「どうした?顔色が悪いぞ…」

 

「いや、別に…」

 

「まぁ、良い…ちょっと話に付き合え。」

 

「うん…あ、刀奈さんに連絡して良い?」

 

「……あー…あの人はお前のルームメイトだったな…とは言え、そんなに時間は掛からないと思うが?」

 

「うん…でも、一応…」

 

まぁ、そもそも…もう部屋の前なんだけどね…この場合、口頭で説明するより早いし…何より気楽そうな箒の口調とは裏腹に、どうも深刻な話の雰囲気だし…さっさと済ませちゃった方が良いかな…

 

メール飛ばしたらすぐに返事が来た…"夕飯はそっちで済ますのね?分かったわ、ゆっくりして来て良いわよ"…との事…

 

「……じゃ、私も夕飯そっちで食べて良いかな?」

 

「お前…いや、良い…私たち二人だけだととても食べきれないと思ってた所だしな…」

 

「あー…そうだよね…」

 

私も前世の頃含めて一応そうだけど、日常的に自分で食事を用意する人でも…例えば一週間分で考えても意外とストックしてる食材は減らないもの…ましてや料理出来ても私みたいに作れる物がそう多くないと大量に買ってしまった場合、本当に三食分作っても全然減らない…何より、前世の私なんて面倒臭くて自炊しない日も結構有ったから、急に千冬含む友人が家に来る事になってもわざわざ買い出しに行かなくて済むくらいには食材が余ってた事も有ったし…(と言うか、当時の私は実家住み…私と同じく料理出来るどころか、私より遥かに腕の立つ母さんが食材を切らすって事が基本無い…)

 

そもそも元々料理自体全くしない(と言うより一切出来無い…)千冬が用意したってなると使いにくい食材も結構多そうだよね…箒も一夏に負けず劣らずの腕だけど、それでも基本的に和食専門だし…一夏は時間が有って、加えて食材と調味料等…必要な物さえ揃うなら和洋中大体作れるけど…あくまで揃ったらの話にはなって来るし…

 

……まぁ、一番の問題はこの学園には食堂と購買が有るって事…当たり前だけど、私たち全員…さすがに昼食時は部屋に帰る事は無い…だからって毎日弁当を用意する手間を考えたら私より料理はする方だろう一夏と箒の二人でさえ、食堂行くだろうしね…

 

……つまり、文字通り今…二人の部屋の冷蔵庫には腐る程食べ物が入ってる訳で…

 

「……お前な、それは女としてどうなんだ?」

 

「へっ?」

 

箒に声を掛けられて我に返る…

 

「涎が垂れて来てるぞ。」

 

「えっ…ホント?」

 

「ああ…いや、待て。制服だぞ、袖で拭くな……全く、まだ寝惚けてるんじゃないのか?」

 

「あー…そうかも…箒?」

 

「ほら、じっとしてろ…」

 

箒にハンカチで涎を拭いて貰ってる私…いや、何かもう赤ちゃんか何かにする対応だよね…まぁ、咄嗟に袖で拭おうとした私が悪いんだけどさ…

 

「ごめんね、洗ってかえ「いや、その意味が無いだろ…私の部屋はすぐそこだ」あー…そうだよね…」

 

「とにかく、こんな所で立ち話もなんだろ?さっさと入るぞ…もう一夏にも連絡して有る。」

 

「……最初から私を部屋に呼ぶつもりだったの?」

 

「ああ。」

 

要はそれだけ大事な話と…しかも一夏にも関係有る話なのか…う~ん…何だろ、特に心当たりが…まぁ、行けば分かるかな…

 

 

 

「かなりガッツリ食ってたが、まさか眠くなったりしてないよな?」

 

「うん、大丈夫…寧ろこの後寝れるか不安なくらいだし…」

 

変な時間に寝ちゃったからね…

 

「マジで頼むぜ?一応大事な話だしな…あ、その前に一つ、聞いて良いか?」

 

「何かな?」

 

「いや、今朝なんであんなになるくらい寝不足だったんだ?昨夜、何かやってたのか?」

 

「あー…それね…うん、一夏にも聞いて貰ったほうが良いかな。」

 

「俺にも関係有る話か?」

 

「うん、姉さんの話なんだけど「私は席を外すか?」う~ん…いや、良いよ。」

 

椅子に座っていた箒が腰を上げるのを止める…まぁ、身内の話になるけど、良いよね…箒も半ば身内みたいなものだし…

 

「……もしかして、千冬姉が十秋姉を離さなかったとか…そんな話か?」

 

「へ?何で分かるの?」

 

「あー…成程な。」

 

え?箒までそれに頷くの?

 

「一緒に暮らしてた頃、千冬姉は十秋姉にベッタリだったからな…こうして会えたんだし、そろそろ我慢出来無くなる頃だと思ってたからさ…」

 

「私も、当時その姿を見てるからな…まぁ、何せ年単位で会えてなかったんだろ?ならそうもなるだろうな。」

 

「……まぁ、分かってるなら話が早いかな…それで「俺の方でも千冬姉の事を気に掛けて欲しいとかそんな話か?良いけど、多分あんま意味無いぞ」え?何で?」

 

「千冬姉は精神的にどれだけギリギリでも、昔から俺の前では隙の無い姉として振る舞うし、そもそもくっ付かれるのは昔から俺は嫌がってたしな…そうなると間違い無く、毎回十秋姉を呼び出すだろうな…」

 

「え!?」

 

「まぁ、そうなるだろうな…と言うか忘れたのか?私の前でもお構い無しに、お前を抱き抱えた状態で会話してた人だぞ?」

 

「う…確かに…」

 

心の奥底にしまい込んでた幼少期の記憶が蘇って来る…一夏が千冬に対してあまり距離詰めないせいか、毎回私がぬいぐるみの様に扱われてた事を…いや、まぁ…あの頃って千冬は精神的に不安定だったみたいだから仕方無いんだけどさ…とは言え、私には辛い日々だった…

 

「最終的に十秋姉も成長して来たし、千冬姉もその辺気にしたのか家でもあまりそう言う事しなくなったけど…まぁ、それでもバイトから帰ったら家で会えたあの頃と違って…全く会えなかった時間の長さ考えたら、な…」

 

「そんな…じゃあ私、毎回寝不足になるって事?」

 

「十秋姉が千冬姉のスキンシップに慣れるか、断らない限りはそうなるな…てか、千冬姉が妹離れ出来無いのって…割と十秋姉のせいでも有るんだぞ?」

 

「え…」

 

「十秋姉が昔から何だかんだ全く嫌がらないからな…俺も本気で嫌なら止めたけどさ…十秋姉はアレで喜んでる様にしか見えないから俺も放っておいたんだ…そしたら、千冬姉がああなったと。」

 

「私からしたら…あくまで家族の問題だから私が口を出す事では無いし、単に仲が良いだけなのだと最初は思ってたからな…まぁ、私がお前たちの家に泊まりに行った時に…お前だけ部屋に連れ込んだ辺りで漸く、さすがに可笑しいんじゃないかと思ったが。」

 

「一応、そこら辺で異常さを感じた束さんが千冬姉に注意した事も有るんだけど…知らないよな?」

 

「嘘…そんなの初めて聞いた…」

 

と言うか、束が常識人に思える日が来るなんて…

 

「言ってないからな。当時のお前がどう思ってるか分からないから、姉さんもお前の前では敢えて何も言わない様にしていたしな…」

 

「えっと…束さんも割とくっ付いて来るタイプの人じゃなかったっけ?」

 

「私が嫌がれば姉さんはあれでも自重するからな…寧ろ、お前が何も言わないから良いのかとも思ったが…最終的にお前の態度見る限り嬉しいだけでは無いと分かったがな…まぁ、今は私も…その理由は知ってる訳だが。」

 

「あ、十秋姉から聞いたのか?」

 

「ああ、直接な…」

 

「……ねぇ、私…どうしたら良いと思う…?」

 

「……そう言われてもな、結局は十秋姉次第だぞ?どう言う関係にして行きたいのかは。」

 

「私から言えるのは…寧ろ受け入れた方が幸せなんじゃないかと思うがな…ちなみに断言するが、そう言う関係を望まなくても…千冬さんはお前から離れる事は無いだろうな…」

 

「あの…私の気持ちを姉さんに受け入れて貰えなかったら地獄なんだけど…」

 

「なら、十秋姉が千冬姉を拒絶するしか無いだろ。千冬姉も、十秋姉が嫌がればさすがに何もして来ない。」

 

「そんな…私、出来無いよ…」

 

「矛盾してる事を言ってるのに気付いてるか?」

 

「それは…分かってるけど…」

 

「まぁ、俺たちが話したかった内容に繋がって来るんだけどさ…一旦振られたとしても、最終的に千冬姉は十秋姉を選ぶ気がするんだよな…」

 

「え…どう言う事?」

 

「お前…やっぱり気付いて無いな…あのな、お前…小学生の頃、実は一夏よりもモテてたんだぞ?」

 

「え!?」

 

いやいや…モテてたのは一夏の方じゃ…と言うか何か言い方が…

 

「ああ、やっぱりそう思ってたのか…十秋姉からしたら迷惑なんだろうけどな…十秋姉の場合、当時異性同性問わずモテてたんだ…マジでこっちは色々大変だったんだぞ?」

 

「状況知られると間違い無く、千冬さんが暴走するからな…一体何度、お前に近付く連中を牽制したか分からん…しまいに、お前と普段一緒に居た私や一夏に危害を加えて来るのも居たからな…」

 

「何それ、そんなの私…知らない…」

 

「十秋姉はそこら辺、鈍過ぎて全然気付いて無かったからな…」

 

「当時のお前に、そこら辺理解出来るのかも分からんから、敢えて言わなかったんだ…ましてや、異性だけならまだしも同性も居るからな…一応言っておくと、あまりしつこい相手には姉さんに動いて貰った事も有ったぞ。」

 

「まぁ…最終的に束さんが身をくらまして力を借りれなくなったし、箒も転校して行ったからな…本当に大変だった…弾たちや、鈴が居てくれたからまだどうにかなったけどさ…」

 

いや、弾君たちはまだしも…鈴も助けてくれてたの…?と言うか、話の内容がヤバ過ぎて…自分の事なのにもうついて行けないんだけど…

 

「鈴?誰だ?」

 

「あ、そうか…箒には話して無かったな…お前の後に中国の学校から俺たちの居るクラスに入って来たんだ…名前は凰鈴音…日本に来たばかりで、日本語も苦手だったんだけど…十秋姉、何でか知らないけど中国語少し話せたからな…気に掛けてたもんだから、転校して数日程経ったくらいでいきなり攻撃されてたよ…まぁ、幸い潰されるどころか反発してな…更に俺たちから理由聞いたらブチ切れてさ…寧ろ、積極的にそう言う連中に反撃しに行ってたな…」

 

そう、私は前世の経験から中国語が少し話せるし、書ける…まぁ、発音に関しては本場の人には鼻で笑われる程度だけど…そう言えば…鈴には日本語教えてあげる約束してたのに、結局私が教えるまでも無く話せる様になってた様な…あれって、私の為に勉強したって事?

 

「そいつも災難だな…日本に来て早々、騒動に巻き込まれるとはな…」

 

「と言うか、そんなに大変だったの?話聞いてもピンと来ないんだけど…」

 

「いや、正直一体学校に居る内の何人が十秋姉を好きなのか分からないレベルだったぞ…全員十秋姉の前では友人か、あまり接点の無い奴なら普通のクラスメイトや同級生として振る舞うから本当にタチが悪い…その癖、嫌がらせの内容も…例えばあからさまな暴力ならまだ俺たちも逆に対応しやすいんだけど、ねちっこくて誰が犯人なのかも特定しづらいのが多くてさ…」

 

「……ちなみに、どんな事されたの?」

 

そう聞いた瞬間、二人の顔色が悪くなった…え?本当に何されたの!?

 

「まぁ、気になるのは分かるが……聞くな。」

 

「安易に聞いたら後悔するぞ…そうだな、とても小学生のやる様な事じゃないとは言っておく…」

 

「……分かった、聞かないでおくよ。」

 

二人が言いたくないのは…思い出したくないって言うより、私に聞かせたくないって感じだし…だったら、聞くべきじゃないよね…

 

「一応、中学に入ってからは…多くが気持ちのほとんどは異性に向いて行ったからな…だいぶ落ち着いた…」

 

「最も、一時の暴走で片付けられる様な話じゃなかったのは…渦中に途中までしか居なかった私でも言える話だな…」

 

「……二人はずっと私を守ってくれてたんだね、ありがとう…」

 

いや、もう…それしか私には言えない…

 

「……いや、十秋姉…終わったみたいな空気出してるけど…実はまだ終わってないんだよな…」

 

「え…まっ、まだ何か有るの!?」

 

「寧ろここからが本題だ…ウチのクラスの鷹月さん、分かるよな?」

 

「え…うっ、うん…静寐の事でしょ…二人だって良く私と話してるの見てるじゃない…?」

 

「まぁそうだな…で、ここ女子校みたいなもんだろ?つまり、異性は俺しか居ない訳だ…それでさ、箒と話してたんだよ…また十秋姉がやらかすんじゃないかって…」

 

「やらかすってそんな…私、別にそんなに思わせ振りな事したつもりは…」

 

「まぁ、お前にそのつもりが無いのは私たちも分かっている…だが、結局いつもお前の態度が原因だからな…」

 

「十秋姉、割と無意識に誰にでもそう言う対応してるんだよ…で、鷹月さんだけど…多分、堕ちたぞ?」

 

「は?……いや、堕ちたって何!?人聞き悪くない!?」

 

「だが、堕としたのはお前だからな…どうするんだ?今の所一人だし、放っておいても良いのかも知れないが…お前の気持ちを知ってしまった以上、そうも行かないと思ってな…」

 

「いや、どうするって言われても…!」

 

「結局の所さ、告白するならしちまえって事…それなら、自然と俺たちももう千冬姉に事情話してしまえるし…何ならそうしてる内に、勝手に千冬姉も堕ちるだろうし…って言いたい訳だ。」

 

「いや…いきなりそんな事言われても…!」

 

「つか十秋姉?」

 

「え?」

 

「言いにくいんだけど…刀奈さんに簪、後学園に来てからまだ会えてないけど、多分…布仏さんもそうだぞ?」

 

「は…いや、ちょっと!?そんなの今言われても…!」

 

いや、本当に何でそんな事になってるの!?私、本当に何もした覚え無いんだけど!?

 

「まぁ、とにかくだ…早めに答え出した方が良いんじゃないか?」

 

「このままにしておくと多分これからもどんどん増えるからな…あー…その前に聞くけど、鈴には思わせ振りな態度…取って無いよな?」

 

「いや全然心当たり無いって!?と言うかさっきから何!?何か節操無しって言われてるみたいで嫌なんだけど!?」

 

「一夏、聞いても無駄だぞ?…多分こいつは、自分では全く気付いて無いからな…」

 

「まぁ、最早鈴がそうじゃないって考える方が可笑しいのか…」

 

「いややめてよ!?もう私限界だって!?」

 

何でこんなに悩まないといけないの!?私が好きなのは千冬なんだってば!?と言うか、多分鈴は一夏が好きだと……あれ?何か、自信無くなって来た…そう言えば、鈴には最初の内は一夏の事を良く聞かれた記憶有るのに…途中からそれも無くなってた様な…いや、考えたくない!私は千冬が好きで…!

 

「……もう全身から気持ちが漏れてる感じだな…」

 

「これなら、あまり付き合いの無い奴でも分かるだろうな…」

 

「もう…やめてよ、本当に…」

 

疲れて来た…本当に私、何か前世で悪い事した…?前世でだって異性にモテる事は有っても、さすがに同性のそれも身近な相手にモテた記憶は無……いや、もしかして私が気付いて無かっただけ…?そもそも選手時代のファンはアレな人ばかりだから、実は全く無いとも言えないんだけどさ…

 

「……まぁ、色々悩んでるみたいだけどさ…多分そんなに余裕無いぞ?」

 

「本当にやめて…もうこれ以上聞きたくない…」

 

「その様子だと今朝のやり取りで気付いて無いらしいな…鷹月は確実にお前の貞操を狙ってるぞ?」

 

「もうやめて、お願いだから…」

 

「俺たちから最後のアドバイスだ…もうさ、いっそ十秋姉の方から千冬姉を「それ以上言わないで、言ったら…この場でIS起動してやるから」……了解、まぁ決めるのは十秋姉だ…さすがに、もう俺たちは何もしないぞ。」

 

「分かってる…これ以上、こんな事で迷惑掛けたく無いし…」

 

もう…私はただ、千冬を想っていたかっただけなのに…何で、こんな…

 

「まぁ、私たちの話は終わりだ…取り敢えず部屋に戻ったらどうだ?……あ、あくまでお前が千冬さんを好きでいたいなら刀奈さんに隙を見せるなよ?」

 

「十秋姉は押しに弱いからな…」

 

「分かってるよ…」

 

元々怪しい感じは有ったしね…これからはもう少し警戒しないと…ハァ…本当に、何でこんな事になったんだろう…

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