千冬が寮に戻ってしばらくしてから、今度は一夏と箒がやって来る。どちらかと言えば二人の時間、邪魔したくないんだけど…いざ誘われて、断る上手い理由は浮かばないし、普通に運動するくらいなら良いのかなぁ…と言うか、私は立場的に箒には嫌われる立場なんだろうけどねぇ…
とか休憩中考えてたら、箒が声を掛けて来る…(ちなみに、一夏は運動するのに飲み物はまだしもタオルも持って来てない私に呆れつつ…部屋に取りに行ってくれている…)
「また、何か下らない事を考えてるな…」
「ふぇ?」
「今更、私がお前を嫌うと思うか?」
「……妙に説得力有るなぁ…」
まぁ、確かに…当時本気の大喧嘩してからの和解だからね…お互い良い所も嫌な所もさらけ出した訳で…今になって嫌うも何も無いと言えば無い…大体、私は箒の邪魔をする気は本当に無いしね。
「元々、恋愛感情向けてる相手が違うんだから争う理由も無い…お前、仮に千冬さんに振られたとしても…別に一夏に乗り換えるつもりも無いんだろう?」
「いや、そもそも…初めからその対象ですら無いんだけど…」
前世で会った時から一夏君は普通に弟みたいなものだった…まぁ、あっちでは血の繋がりも無い他人だし…案外向こうは私にそういう気持ちを向けていた可能性も一応無くは無い…ただ、私の方にその気が無いのだからどうしようも無いし、向こうでは私は死んでるからね……今世に関しては一夏は完全に私を姉として見てるみたいだし(結構な頻度で立場は逆転してる気がしないでも無い…まぁ、双子に上下差はほぼ無い様な物だと私も思うけどね…)
「当時箒が私を排除したかった理由も分かるよ?姉さんと違って私は一夏と同年代…まぁ、元々双子なんだから当たり前だけど…実際、いつも横に居たら不安にもなるよね…」
「まぁ、な…今は悪かったと思っている…考えてみれば血の繋がった家族なんだから共に行動してる方が普通だからな…」
「と言うか、私…女子の友人も少なかったしね…」
「……ああ、それな…まぁ、お前は一夏や他の男子の近くに居るせいで嫉妬されて…とか思ってるのかも知れないが…」
「違うの?」
箒がそうだったんだし、そうなんじゃないの?
「……当初はそうだったんだが、最終的に一夏どころか同性のお前を選ぶ奴が大半になってな…ハッキリ言ってかなりドロドロした想いを抱いてる奴が多くてだな…私と一夏の方で牽制していた…まぁ、その分…お前の友人が少なかったのは悪かったと思うが。」
と言うか、男子もそうだったんだよね…?それなら本当に友人も少なくなるか…
「……そう言う理由なら責められないし、そもそも責めようとも思わないけど…ちなみに、ドロドロってどんな感じ?」
「いや、聞きたいのか…?」
「ん…一応。」
気になると言えば気になる…
「……普通に拉致監禁計画してる奴が大半だったな…抱いてる想いが健全なら、当時お前と引き合わせる事も考えたが…あれではな…」
「は…?いや、小学生が同級生を監禁しようとか考えてたの…?」
「小学生だからこそだろうな…まだ道徳観念も身に付いておらず、倫理観も子供なら薄いのが普通だからな…」
「……」
「怖がって、ないな…何と言うか、お前らしい反応だが…」
「いや、まぁ…内容自体は衝撃なんだけど…元々私がそうなんだから、同性に邪な想い抱かれる事自体は…今更特に嫌悪感とかは無いんだよねぇ…」
そもそも最初に聞いた時もなんだけど…同性から恋愛感情抱かれてる事実については困惑はしてても本当に、特に気持ち悪いとは思わなかった…問題は私があくまで千冬しか眼中に無い事…ちなみに、異性にそう言う風に思われてた事自体もそんなに気にしてない…どっちにしてもそれも一つの愛情の形なのかと……まぁ、無理矢理はどうかとも思うけどさ…
「まぁ、お前は今の様に警戒心が全く無いからな…で、一夏はそんなお前を邪な想いは一切無しに守ろうと動くのだから…半端な嫉妬でお前を攻撃していた自分を恥じたくもなる…」
「と言うか、私の為に動いてる方が一夏と行動出来る事が多いって打算有ったり?」
「……あの当時、そんな事考える余裕…有ったと思うか?」
「……そんなに睨まないで…ごめんなさい。」
箒の目が据わってる…本当に大変だったんだね…
「まぁ、一夏と行動しようと考えたら自然と巻き込まれて行った感じでな…お前が共に居る事自体気にしてなくても、こっちが嫌がらせ受ける中…それに気付かず、普通にのほほんとしているお前に腹が立った事も有るには有る…」
「いや、ホントごめん…」
そんな事になってるなら言ってくれてたら……いや、駄目か…言われても私にはどうする事も出来無いだろうね…
「あのな…連中の説得になんて、行かせられる訳が無いだろう…当時私がお前に抱く感情がまだ複雑気味な時でさえ、相当寝覚めの悪い事になると感じて…お前のガードに動いた程なんだぞ?」
……こう、熱弁振るわれても正直…やっぱりピンとは来ないなぁ…いや、守ってくれてた二人や弾君たちには悪いけど…実際に私、危害加えられた訳じゃないし…
「と言うか…本当に気にならないのか?」
「随分念押すね…?うん、正直あんまり…」
「……少しは警戒してないと、ある日気付いたら見知らぬ場所で縛られた状態で目を覚ます、とかなりかねないぞ。」
「うん、まぁ…気を付けるよ。」
とは言え…見知らぬ場所で目覚める、は前世と今世合わせて三回…縛られたまで含んでも前世で二回有る…どうしても危機感は薄くなるよね…普通、私みたいに慣れてるのが可笑しいんだろうけど。