親友の妹に転生しました   作:三和

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「二人とも早いわねぇ…って、一夏君は居ないの?」

 

「刀奈さん、おはようございます…一夏はその…私の為に飲み物やタオル取りに行ってくれてまして…」

 

「……あー…忘れたのね…十秋ちゃんってホント、抜けてるわよねぇ…」

 

更識家に私と一夏が匿われてたのは実は二年くらい…残り一年は普通に織斑家と更識家を行き来していた…まぁ、要は三年くらいの付き合いなんだけど…何と言うかまるでもっと長く居た様な…そんな気がしないでもないんだよね…(何せ、千冬が好きな事以外…私の趣味嗜好とか大体みんなバレる程の密度の濃さだし…)

 

「おはようございます、刀奈さん…もっと言ってください…コイツが抜けてるのは小学生の時からですから。」

 

「あ、箒ちゃんの知ってる十秋ちゃんもそうなの?…って、どうかした?」

 

「いえ、別に…ええ、そうですね…昔からコイツは変わらないです。」

 

箒としてはちゃん付けで呼ばれるのは色々複雑なんだろうね…だって箒を主にそう呼ぶのは……ふぅ、まぁ私が心配しても仕方無い事か…と言うか、私をそそっかしい奴みたいに言うの止めて欲しいなぁ…

 

「いや、お前はそそっかしいだろ?教科書とノートは持って来たが…書く物は何も持って来なかった事が有ったのは忘れてないぞ?」

 

「まぁ、私の知る十秋ちゃんもたまに寝坊すると…焦り過ぎて、普通に通学カバンも忘れて学校行きそうになったからね…」

 

「……」

 

じっ、事実だから反論出来無い…まぁ、私は前世から天然の気が有るのも自覚してたから、気を付けようとしたら…何故か余計に酷くなって行ったり…

 

「あー…二人ともそのくらいに…ほら十秋姉、持って来たぞ?」

 

「ありがとう、一夏。」

 

私は一夏からタオルとペットボトル入りのスポーツドリンクを受け取り、汗を拭くのもそこそこに…キャップを開けて一気に飲み干して行く……ふぅ。半分程飲んだ所で私はキャップを閉めた。

 

「…で、十秋姉?刀奈さんも来たけど、続けるか?」

 

「うん、そうしようかな…」

 

正直な所、こう言うのは日々の積み重ねが大事でここに来てから運動やったりやらなかったり…中途半端な状態の私が今日一気に動いたからって、あんまり意味が無いだろうとも思う…でも、やらないより良いよね。

 

 

 

 

「そろそろ戻りましょうか。」

 

「そうですね。」

 

「「……」」

 

一夏も実は私の知る限り負けず嫌い…普段は基本的に本気ではやらない私と、恐らく格下扱いの箒に対しては全力は出さないが、刀奈が出て来ると話は別になる…

 

「中々勝たせてくれませんね?」

 

「ちょっとぉ?たかがランニングでも、お姉さんそう簡単に負けてあげられないわよ?」

 

「「……」」

 

私は元より、箒もすぐに言葉を発する元気は無いみたい…二人は速い…さすがに千冬程じゃないけど、本当に速い……私は単に疲れた、としか思わないけど…箒は少しショックかもね…一応小、中学…剣道はずっと続けてたみたいだし、人より体力は有ると思ってただろうから…でも、例えば千冬なんてやっぱり人外の域に居るし…この二人に至っても生半可な鍛え方してないから、当時更識家に住んでいた頃も結局私はついて行けなかったんだよね…("体力的にどうしても届かないなら技術を磨け"と、当時言われたのを覚えている…まぁ、一夏に関しては…結果的に技術も体力も両方ついてたりするけど…)

 

「なぁ?」

 

「ハァ…ハァ…ふぅ…何?」

 

「……いや、お前大丈夫か?」

 

私と同じく地面に座り込んでた箒が一応小声で声を掛けて来る……もう呼吸も安定してるね、さすが。

 

「ふぅ…ふぅ…何とか…で、何かな?」

 

「あの二人…相当仲が良い様に見えるが…」

 

箒は談笑してる一夏と刀奈の仲が気になるらしい…まぁ、正直問題は無いと思うけど。

 

「ん?ああ、大丈夫…どちらかと言うとあの二人、完全に擬似的姉弟だから。」

 

「擬似的?」

 

「血の繋がりが無いとか、そう言う事じゃなくて…あくまで刀奈さんが半ば持ちネタ感覚でお姉さん振ってて…そんな刀奈さんを一夏が"いつも通り"立ててるだけだから……最も、運動能力の差については本物だけど…一夏も…そこで手を抜いたりはしないし。」

 

「……まぁ、明らかにあの人の気持ちはお前に向いてる気がしないでも無いが…」

 

今言わないで欲しかったなぁ…それ。いくら嫌悪感は無くても、私としては本当に困るんだよねぇ…

 

「どうせいずれは、向き合わないと行けない問題だろう?」

 

「そうなんだけどね…」

 

出来ればもう少し目を背けていたい…だって…面倒だから。

 

「……お前のその、何でもすぐ後回しにする癖は悪癖だな…まだ治ってなかったのか?」

 

「箒…人はそう簡単には変わらないし、変わったとしても…結局本質はそのままだったりするものだよ。」

 

私の場合、面倒臭がりな所は前世の時からそんなに変わらない…とは言え、あっちではその辺気付いてくれたのは…家族と千冬だけだった気がする…皆、私の事を"良い子"だと思ってたんだよね…私が誰にでも優しく振る舞おうとするのは…単に波風立てたくなかっただけなんだけど…結果、そんな八方美人的な振る舞いのせいで…トラブルに巻き込まれた事も何度となく有る…

 

「例えば…箒が今私と仲良く出来るのは、それが箒の本質だからなだけ…八つ当たりはするけど人を本気で憎めないのが箒…貴女の本質。」

 

「……なぁ、十秋?」

 

「ん?な…イタッ!?急に何!?」

 

「おっと、すまん…そんなに痛かったか?」

 

何故か突然私の頭に箒の掌が落ちて来た…いや、ホントに何なの…?

 

「難しい事をごちゃごちゃ考えるのはお前らしくない…そう言いたくてな…」

 

「それは良いんだけど…何で今度は私の頭、撫でてるの? 」

 

いきなり頭頂部に掌落とされたのから一転して、今度はその手が左右にリズムカルに動かされ、撫でられる私の頭…いや、私って箒にどう言う存在だと思われてるの…?

 

「ん?嫌か?」

 

「……まぁ、別に嫌では無いけど。」

 

前世では割と無理しがちな千冬の頭は元より、一夏君の頭も私は撫でた事が有る…あの頃私の頭を撫でるのなんて、小さい頃も大人になってからも両親か兄さんくらい…今世は千冬がベッタベタに引っ付いてて普通に私の頭も撫でる…その状況で友人の妹と思っていた箒から撫でられるのは…何とも非常にむず痒くはなるけど、新鮮な気持ちでも有る。

 

「箒ちゃん、私にも撫でさせて貰っても良い?」

 

「良いですよ、どうぞ。」

 

いつの間にか近くに居た刀奈が箒にそう声を掛ける…と言うか私…ペットか何かの様に思われてる…?私は人間で言葉も通じるんだし、先にこっちに許可取ってよ…

 

「ペットと言うより、私たちとしてはマスコットかしらね…うん、今の十秋ちゃんの姿…写真撮って皆に送っちゃおうかな。」

 

「は?いや、皆って…!ちょ、撮らないで…!」

 

さすがに聞き捨てならない言葉が聞こえて抗議したけど…そもそも、手を払い除けもしない時点で…抵抗する気が無いって言ってる様なものなんだよねぇ…

 

「もちろん、簪ちゃんに本音に虚ちゃん…後、ウチのお母さんにも送らないと…ちなみに、何だかんだあの人…実の娘の私たちより十秋ちゃんの事、可愛がってるわよ?」

 

「それは、改めて言われなくても分かりますけど…」

 

まぁ、色々良くして貰ったのは確か…実際、"お母さん"や簪たちに送るだけなら良いか、とか思う程には…私も皆を嫌ってない。

 

「他の人には見せないでくださいね…?」

 

と言うか、携帯弄りながら今も私の頭を撫でてるとか…どんだけ器用なんだか…

 

「十秋姉、しっかりした口調の割に目付きはトロンとして来てるぞ?この後授業有るし、今日は寝ないでくれよ?」

 

「大丈夫…」

 

あう…でも、気張ってないと寝てしまいそう…ハッキリ言ってめっちゃ気持ち良い…更識家に居た頃に撫でられた事も実は有るんだけど…普通に当時より上手くなってる…

 

「ほら、刀奈さんも撫でるのはそれくらいで…このまま寝たらもう今日起きて来なさそうですし…」

 

「そうね…」

 

一夏に注意され、名残惜しげにしながらも私の頭から離される手…っ!

 

「あの、十秋ちゃん…?」

 

「!…いや、あの…これは…」

 

私は離れて行く刀奈の手を思わず掴んでしまっていた…いや、私も今自分のした事にビックリしてる…

 

「ごめんなさい…」

 

私は刀奈の手を離した…ホント、何をしてるのかな、私は。

 

……この後私と刀奈の間に少し気不味い空気が流れたものの、一夏と箒に促され…全員部屋に戻る事に……愛情に飢えてるどころか、今は寧ろ供給過多の筈なんだけどどうして私はあんな事を…私、自分で思ってる以上に疲れでも溜まってるのかな…?

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