朝食を食べ終わって、洗い物をしようとした所で刀奈が声を掛けて来た。
「あ、洗うのは私がやるわ。」
「そうですか?」
「ええ…と言うか、ごめんなさいね…当番制にしたのに、結局十秋ちゃんにやらせてばかりで…」
「あー…別に良いですよ、作る相手が居た方が張り合いも出ますし。」
「……十秋ちゃん、一人だと平気で抜きそうね…」
ビクッ、と身体が反応しそうになるのを堪える…いや、まぁ…この時間でもまだ早い事には変わらないから…食堂開いてないんだよねぇ…そうなると開くまで部屋で待つ訳だけど(基本的に自分の分だけ作るの面倒)大抵は適当にボーッとしてる間に始業時間が近付いて来て、結局朝食抜きで行くんだよねぇ…(まぁ、抜くの自体は何なら…私は一日抜いてもそこまで苦痛じゃない…前世の時は仕事が忙しくて食べられない事も有ったし、一応我慢は出来る……ただ、その後は元々食べる方なのに…普段より大量に食べてしまうから…ちゃんと食べた方が良いんだけど)
「うん、何気無い風を装おうとしてもちゃんと分かるからね?」
「……まぁ、自分の分だけ一々作るの面倒で…」
「十秋ちゃん、最低限は出来るけど…特別料理好きって感じでも無いものね…」
「いやまぁ、どうしても面倒臭いが先に来まして…」
「でもその癖、人の為なら普段なら面倒臭いって言う様な事でもやるのよねぇ…」
「……何が言いたいか大体分かりますけど…別に私、優しいって訳じゃないんですけど…」
「う~ん…優しくないなら何でわざわざ率先して面倒な事しようとするのかしら…?それも身内とは言え、他人の為に。」
……まぁ、それは私の処世術でも有るけど…明確な理由は…一つ有る…刀奈には、もう言っても良いか…
「"偽善"ですよ、所詮は。結局は私自身の為です…見て見ぬふりすると寝覚めが悪いとか、そんな理由です…」
「自分の為ね…でも、一々見返りも要求しないわよね?」
「"面倒"だから、ですね。」
「それ、傍から見たら…普通に善人だと思うけど…」
「周りがどう思うかじゃなくて…結局は私が気持ち悪いから、するだけなんですよね…まぁ、小学生の時なんて…そのせいで良い子振ってるとか…散々色々言われた事も一応有りますけど。」
波風立てたくないのと、放置するのは気分が悪い…そう思って多くの人が嫌がる事率先してやってたら、私は自然と…他の子から嫌われる立場に…でもまぁ、まさか…実は途中からモテてたなんて思いもしなかったけど。
「あら、十秋ちゃん…虐められてたの?」
「虐め…いや、かなり低レベル且つ…子供騙しの嫌がらせが大半なので…一夏や箒が確実に潰してた記憶が有りますね…もちろん、私だけでもどうにかなったパターンも多々有りますけど。」
私の前世で会った一夏君より、しっかりしてる今世の一夏が小学生程度の嫌がらせを見抜けない訳が無い…もちろん、社会人として生きた前世の記憶が有る私が小学生程度の嫌がらせでどうにかなる訳も無い……まぁ、実際…箒もかなりしっかりしてる方なのに、二人が本気で精神的に来る嫌がらせをされた時期が有った事に私は驚いていたり…と言っても、渦中の中心に居た筈の私は…当時何も知らなかったんだけど。
ま、仮に私が純粋な子供だったら…それなりに堪えてただろうレベルの嫌がらせも結構有ったけど…社会人時代も、会社に入った当初はそれなりに色々有ったからね…アレに比べたら子供の発想から出て来る嫌がらせなんて可愛い……でも、最終的に二人が追い詰められる程って…もしかして当時私がされたのと同レベル?……あんなのを小学生がやってたなんて想像もしたくない。
「強いわね…」
「はい?」
「虐めてる側が結局一番詰まらないのって、虐めた相手が全く痛痒を感じない事なのよ…そうなるともっとエスカレートして行くか、完全に排除する方法を考えるか…あるいは虐めのターゲット自体を変えるしかない…」
まぁ、最終的に…小学生時代の私への嫌がらせは普通に在学中に止んでいる…当初は諦めたのかな、って思ってたけど…仮に一夏と箒が話した事関連だとしたら…終わった話だとしても、ちょっと頭は抱えたくなる……いや、私が千冬に恋愛感情を持って無く、そもそも前世の記憶も無い純粋な子供だったとしても…自分を虐めてた相手から好意…それもドロドロした物向けられるのなんて普通に嫌だったと思う…
その私が、仮にそっち寄りだったとしても、さすがにそれは地獄過ぎる…どう考えてもお互い、気不味くなるでしょ…
そう言う理由で告白せず…私の周りに居た人たちに攻撃してたんなら、本当に傍迷惑だと言う他無い…まぁ、元々私に嫌がらせしてた訳だし…他人の気持ちなんてお構い無しなんだろうけど…と言うか、仮に告白されたとしても…私はバッサリ切るだろうけどね…
……そんな話をしてる内に、実際は仕事有るらしい刀奈が生徒会室に向かわないといけない時間が来たので自然と話はお開きに…それにしても、刀奈は結局更識家に居た頃の私の何処を見て善人だと感じていたのか…私の場合、愛想もあんまり良くない方だと思うけど(と言うか、更識家ではただただ…色々周りに振り回されてただけの印象が強い……何だかんだ、嫌では無かったけど)
……まぁ、さすがに私も…そこを聞く勇気は無い。何せ今世の数少ない友人兼家族だからね…仮に刀奈に見えていた"織斑十秋像"と、私が全く違ったりすると…私の方がそこら辺気にするから……まぁ、刀奈程の勘の良さだと…私の人物像を正確に見抜いた上でそう言ってる気がしないでも無い…仮にそうだった場合、それはそれで非常に小っ恥ずかしい物が有るし…