食事の最中、刀奈が口を開いた。
「そう言えば…」
「どうしました?」
「いえね、そろそろ冷蔵庫の中の食材が…」
「あー…」
確かに、そろそろ底を尽きかけてたね…当たり前だけど…こういう時は切れる前に補充するのが基本。
「週末は私が買い出し行きますよ。」
「それなら私も「生徒会の仕事は?」う~ん…」
悩む辺り、普通にヤバいって事だよね…
「まぁ、大丈夫ですよ…一人でも行けますって。」
最も、こう言う時って先に外出届出さないといけないんじゃないかな…結局学園のパンフレット忘れてたし、その辺のルール分からないんだよねぇ…明日にでも千冬に確認しないと…
「ご馳走様でした…あ、洗い物は私がやりますよ。」
二人分の食器を纏めて洗って行く…と言うか、そもそも結局一番食べてるの私だから…少なくとも買い物程度でも刀奈の手、煩わせる気にはならないよねぇ…それなりの量にはなるだろうけど…これくらいは行かないと…正直、今世の身体…あからさまに体力無いから心配では有る…でも一夏と箒の邪魔はしたくないし…まぁ、何とかなるでしょ。
相変わらずシャワーへのお誘いをする刀奈に断りを入れる(いや、そもそも今日はもうお風呂行って来たんだってば…)
取り敢えず明日の予習をして行く……まぁ、予習が確実に必要って何だかんだ英語くらいになるんだけど(ノートに訳書き込んで有るかも時々確認されるから…分かるからって、まるっきり白紙だとそれはそれで減点対象に…)
と言うか、この作業こそ意味が無いと言えば無い…そもそもウチのクラスは…英語を母国語にしてる国の生まれのセシリアだって居るしね(授業で習うのはアメリカ英語で、イギリス生まれのセシリアだとまた違うんだけど)日本語の方が苦手な彼女に、英語を日本語に逆翻訳させる意味が分からない…少なくとも公平って感じはしないよね……まぁ、少なくとも今は純粋な日本人で有る私がその辺文句言っても仕方無いんだけど。
「しかしまぁ…使わないよね、本当に…」
一応机に出してるけど、買った時そのまま…綺麗な辞書を手に取る…IS学園に入る事になり、教科書などの教材(まぁ、あの厚さだけ見たら、電話帳と間違いかねない参考書も含めて)の他に、こうして辞書も付いて来たわけだけど…後で静寐や清香に聞いたら普通セットには入って無いって話だから、千冬が入れてくれたんだろうけどね…
「……」
わざわざ海外出身の教師を赴任させたり、務めさせてる日本の中学校、高校は…実は私立ですらそう多くないと聞く…予算の問題なんだろうけど、普通のビジネスシーンとかでは今でも英語使わせたいなら…もう少し何とかならないものかな……最も、日本語に全く触れた事が無い海外の子供に日本語教える方が遥かに難しいとも思うけどね…それにしたってこの学園にすら"国語"を教える教師は居ても、"日本語"を教える教師は居ない。
……普通に海外から来てる子が居るのに、いきなり古文とかやらせても理解出来無いだろうね…教育分野に関して色々ぶれぶれなのに、海外から子供受け入れてどうしようと言うのか… まぁ、この辺は認識出来る身内と自分の事を優先させて他の事に一切興味を示さない束も原因だとは思うけど。実際この歪さについては、彼女のワガママもかなり影響してると思う…(本人はワガママ言ってる自覚も無いんだろうけどね)
「ふわ……あー…」
寝るにはまだ少し早い…消灯時間にも間が有る…でも少し眠い…まぁ、訳は書いてるし…切り上げても良いんだけど…とか考えていたら突然視界が暗くなった…何事!?と狼狽える私の耳元に声が届く。
「だ~れだ?」
「……刀奈さん、この部屋…私たちしか居ませんよ?」
「う~ん…30点かしら…」
後ろから私の目を塞いだ刀奈が離れた所で私は振り向く。
「リアクションに対しての点数ですか?私、別に芸人とかじゃ無いんですけど…と言うか、そう言うのは普通好きな異性にやりません?」
「十秋ちゃん…私の立場で好きな人を結婚相手に選べると思う…?」
「……ごめんなさい。」
うん、まぁ…無理だよね…と言うか、それは私に言われても…てか、話飛躍してるし…
「刀奈さん、今は更識家の当主なんでしょう?ルール変えたら良いじゃないですか。」
「十秋ちゃん、変えるって言うけど「当主なんだから変えても問題無い筈です…仕事さえ出来てるなら、政府からも文句は出ないのでは?」……まぁ、そうなんだけどね…」
実は今の日本政府に居るのは一部を除いて皆女性…それも女尊男卑に染まった人が大半だとか…まぁ、正直…会った事は無くても、全員御局様の様な存在にしか思えない…
「それに…私は異性よりも、ね…」
……そこで私を見る、と。はっきり気付かないのを見越しつつの奥ゆかしいアピールなのか、今気付いて貰ってどっちか答えをこの場で出して欲しいと言う意味なのか…この学園に来てすぐの内は冗談みたいな好意をぶつけられた覚えは有るけど…少なくとも今は明らかに本気、だよね…一応事前に聞いていたし、元々耐性は有るから特別ショックは受けてないし…もし、私が千冬を好きじゃなかったら…刀奈を選んでたかも知れないとも思う……う~ん…判断がつかない…取り敢えず、この場は…
「?…何ですか?」
「……いえ、何でも無いわ。」
気付いて無い事にする…まぁ、これだと結局問題を先送りにしただけなんだけどね…それでも、刀奈は多少スキンシップは激しくても、千冬よりは距離感保ってくれるし…こうして引いてくれるから静寐よりも楽では有る…もし刀奈じゃなくて、静寐と同室だったら…私はすぐにでも襲われてたかもね…