「まぁ、こんな話になった流れで言うのも何だけど…十秋ちゃん、生徒会…入る気は無い…?」
……二度目の誘いになる上、こんな話聞いた後だとやっぱり感じる重みが違うなぁ…
「さすがに運営が"更識家"となると、厳しいんですけど…」
「別に"更識家"として動けって意味じゃないわ…基本は書類仕事が主だし…それに、緊急時は十秋ちゃんも駆り出される可能性有るのよ?専用機持ちだし…」
「はい?」
「……織斑先生、その辺の話してないんだ…専用機持ちは例え、実戦経験無くても一般生徒の避難誘導とかには回されるの…これは権限とかじゃなくて、ほとんど義務よ…で、その場合は生徒会の指揮下に入る事にもなるから元々所属してる方が色々楽だと思う。」
……いや、聞いてないし…かと言って与えられた"力"に対して責任を持てという意味も分かる… こういう時は前世の記憶持ちで良かったと喜ぶべきなのかも…本当に私がただの子供だったら、相当狼狽えてたし…この時点で恐怖に駆られてどうしようも無くなってただろう…でも、私には社会人だった経験が有る…社会人、いや…仕事をしている大人は例えプライベートだったとしても、問題起こせば仕事にも当然影響は出る…
誰が見てるかも分からないから、最低限良識有る行動が求められる……要は多くの場合"責任"が伴うのだ…ましてや、今回の様に悪用も可能な絶対とも言える"力"を与えられて、それを必要とされた時に渋るのでは無責任も程が有るだろうとは思う…
「……そんなに深刻に考えなくても良いのよ?」
「え?」
「いや、また内容は良く分からなかったけど…凄く悩んでるみたいだから…大丈夫よ、十秋ちゃんが動く事になって…仮に何か問題が起きても基本的に責任は私に行くから……トップが責任取れない組織なんて、存在意義が無いもの。」
「いや、でも…」
責任と言うのは言葉からしてもう重い…ましてや、前世の時から数えたら私の方が刀奈より歳上なのだ…刀奈だけに押し付けたりなんて…出来無い。
「…と言うかね、言い方は悪くなるけど…十秋ちゃんの場合、こっちで敢えて行動をある程度縛った方が良い様な気もするのよね…」
「え?」
「……自分で気付いてるか分からないけど…十秋ちゃんは赤の他人の危機は状況によっては見て見ぬ振りする選択を取れるかもしれないけど…家族と友人に関しては、例え自分と引き換えになるとしても、絶対見捨てられないから…」
「私、別にそんな…お人好しじゃあ…大体、私なんて自分でどうにか出来無い事の方が多いですし…寧ろ、そう言うのは一夏の方が当てはまるんじゃないですか?」
「いいえ。一夏君は家族以外は見捨てられる人よ。取捨選択なら私よりハッキリしてる…傍から見たら冷たくも思える程に…何でか分かる?」
「何で、ですか…」
「十秋ちゃんがお人好しだからよ。だから一夏君が先に捨てて自分が汚れ役を引き受ける為…極端な話になるけど一つ、例を出しましょうか…良く聞くわよね…崖から落ちそうになってる二人の人物…どちらを助けるか…ここで片方が家族でもう片方が赤の他人でも見捨てる、と言う選択肢は取れる人は中々居ない…まぁ、実際にその状況になってみないと分からないって言うのが多くの回答だけどね…ましてや、これが家族と友人ならなお悩む筈…でもね、これが仮に貴女と箒ちゃん…あるいは貴女と私だったら…一夏君はどう言う選択を取ると思う?」
「それは…いや、あの…私だって選択出来無いです…」
逆の立場の場合、一夏と箒…一夏と刀奈…どっちの場合でも私はどちらかを見捨てるなんて選択は出来無い…
「前にね、これに似た質問を一夏君に実際にした事が有るの…私と十秋ちゃんが実際にそうなったらどっちを優先するか…話の流れは省くけど、彼はハッキリと答えを出したわ……彼は、何て答えたと思う?」
話の流れから一夏の答えは予想は付く…でも、とても信じたくない…だから私は聞いた…
「何て、答えたんですか?」
「『俺は…先ずは十秋姉を優先します、何が有ろうと…"家族"を見捨てる事なんて出来無い…』…彼はそう答えたわ。」
「一夏…」
どうしてそこで、私の方を選んじゃうのか…一緒に居るのが、刀奈じゃなくて箒だったら…どちらを先に助けるのかなんて多分聞くまでも無い…多分、一夏は私を先に助けようとするのだろう…そして、多分…刀奈も箒もその選択に納得して落ちて行く…そんな構図が、容易に浮かんでしまう…私が足でまといとかそんな考えをする気は無い…それは選択した一夏に失礼だ…だけど、少なくとも私は…二人より優先される程価値が有るとは思えないかな…
「……例え話だし、そんなに悩まなくても良いのよ?それにね、一夏君はこうも言ってた。」
「何て、言ったんですか?」
「『そもそも刀奈さん、貴女…そう言う状況でもどうせ簡単には落ちないでしょう?10秒…いや、5秒耐えてくれれば…俺は貴女も助けますよ…俺は十秋姉を優先しますけど…だからって貴女の事も絶対見捨てません』…思わず笑っちゃったわ。だって、"暗部"としての教育に染まり掛けてた当時の私には…絶対浮かばない選択肢だもの…両方助けるなんて。」
……私の知る一夏君だったらどうにかして両方助けるとか、言ったと思う…何と言うか、本当に今世の一夏って現実的だよね…
「でも、十秋ちゃんは悩むでしょう?」
「ええ、確実に。」
「貴女が悩んでる内に最悪両方とも海に落ちるわよ?……まぁ、片方が一夏君なら…結局自力でどうにかしそうでは有るけど…」
確かに、一夏のフィジカルなら何事も無かったかの様に登って来て…刀奈と箒を普通に助けてそう…で、冗談混じりに私を責める図が浮かんで来る…
「悩むより先に行動する…それが中々出来無いのが十秋ちゃんの良い所でも有るし、悪い所でも有るの…そして一番の欠点はすぐ他人の方を優先する事。」
「……毎回思うんですけど、何で私って…そんなにお人好しだと思われてるんですか?」
「だって、実際十秋ちゃんお人好しだもの。」
納得行かない…
「さて、そろそろ消灯時間ね。」
「あ、ごめんなさい…勉強の邪魔して…」
すっかり話し込んじゃった…やっちゃったなぁ…
「良いのよ、気分転換になったし…何か不思議と癒されるのよね~…十秋ちゃんと話してると。」
「……別に愚痴とかなら、私だっていつでも聞きますけど…虚さんや、本音には言わないんですか…と言うか、簪には…」
「だって…虚ちゃんって割と私に当たり強いし…もちろん叱咤激励して欲しい時も有るけど、やっぱり癒されたい時も有るじゃない?本音は…居てくれるだけでも癒されるから良いけど、ちょっと面倒な話振っても流すし…簪ちゃんは…今色々忙しいのよね…一応、今やってる事が終わったら何れ生徒会にも入ってくれる予定だけどね……うん、やっぱり…私の話ちゃんと聞いてくれて、尚且つ…色々意見出してくれる十秋ちゃんが良いな。」
……私の知る限り、虚は実際には寧ろ刀奈にかなり甘い方だと思うし…伝わってない辺り本当に不憫…本音は…まぁ、そうだろうなぁ…と、思う…ただ…
「忙しいって…簪は何やってるんですか?クラスも違うとは言え、私…この学校来てから一回しか簪に会えてないんですけど…」
「う~ん…それは私の口からはちょっとね…一回それ関連でケンカになり掛けたから、勝手に話してまた嫌われたくないし… 」
……散々じゃれ付かれても刀奈を本気では嫌がらなかった簪が嫌うって一体何が有ったのか…と言うか、私に話したら怒るって何で…?
「うん、まぁ…ヒントを一つ出しましょうか…簪ちゃんは今ある物を作ってるの…で、お披露目は十秋ちゃんと一夏君に…二人に先にしたいって、ずっと頑張ってるの。」
「ある物?」
「うん、まぁ…期待しといてあげて……で、完全に脱線したけど、どう?生徒会…入る気無い?」
「……もう少し、考えさせてください。」
まだちょっと、勇気は出ないかな…やっぱり、私にだって責任は伴うだろうし…
「良いけど…早めにね?貴女と一夏君を自分の所に入れたいって勧誘があちこちの部から殺到してるから…」
「は?一夏は分かりますけど私も?」
いや、何で私まで?
「ええ…それも、一夏君のおまけとかじゃなくて…貴女個人を欲しいって所がね…だから、早く決めて欲しいの…そろそろこっちで留めとくの限界だから…向こうが痺れを切らして強引な勧誘して来る可能性も有るし…もちろん、何処か入りたい部が有るって言うならそれでも良いけど。」
「先ず、この学園にどんな部が有るのかも知らないんですけど…」
「基本的には普通の高校に良く有る部がほとんどよ。少なくともISを使用する部は無い…まぁ、十秋ちゃんの好きにすると良いわ……ただ、何処にも入らないって言うのは難しいと思う…十秋ちゃん、一夏君と違ってクラス代表でも無いしね…」
「分かりました、考えておきます…」
「ええ、お願い……本当に早めに頼むわ…何せこっちに直談判して来るのが居て、仕事中断してる事も有るから…」
「何かごめんなさい…」
「良いのよ、こっちで留めないともっと騒ぎになりそうだし…」
「そう言えば…一夏には聞いたんですか?」
「一夏君も一応保留って言ってるけど…多分、箒ちゃんと剣道部に入るんじゃないかしらね…」
「剣道、ですか?」
「ええ…ちなみに、ここの剣道部…結構強いわよ?」
「へぇ…」
「まぁ、十秋ちゃんも剣道部に入りたいって言うなら仕方無いけど…」
「いえ、やめときます。」
いや、二人の邪魔したくないし。
「そう?…さてと、じゃあ部屋の電気は消すわね?…こっちの明かりは点けてても良い?」
「はい、大丈夫です。」
と言うか、復習はこれからするのか…ハァ…ま、気にしても仕方無いね…取り敢えず、これ以上刀奈の邪魔しない様にもう寝てしまおう。