「あ!」
「ひゃあ!……どうしたの?」
「あ、ごめんなさい…大丈夫ですか?」
思いの外大きな声が出てしまい、刀奈を驚かせてしまう…いや、何もそんな椅子から落ちる程驚かなくても…
「ふぅ…大丈夫よ、どうしたの突然?」
「……刀奈さん、私…刀奈さんにクラス代表が一夏だって話しましたっけ?」
一応質問の体は取ってるけど…多分、私言ってないと思う…話したのも多分、廊下でだから…部屋の盗聴器関係無い…
「……それか。確かに私は直接聞いてないわ…もちろん、一夏君からもね…」
「何で知ってるんですか?」
「生徒の事知らないと、この学園の生徒会長務まらないわよ…学年が違おうともね…」
そこで思い出す…刀奈はサボり癖は有ってもその実、几帳面な所も有るのを…
「……もしかして、この学園の全学年の生徒の名前とか…記憶してたりします?」
「……ふぅ…ええ、覚えてるわ…もちろん、ご両親の名前や仕事も全部。」
「……私、やっぱり生徒会…向いてないと思います… 」
「いや、偉そうに言ったけど…別に十秋ちゃんは覚えてなくても良いのよ?ウチの仕事の一環みたいな物だし…」
「いや、更識家主導じゃないですか…」
「十秋ちゃん、私…貴女より先に学園卒業するんだけど?」
「じゃあ…刀奈さんが卒業してから生徒会入る事ににします…」
そもそも虚は刀奈の一つ上だからもう最高学年の筈…本音が頼りになるとは思えないし、更識家に居た頃もほとんど家の仕事にはノータッチにさせられていた簪に重要な役割任せるとも思えない…一夏が来なかったら私が重要なポジション任されちゃうかも…
「……良いけど、そしたら私…卒業する時十秋ちゃんを生徒会長に推薦するわよ?」
やっぱり重要なポストに就けようとしてた…しかも生徒会長って…
「いや、私じゃ無理でしょう?だって生徒会長はこの学園最強の証でも有るじゃないですか…」
「大丈夫♪十秋ちゃんなら行けるわ♪」
「無理ですって…」
「……先に入って来ても後からでも…十秋ちゃんをそれなりのポジションに付ける事になるけど…虚ちゃんは私より先に卒業しちゃうし。」
後からいきなり押し付けられるなら、先に入って仕事覚えた方が後々そうなってもまだ楽と…と言うか、万が一私が何処か部に入ってたら兼任する事になるんじゃ…いや、ズル過ぎない?
「……もう少し、考えさせてください…」
私は毛布を頭から被って、寝た振りをする事にした。
「あ、そうそう…」
「んぐっ…何ですか?」
翌朝…朝食をとってる最中に刀奈がそう声を上げたので私は慌てて口の中の物を飲み込む…いや、まぁ…毎回大量に詰め込んで食べる私が悪いんだけどね…
「……そんなに焦らなくても良いのよ?」
「あー…はい…で、何でしょう?」
「え~っと…十秋ちゃん、今日の放課後…予定とか有る?」
「……別に何も無いですけど、そもそも私の予定とか把握してるんじゃ?」
「いや…私、何も…十秋ちゃんのプライベートまで踏み込んで無いんだけど…」
私の為でも有るんだろうけど…部屋に盗聴器仕掛けといてそれも無いと思う…と言うか、この学園に来てから毎日顔を合わせてるし…
「そんなにジト目向けないで…そうでもしないと私が居る意味が無いでしょう?」
と言うか、学園入ったの自体…元は私の護衛が目的じゃなかったでしょうに…私が普通の高校に入ってた可能性だって有るし…
「私への護衛の仕事なら、もう終わってませんか?」
「……改めて織斑先生から頼まれたのよ、一夏君と十秋ちゃんの事を見ていて欲しいって…まぁ、正直…一夏君に関しては本当にもう必要無いかも知れないけど…仮にどっちも生身だったら、実力も下手したら今の私より上かも知れないし…」
「一夏は、更識家の技術…大体使えますからね…」
実際…今の一夏は何でも有りの条件下なら、千冬に勝てる可能性すら有りそうだし…と言うか、一夏は本当に剣道部入るのか…昨日はスルーしたけど、今になって良く考えたら止めた方が良い様な気もする……最も、箒の希望なら私も反対出来無いけど。
「ウチ来て一年としないで、ほぼ完全に物にしたからね…ホント、あの時は自信無くしたわ…私なんて小さい頃から教え受けててまだ未熟と言われてたから…まぁ、十秋ちゃんから諦めた方が楽だと言われたから気持ちも楽になったけど。」
「身体を動かす事に関しては本当に昔から天才ですから、一夏は……ただ、団体競技は苦手でしたけど。」
「そりゃ、同年代なら彼のレベルに付いて来れる人居ないでしょ。」
団体競技は苦手でも、単純に運動能力自体は逸脱してる上…勉強も出来る方…おまけに顔もやや童顔だけど、中性的で整ってる…だからモテてモテて…とか思ってたら、実は私の方がモテてたって言うのは…改めて考えるとショックは大きい…しかも、私を好きだった人に同性も居ると来てる…中高生辺りなら一時の気の迷いでそんな事も有るだろうけど…普通に公立の共学で、しかも小学校でそうなのはあまりに地獄過ぎる…いや、想い向けられる事自体に嫌悪感は無いんだけど(私だって同性の千冬が好きなんだし)普通小学生の恋愛ってもう少し健全なんじゃないの?監禁したくなる程って、あまりにもドロドロし過ぎてるよねぇ…
「十秋ちゃん?」
「!…えと、何ですか…?」
刀奈に声を掛けられて我に返る…何かこう私って、人との会話の最中に考え込むの多いよね…反省。
「いや、複雑過ぎて読み取れなかったけど…何か悩みでも有るの?」
「……同室の先輩のじゃれ付きがあまりに度が過ぎてるって事について…刀奈さんはどう思いますか?」
実際、刀奈は特に意味無く私に絡んで来る事は有る…
「それは、ごめんなさい…でも、今気にしてたの…それじゃないわよね?」
「まぁ、多少複雑な話なんで今は…」
いや、今話すには時間無いし…今日は刀奈は仕事は無いって話だけど…全部話してたら授業始まっちゃう…まぁ、刀奈とも関連してるから何れ話さないと駄目だろうし…
「それで脱線しちゃいましたけど、何か有りました?」
「あー…そうね…実は1組のクラス代表が正式に一夏君に決まった日にクラスの皆でお祝いパーティーしたそうなんだけど…その時にかっちゃ…私の友人でね、新聞部に所属してる黛薫子って子が居るんだけど…その時に一夏君と箒ちゃん、それからセシリアちゃんの取材したらしいの。」
……うん、何でクラスどころか…学年も違う刀奈さんがパーティーの事知ってるのかはもう聞かない…面倒だし。
「はぁ…それで?」
「それでね、その時十秋ちゃん風邪で寝込んでたから取材出来無かったから…今日の放課後、予定空いてるなら改めて取材したいんだって。」
取り敢えず疑問を挙げる事にする…
「……えっと、今日って言うのはやけに急ですし…それに何で今になって私の取材するのかって事と…何で私の取材までするのか聞いても?」
「え~っと…順番に答えるわね?今日になって言う事になったのはちゃんと事前に言われてたけど、つい忙しくて今日まで私が十秋ちゃんに伝えるの忘れてたの…だから、それはごめんなさい…それで今日になったのはあちらが忙しくて中々時間が取れなかったから…後、取材は寧ろ当然だと思わない?」
「当然って…何でですか?」
「だって、十秋ちゃんも専用機持ちじゃない?そもそも…専用機持ちがクラスに三人も居る時点で結構前代未聞よ?」
「それは…そうでしょうね…ちなみに、箒は何でですか?」
箒は専用機持ってないし…
「箒ちゃんはほら…篠ノ之博士の妹だから、ね…」
「あー…成程…ところで、取材って言われても何を話せば?」
「……ほぼ、有りのまま答えて良いと思うわ…ただ、二つだけ注意。貴女が更識家に匿われていた事は言ったら駄目だし…後、彼女は新聞を読まれる事を重視するあまり…多少捏造しようとしたりするの…だから、そこも気を付けて…」
「……凄い面倒な人って気がして来たんですけど…断ったら駄目ですか?」
「どうしても嫌なら良いわ…でも、受けなきゃ受けないで彼女…有る事無い事書くかも知れないわ…まぁ、悪い子じゃないから…多少冗談で済む範囲にはなると思うけど…」
「結局、受けないと駄目なやつじゃないですか…」
他人から見たら笑い話でも私個人としてはそうじゃない場合が有るし…
「一応今日の放課後は私も空いてるから、何なら一緒に行くけど…どうかしら?」
空いてると言うか、もしかして予定空けてくれた…?うわ…これ結局断れないやつだ…
「まぁ、そう言う事なら…分かりました、お願いします。」
「良かったわ…そしたら彼女にOKだと伝えとくわね?」
取り敢えず目の前の茶碗の中のご飯を口に入れて、飲み込んでからまた口を開く…
「……ちなみに、私が断ったらどうなってました?」
「問題無いって言いたいけど…彼女の場合、後日ゲリラで取材しに行ってたかも…それに、さっきも言った通り勝手に色々書くかも…私も彼女の動き全部を牽制出来無いから…実際に動けるのは新聞が皆の目に触れてからになるから…結構ややこしい事になるかも知れないわ…」
やっぱり、逃げられないパターンだった…