「ん…んあ?…うう…」
目を開け、上体を起こした瞬間に身体が怠さを訴え、思わず呻く…う~ん……あれ?何か寝る直前の記憶が曖昧だ…どう言う状態で寝たのか、良く思い出せない…
「やっと起きたな…もう昼だぞ。」
「へっ?」
横から声を掛けられて目を覚ます……いや、何で箒がここに居るの?と言うか、あれ?ここ、自分の部屋じゃない…?
「何で私がここに居るのか、そう聞きたそうな顔だな…先ずお前、昨夜の事は覚えているのか?」
「ん…んー…あ。」
そっか、私…千冬の部屋に来て…それから…うん、お酒飲んだんだね… あー…多分そのまま酔い潰れたんだ…まぁ、寝る直前の記憶は無いけど…ん?
「思い出した様だな。」
「うん…で、結局何で箒がここに?ここ、姉さんの部屋じゃないの?」
改めて身体を起こして周りを見渡すが、ここは間違い無く昨夜(まぁ日付けは既に変わってたけど)と変わらない寮長室…
「それはだな、千冬さんから部屋に居るお前の様子を見に行く様に頼まれたからだ…そろそろお前が目を覚ます頃だと言われてな。」
「はえー…」
さすが、タイミングバッチリ…
「まぁ、私自身は具体的な事はほとんど何も教えられてない様なものだがな…実際にお前が起きたら色々と聞こうと思っていたんだが…取り敢えず起こさなかった理由はもう分かった。」
「え…」
「十秋、お前…酒飲んだな?」
「え…ええええ!?何で分か…っ!…うう…」
驚いて叫んだ私の声が頭痛を起こしてる頭に響いて私は思わず頭を押さえてまた呻く…うー…頭痛い…
「どうやら判断力も落ちてるらしいな…全く、少しは誤魔化す努力をしろ…と言うか、大丈夫か?」
「うー…何とか…それで、結局何で分かったの?」
「何でと聞かれてもな…普通にお前の口から酒の匂いがするからな。」
「あちゃ~…えっと…私、そんなに臭い?」
「息を吐き掛けるな…私まで巻き込む気か?」
「ごめん…」
「ハァ…ま、どうせもう午後の授業は休む事に決めたから良いがな…」
「へっ?何で?」
「私が帰ったら、誰がお前の世話をするんだ?千冬さんはまだ授業が有るんだぞ?全く、千冬さんもせめて先に言ってくれれば良かったんだがな…」
「いや、私は大丈夫だか…う!?」
急に襲って来た強い吐き気に思わず口を押さえる…やっ、ヤバい…これは、吐く…
「……限界か?」
「……」
口を押さえたまま何とか頷く私…どうしよう…?
「洗面器を持って来る…もう少し頑張れ。」
箒が床から立ち上がる……!…もっ、もう無理…!
「ほら、持って来たぞ…さっさと出してしまえ。」
……箒がそう言うのと同時に差し出されたそれの中に向けて、私は喉元まで込み上げて来た物を解放する……あ、勢い付き過ぎて箒の顔にまで飛んだ…あー…ホントごめん…
「水だ。」
コップに入った水をゆっくり飲み干す…うー…まだ少し気持ち悪い…
「ふぅ…箒?」
「何だ?」
「その、ごめんね?箒の顔に「言うな、私も忘れたいからな」ごめん…」
「ハァ…ま、制服は汚れて無いから良い。」
「うん…」
「と言うか、起きてるの辛いだろ?横になってて良いぞ?」
「いや、そうなんだけど…横になったらなったで体勢的にキツそうで…」
「……まぁ、お前がそのままの方が良いと言うなら良いがな…」
「……箒?」
「ん?」
「その…理由聞かないの?」
「……どう考えても千冬さんの立ち会いの上で飲んでるんだから、私が口出す話じゃないな。」
「そう…」
「…と言うかだな、私は昔からお前が隠れて飲んでるのは知ってたから…今更特に驚きも無いんだ。」
「え…箒、知ってたの?」
「当時ハッキリ確信が有った訳じゃないが、な…ま、私自身はお前の友人では有っても結局は他人だしな…と言うか、私が分かるんだから普通に千冬さんも一夏も気付いてただろうしな…その上で二人が何も言った様子が無いんだから、私からどうこう言う話じゃないだろうとは思ったが。」
「……」
つまり、私が二回目にこの部屋に来たのが初めて飲んだ日だと言うのは嘘だと千冬にはバレてたのか…ホント、私って詰めが甘い…
「とは言え、今回の千冬さんの対応自体は問題が有ると思うがな…」
「え?」
「教師としてにしろ姉としてにしろ…その場に居たにも関わらず、未成年が二日酔いになるまで飲むのを黙認するのは大人としては問題だろう…」
「あー…そうだよねぇ…でも、飲みたいと言ったのは私なんだよねぇ…」
「いや、普通止めないと駄目だろ…と言うか、挙句にお前の世話を私に押し付ける始末だからな…」
「あの、それくらいで…何度も言うけど、私が無理言っただけだから…そりゃ、わざわざ来てくれた箒には悪いとは思うけど…」
「ハァ…分かっている…そもそも、今回の場合は仕方無いとも言えるしな…」
「え?」
「お前はいつも考えてる事がだいたい筒抜けだがな…一番肝心な所は隠し通すからな…飲ませでもしないと、本音は言わないだろ?」
「……」
まぁ、否定は出来無い…でも、この場でそこを認めるの何となく悔しいから…口には出さないけど。……ま、どうせこれもバレるんだろうね…
「実際、千冬さんへの気持ちを伝えるだけならいくらでもタイミングが有ったのに…結局お前はこの歳になるまで言えてないからな…」
「…って言うけどさ、実の姉が相手で且つ…同性ってなったら…やっぱりハードルが上がるじゃない…?」
「お前は千冬さんにどう思われるかより、世間体を一番気にしてる様に見えるんだがな…」
「結局そこが一番の壁じゃない?」
「いや、関係無いな。」
「え?」
「お前も一夏も普通に織斑性を名乗ってるが…織斑の親類とは一切、交流が無いんだろう?」
「そうだね、姉さんがろくに話してくれなかったから詳しくは知らないけど…ほとんど絶縁状態みたい…」
「大抵世間体気にするのは、本人たちよりも周囲の連中だ…親類と絶縁状態なので有れば、そもそも文句は言われない。仮に、他に他人が文句付ける可能性が有るとしたら…千冬さんに男性が近寄って来た時になるだろうが…私も気質的には似た様なものだし、人の事は言えないが…あの人が普通の男性と結ばれる可能性…有ると思うか?」
「……無いだろうね。」
まぁ、女性のライバルはそれなりに居そうだけど…千冬に関しては、やっぱり異性よりも同性を気にするべきだろう…
「つまり、お前と千冬さんの関係を否定出来る権利を持つ人間はこれから先も現れない、と言う事だな…まぁ、正式に結婚する事は出来無いが…お前は千冬さんと一緒に暮らす事が出来れば十分だろう?」
「まぁ、ね…」
最も、同棲するのはもちろん、千冬とエッチな事だってしたい…究極を言えば、私は"織斑千冬"が手に入るなら他には何も要らない…
「ほら、やっぱり後は千冬さんの気持ち次第だ…最も、お前が気持ちを伝えない限り話は進まないがな…」
「……だって…拒絶されるかも知れないと思ったら…やっぱり怖いから…」
「その様子だと恐らく酒を入れても何も言えて…いや、お前本当に言ってないのか?」
「うん、結局言えなかった……と、思う。」
「何だ、覚えてないのか?」
「う~ん…実は酔い潰れたのは何となく覚えてるんだけど…直前の会話とか、全然覚えてなくて…まぁ、さすがに言えてないと思うけど…」
「……お前、実は気持ちを伝える事が出来たのかも知れないぞ?」
「へっ?」
「良く考えたら、お前を放置してあの人が普通に授業やってるのが妙な話だからな…あの人なら、無理にでも休むんじゃないかと思ってな… 」
「えっと、もしかして…千冬は気持ちを整理したいから…敢えて私と顔を合わせない様にしたって事?」
「多分、そうなんじゃないか?最も、仮に千冬さんが受け入れてくれていたとしても無意味だがな…」
「何で?」
「当の本人のお前が告白したのを覚えてないからだ…実際、出来ていたとしても…お前が口にした告白が、お前の本心だったのかの証明が出来無い。」
「……やり直せって事?」
「ああ。次はシラフで言うしかないな……ま、どうせ当分は無理なんだろ?」
「……多分、お酒入ってないと言えない。」
「飲んで、言えたのかも分かってないがな…」
「う…それは、そうだけど…」
「一々酒の力に頼るな…かえってろくでもない結果になるかも知れんぞ?」
「分かってるけどさ…」
だって…怖いんだもん…
「お前はヘタレだが、相当我慢弱く見えるんだがな…逆に聞くが、本当に一度も手を出した事が無いのか?」
「無いよ「あれだけくっ付かれて良く我慢出来たな…それとも、性欲が無いのか?」……有るよ、実際…何度も手を出しそうになった……でも、出せなかった。」
実際、千冬の持ち物をオカズに自分を慰めた回数は自分でも数え切れない…ただ、今の様に寮に居ると出来無いから…そろそろ限界が近いかも知れない…
「……お前は本当に分かりやすいな。」
箒にそう言われ、我に返る…ひょっとして、今のもバレた?
「あの、もしかして今私が考えてた事…」
「……ほとんど四六時中一緒に居る相手を好いていて我慢してたんだ…実際、猿並にやってたんだろ?」
そこは…内容分かってもスルーして欲しかったなぁ…
「どうせ箒だってそうじゃない。」
「この話は確実にどっちも要らんダメージを受ける事になるが、まだ続けるのか?」
「やめとく…てか、こうして聞いた以上…慰めてくれたりしないの?」
……実は、私自身自分の口から出て来た言葉に驚いている…
「……それは、私とシたいと言う意味か?」
「箒は嫌?」
「私には同性とヤる趣味は無いな。と言うかヤっても…お互い余計に辛くなるだけだと思うぞ?」
「ま、そうだよねぇ…」
ホッ…断ってくれて良かった、私から誘っといて何だけど…もし本当に了承されてたら私も困ってたと思う…
「私はな、一夏と結ばれるまでは清い身体でいたいんだ。」
「その…もし一夏に選ばれなかったら?」
「その時は仕方無いさ。普通に私を好いてくれそうな男を探す…と言うか、私の立場的に相手が居ないと困る…」
「……そっか、箒は神社の娘だもんね…伴侶が居ないと困るのか…」
「姉さんが継ぐ可能性はゼロだからな…まぁ、どうしても相手が見つからなければ最悪養子でも取るが。」
「でも、箒が篠ノ之神社に戻るの難しいよね?」
今の箒は、戸籍上も篠ノ之家の人間では無くなっているだろう…
「ま、そうなんだがな…とは言え、私もこのまま潰したくは無いからな…」
「束さんに連絡したら、それで話は済むんじゃない?」
「あの人に言ったら確実に暴走するからな…それこそ、最後の手段にしたい。」
「あー…そうだよねぇ…」
確かに、余計に面倒な事にはなりそ…!
「……第二波か?」
また口を押さえながら頷く…いや、ホントに参ったね…
「私がコイツを持っておくからそのまま吐け……今度は飛ばすなよ?」
悪いけど約束出来な…う!……再び吐く…いや、一回目で一通り吐けたのか…ほとんど胃液しか出て来ないけどね……あ。
「お前…もう当分飲むな。」
「ごめんなさい… 」
まぁ、二回目も箒の顔に飛沫が飛ぶ始末だからね…いや、ホントごめん…