「と言うか箒…本当に午後の授業サボって、ここに居るつもりなの?」
「少なくとも昼休み終わって、千冬さんの最初の授業はウチのクラスだ…だから戻って来れないのは確実だろう。」
「いや、そうだけど…別に風邪で休んでる時と違うし…大丈夫なんだけど…」
「先の時点で続けて二回、そしてついさっきまた追加で一度吐いといて良く言えたな…」
「いや、ごめんって…そんなに怒らないで…」
と言うか、被害受けてるのは私の世話をしようとしたからじゃ…そもそも千冬は様子を見て来る様に言っただけでしょうに…
「だからなぁ…口に出さなくても、何となくは分かるんだぞ?」
「ごめんなさい…」
いや、その…さすがに二日酔いで、友人に世話されてると言うのは…至極情けないと言いますか…
「だったら初めから飲み過ぎるな。」
「もう…一々人の心の中、読まないでくれない?」
「別に心を読んでるんじゃない、お前の思考が非常に単純なだけだ…」
「……結局、私が自分で言ってる様なものって事?」
「初めからずっとそう言ってる…ちなみに今は弱ってるせいか、特に分かりやすいな。」
「うへぇ…」
そうやって一々バレるの本当にやってられない…一体、どうすれば伝わらなくなるのか…
「諦めろ。きっと、最早それは一種の業だ。」
「こんな宿業背負わせられる程、前世で悪い事した覚えないんだけど…」
「普通前世で自分がどんな奴だったかなんて分からな……いや、お前もしかして…前世の記憶有ったりするのか?」
普通に核心を付かれて動揺する…改めて箒の顔を見詰めるけど…質問の体を取った割に、彼女はほぼ正解だと思っている様に見える…
「何で、そう思うのかな?」
「まぁ、根拠は色々有るが…一番分かりやすいのはこれか。お前が普通に、日本語以外の言語を話せる事だな。」
「……」
「お前無意識か知らんが…私の知る限り小学生の頃は、外国の言葉を時折口にしていたぞ。」
「そんなに、喋ってた?」
う~ん…あんまり記憶に無いなぁ…
「聞く限り発音に癖も有ったな…多分、英語でも無いだろう…と言うか、中国語も話せるんだったか?さすがに日本生まれ、日本育ちの子供が日本語を含む三ヶ国語を話すと言うのは中々無いぞ?」
「んー…先ず一個訂正。私が話せるのはフランス語と中国語に英語…そして日本語の四ヶ国語。それから一応ドイツ語も完璧じゃないけどある程度話せる…それと多分、私が日常的にうっかり口にしてたのはフランス語だと思う。」
「……つまり、お前は前世でフランス人だったと?」
「ん…そもそも、普通に今世の私が身に付けた知識だとは思わないの?」
「思わないな。」
「何で?」
「お前、母国語以外も覚えられる程…器用な奴だと自分で思ってるのか?」
う…反論出来無い。実際、前世の母国語になるフランス語と家で使ってた日本語はまだしも…中国語と英語は自分でも拙い発音だと思うし…まぁ、一部日常会話が出来る程度のドイツ語も微妙と言えば微妙だけど。
「…で、結局どうなんだ?」
「聞く意味、有る?」
「別に答えたくないなら良いが?」
……まぁ、今は私自身当時の事を誰かに聞いて欲しいんだと思う…でも、何かただ認めるのも癪。
「お前って学習しないよな…バレるのを忘れたか?」
「!…えっと、今のも分かるの?」
「何?…あー…成程。時折お前は何を考えてるのか分からない事が多々有ったが…前世の事を考えてる時はバレなかったのか。」
……今、私は素直に驚いている…確かに、その方面でバレたの初めて…
「恐らく今、お前の方が肉体的、精神的に弱ってるのと…私とお前の付き合いがそれなりに長かったからだろうな…分かるぞ?」
「ふぅ…これからは、箒に隠し事は出来無いね…」
「これ以上隠す事が有るのか?」
「う~ん…もう無いかなぁ…」
前世の事まで気付かれたら、今更私に秘密なんてほとんど無い……いや、少なくとも一つだけ有る。
「バレてるならこれも訂正しようか…私は、前世の頃なら姉さ…千冬が好き。」
「呼び捨て…向こうでは千冬さんと同年代だったのか。」
今ので、そこまで予想出来るんだ…
「そう、私は千冬と同じ歳だった…」
「お前、フランス人だったんだよな?どうやって日本人の千冬さんと知り合ったんだ?」
「第一回モンド・グロッソの会場…私は、決勝での千冬の対戦相手だったの。」
「……どっちが、勝ったんだ?」
「千冬の勝ち…私も粘ったんだけど、結局負けちゃった…」
「凄いな…あの千冬さんと互角とは…」
「使う武器同士の相性の問題も有ると思うけどね…私は、千冬に西洋剣で挑んだし。」
「……まさかと思うが、剣だけで決勝まで行ったのか?」
「そうだよ。」
「……向こうのお前は間違い無く、千冬さんと同種の人間だよ。」
「それはどう言う意味かな?」
「一応褒めてるんだが、違う意味に聞こえたか?」
「私は千冬程、凄く無いよ。」
「向こうのお前が実際そう口にしたのなら、他の選手にぶん殴られても文句は言えないな…」
「私はね、たまたまフェンシングでの心得が有ったから…何とかなっただけ。」
「フェンシング選手としての実力は?」
「さぁ?公式でそんなに大きい大会は出てないから…でも、出た試合で私は負けた事は無い…千冬が、初めて私を負かした相手。」
「……会うべくして、お前は千冬さんと出会ったんだろうな。」
「いや、私が誇張して言ってるとは思わないの?」
「そこで嘘を吐いても、分かるからな。」
……あー…そんなに私、分かりやすいんだ…と言うか…
「別にそこまで運命的なものでも無いと思うけどね、私が身の程を知っただけの話だし…」
「敵が居なかったお前が負けて、且つ…対戦相手に性別超えて好意を抱いてるのに運命じゃなかったら何なんだ?」
「ん…まぁ、そうだね…でも、最初はお互い友人のつもりだったんだよ?」
「一応聞くが、向こうでも気持ちを伝えてないのか?」
「第二回モンド・グロッソが始まるまでの三年間…私と千冬の交流はずっと続いてた…私は半年としないで気持ちを自覚したけど…結局伝える事も無く、そして…モンド・グロッソでの再戦も叶う事無く…私は死んだ。」
「何故言わなかったんだ?こっちと違い、向こうでは普通に他人だったんだろ?」
私はつい笑ってしまう…だってこの状況…
「どうした?」
「……いや、ごめん…実は向こうで私が良く恋愛相談してた相手が居るんだけど…誰だと思う?」
「何だ急に…向こうでのお前の交友関係なんて私には分からないぞ?まぁ、でもそうだな…一夏か?」
「確かに一夏君にも相談はしてたけど、私が一番頼りにしてたのは…貴女だよ、箒。」
「私?私と向こうのお前に、一体どんな接点が有ったんだ?」
笑いが込み上げて止まらなくなる…うん、向こうでも私と貴女は友人では有ったけど…私、これでも歳上なんだよ?何か驚かされっぱなしって言うのもやっぱり癪だしね…その困惑顔見られただけで、この話をした甲斐は有る。
「先ず、千冬と仲が良かった事で…束が私に興味を持って会いに来たの…貴女とは、束からの紹介で知り合った。」
「……そうだったのか。と言うか、姉さんとまともに会話が出来たのか?」
「私はね、箒…今でも束とは…千冬と同じ、親友だったと思ってるよ。」
「……あの人の事をそう呼べるのは、他には千冬さん位だろうな…」
「ついでだから、もう一つ箒がビックリする話…しようか?」
「まだ何か有るのか?」
「束はね、多分…向こうの私の兄…兄さんの事が好きだったと思う…もちろん、好意が有るって意味でね。」
「……姉さんに、そんな相手が…」
「私が死んだ後の事は分からないけど…くっ付いてくれてたら、ちょっと嬉しいとも思ってるんだよね…」
私が生きてる頃だと色々面倒事に巻き込まれそうだけど、今なら…それで良いと思う。
「……と言うか、あまりに衝撃が有ったから忘れそうになったが…質問に答えてないぞ?」
「ふぅ…さっき箒が言った事が正解。私が世間体を気にしたのと、千冬に拒絶されるのが怖かったから…ちなみに、箒や一夏君、束以外にも味方は結構居たんだけどね…柳韻さんまで応援してくれたし…」
「お前の家族は?」
あー…
「……何かあからさまに顔色が悪くなったんだが、家族には反対されてたのか?」
「いや、その逆…寧ろしつこいぐらいにいつ告白するのか聞かれてたよ…特に兄さんには、もう何回千冬を押し倒せって言われたか…」
「味方が圧倒的に多いのに渋ってたと…筋金入りのヘタレだな。」
「いや、だって千冬が拒絶したら「千冬さんの場合、それでも友人付き合いは多分やめなかっただろうし、今のお前と、向こうのお前の性格がそれ程変わらないなら最終的に上手くいってた気がするがな。」…いや、まぁ…私は向こうで恋愛関係で色々有ったから、臆病になってる面も有るかな…」
「色々?」
「それこそ学生時代は異性同性問わず、同級生に襲われそうになったのなんて普通に何度か有るから…まぁ、それでも中高時代の話だけど。」
「……道理でお前にその辺の危機感が薄かった訳だな、普通慣れて良いものじゃないんだが…」
「そもそもね…私の場合は恋愛関係の話とは別に、普通に誘拐された事有るから…ついでに言うと、一度は自力で逃げ出す所まで行ってるし。」
「お前の学生時代の話だけで一本、本が書けるんじゃないか?」
「書けるかもね…さすがにあんまり思い出したくないけど。」
「……取り敢えずここまでの話を聞いて、私から言いたい事が有る…」
「何?」
「さっさと千冬さんに気持ちを伝えてしまえ。これは最後のチャンスなのかも知れんぞ?三度目も千冬さんの近くに、しかも気持ちを抱いたまま生まれ変われるなんて思わん方が良い…」
「分かってるけどさ…」
「全くもどかしい…向こうの私は何をやっていたんだか。仮に顔を合わせていたなら…普通にイライラして、歳上とか関係無くケツを蹴りに行ってそうだが…」
「あー…説明が足りなかったね…実は私、向こうで貴女と実際に会った事は一度も無いの。電話で話した事が有るだけ…写真を見たから、顔は知ってたけど。」
「つまりお前は…ずっと電話で私にそんな相談をしてたと?…ハァ…心底、向こうの私に同情するよ…直接会った事も無い奴の片想い…しかも自分の知人を好きな奴の話を延々と聞かされてたんだからな…しかも、お前は千冬さんと一夏に自由に会えたんだろうが…その頃なら私は一夏と会えない頃だろ?」
「うん…自分と違って何の制限も無く千冬に会えるんだから、さっさと告白しろって何度も言われたよ… 」
「…で、しないまま今世に持ち越しと…お前、自分がとても恵まれてるの分かってるのか?」
「いや、今世では千冬は姉だよ?向こうでは他人だったのに…」
「何度も言わせるな…お前が千冬さんと結ばれる為に障害となるのは千冬さんの気持ちがどうなのかだけだ…告白自体はしても問題が無い…仮に振られるとしても、このまま言わなければ今世でも未練残したまま死ぬぞ?」
「いや、箒はどうなの?」
「お前の知る前世の私と今世の私は別の人間だ…大体、普通に向こうの私と一夏が結ばれる可能性は考えてないのか?」
「……正直、普通にくっ付いてるかも…」
一夏君自身は鈍い方だったけど…向こうでは束が積極的に色々仲立ちはしてたみたいだし、もし私が死んだ後…向こうの一夏君がIS学園に来ていればあるいは…
「要するにお前は…身近に居た私の恋愛が成就してないから…そう言う面も有って、渋ってるんじゃないのか?」
「んー…それはちょっと有るかも…」
「じゃあこうしよう…」
「え?」
「私が一夏に気持ちを告げるからお前も千冬さんに言う。それなら良いだろう?」
「いや、勝手に決めないで…別にそれがメインの理由じゃないし…」
「さっきからチラチラ感じるんだが…今更歳上振るなこのヘタレが。」
「は?」
「私に気を使ってる振りして、お前は結局逃げているだけだろう?」
「急に何を言い出すのかな?」
「良い大人が歳下の、それも学生に先越されて黙ってて良いのか?」
「って言うけど、箒は実際まだ一夏に何も言ってないんでしょう?じゃあ今私にグチグチ言うの可笑しくない?」
「良し、見てろ。」
そう言うと箒が携帯を取り出す…
「何してるの?」
「決まっている…一夏をメールでここに呼び出す。」
「もう授業始まってる時間だけど…」
「さすがにマナーモードにしてるだろうが、メールは届く…授業が終わったら、すぐに一夏はここに来るぞ。」
「えっと…本気?こんな事で告白しちゃって良いの?」
「本気?こんな事?なめるな。私はな、一夏の姿を初めて見たあの日…あの日からずっと心を奪われているんだ…何れ気持ちは告げる気でいた…結局早いか遅いかの違いでしかないんだよ…と言うか、私はこれでもお前に感謝している…」
「え?」
「お前の様に気持ちを告げる前に死んで且つ、運良くまた会う事が出来たのにそれから10年以上…気持ちをただ拗らせるだけで何もしようとしない…私は、お前の様な未練を背負いたくないんだよ…全く、とは言えだ…お前の話を聞かなきゃ決心も付かなかった…だから、礼を言う。」
「あ、うん…どういたしまして?」
「さて…良いか?どの口で言うのか知らんが…私の先を越したくなくて渋ってるんだろう?なら、私が度胸を見せればお前も続かざるを得ないと言う事だな?」
「えっと、うん…そうだね…!…いやいや!関係無いでしょ!?何で箒が一夏に告白したら私も千冬に言わないといけないなんて話になるの!?」
「こっちは見ててイライラするんだ…いい加減覚悟を決めろ。」
「だから…!…うぷ…こんな状態で千冬に告白しろって言うの!?」
騒いでたらまた吐きそうになって来た…
「お前は千冬さんと何年一緒に暮らしてるんだ…どうせ恥ずかしい姿なんてもう腐る程見せてるんだから、今更だろ?」
「告白したいなら勝手にやってよ!?私関係無い!」
「まぁ、どっちにしろ…お前はもう逃げられんがな。」
「はぁ!?」
「実は…ついでに千冬さんの携帯にもメールを出している…少なくとも今日中にお前は千冬さんと顔を合わせる。」
「!…わっ、私…部屋に戻る「逃がすと思うか?先ずは私の一世一代の告白…しっかり見届けて貰おう」…分かった。そっちは前世と今世の貴女の友人として、そして今世の一夏の姉としてしっかり結果を見届ける……でも、私が千冬に告白するかは別。」
「いつまで逃げてる気だ?」
「箒には分からない…一回死んだら、尚の事…こうやって怯える様になるんだよ…」
「告げなければ未練になるだけだ…仮に、明日死ぬとしても…私は一夏に気持ちを告げるだろうな…私の背中を押してくれたのは…お前だ、十秋。」
「……私は、別に箒に何もしてない。」
「お前が前世での事を話してくれたから決心が付いた…言わずに死ねばお前の様に拗らせる事が良く分かった。だから、お前のお陰だよ。」
「うー…何か傷口に塩塗り込められてる様な気分なんだけど…」
「お前にとっては失敗談だろうからな。まぁ、敢えてお前の嫌がる言い方をしてるつもりだが。」
改めて私の知ってる"箒"とは違うと感じる…少なくともあの子はこんなに性格悪くなかった。
「あのなぁ…一応歳上なのと実際には会った事が無い相手だから最低限気を使っていただけで、多分…向こうの私も今この場に居る私と性格はそんなに変わらないと思うぞ?」
「ん…何でそう思うの?」
「決まっている…そいつも結局、私だからだ。」
「何か説得力有るね…」
無茶苦茶な事を言ってる筈なのに不思議と納得は有る…
「てか、本当に送ったの?」
「当然だ。見るか?」
箒が私に自分の携帯を差し出して来る…どれどれ…
「"大事な話が有るから寮長室まで来てくれ"この文面で一夏が来ない可能性は考えてないの?」
「来るさ。お前なら分かるだろう?」
まぁ、頭に大事な話って付けるだけで…メール一本でここまで足を運んじゃうくらいには一夏は誠実だとは思う…
「振られるとか、思わないの?そうなったら二人は同室だし、すっごく気不味いよ?」
「最初から諦める様な奴が何処に居る?」
……普通に、ここに居るんだけど。
「別に振られたからって、簡単に諦めるつもりは更々無いがな。」
「って言うと?」
「当分は毎日の様に顔を合わせるんだ、時間を掛けて落として行けば良い。」
「はえー…」
いや、すっごい自信…
「まぁ、私自身性格もガサツな方だと言う自覚は有るが…これでも女としての自分には自信が有るんでな…」
箒の顔を見ながらふと考える…箒が一夏を捕まえるには何をすれば良いのかと……自然と私の視線は下に行く。箒が私の視線に気付いたらしく、私が見てる物を顔を下げて確認する…少しして、顔を上げた箒が呆れ顔をする…
「全く…見るなら私のじゃなくて千冬さんの方にしておけ。」
「いや、さすがにあからさまにジロジロ見れないんだけど…」
「見てるのは、否定しないんだな…」
「今更そこで嘘吐いてもね…」
箒程じゃないけど、千冬も結構大きいんだよね…おっぱい。
「ちなみに、向こうでも千冬さんのスタイルは変わらないのか?」
「ん?そうだね、あっちでも結構大きかった…と言うか、普通に今の千冬と変わらないくらいの大きさかな…」
「前世で実際に千冬さんの服の下を見た事は?」
「有るよ、普通に一緒にお風呂入った事有るし。」
「それで手を出してないのか…お前はかなり、スケベな方だと思うんだがな…」
「まぁ…それだけでご飯三杯行けるくらいには好きかな…」
「いや、基準が分からん…お前にとって食欲と性欲は同一なのか?」
「う~ん…結構近いって言えなくも無いかも…普通に束との食事中に千冬の身体について語るとかはやったし…」
「……今、初めて姉さんに同情したくなったな…」
「って言うけど、向こうで時折オカズ提供してくれたのも束なんだけど…」
「ちなみに、オカズの内容は?」
「大体が千冬の盗撮映像、写真も有ったけど。」
「……本当にお前に告白させて良いのか、疑問に思えて来たな…」
「いや、自分を慰めるにしても…やっぱりオカズ、欲しくて…」
「と言うか…全部千冬さんでするのか?」
「まぁ、千冬に会うまで異性はもちろん…同性にも別に興味は無かったし…」
「……」
「いや、そこで引かれても…箒だってした事有るでしょ?」
「さすがに盗撮は無いし、私はもう少し大人しいシチュエーションを想像するんだがな…」
そう言う物、なのか…私からすると最終的に男女どちらとも、アレな想像すると思うんだけど…
「てか、疑問に感じたんだよね?じゃあ告白しなくても良い?」
「決めるのは結局千冬さんだからな…言わなくて良いって事にはならないぞ?…と言うか、結ばれさえすれば健全だからな…そもそも、自分を慰める必要も無くなるだろう?」
「うへぇ…」
と言うか、今更だけど…何で私はこんな話をしてるのかな…
「いや、そもそもお前…羞恥心とか無いのか?」
「ん…良く考えたらそっちも今更の様な…だって、今まで隠してた事は大体もう箒に話したし…」
「……いっそ録音でもすべきだったなと思った。少なくともこの一連の話全部受け入れられるかの確認も…千冬さんにした方が良かった様に思う…」
「いや、どっちにしても千冬に前世の話する気は無いからね?」
「しないのか?」
「だって、そうする意味が無いし…大体ここまで話してなんだけど…私も前世の事、そんなに良く覚えてないし…」
「ここまで来てそれか…本当の事では有るんだろう?」
「多分?」
「私に聞くな…何でそこで自信が無くなるんだ?」
「いや、向こうでの私の顔は元より…名前も全然思い出せなくって…」
「まぁ、お前が死んだ直後に生まれ変わったのだとは限らんし…細かい所は忘れていても仕方無いのかも知れんがな…ただ、その辺こだわる必要は無いんじゃないのか?」
「へっ?」
「お前にとっての真実は…前世の頃から織斑千冬が好きだった…と言う一点のみで良いんじゃないか、と言っている…今更気にしたって、結局向こうに戻れる訳でも無いしな…」
「まぁ、それはそうかも。」
向こうで千冬に気持ちを告げられなかった事…それは私にとって今も忘れられない未練…ただ、今世で言えて…且つ、仮に千冬受け入れて貰えるならそこは問題では無いとも思う…と言うのも、私が死んだ事で気にしてるのは…本当に気持ちが告げられなかった事の一つしか無いから…向こうでの人生が終わった事自体は…私はある種、納得している…まぁ元々は今世の状況に絶望してたけど…そもそも妹になった事自体は障害じゃないって言われたらね…実際、納得は出来る理由だったし…
「ま、とにかく結論が出たなら…ちゃんと千冬さんに気持ちを告げるんだぞ?」
「うん…それとこれとは話は別だね。」
どうして、そうなるかなぁ…
「おい、今までの時間は何だったんだ?」
「いや、だって…この状況で私が理解したのは世間体は関係無いって事だけ…千冬が受け入れてくれない可能性はまだ残ってるし…」
「振られたらそれで終わりだと?振り向かせる努力をしようとは思わないのか?」
「努力も何も…避けられたらどうしようも無いよね?」
「それは先ず有り得ないと思うがな…」
「何で言い切れるの?」
「お前は何で、生きているんだ?」
「はっ?」
「お前は第二回モンド・グロッソの決勝が有ったあの日…誘拐されたんじゃないのか?」
「ん…そうだよ。私は誘拐された…」
「丁重に扱われた訳では無いだろう?」
「うん、確かに結構手荒に扱われたね… 」
「なら、お前は今世でも死んでた可能性が有るんじゃないか?」
「そう、かもね…」
「だが、お前は今こうして生きている…それは、千冬さんが決勝蹴ってお前を助けに来たからじゃないのか?」
「そう、だね…」
「例え、世間からバッシング受ける事になったととしても、千冬さんがそう言う行動を取れたのは…それだけ、お前が大事だからじゃないのか?」
「そうだね、千冬は私が大事なんだと思うよ…"妹の織斑十秋"の事がね… 」
「あー…そこがずっと引っかかってるのか。」
「いや、そこ気にするのが普通じゃない?箒だって同じ立場なら私と同じ考え方になるでしょ?」
千冬に妹として扱われる度に感じる…前世での千冬との関係性のギャップから生じるジレンマに、私はずっと苦しめられている…
「と言うか、そこが嫌なら尚更気持ちを告げるしかないんじゃないのか?」
「だから、無理だって…仮に千冬に気持ち悪がられたら…私は今世のこの命、普通に絶つと思う。」
私は、怖いんだ…千冬に拒絶される事が…それがとにかく怖くて堪らない…
「振られたら終わり…それだけで人生に絶望し、相手の気持ちを変える努力もせず、他の楽しみを見付ける訳でも無い…お前、人生なめてないか?」
「私はどうせ一回死んでるからね…今更そこに躊躇い有ると思う?」
「前世でも20年程度しか生きてないし、今世合わせても高々30年ぐらいなのに既に覚者気取りか?傲慢だな。」
「悪い?」
「良い訳が無いだろう?大体、死んだ時の記憶は有るのか?」
「それは…無い、けど…」
「そんな事だろうと思った。ハッキリ死んだ自覚も無い癖に真理を見たと?笑わせるな。」
「……どうせ箒には、私の気持ちは分からないよ。」
「分かりたくもないな…今のお前が言ってるのはただのガキの癇癪だ…ふざけるのも大概にしろ。」
「じゃあどうしろって?」
「未練が無い訳無いだろう…生きるんだ。仮に千冬さんがお前の気持ちを受け入れてくれなかったとしてもだ…生きてお前の事を認めさせれば良いんだ…普通、こんなチャンスが訪れる事なんて無いんだぞ?」
「好きな人と対等だったのに、気が付いたら立場が妹に…下に変えられてる…その辛さが貴女に分かるの?」
「そんなの知るか。そもそも向こうでどれくらいの頻度で千冬さんに会えてたんだ?多分お前…基本的にフランスがホームで、そう何度も会えた訳でも無いんじゃないのか?」
「む…そりゃあいつも会える訳じゃなかったけど…」
「遠距離恋愛してるカップルにお前の話をしてみろ…確実に、怒るぞ。お前は合法的に、しかも誰にも邪魔される事も無く…パートナーと一つ屋根の下、同棲してる様なものなんだからな。」
「いや、一夏が居るし…」
「結婚した夫婦が親と同居して、その状態でも普通に子供作るパターンが有るが?別に一夏が居たからって気にする様な物でも無いだろ。大体、一夏はお前の気持ちを知ってるんだぞ?」
「そうだけど…」
「下らない事を言ってないでさっさと気持ちを告げてしまえ。結局、話はそれからだ…」
「下らないって…こっちは真剣に悩んでるのに…」
「はなから逃げてる奴の何処が悩んでると言うんだ…落ち込むのは結果が出てからだろうが。」
「あー…もう!面倒臭い!大体、箒には関係無くない!?」
「ほう?前世の私と今世の私…両方に相談してた癖に私は関係無いと?」
「だって、告げるかは結局私の自由で「なら、お前は何故助言を求めた?」それは…」
「成程、分かった…お前は、相談する事で自分に理由が有る事に安心したかっただけだろう?何故ならお前は…千冬さんを好きである事以外は空っぽなんだからな。」
「あ…」
見ない様にしていた事実を突き付けられて私の言葉は止まる…そう、私には結局…千冬の事を好きな事以外、他に何も無かった。
「告白して、未練が消えたらお前のその先は無くなる…なら、結果はどうあれ次にお前が選ぶのは結局死だ…違うのか?」
「……」
「そうでも無ければ…死んだ事実に納得しているなんて結論に至る訳が無いからな。元々お前は他の事はどうでも良いんだ…その癖、理由を消したくないから告白しないだけだ…何か間違っているか?」
「そう、私は他の事に興味なんて無い。」
「ハァ…散々騒いどいてこれか…未来を想像出来無いのか?」
「うん、私は仮に千冬と結ばれたとしても…その先が全く、想像出来無い。」
「だが、言わなければずっとその歪みを抱えたままだぞ?」
「それが私だからね。」
認めてしまった…でも、私の心は今…凄く穏やかだ。
「答えが出たら、もう私じゃなくなる…今更千冬を好きになる前の私には戻りたくないかな。」
「受け入れてくれるとも思ってないんだな…」
「有り得ないね。」
と言うか、そうじゃないと困る…私が好きになった千冬は…私を絶対選ばない。
「こんなドロドロした私なんて選んで欲しくない。私にとって千冬は…本当に綺麗な存在だからね…」
「……千冬さんへの気持ちを聞いてから今日まで、私がお前を否定した事は無かったがな…今の私の心境を言ってやる…お前は今、とても気持ち悪いよ。」
「うん、ありがとう…凄く安心出来る。」
「だが、お前の目論見通りになるかな?」
「は?」
「ここまで乗り掛かった船だ、私は絶対にお前に気持ちを告げさせる…大体、お前は大事な事を忘れている。」
「何?」
「決めるのは千冬さんだ…勝手に崇めるな、あの人は偶像じゃない…一人の人間だぞ?」
「そんなの、私が認めると思う?」
「ふん、恋人でも妹でもどっちでも良いがな…愛されろ、それがお前に課せられた試練だな。」
「ここまで言ったのに、まだ諦めないの?」
「ああ、ごめんだな。と言うか、お前は最初からそうでは無かったと思うがな。」
「は?」
「少なくとも前世で最初の頃は普通の好意だった筈だ…拗れたのは、どうせお前が諦めたからだろ?」
「……」
「ハァ…全く、下らない時間だったな…まぁ良い、私は今のお前を否定したいんでな…意地でも告白させるからな?」
「何で、そこまでするの?」
「何故か…お前は私の親友だからな、他に理由は無い。」
「ハァ…お節介。」
「お互い様だ…おっ、そろそろ授業も終わりだな…一夏が来る…当然、私を応援してくれるんだろ?」
「ふぅ…そうだね、私は…箒の親友だからね。」
と言うか、昔から…私は箒を応援してるから…っ!…しまった…騒ぎ過ぎた…
「またか?」
「……」
「全く…ゲロの臭いが立ち込める中での告白か…ある意味、私らしくも有るが。」
締まらないなぁ…ごめんね、箒。