「それにしても寂しくなるわね…」
部屋に居た刀奈の言葉に首を傾げつつ…私は口を開いた。
「箒が来ますし、私は隣に居るんですけどね…何ならそう長い時間って訳でも無いと思いますけどね…と言うか、どうせ…"見てるし聞いてる"…でしょう?」
「そこに関しては…一応十秋ちゃんや一夏君の安全の為に了承して貰えないかしら?」
「まぁ、分かってますけど…」
私は…この部屋と、箒と一夏の部屋に盗聴器が仕掛けられてるのを知っている…と言うか、やっぱりカメラも置いてるんだね…一夏もそのままにしてる辺り、誰が仕掛けたのかはもう知ってるんだろうけど。
「一応、一夏君には内緒話が有る時とかはスイッチ切って良いって言ってあるわ。」
「あ、一夏には言ってあるんですね?」
「……先に言わないと、彼の場合は全部回収しちゃうからね…」
「でしょうね…」
一夏はとにかく勘が良いからね…ちなみに、私と一夏が更識家に居た頃何度も勃発した本音の行方不明事件…あの時も大体見付けるのは一夏だったり…まぁ、そもそもの話…外に居た訳でも無いし、いくら広いとは言え、生まれた時からあの家に住んでいる刀奈たちが発見出来無いのに普通に初回から一夏が見付けて、その後も基本的に一夏が発見出来るのは当時謎では有った…本人も見付けられる理由聞いても良く分からないって答えるし…まぁ結局、文字通りの"勘"だから理由も何も無いんだろうけど…
「あー…本音の事ね…恐らくだけど一夏君、多分本音が普段学園の何処に居るのかは…既に何となく気付いてると思うわよ?」
「……聞いても良いって意味ですか?」
「十秋ちゃんに任せるわ…でも、本音は簪ちゃんの事を手伝ってるから…」
「じゃあやめておきます…簪の邪魔したくないですし。」
そう言う理由なら仕方無い…さてと。
「それじゃあ…取り敢えず私に用が有ったら普通に部屋に来るか、携帯の方にメール飛ばすか電話してくれたら良いんで…後、生活の仕方とかはこの後来る箒と話してください。」
ビニール袋に入った、ほとんど手荷物レベルの私の持ち物を持って私は座っていた床から立ち上がった。
「うん、またね?」
「はい、失礼しま…あ。」
そう言えば刀奈と一つ約束してたのを思い出した。
「どうしたの?」
「例の週末の買い物はちゃんと行きますから。まぁ、箒は私程食べないですけど。」
「ああ、アレ行ってくれるの?」
「約束しましたからね…ちなみに、箒は私より料理出来るんで期待して良いですよ…ただ、夜食を作ってくれるかは…ちょっと確実な保証は出来無いですけど…」
箒の方は現状私と違い、刀奈が生徒会の仕事で遅くなる事に対して理解は無い…仕方の無い事と割り切ってはくれるだろうけど、刀奈が夕飯抜いていてもわざわざ夜食作ってくれるかはさすがに別の話にはなって来る…
「それは分かってるわ…寧ろ私、十秋ちゃんに甘え過ぎてた気がするもの…」
「刀奈さんの場合、当番決めしても正直あまり意味が無くなるでしょうね…」
基本的に刀奈は忙しくて夕飯の時間に居ない事も多いからね…朝もそれなりに早い時間に出て行く事も有るから、朝食も二人分作るのは無理な場合も有る…
「当番決めは…しない方が良さそうね…」
私と二人で割り振っても、結局守られる事はほとんど無かった…まぁ、刀奈は別にサボりたくてサボってた訳じゃ無いし…仕方無いんだけどね。
「ま、ただ…箒は何だかんだアレで結構お人好しなんで、頼めば大抵何か作ってくれるかと思います。」
「十秋ちゃんより?」
「多分…」
私に散々お人好しだと言っていた箒…でも口調こそ強めで性格も当然キツめに見られがちな彼女も実はかなりお人好しだと思う…実際面倒見も良くて、頼られれば余程嫌いな相手でも無い限り基本的にノーとは言わない…私は、前世の記憶見ても彼女以上のお人好しは知らない…
「最も、生徒会がどの程度忙しいのかはさすがに知らないのでいきなり夜食の要求とかはやめた方が良いかと思いますけど…一応、部屋に戻るのが遅くなる時は箒にメール送ってみてください…特別嫌われてなければ、色々作ってくれるかも知れませんよ?」
「いや、私夜食に関してはあからさまに十秋ちゃんにねだった事は無いからね?でも、それは良い事を聞いたわね…」
まぁ、刀奈が本気でおねだりしたら箒は普通に屈しそうな気はする…私の方はもういい加減慣れてるし、何なら夜食作るのくらいはもう頼まれる前から率先してやるから…その辺あんまり関係無いけどね。
「もちろん絶対とは言えませんけどね…と、そろそろ行きます…箒も待ってるでしょうし。」
「結局、部屋を替える理由は話してくれないのかしら?」
「それは、箒に直接聞いてみてください…私からはちょっと…ただ、来て早々しつこく聞くのはやめた方が良いかと…多分、いきなり嫌われて空気も悪くなると思うので…」
「あー…分かったわ、しばらくは聞かない。」
……と、こうやって釘を刺してもどうせ刀奈はどうにかして突き止めるんだろうな、とは…正直思う。そもそもの話…寮長室にも実は盗聴器やカメラ仕掛けてる気がしてならない…いや、千冬はそのままにはしておかないか……まぁ、今は良いや。
「じゃ、そろそろ失礼します。」
「ええ。」
私は刀奈に背を向けて部屋のドアまで向かう…何だかんだ私たちの別れはサバサバしたもの… まぁ、別に今生の別れとかでも無いしね…ただ、一夏と箒の方は理由も理由だし、お互い気不味くなって…色々アレな雰囲気になってるんだろうなぁ…とは、予想出来る…ハァ…正直行きたくないけど提案したのは私だし、仕方無いか…あ!
「今日の隣のカメラと、盗聴器の内容は確認しないでくださいね?」
私はドアの前で足を止めて、振り向き…刀奈にそう声を掛ける。
「!…ええ、分かってるわ。」
……もちろん、刀奈の表情の変化には気付いた。まぁ、先に言っておけばさすがにやらないと思う…いや、安全の為にとか言っておきながら普通に悪用してるよね…私や簪の色々際どめの盗撮写真保存してた様な人だし、今更だけどさ…
ドアを開けた辺りで、もう一個釘を刺さないといけない事が有ったのを思い出したので再び私は振り向いた。
「私の時みたいに、エプロン着用のみでの歓迎とかはやめてくださいね?箒は私と違って、本当にそう言う冗談が通じな…」
「え?」
振り向きつつ喋っていた私は最後まで言い切る事は出来無かった…いや、何でもう例の格好でスタンバイしてるかな…取り敢えず、後ろ手にドアを閉める…いや、廊下に誰か居たら見られる…
「……すぐに着替えてください。」
「どうしてもダメ?」
「ダメです。」
寧ろ、何で良いと思ったのか…まぁ、ほとんど片脚どころか…下半身が完全にそっち側に浸かりつつ有る私と違い、箒はノーマルだからかなり不愉快に感じる筈…実際、私から先に聞いてるとは言え…だからって受け入れられる状況では無い筈…
「大体、何で数分と経たずにその格好出来るんですか?」
「その…箒ちゃんが来るって言うからね、先に制服の下に着てて…」
「お願いですから、普通に迎えてあげてください…」
何か胃が痛くなって来た…今更だけど、箒をこの人に会わせて大丈夫なんだろうか…
「いや、そのまままた制服着ないで貰えますか?」
「え…裸の方が良いの?それはさすがに心の準備が…」
「そうじゃないです…普通にエプロンを外して、制服を着用して貰えますか?……いや、何でブラに手を掛けるんですか…」
心の準備云々言った直後に、もう裸になろうとしてるこの人の神経が本当に分からない…
「いや、本当に普通に迎えてくれたらそれで良いんで…」
「えー…」
「駄々捏ねないでください…」
箒…正直ね、この人を歳上だと思うのはやっぱり無理だと思うんだ…時々私ですらハッとする言葉をくれたりするけど、たまにしか真面目な姿は見せないし…
「仕方無いわね…じゃあこっちを…」
「いや、水着も駄目ですから…」
いや、私いつになったら二人の居る部屋に行けるのか…すぐ出られると思ったのに結局グダグダになってる…
……結局、何とか刀奈を説得して部屋を出た時には普通に一時間近く経過していた…私、何やってるんだろう…