「来たか、じゃあ私は行く。」
「ああ…何か悪かったな、俺のせいで…」
「気にするな…」
ノックして部屋のドアを開けて貰って…すぐに漂う重ための空気…うわ、入るの嫌だなぁ…
「そう嫌そうな顔をするな、私はしばらくこの部屋には戻らないから良いだろう?」
「まぁ、そうだけどさ「少しは否定しろ」痛っ…」
つい本音が出て来て箒からデコピンを貰う…あう、結構痛い…
「まぁ、少しの間部屋を代わるだけだ……ちゃんと答えは出してくれよ?…セシリアの為にもな。」
「分かってるって。」
と、そこで初めてセシリアには部屋を替えたのを伝えてないのを思い出す……取り敢えずメールだけしておこう。
「さてと、じゃあ後の事は刀奈さんと話して…あー…変な絡み方して来るかも知れないけど、軽くなら殴っても良いからね?」
「……いや、良いのか?」
「あの人はわざとアレな行動取って、こっちの許容範囲探って来ようとする癖が有るから…嫌な時はハッキリ意思表示しないと辛くなるよ?」
まぁ、私の場合はその辺は緩めな方だと思う……ただ、放っておくと毎日面倒な絡み方される…実際、私は疲れはしても、キレないのはもう慣れちゃったからなんだろうね…正直、同じ生活したら箒は三日と耐えられないと思う…
「分かった、気を付けよう…」
「あの人結構丈夫な上、簡単には食らわないと思うし…本気でやっても笑い話にはなるだろうけど…一応加減には気を付けて。」
「ああ、分かった…まぁ、意味無くじゃれついて来る奴には何度か出会った事も有るし…大丈夫だろうさ。」
ここに来るまでに、あちこちの学校を転々としたであろう箒の生活状況について…詳しくは聞いてない。ただ、本人が大丈夫だと言ってるし何とかなるとは思うけどね…
「じゃあな、一夏と仲良くやってくれ。」
「うん、刀奈さんに宜しくね?」
箒が部屋を出て行く……正直、無駄に時間取らされた私よりさっぱりしてるように見えるね…
「さてと、十秋姉…飯どうするんだ?今だとまだ食堂は開いてるだろうけど…」
改めて時計を見る…開いてるのは確かだけど、そんなに時間が有るとも言い難い…結構慌ただしくはなりそう…
「そうだね、今日は一夏のご飯が食べたいかな…」
「了解…すぐ作るよ。」
「あ、手伝うよ。」
取り敢えず自分の荷物を綺麗にされてる机の上に置く……あ、そう言えば私…自分の教科書とか忘れて来てる…
……で、結局私が気付いた直後に箒が私の残した荷物を持って部屋に戻って来た…いや、何かごめんね…
一夏の作った料理を食べた後は普通に勉強を…あー…
「一夏、悪いんだけどノート貸してくれない?」
「そう言や十秋姉、今日の授業出てないもんな…」
一夏のノートを借りて取り敢えず内容をそのまま写す…頭に詰め込むのはその後…
…で、勉強が終わった後は一夏と話す…とは言え、家では元々…思い思いに過ごす事も多い私たち…現状手元に娯楽品も無いから会話する事になってるだけで今更、特に具体的な話題が有る訳でも無い…まぁ、無言の時間が苦になると言う訳でも無い…結構長く一緒に暮らしてたしね…途中から更識家に居る事も多かったし、学園に来てからも刀奈さんは色々話す人だから、ここまで静かなのは本当に久しぶりとも言える……ん?
「俺が出るよ。」
部屋にノックの音が響き、一夏がそう言って立ち上がった…まぁ、一応訪ねてくるのに問題の有る時間では無いけど遅いと言えば遅い…一体誰が?
「十秋姉、ちょっと来てくれ。」
「ん?」
考えつつもボーっとしてた私は結局誰が来たのか確認してなかった…一夏に呼ばれて、ドアの方を見た所で驚く…
「……姉さん?どうしたの?」
「どうしたの、じゃない…全く、勝手に部屋を交換しおって…」
「あー…ごめんなさい…やっぱり戻した方が良い?」
「いや、あくまで様子を見に来ただけだ…一応書類出さないとならんしな。」
あー…書類要るんだね…考えてみれば当たり前だけど…
「交代自体は一時的なものだったか?いつまでする気なんだ?」
「いや、それは…ちょっと…」
一夏が言い淀む…まぁ、今はその辺言えないよねぇ…
「まぁ、理由も期間もハッキリ言えないならこの場で無理に聞こうとは思わんがな…戻す時にはちゃんと許可を取れよ?」
「うん、それは分かってる…」
「じゃあ私は部屋に戻る……今日は私は疲れてるからさっさと寝るからな?また夜中に部屋を抜け出すんじゃないぞ?」
ちょっ…!何も一夏の前でそれ言わなくても…!
「いや、千冬姉…部屋を抜け出してたってどう言う事なんだ?」
「詳しい事は本人に聞け…じゃあな。」
千冬が帰って行く…いや、この状況で放置するのは勘弁して欲しい…
「……どう言う事だ?」
「えっと…言わないと駄目かな?」
「そうだな…」
一夏の方は引く気が無い様…ハァ…仕方無いか…
「まぁ、色々とね…悩んでる事が有って最近寝れなくてさ…」
「悩みの内容は例のアレか?」
「ま、そうだね…」
「……そう言う事なら、俺が色々言う訳には行かないか。」
「そうだね、私が答え出さないと駄目なんだろうし…」
と言っても、どうにか出来る様な話では無いのは確か…だって結局私、千冬に告白する気が無いんだから…つまり解決のしようが無い……ただ、学園に来て最初の内は告白しようと考えてたのは確か…でも、ここに来て教師としての千冬の姿を見つつ…何処までも私に姉として振る舞う千冬の姿に私はもう折れている…まぁ、このまま千冬の妹で居るのが今世では自然な事だからね…
「ふわ…」
少し涙が込み上げて来たのを誤魔化す為に欠伸をする…いや、実際少し眠かったりするけど…
「何だ、眠いのか?」
多分…今回も私の考えてた事は一夏には一部伝わってると思う…それでも何も聞かない弟に感謝しつつ、私は答えた。
「ま、少しね…今日散々寝たし、今寝るとまた変な時間に起きそうだからまだ寝ないけど…」
正直夜中に起きてもやる事無いし、また抜け出す事になりそう…
「そうか…」
「と言うか、本当に時間潰せる物が無いよね…」
家に帰れればさすがにトランプやらボードゲームくらいは有る…ただ帰るタイミングが…最も、行って帰るだけなら、それなりに時間は掛けるけど日帰りも一応不可能では無かったりする…ここって海の上に有る人工島なんだけど、本土からそこまで離れてないし…移動手段はちゃんと確立されてるからね…
「ま、仕方無いさ…すぐに休みが来るし、その時帰れば良い。」
……あっ、明日ってもう金曜日か…後はすぐ日曜が来る…
「でも、今週末は私は無理かな…」
「ん?何でだ?」
「その…姉さんの部屋の掃除と、刀奈さんに買い出し行くって約束したから…」
「……それ、両方一人でやるのは厳しくないか?」
「んー…午前中に買い物して戻れば多分午後には帰れるから、姉さんの部屋がどれだけ散らかっててもギリギリ夜までには終わるかなって…」
「ハァ…俺も行くよ。」
「えっと…どっちに?」
「両方…どうせ暇だろうしな。」
「そっか…ありがとう。」
ここは一夏の言葉に甘えておこう…こうして別々に生活する事になった以上、二人の邪魔したくないとかはしばらくは関係無くなるんだし…
「そう言や風呂はどうするんだ?」
「大浴場に行くのかって事?いや、私は部屋のシャワーで良いかな。」
「ま、十秋姉ならそう言うよな。」
まぁ、私の体質の問題も有るけど…静寐が居ると面倒だし…
「ま、俺は時間来たら大浴場の方行くよ。」
「あれ?一夏も入れるの?」
「ああ。あんま長くないけど一応時間取って貰ってるからな……本当に消灯時間ギリギリのタイミングだけど。」
そこは仕方無いと言えば仕方無い…ここって本来女子校みたいなものだし…
「と言うか、十秋姉は自由に入れるのに行かないのもったいないよな…」
「いや、どうにもあの暑さが駄目なんだよね…」
中の温度が高いのもそうだけど、どうしても熱い風呂自体…あまり得意な方じゃない…
「家の風呂は平気なのにな…」
「明らかに温度が違うからね…」
とは言え、同じ"家"でも更識家の大きい風呂は本当に駄目だった…最も、さすがに毎回カラスの行水だったのは気にはされてたね…て言っても、怒るなら分かるけど心配されるのはねぇ…お陰で、少しは入れる時間延びたけど…
「さてと、じゃあ私はシャワー浴びて来るよ。」
「ああ。」
……ちなみに、前世でも今世でも…一夏に覗かれたと言う事は無い…千冬もされた事は無いようで、枯れてるのかと思えば前世の一夏君は薄着の私に反応するし、今世は一夏の箒への言葉からしてもそう言う訳でも無い様…いや、そうだとしたら結構辛い生活だよねぇ…
「ふぅ…」
とは言え、そこら辺私が同情しても仕方無いし…何なら我慢してる一夏に失礼だろう…だったら私の対応としては、一々気にしないのが良いだろうね…