親友の妹に転生しました   作:三和

30 / 334
#30

「…朝っぱらから押し掛けて来て何の話かと思えば…そんな話か…」

 

私は朝から学園の寮の部屋にやって来た二人の人物を見て溜め息を吐いた…

 

「む~!そんな話って何さ!私は真面目に「落ち着くんだ、束…ケンカをする為にここまで来たんじゃないだろう?」むぅ…分かったよ…」

 

私ですら手を焼く親友が大人しくなったのを見て、見事な物だと感心する……以前にも見た光景だが、やはり慣れんな…

 

「すまんな、君に伝えるならある程度話が纏まってからの方が良いと言ったんだが…聞いてくれなくてな…」

 

「…いえ、貴方が言って聞いてくれないなら私にも無理でしょうし、ね…」

 

束を親友だとは私も思っている……が、学生時代から私を含めてずっと…一度ワガママを言い出したこいつを抑えられる奴は誰も居なかった…だが、束は今私の目の前に居るあいつの兄貴には…何故か異常に懐いていた…

 

ある時一度だけ、束の居ない時に彼から束の事をどう思っているか聞いた事が有る…

 

『少し子供っぽい所は有るが、知的でユーモアの有る女性だ。私にとってはとても好ましい。』

 

……仮に親友に春が来るなら、それは私も素直に嬉しく思う…ちなみに妹であるあいつにその辺も聞いてみると…

 

『束と兄さん?……あー…確かにお似合いかもね…束は良く私に会いに来るけど、普段は忙しい兄さんが家に居ると私そっちのけでベッタリな事も有るし、兄さんも正直満更でも無さそうかな…ただ…』

 

そう語るあいつの表情に影が差したので、妹としてはやはり複雑なのかと思い、そちらも聞いてみれば…

 

『…そう言う気持ちは特に無いかな…束が義姉になるのは思う所が無いって訳じゃないけど…二人の事に反対する気は別に無いかな…ただ兄さん、アレで結構変わり者だから…妹の私ですら何考えてるのか分からない時も結構有るしね…何なら私と兄さんは一時期はほとんど絶縁状態に近かったし…まぁそれは置いといて…あの人は先ず普通の女性とお付き合いなんて出来るタイプだとは思えないし…束ならピッタリだと思うよ…でも…』

 

『でも?』

 

『兄さん変わり者って言うか…突然奇行に走ると言うか突拍子も無い事をいきなりやり出すんだよね…束も同類だから、下手にくっ付いたら思い付きで二人で変な事やらかすんじゃないかって心配で…二人がそうなるのは素直に嬉しいと思うんだけどね…下手をすると妹の私にまでとばっちりが来るんじゃないかって…』

 

……束と同類と言う所に衝撃を受けたが、まぁ今日一緒にここまで来てこんな話を持って来る以上、あいつは本当の事を言っていたんだなと…改めて思う…

 

「それで何だが…」

 

「彼女を取り戻す、と言う話でしたね…」

 

話の内容は死んだあいつをこの世に連れ戻すと言う、正直頭の痛くなる話だった…三つほど、形にはなってはいないが…一応具体的な案を持っては来ているが…

 

ただ真面目に聞く価値が有るかと言えば、決してそうは思えないし…あいつとの日々が今現在頭の中を駆け巡ってる私の感情が話を聞くのを拒否してるのが正直な所だ…

 

……■■、お前の言った通りだったよ…確かにこの人も束と根は同じだ…

 

「束…」

 

「何、ちーちゃん?協力してくれる気になった?」

 

溜め息を吐きたくなるのをギリギリで堪えた……向こうは真面目にこんな話を持って来ているからな、一応こちらも真面目に返すべきだろう…

 

「束、お前の好きな理論の話になるが…先ず時間と言うのは不可逆が常識だ。まぁ仮にそこを覆せたとしてもだ…そもそも過去に行ってあいつを助けられたとして…その後はどうするんだ?」

 

「どうって?」

 

……その後の事をまるで考えてない辺り、今のこいつは確実にまともじゃないな…

 

「例えば過去であいつが乗る飛行機を一本遅らせた…あるいは強引に日本に残らせたでも良いな…その後はどうする?」

 

「それは…そのままこっちに帰って来て「過去であいつを助けても、こっちではあいつは多分…死んだままだと私は思うぞ」え…?何で…!?」

 

「あいつが死んだと言う事実が覆ったら…死んでから今日までの時間が無かった事になるからな…当然の話だ…パラレルワールドの話くらいお前だって知っているだろう?」

 

「あいつの生きている未来が別の可能性として残る訳か…」

 

「……あるいはそれすらも残らず、もっと酷い事になるかも知れません…」

 

「…と言うと?」

 

「仮に今日まであいつが生きていたとしましょう…そしたら貴方たちは時間を遡ろうとしますか?」

 

「……成程な。」

 

「え?何…束さん分からないよ!」

 

束は以前、彼は自分に次ぐ頭脳の持ち主だとは言っていたが…確かに頭の回転は早い様だ。既に私が何を言いたいのか分かる様だ……と言うか、それならもっと早くに気付いても良いと思うが…

 

「束、良く考えてみると良い…あいつが生きていたら私たちは過去に行こうとはしない筈だ…そしたら、どうなる?」

 

「……あ!」

 

「あいつが生きていれば私たちが過去に絶対に戻ろうとはしない以上、私たちのやった事は元より…過去に行った私たちの存在自体無かった事になる…私たちはこの方法ではあいつを助けられないと言う事だ…」

 

「む~…じゃあ他の二つは?」

 

「死後の世界か…オカルト的な話は私には何とも言えんが…もう一つに関しては、止めて置いた方が良いだろうな…」

 

「何で!?」

 

「…並行世界に存在するあいつにはあいつの生活が有る…仮にどんなに不幸な生い立ちになっていたとしても…あいつがそこから逃げると思うか?」

 

「う…」

 

束が言葉に詰まる…そうだろうな、私たちはあいつが実は頑固なのを良く知っている…どれだけ辛い事が有ろうとあいつは逃げるのを良しとはしない筈だ…死ぬまで抗って、戦い続けるのがあいつだ……仮にそうでないあいつなら…それはもう名前と姿が同じだけの別人だ…そんなあいつを、私はともかく束が受け入れる筈が無い。

 

何処までも真っ直ぐなあいつの事を一番気に入っていたのは…私では無く束なのだからな…

 

「ちなみに一つ聞いても良いか?これらの案はどちらが出したんだ?」

 

「…私だ、あいつを取り戻す話を持ち掛けて来たのは束だが、案を出したのは私だ。」

 

「成程。…にしてもお前らしくないな、束?」

 

「何が?」

 

「…人の意見を素直に聞く…それはお前らしくないと言ってるんだ…それにお前ならもう一つ案が出せると思うが?」

 

「何が言いたいのさ…」

 

「■●さん、あいつは土葬されましたよね?」

 

まぁ飛行機が炎上したせいで、ほとんど火葬された様な物だが…

 

「そうだが……千冬、まさか君は…」

 

「束、お前なら真っ先に考える筈だ…何故あいつのクローンを作ろうとしなかった?」

 

倫理的問題はともかく(少なくともコイツには欠けてる感性だとは思うが…)恐らくコイツになら出来るだろうと思う…

 

「……だって、■ちゃんの身体ほとんど焼けちゃって…まともに皮膚組織が残って無かったから…」

 

「ちょっと待ってくれ。束、まさか君は…あいつの身体を掘り起こしたのか…?」

 

「……ごめんなさい。」

 

「……いや、そうだな…それを先に考えるのが普通だな…気にしなくて良い…」

 

「やはり試そうとしていたな…しかし、本当にやらなかったのか?お前なら低い可能性でもやってみないと分からない、と考えるんじゃないか?」

 

「やろうとしたよ。でも、クーちゃんに止められたの…」

 

クロエ・クロニクル…確かこいつが引き取って娘として育てている少女だな…後から聞いてこいつが本当に子供を育てられるのかと思っていたが…

 

『…クロエの事?少し自己評価は低いけど、良い子だよ。大丈夫、束は何だかんだちゃんとお母さんしてたから…まぁ一回私の家に連れて来た時に、生活状況聞いた母さんに怒られてたけど…あの時は大変だったなぁ…』

 

何でもその時は暴走気味のあいつの母親に連れられて共に束のラボまで強引に押し掛け、あまりにも散らかり切ったラボの状況に二人で唖然としつつも…時期外れの大掃除をする羽目になったらしい…

 

『クロエが母さんに凄く懐いてね…『お母様』って呼んでた時は少し複雑な気分にはなったかな…まぁ、もしかしたら…何れ本当にそうなるかも知れないけど……あ、そうなると束の方が義娘で、クロエは母さんにとっては孫になるのか…』

 

……まぁその辺りの話は別にして、仮にそうなると束はあいつの義姉になるからな…複雑そうな顔で溜め息を吐くあいつにあの時は大いに同情したものだ……今はそんな事はどうでも良いな。

 

「二人には言ってなかったけど…クーちゃんってね、要は試験管ベイビーなんだよ…軍の方で造られた子で、失敗作として処分される所を私が引き取ったの…」

 

そうだったのか…

 

『クーちゃんに言われたんだ…『束様は私の様な子を増やすつもりですか!それに…■■さんはそんな事望んで無いと私は思います…』…ってね…うん、あの子にそう言われたら…私には出来無かった…大体、造れたとして…仮に■ちゃんの記憶をそのまま植え付けても私の知ってる■ちゃんになるとは思えなかったし…』

 

「まぁそうだろうな……さて、結局残る案は一つだけになった訳だが…本当にやるのか?オカルトはお前も専門外だろ?」

 

「オカルトかどうかは「死後の世界が実際に有るかを生きてる私たちには立証出来無いし、戻って来れるかも分からん…本当にやる気なのか?」うー…」

 

束が唸り始める…こいつにとっては初めて直面する難題だろうな…

 

「……ねぇ?」

 

「何だ?」

 

「ちーちゃんはさ、さっきからそうやってこっちの意見を否定ばっかりしてるけど…■ちゃんに会いたくないの…?」

 

「会いたいさ、会いたいに決まっている…」

 

仮にあいつが…私に抱いていたのが友愛では無く、情欲の延長だったとしても…あいつは私の親友だ……もし会えるのなら…取り戻せるのなら!そうしたいに決まっている!

 

「じゃあ!ちーちゃんも何か案を出してよ…本当に会いたいなら!」

 

「簡単に言うな!私はお前ら程頭は良くないんだ!私に…どうしろと言うんだ…!」

 

そこでパンパンと音が聞こえた…そちらを見れば、今まで静観していたあいつの兄が手を叩いている…

 

「二人共一旦落ち着け、君たちが争うのはあいつが一番望まない筈だ。」

 

「……そうだね…ごめん、ちーちゃん…」

 

「…いや、私も悪かった…」

 

そうだったな…世間から身を隠し、関係性を切って行く束と…そんなこいつとどう接したら良いのか分からず悩んでいた私が…今でも親友でいられるのはあいつのお陰だったな…

 

「話を戻すが…確かにどれも現実的に考えて難しい物ばかりだな…ただ、並行世界案は悪くないんじゃないかと思っている…」

 

「いや、しかしですね…その案に関しては…」

 

「それなんだがな…恐らく君に会うだけで、あいつはこちらの世界に来る事を望むのでは無いかと思う…」

 

「あー…そうかも…要はちーちゃんに会った事が無いか、何らかの理由で絶対にちーちゃんと結ばれない■ちゃんを探せば良いんだね。」

 

「私が行くだけで?」

 

「うん、■ちゃんはね…それまでどんな生活を送って様と…多分ちーちゃんに会うだけで心変わりすると思うよ……特に、今のちーちゃんに会えばね…ちーちゃん、今も■ちゃんの気持ちを知って悩んでるでしょ?」

 

「ああ。」

 

「そして■ちゃんの気持ちそのものは全然嫌がってない…違う?」

 

「そうだな…複雑では有るが、嫌悪感は全く無い。」

 

「多分だけど…どの世界でもちーちゃんが、自分から■ちゃんの気持ちを察する事は絶対に無いと思うよ?」

 

「そして、■■が君の事を好いているのは何処の世界でも確実だな。」

 

「……先ず聞きたいのだが、私はそんなに鈍感か?」

 

「あのさ、ちーちゃん…■ちゃんが家に遊びに来た時…いっくんが■ちゃんとちーちゃんが二人きりになれる様、色々気使ってるの気付いて無かったでしょ?」

 

「……そうだったのか?」

 

「何度かこっそり見てたけど…いっくん本当に色々苦労してたよ…寧ろ来る度に毎回何かと理由付けて外に出ようとしてるの気付か無かったでしょ?……酷い時だとちーちゃんがいっくんにベッタリな時も有ったし…」

 

そもそも一夏からあいつの気持ちを聞いたのが最初だが、一体いつから知っていたのかも分からんのだが…

 

「いや、それは…仕事が忙しくて姉弟二人の時間が取れなかったからで… 」

 

「ちーちゃんの気持ちは分かるけど…でもそれって、滅多に遊びに来れない上に…前から来るって分かってた■ちゃんを放置してまでやる事?まぁ結局…■ちゃんの方が気使ってたけどね……大体、終いにはお客さんの■ちゃんがいっくんの代わりに家事やってるのって変だと思わなかった?」

 

「……」

 

そうか…私はずっとあいつを傷付けていたのか…

 

「でもそれでも■ちゃんは諦め様としなかった…うん!愛されてるね~!ちーちゃん!」

 

「揶揄うのは止めろ…」

 

「とにかくだ、私が言うのも何だが…あいつは本当に一途なんだ。もちろん、普通に彼氏彼女がいるあいつも存在するかも知れんが、断言しよう…仮にもしあいつにそう言う存在が居ない上、初対面だとしてもあいつは君の事を絶対に好きになるだろうな…」

 

「こんな私を?後になって伝えられるまで、まるであいつの気持ちに気付きもしなかった私をですか…?」

 

「人が誰かに惚れるのに理由なんて要らない、理屈じゃないんだ。」

 

「うんうん!束さんもそう思うよ。運命ってやつだね~!」

 

そうか…あいつはそこまで私を…

 

「それで、ちーちゃん?」

 

「何だ…?」

 

「……答えは残念ながらまだ出てないみたいだけど、正直に言ってみて…満更じゃ無いでしょ?」

 

「まぁ…正直に言えば、な…」

 

「会ってから決めるって言うのはどうかな?」

 

「……本当にそれで良いのか?答えを出せていない私が会いに行って良いのか?」

 

「ちーちゃんがそうでも…今のちーちゃんなら可能性が有るって考えたら確実に■ちゃんは一緒に居たいって考えるだろうからね~…後はもう■ちゃん次第じゃないかな…多分だけど、気持ちを知られてる上…ちーちゃんは拒絶する気は無いから…物凄く露骨なアピールして来ると思うな……多分■ちゃんが本気になったら、ちーちゃんの方が夢中になっちゃうと思う…」

 

「そっ、そんなにか…」

 

「家庭的だし、何より美人で頭も良くて…あ、後結構お給料も沢山貰ってたみたいだよ~……うわぁ…改めて考えると凄い優良物件!もう…ちーちゃんにお熱じゃなかったら束さんが嫁にしたいくらい!」

 

「……」

 

何だろうな…何故か束のその言葉を聞いて今、私は不快な気分になっている…

 

「……その顔を見る限りもうほぼ答えは出てる様な気もするが…」

 

「え…?」

 

■●さんに声を掛けられて私は我に返る…今、私は何を考えていた…?

 

「自覚無しか…まぁ良い、それでどうする?私たちと一緒に来る気は有るか?」

 

「……」

 

もう迷う必要も無いか…答えはいつでも出せる…私は差し出された手を取った。

 

「ええ、私も微力ながら協力させて頂きます。」

 

「微力、じゃないんだがな…まぁこちらこそ宜しく頼む。」

 

「ちーちゃんが来るならもう上手くいったも同然だと思うけどね~…ま、とにかく…準備が出来たらまた来るよ。」

 

「ああ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。