箒に背負われたまま部屋に入る事になった私は、当然…既に起きていた一夏に驚かれる……最もウチの弟の場合、余程の事が無い限り一々慌てないから…本当に一瞬そう言う表情をしただけだったりするんだけど。
……何と言うか、改めて前世の一夏君と比べて別人だと感じるよね……やっぱり私のせいなのかな。ごめんね、ポンコツな姉で…ちなみに背負われてる内に、忘れていた疲労が出て来た様で…まともに事情を話せない私の代わりに箒から話を聞いた一夏は…
「……分かった、俺から千冬姉に伝えようか?」
……良く出来た弟を持って、私幸せだなぁ…まぁでも、さすがに…
「私が自分で言うから大丈夫だよ。」
そこ頷いちゃったら、もう本格的に駄目になるのは分かるからね…
「……分かった、取り敢えず今日はこのまま授業は休んだ方が良い…千冬姉には俺から上手い事話しておくから。」
過保護だなぁ…でもその優しさ、箒にも向けてあげてよね…とか考えてたら…
『大きなお世話だ。』
「あうっ…」
箒に小声で文句を言われて、頭にチョップを落とされた。うう…結構痛い…
『全く…自分の事を心配しろ、この馬鹿…一体何十年片想いする気だ?』
『皺くちゃのおばあちゃんになっちゃう前には、告白しかようなぁって……痛っ!」
今度は拳骨を落とされて、思わず声を上げてしまう…
『もう…ポカポカ人の頭叩かないでよ…これ以上色々忘れたらどうするの?』
『ふん…前世から色々引きずってるお前には良い薬だろ…』
「ちょ、ちょっと…!私、一夏にはまだ「十秋姉、俺も小声で話してる事を一々聞く趣味は無いぞ?」うー…」
まぁ、一夏はそうだろうなとは思う…だからって、ねえ…
「まぁ、良く分からないけど…千冬姉の事で相変わらず悩んでるんだろ?」
「うんまぁ…そうだねぇ…」
「一応、一旦千冬姉と距離置いて色々考えた方が良いって言う箒の意見には俺は賛成だ…このまま顔合わせてると、本格的に体調崩しそうだしな…」
「……」
まぁ、正直吐くだけで済んでる分にはまだマシな気はする…元々、今世の私の身体は色々アレみたいだし…
「まぁ、今日はもう横になっとけよ。」
「うん…」
ちなみにベッドに横になってすぐ、私の意識は落ちて行った…元々睡眠時間足りて無かったんだろうけど、それにしたって…こうもあっさり眠りに落ちて私もビックリだよ…
「ん…」
「ん?起きたか。」
「へ?……姉さん!?」
「おはよう、もう昼だがな…」
目を開けてすぐに横から声が聞こえて、そちらを見た私の意識は一瞬で覚醒する…なっ、何で千冬がここに…!?
「……随分な反応だな。起きて早々見るのが私の顔だと不満か?」
「いや!全然そんな事無いよ!?」
「そうは見えないがな。まぁ良い…お前、休学したいそうだな?」
「えっと…うん。」
まぁ、私から言い出したんじゃないけど…
「そうか。じゃあこの書類に名前を書け…それから「あの」ん?」
「理由聞かないの?それとも…一夏か、箒から…何か聞いてる…?」
「……環境が変わったせいか、お前が体調を崩しやすくなってるとは言われたがな…それ以上は何も聞いて無い。」
「えっと、良いの…?」
「良いも何も…別にどうしようがお前の自由だ。何なら、転校の手続きもしてやるが?」
「……」
理由を聞かれない…その事が私の心を黒く覆って行く様な気がした…どうして?私は、貴女の妹でしょ?
「……聞いて欲しいのか?」
「……」
「一夏や箒、更識姉は大体お前の考えてる事は分かるとか言ってたがな…残念ながら私は、お前の方からハッキリ口に出して言ってくれないと分からんぞ?聞いて欲しいなら、私もちゃんと聞くがな。」
「……書類、貸して。」
千冬からペンと書類を受け取り自分の名前を書いて行く…もう良いや、どうでも…
「はい。」
「……良し、週末に出る船に乗れ。それでお前は家に帰れる。」
「うん…」
書類を持った千冬がベッド傍に置いていた椅子から立ち上がり、私に背を向ける…
「十秋。」
「何?」
「……すまなかった。」
……何が?その一言が私の喉元まで出掛かったけど、結局口を付く事は無く…千冬は部屋を出て行った。