そこからはトントン拍子に話が進んだ…と言うより、私はベッドからほとんど動かないまま…気が付いたら週末を迎えてた……一夏は時折話し掛けてくれてたし、箒だって部屋に来てくれて色々話してくれてた様に思う…でも、朧気に覚えてるのはそれくらい…まぁ、私の休学について聞いたのか、誰か他に部屋に籠る私に会いに来てくれた様な記憶も薄らとは有る…
でも、私はずっと上の空だったろうし…顔だってちゃんと見ようとした記憶も無い…来てたのは確かだけど、他に誰が来てくれてたのかは全然分からない…そして、荷物すらも自分で準備しないまま…今はこうして一夏に手を引かれて、港まで歩いてる…
「ほら、もう着くんだから…いい加減自分で歩いてくれよ…俺は付いて行けないんだから…」
「分かってる…」
「……いや、分かってないよな?」
「分かってる…」
私の荷物も持って、手を引いてくれる弟と…それから…
「ハァ…すみません刀奈さん、十秋姉の事…お願いして良いですか?」
「大丈夫よ、ちゃんと家まで送り届けるから……まぁ、休み明けには…私もこっちに戻っちゃうけどね…」
家までの護衛を買って出てくれた刀奈に迷惑を掛けてる自覚が無い訳じゃない…でも、もう何か…何をするのも億劫で…
「いえ、刀奈さんも忙しいでしょうし…それだけで十分ですから。取り敢えず家の中にさえ居てくれれば…この状態の十秋姉でもすぐどうこうなる事も無いでしょうし…」
「……本当は元気になるまで、私も様子を見ていたいんだけどね…」
「いや、今は寧ろ一人にした方が良いかも知れません…見ての通り、俺の言葉もまるで届いて無いみたいですから。」
……いや、聞こえてるよ…
「そうね…」
「ほら、後は刀奈さんに任せるからな?あんまり迷惑掛けない様にしろよ?」
「うん…」
「もう…十秋ちゃん?一夏君にお礼ぐらい言わないと…」
「……ありがとう。」
「ああ…十秋姉?取り敢えず飯だけはちゃんと食えよ?」
「うん…」
「じゃあ、改めて十秋姉の事…お願いしますね?」
「ええ。ちゃんと家まで送り届けるからね?」
「着いたわよ、十秋ちゃん。」
「……あ。」
刀奈に声を掛けられ、顔を上げる…そこはもう懐かしき織斑家の前…と言うか、道中の記憶が全然無い。
……刀奈が一夏から渡された鍵を使ってドアを開く…
「ほら、何してるの?早く入ったら?」
「はい…」
靴を脱いで、玄関に上がり…ドアを押さえた刀奈に促されながら中に…
「あ、ちょっと待って。」
「何ですか?」
「何ですかって…ここは何処?」
「ここは、私の家です…」
「なら、無言で入る事無いでしょ?何か言う事無い?」
「……言う必要有るんですか?」
「もちろん。」
「……ただいま。」
「おかえりなさい。」
刀奈にそう言われた時、不思議と私の目から雫が垂れた…ホント、私弱くなったなぁ…
部屋のソファに座らされ、刀奈が掃除をしているのを黙って眺める……いや、さすがに手伝うって言ったんだけど押し切られちゃって…つい、溜め息を吐いたタイミングで、床に掃除機を掛けていた刀奈が声を掛けて来る…
「お昼、何か食べたい物有る?」
「!…えっと、特に無いです…」
あんまり食欲無い…
「そう?何でも良いわよ?」
何でもって言われてもなぁ…
「刀奈さんに任せます…」
「……分かったわ。」
……私自身、普段だったら有り得ない事を言ってるのは分かってる…でも、正直一人だったら普通に何も食べないだろうなって思うくらいには…今は全てがどうでも良かった…