先の言葉通りお昼は刀奈が用意してくれる様…一応寮の部屋の冷蔵庫から食材いくつか運んで来てるけど…どうも私を元気付ける為に奮発しようと決めた様でわざわざ追加で買いに行く気の様だ……そこまでしてくれなくて良いんだけど…正直、今本当にあんまり食欲無いし…
「それじゃあ、私は行くから…もし、出掛けるとかなら一応私の携帯に連絡してね?」
「……私、小さい子じゃないんですけど…」
そんなに危うく見えるのかな、今の私は…
「念の為、よ。」
そう言って刀奈は出掛けて行った…まぁ、元々出掛ける気なんて全く無いけどね…
刀奈が出掛けてどれくらい経っただろうか…ソファに座り、今私は何をしているかと言えば別に何もしてない……まぁ、頭もほとんど働いて無いけどね…
「ふぅ……ん…?」
この家には今、私以外誰も居ない。三人だと少々狭く感じなくもないこの家…それでも一人だと何処か孤独を意識させる程には広さが有る…
そうやって一人を噛み締めていた私はふと、違和感を感じた(余談だけど、何だかんだ本当の意味で一人になったのって結構久々な気がする…)
……人の気配?
私自身、更識家で色々学んだのと…元々その前からそう言う感じは有るんだけど…一夏程でこそ無いものの、私は割と気配に対しては敏感な方だとは思う。ましてや、今私は構造を知り尽くしてる自宅で一人と言うシチュエーションだ……間違え様が無い(そもそも本当に最低限の広さしか無い家だったりするけどね…)
とにかく、気配が有るのは確かだけど…何処に居るのかは分からない…でも、私が居るこの部屋に誰かの気配は有る…取り敢えず部屋の中を見渡す…
……当然、私以外の人間の姿は無いし…刀奈が戻って来た訳でも無い。そもそもこの部屋に完全な形で人が隠れられる様なスペースは無い…でも、やっぱり気配は有る…私以外に誰か、この部屋に確実に居る…
「束さん?居るんですか?」
姿を隠した上で接触して来る人物なんて、私の中では一人しか居ない…そう思って名前を呼んでみたけど反応は無い…束の性格的に、少なくとも呼ばれた時点ですぐ出て来るだろうから束じゃない……う~ん…そうだ、更識家で教わったやり方を使おう…私は目を閉じた。
……意識を集中し、気配の出処を探る…っ…私は目を開けた…そして目の前の空間を睨み付ける…一見するとそこには無い……でも、見詰めて居ると何やら影の様な物が見えて来た…人の形をしたソレ…人影を更に見詰める…やがて顔の有るだろう部分の目鼻立ちがはっきりし、髪型や体型…加えて体格までもが見えて来る…そして、私は今…"彼女"と目が合っている…私は口を開いた。
「……誰?」
ほとんど反射的にそう問い掛けた…もちろん、あっさり答えてくれるなんて期待もしてない…
『ッ…あ、声が出せる…?』
……身構えていたら、向こうは勝手に何やら納得していた…と言うか、仮に私に何かするつもりだったら見えなかった時に色々出来たと思うんだよねぇ…向こうの雰囲気的に見付かったのも想定外だったっぽいけど…
「……不審者とかそんな感じじゃないか。何か透けてるし…じゃあ私の見てる幻覚かな…」
口にしてるのは私の願望…いや、そうでなかったら何なの?って感じだし…まぁ、仮に本当に幻覚を見てるならそれはそれでやばいんだろうけど…それでも、実際にこの場に知らない人間が居るって事の方が危険度としては高いからねぇ…
『そう、私って貴女の見てる幻覚なんだ……ちなみにこの顔、見覚え有ったりしない?』
……いや、知らないよ。コレがもし本当に幻覚だとしたら私は早々に病院行くべきかも…だってあまりにも存在主張がうるさいし…
「自己主張強いなぁ…見覚えって…全く覚えが無いんだけど…」
そんな事を考えつつも、私は目の前に居る彼女と会話を試みている…自分でも馬鹿な事をしてるな、とは思う…でも、無視しても向こうがアピールして来る気がするし…それなら適当に相手してる内に消えてくれるかもって考えてたり…
『……貴女は■■って名前…あれ?』
急に彼女の言葉にノイズが混ざる…と言うか、自分で言っててそこ驚くんだ?
「?…何て?もう一回言ってくれる?」
肝心な所で露骨にノイズ入るとか、もう人間を相手にしてる感覚じゃない…関わるの面倒だなぁ…と思いつつ…取り敢えず聞き直し。
『だから…■■……駄目だ、言わせて貰えない…』
……多分、自分の名前を言おうとしてるんだろうけど…貴女の名前は放送禁止用語か何か?既に面倒臭くなりながらも私は何とか彼女と会話を試みる…
「えっと…取り敢えず、それが貴女の名前って事で良いの?」
『……ここで肯定したら、貴女の中で私って宇宙人か何かの印象で固定されない?』
……え?今更?まさか自覚が無いパターン?
「私からしたら、貴女が仮に私の見てる幻覚や幽霊じゃないんだったら…他にはそう言う物にしか思えないんだけど…後は、コレが私の見てる夢とかになるのかな…」
私は眠った覚えは無いけどね…
『まぁ、良いや。』
……。
「いや、言った私が言うのも何だけど…それで良いの?」
『う~ん…何か面倒だし。』
……何だろうね、何か彼女と話してると何となく疲れて来る…いやまぁ…微妙に会話が噛み合わないせいも有るだろうけど…私自身、今は誰かと会話するの自体面倒とも思えるし…
『それでまぁ聞き取れなかったみたいだけど…一応私は自分の名前を言ったよ?貴女の名前は聞かせてくれないの?』
唐突に何かぶっ込んで来た…
「……私、そんな約束してないんだけど。」
どうせ言うしか無いんだろうな、と思いつつ…私は苦し紛れにそう口に出す…いや、幻覚でも幽霊でも…はたまた宇宙人でも何でも良いからもう帰って欲しいんだけど…
『良いじゃない?減るものじゃないし教えてよ…貴女は織斑家の子なの?』
……驚く事じゃない…彼女が私の見てる幻覚や、これが私の見てる夢なら…それぐらい当てられて当然の筈…
「……ここが織斑家って分かるんだね…」
『まぁね…』
うん、私の創り出した虚像にしてはやけにキャラ設定きちんとしてる様にも思えるんだよね…
「……ハァ…分かったよ、私は…織斑十秋。織斑家の次女で、織斑一夏の双子の姉だよ。」
……名前言ったんだからもう帰ってくれないかなぁ…無理だよねぇ…知ってた、ハァ…